翌日シンは少々寝不足の状態で登校して行った
それというのも皇帝陛下から通達を受けた≪チェギョンの漫画の件≫は、チェギョンが自分と結婚を決める上で
出した唯一の条件だったのだ
そんな大事な約束を反故する事は出来ない
だが、今のまま活動をされてしまっては、いつ何時チェギョンが攻撃を受けるか解らない
執務室のデスクに腰掛け真剣に頭を悩ませ・・・そして深夜になった頃何か閃いたように
一人パソコンに向かい何かをし始めた
翌日・・・昼休み時間にチェギョンは、いつも通り皇子ルームにやって来る
昨日胸を痛めた≪皇太子、王族会の娘お持ち帰り事件≫もすっかり片が付き、本日は満面の笑みを浮かべ
ご機嫌な様子でその扉をノックする
<トントン>
『チェギョンで~~す♪』
『どうぞ。』
ところが・・・いつも意地悪でからかう様な視線を向けてくるシンが、いつになく神妙な面持ちを
している事に気が付き、チェギョンは心配そうにいつも座る場所に腰掛けた
『シン君・・・何かあったの?なんか顔が、すごく深刻だけど?』
『あ?あぁ。今日は少し真剣な話があるんだ。』
『うん。なんかちょっと怖いな・・・・』
おどけて首を竦めるチェギョンにシンは真剣な眼差しで問い掛ける
『チェギョン・・・お前、描いた漫画を売っていたって本当か?』
『うん、売ってるよ♪コミケがある時は飛ぶように売れるんだよ。
こう見えても売れっ子なんだから~~♪』
屈託なくく答えてくるチェギョンに、シンは目眩を覚えた
『チェギョン・・・皇族は自分の利益になるような金銭取引はできない。』
『うん、それも解ってる。だから・・・今度の本でコミケに参加するのはやめるよ。』
『俺の婚約者となった以上、皇室の人間になったも同然だ。民衆からはそうみなされる。
もう本を出すのはやめるんだ。』
『えっ?・・・婚礼前なのに・・・ダメなの?でも・・・もう予約もいっぱい入っているし
お金も受け取っちゃってるもん!!』
『チェギョン…それはダメだ!!もう作れないとお断りするんだ。』
『そんな無理言わないでよ~~私にだってファンは居るんだから・・・その人達の期待を裏切ることはできない。』
悲しそうにシンを睨みつけるチェギョンに、シンは諭す様にいい含めた
『何度も言うようだが、もうお前は皇室の人間とみなされているんだ。
お前の一挙一動が民衆の皇室に対する評価に繋がる。もう本を作るのは・・・諦めるんだ。』
『じゃあ…私はどうしたらいいの?』
『もう既に予約を貰っている人達に、預かっている金額を返すんだ。
そして待ってくれている人達に、心からの謝罪のメッセージを送るんだ。
お前は・・・もうすぐ皇太子妃になるんだ。できる・・・よな?連絡先とかはちゃんと保存してあるんだろう?』
『もちろんしているよ。そうか・・・私の起こす行動が・・・皇族全体に迷惑をかける事になるなんて
思いもしなかったよ。
シン君・・・解ったよ。今夜から待っていてくれる人達に謝罪のメールを送る。』
『解ってくれたんだな。ありがとう。』
『でも・・・シン君・・・結婚してからも漫画を描かせてくれるって言う約束は?』
『それなら・・・こんな手段はどうだ?』
シンは持参したノートパソコンを開き、まだ非公開になっているホームページを開いた
『チェギョンの部屋?』
『あぁ。ここにお前の描いた漫画を掲載したらいい。ただ・・・今までのペンネームは足が付くから
別のペンネームを考えろ。
元々お前は漫画で収入を得たくて描いていたわけじゃないんだろう?』
『うん。そんなんじゃないよ。ただ私の漫画に一喜一憂してくれる人がいるからだよ。』
『だったらネット漫画家になればいい。これだったらお前の正体がばれる事はないし、金銭が絡む事もない。
俺も出来る限りバックアップする。』
ピンクの壁紙で装飾されたバーチャルな世界が、チェギョンがこれからも自分らしく生きるための
必須アイテムになりそうである
『この部屋・・・シン君が作ってくれたの?』
『あぁ。こんなこと恥ずかしくって人に頼めるかっ!』
『くすくす・・・大好き~~♪』
チェギョンは立ち上がりシンの傍に歩み寄ると、その首元に抱きついた
これで漸く・・・シンは王族会からなにも言われなくなり、チェギョンとの約束も果たせると安堵して
チェギョンを自分の膝の上に引き寄せぎゅっと抱きしめ返した
その日・・・家に帰ってからのチェギョンは大忙しだった
まず次の漫画を楽しみにしてくれていて、予約までしてくれた人達に謝罪のメールを送った
【●●様
いつもご愛読いただき誠にありがとうございます。
大変残念な事に、私的事情で今後漫画の新刊を出すことが出来なくなってしまいました。
つきましてはお預かりしている金額をお返ししたいと思いますので
大変お手数ですが振込先と名義人を明記し、このメールに返信をお願い申し上げます。
楽しみにしてくださっていたのに。本当に申し訳ございません。長い間ご愛読いただき感謝いたします。
アマチュア漫画家 ローズマリー❤】
すると・・・・送った相手から続々とメールの返信が届く
その内容はもちろん振込先を教えてくれるものだったが、皆一様に次の漫画が読めない寂しさを訴えていた
そのメール文面を読みながら、チェギョンは段々目が潤んで来るのを感じた
そしてその半面、自分の描いた漫画がこれほどまでに人の心に届いていたのかを知り
新たなるバーチャルな漫画家目指して頑張ろうと意欲に燃えるのであった
続々と返信が送られる中、チェギョンの返金手続きは進む
もちろん振込手数料は膨大な額になってしまったが、それはそれで愛読者たちとの信頼関係を壊すことなく
綺麗にコミケから足を洗った自分に満足するチェギョンだった
だが・・・そんな風にチェギョンが新たなる挑戦をしようとしている時、王族会ホン家の娘ユリは父から聞かされた
シン・チェギョンの漫画の話を耳にし・・・なんとかしてチェギョンを皇太子の婚約者の座から引きずり降ろそうと
策略を練っていた
そして態々海外に留学している友人を使い。海外サーバーから皇太子妃への誹謗中傷を始めたのである
書いている途中でムーミン谷に落ちました。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
何か伝わったかな?うっしっし
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
何か伝わったかな?うっしっし