チェギョンが分娩室ん入ってから五時間が経過した
落ち着かない様子のシンとヒョンを、経験者のミンは窘めた
『あなたもシンも落ち着いてください。初産は時間がかかるものなんですよ。私の時のことをお忘れですか?』
『ああそうだった。シンが生まれた時に君は随分苦労したな。一昼夜陣痛で苦しんだな。』
『そうです。一人の命が生まれてくるんです。そんなに簡単には・・・』
≪ふぎゃ~~~!≫
分娩室の中から響いた赤ん坊の泣き声に、イ家の面々はパニック状態だ
『う・・・生まれた?』
『生まれたのか?』
『ああ・・・どちらが生まれたんだ・・・』
分娩室の扉の前で中の様子を窺う三人・・・しばらくすると看護師に抱かれた赤ん坊が、その扉から出てくる
『おめでとうございます。とても可愛い女の子ですよ。』
『女の子❤まぁ~~♪』
『あぁ・・・無事に生まれてよかった。』
『目を瞑っているのにこんなに愛らしいのだ。目が開いたらどんなに可愛いか・・・』
男の子を切望していたヒョンでさえ、目尻を下げてうっとりとした表情で赤ん坊を眺める始末
三人はチェギョンが病室に移動するまでその場で待機し、元気そうなチェギョンを褒め称えて
イ夫妻は先に帰っていった
シンはそのまましばらく病室に残り、第一子出産の喜びをチェギョンと分かち合った
『チェギョン・・・良く頑張ったな。お母様が言うには安産だったそうだが・・・』
『うん、そうみたい。でも今はお産が楽だったなんて言われたくな~~い!』
『もちろんそうだろうな。くくっ・・・』
『お義母様喜んでらした?お義父様はがっかりされていたでしょう。』
『お母様はもちろん手放しで喜んでいたが、お父様もうっとりした顔で赤ん坊を見つめていた。』
『そっか・お二人とも喜んでくださったんだ。良かった~♪』
性別などどちらでもいい・・・母子ともに無事であればそれでいい
だがチェギョンは心のどこかで義父ヒョンが落胆しているのではないかと少し心配していた
翌日からミンはもちろん毎日病室を訪れるようになった
そしてシンとヒョンも仕事帰りに必ず赤ん坊の顔を見にやってくる
週末になり、イ家の面々が勢ぞろいしている時・・・血は繋がっていないがチェギョンの実家の両親と弟が
チェギョンの出産祝いに駆け付けた
『チェギョン~おめでとう♪』
『あぁ・・・なんて愛らしい子なんだ。チェギョンよく頑張ったね。』
そう言って労をねぎらってくれる両親
だが弟のチェ準だけは赤ん坊の頬を突きながら思いも寄らない言葉を告げた
『姉貴~財閥の嫁なんだから男の子を産まなきゃダメだろ?』
もちろん悪気があっての言葉じゃない
その場にいたイ家の家族に気を遣って出た言葉だった
『あ・・・うん。』
弟の性格をよく知っているチェギョンは、少し苦笑いを浮かべた
その時・・・驚いたことにヒョンがチェジュンに言ったのだ
『チェジュン君・・・いいんだよ。性別なんかどちらでも。こんなに可愛い子を産んでくれたんだ。
感謝したいくらいだよ。
それに・・・二人はまだ若い。後継ぎなんかこれから先いくらでも望める。だから・・・女の子が生まれたことを
どうか心から喜んでやってくれ。』
『あ・・・おじさん・・・すみません。姉だからって軽口言っちゃって・・・』
『ははは。それだけチェギョンはシン家の皆さんにも愛されているってことだな。』
心配していた赤ん坊の性別・・・義父は決して落胆などしていなかった
チェギョンはその時の言葉を心からありがたく思った
出産後イ家に戻って一カ月の間、チェギョンはまたもや過保護生活を強いられた
過保護なのはチェギョンばかりでなく、生まれてきた赤ん坊も同様だった
時折ミンはギャラリーに顔を出して、そしてあっという間に帰宅する
孫娘と過ごすのが今や生き甲斐のミンだった
生まれた赤ん坊はウナと名付けられ、日に日に表情豊かになって来る
『ウナ~~おばあちゃんが帰りまちたよ~♪まぁ~よく眠っている事・・・まるで笑っているような寝顔だわ♪』
帰宅するなりウナに話しかけるミン
『お義母様、お帰りなさい。』
『チェギョン・・・ちゃんと休んでいた?』
『はい。ちゃんと横になっていました。ギャラリーの方はいかがでしたか?』
『それがね・・・大変なのよ。』
『えっ?何か・・・起こったのですか?』
心配そうに問い掛けたチェギョンに、ミンは口角を上げ笑う
『あなたが安定期に入ってから描いた絵が・・・全部売れちゃったのよ~一♪』
『えっ?本当ですか?』
『本当よ~もぉ~どうしましょう~おほほほほ~♪
チェギョン・・・産後一カ月過ぎたら、また絵を描かなきゃね。』
『はい。もちろんそう致します。』
第一子も誕生し仕事も順風満帆なチェギョンは、産後一カ月を過ぎた頃からまた絵筆をとり始めた
ギャラリーに置く絵もだが・・・チェギョンには早急に取り掛からなければならない作品があった
それが仕上がったのはウナが生まれてからふた月後の事だった
週末家族が全員揃っている時、チェギョンはリビングに掻き上げた絵を持って行った
『あの・・・新しい≪家族≫の絵を描いたんです。いかがでしょうか・・・』
その絵は小ぶりなサイズだが中心にソファーに座ったウナがおり、その両端にヒョンとミンが
満面の笑みでウナを見つめ
ソファーの背後からシンとチェギョンが幸せそうな笑みを浮かべている絵だった
『まぁ~♪ウナがいるじゃないの。』
『本当だ。確かに・・・新しい家族の誕生の喜びに溢れた絵だ。』
『チェギョン・・・夜遅くまでこれを掻いていたのか?』
『うん。これ・・・リビングに飾っていただけますか?』
『もちろんよ~♪チェギョン…今まで飾っていたコンテストの受賞作品は、
ギャラリーの一番目立つところに移したらどうかしら?』
『でもお義母様・・・それじゃあ・・・』
『あなたが画壇デビューするきっかけとなった絵なのよ。何より宣伝になるわ。
それに・・・≪家族≫の絵はもっとも~~っと増えていきそうだしぃ~リビングに置くところがなくなってしまうわ。』
『くすくす・・・確かにそれもそうですね。』
『あなたの出世作を・・・私が我儘いってこの家のリビングに閉じ込めておいたけど
もうそろそろたくさんの人に見て貰いましょう。』
『はい!ありがとうございます。お義母様・・・』
ミンの言う通りこの家のリビングを飾る≪家族≫の絵は、次々と増えていくことだろう
妻として母として嫁として・・・そして画家として、チェギョンは理解のある家族に囲まれ
幸せ且つ充実した人生をこれからも歩んでいくに違いない
ソウルメイト ハチャメチャ新婚生活編 完
ん~~シン君の出番があまりない
新婚生活編でした(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
古いお話の番外編に
お付き合いいただき本当にありがとうございました❤
次のお話は・・・明日書庫を作っておきます。
どうぞよろしくお願いいたします♪