イ財閥本部ビル会長室のドアがノックされた
≪トントン≫
『どうぞ。』
『あなた~来ちゃったわ~♪』
扉を開けたのはイ・ヒョンの妻ミンだった
ミンはまるで少女のように顔だけ覗かせて、夫に満面の笑みを向けた
『ははは・・・君だったか。入りなさい。』
『失礼しま~す♪』
ミンは夫に促されソファーに腰掛けると、すぐさま身を乗り出した
『それであなた・・・あの二人にどんなアルバイトを紹介してくださるんですか?』
『そうだな。このビルの一階にあるカフェでもいいし、美術専攻だと言っていたから
広報部もいいかなと思っているのだが・・・』
『まぁ~♪一階にあるカフェは制服もとても可愛いし、いいんじゃないですか~♪』
『客との商談に使うことも多いから、接客のノウハウを備えたあの二人なら向いているのではないかと思っている。
とにかく…もうすぐあの二人がシンとギョン君に連れられてやって来るから、その時に相談しよう。』
『いい考えですわ~♪』
『ところで君の方は・・・何か分かったのかね?』
今までの満面の笑みを一転させ、ミンは顔を顰めた
『あなた!それが聞いてくださいよ。クレームの電話を入れたのは、ミン貿易の娘だそうですわ。
自ら名乗ったなんて・・・な~~んてお馬鹿さんなのでしょう。』
『はぁ・・・そんなところじゃないかと思っていたよ。さすがに企業のトップがクレームの電話を入れるような
恥知らずな真似はしないだろうしな。』
『私・・・腹に据えかねてしまいましたわ。懲らしめるいい方法がないでしょうか?』
『懲らしめる方法?・・・ははは…あるじゃないかミン。ほら・・・あれが・・・』
ヒョンはミンに何かを目で示した
『あ~~っ!おほほほほ~~~♪あなたの頭の回転の良さは素晴らしいですわね。わかりましたわ。
チャン家の奥様と打ち合わせしておきますわ。』
『そうしなさい。』
ミンは夫からの提案で絶好の逆襲のチャンスを見つけたらしく、再び満面の網を浮かべた
≪トントン≫
『会長、シン様がおいでになりました。』
『どうぞ。』
『失礼します。』
ぞろぞろと会長室に入って来る二組のカップル
シンの後にはチェギョンが続き、ギョンの後にはガンヒョンが続いた
いよいよ・・・イ財閥会長室での面接が始まろうとしていた
チェギョンとガンヒョンは部屋に入るなり深々と頭を下げた
『かっ・・・会長、この度は私達にご配慮下さり・・・誠にありがとうございます。』
『会長・・・イ・ガンヒョンと申します。』
チェギョンとガンヒョンはいつになく緊張しているようで、会長室の中にミンがいる事さえ気づかない
そんな二人の緊張を呆気なく解きほぐしてくれたのは、やはりミンだった
『まぁ~♪チェギョンちゃんもガンヒョンさんも、いっぱしのOLさんみたいだわ~♪』
『お・・・おば様ぁ~♪』
『あっ・・・おば様、お越しだったんですか。』
『そうよ~心配で見に来ちゃったわ~♪さぁ~そこに腰掛けて♪』
『失礼いたします。』
チェギョンとガンヒョンは並んでソファーに座り、その両端にシンとギョンが座るとヒョンはミンを伴って
その向かい側に座った
『二人ともよく来てくれたね。そんなに気負わなくてよかったんだよ。緊張しないでいつも通りに振る舞ってくれ。』
『はいっ!あ・・・あのっ履歴書です。』
チェギョンとガンヒョンは持参した履歴書をヒョンの前に差し出した
『うむ。面接とはいっても形だけだよ。でも一応折角持参してくれたから見せて貰おうかな。』
今時の履歴書はテンプレートに明記して印刷したものを持ってくるものが多いが、
チェギョンとガンヒョンは手書きだった
『おお・・・手書きじゃないか。珍しいな。』
『あ・・・あのっ・・・拙かったでしょうか?』
『いいや・・・私のような年配者には、手書きの方が温かみがあって好感が持てる。
ほぉ・・・これを見ると商品開発部でも活躍してくれそうな気がするな。
チェギョンさんガンヒョンさん・・・今のところ一階にあるカフェと広報部・商品開発部でのアルバイトが
