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Channel: ~星の欠片~
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パウダースノーの降る夜に 13

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東宮に到着した時、車から降りようとするホン・ユリにイギサは手を差し伸べた

だがユリはその手をやんわりと拒み、先に車から降りたシンに手を差し出した

『シンオッパ・・・手を貸してください。』

シンは戸惑いながらもユリの手を取り車から降ろす

『ユリ・・・イギサに案内して貰って医務室で手当てを受けてくれ。』

ユリの手をすぐに離そうとするシン・・・ユリはその手を強く握り締め、シンに縋るように言う

『シンオッパが連れて行ってくれなきゃ嫌です。』

昔からよく宮殿にやって来ていた妹の様なユリの我儘を、シンは拒むことはできず仕方なく医務室に連れて行く

ユリが侍医に治療を受けるのを見守り、治療が済んだ後はイギサに送らせるつもりであった

ところが・・・

『シンオッパ・・・久し振りに東宮でお茶をご馳走になりたいです。』

シンや運転していたイギサに非は無かったにしろ、一応怪我をさせてしまった負い目はある

少しばかり鬱陶しい気持ちになりながらも、シンは東宮の応接間にユリを通しチェ尚宮に茶を用意させた

『シンオッパのお部屋じゃないですよね?ここは・・・』
『あぁ、ここは応接室だ。』
『シンオッパのお部屋が見てみたいです。』
『いや。自室には人を入れない主義だ。ここで茶を飲んだらイギサに送らせるから帰りなさい。』
『シンオッパ・・・あの広報部から発表のあった婚約者という方はお部屋に入れたのですか?』
『あぁ?婚約者?あぁ。彼女はただの人ではないからな。』
『どうしてですか?先帝の遺言にあったからその人と結婚する事になったんですか?』
『いや・・・それは・・・』
『ホン家は皇室の為にすごく尽くしてきたじゃないですか。私はシンオッパの結婚相手に
成り得なかったんですか?なにもシン家の娘じゃなくても・・・』
『先帝がお決めになったことだ。それに俺だけじゃなく他の兄弟も近い将来婚約発表がある。』
『いいんですか?それで・・・。私はシンオッパに愛の無い結婚なんてして欲しくありません!
私・・・幼い頃からずっと、シンオッパだけを見てきました。
いつかきっとシンオッパの妃になれるのは、私だろうと思っていました。
だから・・・こんな急な婚約発表が信じられなくて・・・』
『ユリ・・・君の気持ちは嬉しいが、俺は君を妹の様にしか見たことがない。
それに遺言状で決められた政略結婚だと思われているようだがそうではない。
もう俺達はお互いを大事に想って結婚に向かって歩いている。
ユリが心配する様な事は何もない。』
『えっ・・・だったらシンオッパは、もうシン家の娘がお好きなんですか?』
『あぁ。好きじゃなければ結婚なんてできない。』
『私がシンオッパの心に入る余地は無いのですか?』
『あぁ。例えあったとしてもそれは妹のポジションだ。』
『・・・・・』

項垂れたホン・ユリはイギサに送られて帰って行った

イギサからの報告によると、家に帰りつくまでユリは項垂れたまま静かに泣いていたと言う





その翌日・・・元シン家の姉妹達はチェギョンを囲んで大騒ぎになっていた

『ちょっと~~チェギョン一体どうなってるのよ。』
『シン皇子がホン家の娘をお持ち帰りしたそうじゃないの!!』
『やだわ・・・婚姻前からもう浮気?』
『あんたしっかりしないと、略奪愛されちゃうわよ!!』

『えぇ~~~っ・・・なにそれ・・・』

元姉妹達に咎められても、チェギョンには寝耳に水の話である

ホン家の娘と言えば国内でも有数のお嬢様学校に通う一つ年下の才色兼備な娘だと、王族の中でも有名だ

チェギョンはシンからその件についてちゃんと説明を受けようと思いながらも、なんだか面白くない気分で

シンの皇子ルームを訪れた

<トントン>
『チェギョンです。』
『どうぞ。』

いつになく仏頂面で皇子ルームに入って来たチェギョンに、シンはすぐに気がついたようだ

『なんだ?お前、顔が膨れている・・・・・』
『膨れているだなんて・・・酷いっ!!あのさ・・・聞きたいことがあるんだけど・・・』
『なんだ?言ってみろ。』
『昨日・・・ホン家の娘をお持ち帰りしたって・・・噂が流れてる。』
『お持ち帰り・・・だと?くっ。。。違う。公用車の前に飛び出して来たんだ。
足に怪我をしたから、宮に連れて行って手当てしただけだ。』
『えっ?シン君が・・・手当てしたの?』
『ばっ・・・馬鹿かっ!なんで俺が娘の足など。。。
あぁ?はは~~ん。。。お前・・・ひょっとして嫉妬してる?』
『ちっ。。。違うもん!嫉妬なんかしてないもん!!』

