食事が終わった時、ギョンの母は何かを思い出し徐に立ち上がると部屋から出て行った
そしてたくさんのカタログを抱えてリビングに戻ってくる
『そうそう!折角皆さんがいらっしゃるんですから、これを見ていただこうかと思って・・・』
食器を下げたテーブルの上に大量のカタログを並べたギョンの母
『母さん!これは?』
『ファミレスに置いてあるドリンクバーのカタログよ。イ家の奥様と一緒に行った時に、とても気に入ってしまってね
イ家にもあるそうだし我が家にも置こうかなと思って・・・。
シン君・チェギョンさん・・・イ家はどのような機械が入っているのかしら?見ていただける?』
『あ~もぉ!母さんまで・・・』
『だってギョン・・・あれはとても楽しいじゃないの。ふふふ・・・』
ギョンの母からの要望で四人は大量のカタログに目を通す
だがチェギョンが首を傾げた
『あの・・・おば様、イ家に置いてあるのは確かこのメーカーなんですが、
カタログに同じ機種が載っていないんです。』
『カタログに・・・載っていない?』
シンもチェギョンと同様の意見を発した
『本当です。おばさん・・・。きっとうちの母の事ですから、特注品なのではないかと思いますが・・・』
『そうよね。確かに・・・イ家が購入するのなら特注品になるに違いないわ。
やはり一度、イ家にお邪魔した方がいいかしら・・・』
『そうですね。きっと母も喜ぶと思いますし・・・』
『解ったわ。シン君・・・奥様に近々お邪魔するってお伝えしてね。』
『はい解りました。』
その後四人はギョンの部屋に通された
『ギョンの部屋に来るのは久し振りだな。』
『うん。パーティーで来ることが多いから、俺も久し振りに部屋に友人を招いた気がする。』
チェギョンとガンヒョンは広いギョンの部屋の中にある調度品を見て呆気に取られている
『チェギョン・・・生活レベルが違うってこういう事なのかしら・・・』
『うん。私達の部屋なんか机とベッドと箪笥くらいしかないじゃん。
この部屋・・・意味の分からない置物とか、一杯置いてある。』
ギョンの父が海外に行った折に、陶器の置物などをギョンに買ってきていたのだ
長年の度重なる土産物が、無造作で置かれていたのだ
『なんだか落ち着かない部屋ね・・・』
『うん。あのライオンとか・・・なんだか怖いよね。』
だからといってギョンにケチをつけるようなことはできない
ここはチャン家の当主が息子への愛情を示す場所だった
(このわけのわかんないインテリア・・・そのうち何とかしてやるわ!)
交際一日目にして、ギョンの部屋を改造しようと闘志を燃やすガンヒョンだった
『そろそろ俺達は行こう。』
シンがチェギョンにそう告げ時、ガンヒョンは心細そうに呟いた
『えっ?アンタたちもう行っちゃうの?』
『うん。ガンヒョンごめんね。イ家に行く約束をしているから。
それにギョン君は二人きりになる方が嬉しそうだよ。』
『え~~そんなことないけどぉ~♪』
おまけの二人が帰ると聞いて、口調まで嬉しそうなギョン
ギョンの母親に挨拶をし、シンとチェギョンはチャン家を後にした
イ家に向かって走り出した車の中、チェギョンはシンに言う
『シン君・・・申し訳ないんだけど、さっき立ち寄ったお店に寄ってくれる?』
『あぁ?一体なぜ?』
『おば様二お菓子を持って行くんだよ。』
『そんなものは必要ない。今までだってそんなもの持ってきたことはないだろう?』
『今までは~しもべだったから必要なかったけど、今は違うの。やっぱりそう言うことはちゃんとしないと
お母さんに怒られるんだから。』
『くっ・・・そうなのか。わかった。寄って行こう。』
本日二度目となる菓子店に足を踏み入れた二人
チェギョンは一番人気の贈答用菓子を購入する
『チェギョン・・・今日は手土産で散財したんじゃないか?ここは俺が払うよ。』
『ちっ・・・それじゃあダメなんだってば~~!』
『くくっわかったわかった。』
手土産を購入したチェギョンは、再び助手席に座り菓子の袋を大事そうに抱えた
『さぁ家に行くぞ。お母様がきっとお待ちかねだ。』