紹介できるがどうかね?ほかにも系列会社ならいくらでもあるが・・・』
その時いきなりシンが口を挟んだ
『会長!一階のカフェはダメです。』
シンからのダメ出しにミンが抗議する
『なぜ?制服も可愛いし客層もここに出入りする人だけだから安心だわ。』
『スカートか・・・』
『はぁ?スカートがどうしたの?』
『ここのカフェのスカートは短いんです。膝上10センチですよ!・・・ダメです。』
『え~~~っ?チェギョンさんもガンヒョンさんもお若いし、スリムでいらっしゃるから平気でしょう?』
『私が・・・嫌なんです。』
その時・・・そんな親子の諍いにギョンが割って入った
『俺は・・・カフェがいいと思う。だってカフェじゃなきゃ・・・ガンヒョンに逢いに来られないし。』
面接に来た当人二人を置き去りにし、議論を交わすシンとミンとギョン・・・
ヒョンは少々呆れ顔でチェギョンとガンヒョンに問い掛けた
『チェギョンさんとガンヒョンさんはどうだね?みんなの意見は聞かなくていい。
二人が働きたい場所を選びなさい。』
チェギョンとガンヒョンは顔を見合わせて答えた
『『一階のカフェで働かせてください!』』
『そうだよ~ガンヒョン・それがいい~♪』
『チェギョン・・・だからスカートが短いんだ!』
『シン君・・・スカートならファミレスだって膝上だったよ。』
『それより更に短いんだ~~!カフェの従業員は全員社員だ。お前たちは若いから妬まれるに決まってる。』
『そんなの平気だよね~ガンヒョン。』
『ええ。イ・シン考え過ぎよ。アタシ達のコミュニケーション能力を侮らない事ね。』
とても賑やかな会長室・・・そんな様子を楽しそうに見ていたイ・ヒョンは、二人に告げた
『いいだろう。一階のカフェで働いてもらうことにしよう。』
『『ありがとうございます。』』
『だが・・・一階のカフェは閉店時間が早い。今までのファミレスのアルバイト程の時間は働けないだろう。
それを考慮して時給はこのくらいでどうかな?』
ヒョンは電卓に数字を表示させると二人に見せた
『えっ?本当にいいんですか?』
『ファミレスより随分・・・時給がいいんですが・・・』
『ああ構わないよ。土日は休みになってしまうから、あまり稼げないとは思うが・・・』
『『構いません!どうぞよろしくお願いいたします!』』
こうして無事イ財閥本部ビル一階のカフェでアルバイトすることが決まった二人は、その後カフェの責任者と
時間の打ち合わせをし、標準サイズの制服を受け取った
その間シンだけは微妙に不機嫌な様子だった
『ではお母様・・・私は食事をしてチェギョンを送り届けてきますので。』
『解ったわシン・・・あっ!チェギョンちゃんガンヒョンさん・・・あなた方の濡れ衣は晴らしたわ。
近々ファミレスの本部から詫び状が届く筈よ。』
『えっ?おば様・・・一体どうやって・・・』
『おほほほほ・・・それは秘密よ~♪復職をと言われたけど、私がお断りしちゃったわ。
だって~腹が立つじゃない?何の落ち度もないのにクビにさせられたなんて~~!』
『ありがとうございます。おば様・・・』
『おば様・・・感謝します。』
四人が会長室を去っていった後、ミンは夫に告げた
『あなた・・・今日も何かお付き合いがあるのかしら?』
『いいや・・・何もないよ。』
『でしょ~~♪そろそろ退社時刻ですし~お食事して帰りましょう~♪』
『そうだな。たまにはデートして帰ろうか。』
『いいですわね~~あなた♪おほほほほ~~♪』
その日・・・会長室を出た四人は、一緒に食事をすることとなった
その食事の席でも、シンだけはカフェの制服のスカート丈が短いことをずっと言っていたそうだ
私事ですが…聞いてくれる?
びえ~~~ん・・・ずっと狙っていた
SSSサイズのパンプスが~~
欲しい色だけ在庫切れって
哀しすぎる~~~!
サイズのない人は・・・
安くなるのを待っていたらダメなのねと
今更悟った私です・・・くすん・・・