シンから物言いたげな顔で覗きこまれ、チェギョンはあまりの動揺に顔を背けた

シンは更にチェギョンの顔を覗き込むと、追及の言葉を呟いた

『いや、これは嫉妬だろう?くくっ・・・』

更に顔を背けようとするチェギョンの頬を、シンは両手で挟み込み自分に向けた

『くくっ・・・可愛いな。チェギョンのそんな顔。ずっとしていろよ。』
『信じられない!!そんな風にからかうなんて・・・』

チェギョンの白い頬は真っ赤に染まり、咎めるようにシンを睨みつける

『ただ侍医に手当てをして貰って、茶を飲ませて帰って貰っただけだ。
お前が嫉妬する様な事は何もない。安心しろ。』
『ホント?』

パッと表情の変わるチェギョンに、シンはしたり顔で呟いた

『ほらやっぱり嫉妬していたんじゃないか!くくっ・・・』
『違うもん・・・』

シンはその威嚇する子猫の様なチェギョンの両頬にキスを落とし、それから唇を啄ばんだ

嫉妬に駆られどんな脹れっ面をしようとも・・・シンにとってホン・ユリとは一笑に伏してしまえるだけの

存在でしかなかったのである




だがその頃、皇帝陛下の元にホン・ユリの父ホン・ギジュが訪れていた

もちろん誠心誠意を尽くし仕えてきたホン家の娘が、お妃候補に挙がらなかった事も面白くなかったが

それ以上に昨日泣いて帰宅した娘の気持ちを聞いて居ても立ってもいられず、親としてなんとかしてあげたいと

シン家のチェギョンについて調べ上げた事を密告に来たのである

『陛下…恐れながら申し上げます。シン家のチェギョンは、ペンネームを使って漫画などを描き
それを販売しているそうです。皇太子妃になろうと言う者が、そんなことが公になったら民衆から
どう思われましょう。陛下・・・どうぞシン家の娘とシン皇子の婚姻を、もう一度お考え直しください。』

その報告を受け陛下は愕然とする

確かに初めてシン家の五姉妹と皇子達を引き合わせた時・・・隣の部屋で聞いていた自己紹介でチェギョンは

漫画を描くことが趣味と言っていたが、まさかその作品が世の中に出回っているとは思いもよらなかったのである

増してそれによって金銭取引が発生するとあっては非常に拙い

陛下は苦々しい表情でホン・ギジュにその報告に対する返答を口にする

『ホン・ギジュ・・・そなたの報告はしっかり婚約者に釘を刺しておこう。
だが、この縁組は先帝の思うところあっての縁組だ。それに当人同士も既に気持ちを固めている。
今更婚約を撤回する事は無い。』
『我がホン家は皇室に心からの忠誠を尽くしてまいりました。
うちの娘のユリも・・・シン皇子を心からお慕いしております。
なぜ・・・うちの娘ではいけないのでしょうか。』
『すべては先帝のお考えの元の結果だ。ホン家は確かによく尽くしてくれている。
だかそれと皇子達との縁組は、全くの別問題だ。
だから良いな!!このシン家の娘を調べた情報を、他に漏らす様なことがあったら
それはすなわち私への背信とみなす。他言無用だ。よいな!!』
『かしこまり・・・ました・・・』

納得のいかない想いでホン・ギジュは陛下の元を去っていく

その後シンは皇帝陛下の元に呼ばれ、その件を上手く対処するよう叱責を受けた

だが・・・元々婚姻を決意した時、チェギョンから言い渡された条件は≪漫画を描かせてくれる事≫だった

さて・・・シンはどのような手段でチェギョンを納得させるのだろうか・・・



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明日から~~誰も居なくなるぅ~~♪
漸く通常更新が出来そうです。
どうぞよろしくっ❤


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