『うん~♪ところでさ・・・ギョン君の部屋すごかったね。なんだか多国籍な感じがして・・・』
『あぁ。ギョンのおじさんは仕事柄世界各国に行くから、土産もバラエティーに富んでいるんだろうな。』
『ガンヒョンは・・・きっとあの部屋が落ち着かなかったと思うんだ。
ガンヒョンはとても整頓好きだから・・・』
『まぁそのうち、あの部屋もガンヒョンの好みに変わるんじゃないか?』
『シン君の部屋は・・・ギョン君の部屋みたいじゃないよ・・・ね?』
『くっ・・・俺の部屋は至ってシンプルだ。心配するな。』
『良かった。』
イ家の門扉が開きシンの車は敷地の中を走っていく
そろそろ夕暮れの時間帯・・・・チェギョンは初めてこの家に来た時に自転車で大変な思いをして
緩い上り坂を走ったのを思い出す
(なんだかとても不思議。もうしもべじゃなくてシン君の彼女だなんて・・・)
全てはシンの母ミンの思うままに進んでいる二人の関係
つまりはミンの掌の上で転がされてい折るカップルだった
『いらっしゃ~~い♪』
車から降りると待ちきれなかったのかミンは二人をカーポートまで迎えに来ていた
『おば様~~♪』
『チェギョンちゃん…待っていたわ~♪さぁ~早く家に入ってね。』
『はい~~♪』
ミンに続いてシンとチェギョンは家の中に入っていく
そしてリビングに通されたチェギョンは驚愕の声を上げた
『お・・・おば様・・・ドリンクバーの機械が増えていますが・・・』
『おほほ~~~気が付いちゃった?見て見て~~チェギョンちゃん。あなたイチゴラテがお好きなんでしょう?
だから~フレーバーラテの機械も入れたのよ。これはね・・・そんじょそこらのラテマシーンと違うの。
イチゴはねフリーズドライした最高級の物が使われているのよ~~♪
抹茶ラテなんかね・・・京都の宇治抹茶を・・・』
永遠に続きそうなミンのうんちくに辟易したシンは、その話を遮った
『お母様・・・自慢するならチェギョンに味を確かめさせてからにしてはいかがです?』
『あぁ~それはいい考えだわ。チェギョンちゃん・・・早速一杯・・・ねっ♪』
『はい。その前におば様・・・このお菓子を召し上がってください。』
『まぁ~~♪駅前にあるお店のお菓子ね。ここのお菓子は美味しいのよね~~♪ありがとう。』
嬉しそうに受け取ってくれたミンに、チェギョンは安堵の笑顔を向けた
『ではおば様・・・早速一杯。』
『そうよそうよ~~駆け付け三杯は飲んでもらわないと~~♪』
それはなにか違うだろうと思いながらもチェギョンは新しいマシーンの前に立った
『んっと・・・使い方は一緒ね。ぽちっ♪おぉぉぉ~~~なんだか機械が砕いてる。
ひょっとしてイチゴを砕いている?わぁ~いい香りがしてきた~~♪甘いイチゴの香り~~わぁ~♪』
カップに注がれるイチゴラテを満面の笑みで見つめるチェギョン
期待通りの反応にミンもとても嬉しそうに微笑む
『できた~~♪』
『さぁ~チェギョンちゃんは座ってお味を確かめてね~♪もし美味しくなかったらクレーム入れちゃうから!』
シンも隣にあるマシーンでコーヒーを淹れると、席に座った
チェギョンはソファーに腰掛け、淹れたてのイチゴラテを恐る恐る口に運んだ
『おぉぉ…香りがすごい!ごくっ・・・きゃぁぁ~~~♪』
『どう?チェギョンちゃん・・・』
『ごくっ・・・うおぉぉ~~~♪』
『どうなの?お味はいかがなの~~?』
『ごくっ・・・おば様・・・これは侮れません。もう大学のカフェに置いてあるイチゴラテなんか飲めません~~!』
『そう?じゃあ合格ね。』
『はいぃ~満点合格です~~♪』
『良かったわ~♪』
二人のそんな様子を見ていて、シンはチェギョンに自室に行こうと言い出せずコーヒーカップの中に
小さな溜息をついた
今日はおバカな長男君から
『鍵失くした・・・』と電話が来て
なかなかテンションが上がりませんでした。
車の鍵・家の鍵・スピードパス・・・
それらは無事部室にあったそうです。
見つかってよかったよ~~~!
成人してもおバカで困ります。
まったく~~!