見合いの日前日・・・アルバイトが終わりチェギョンを送りながら、シンは念を押した
『チェギョン・・・見合いで結婚する気などないのだろう?』
『もちろんそんなのあるわけない!』
『だったら服装は・・・相当イケてない格好をしていけよ。』
『そうするつもりだったんけど、お母さんが新しいワンピース買っちゃってきてそれを着ろっていうんだよ。』
『お洒落していけば・・・その気があると思われる!』
『そうなんだけど・・・お母さんの立場って言うのもあって、難しいんだ。』
『そんなことで断れるのか?』
『大丈夫~脚に包帯巻いていくから~~♪』
もうすっかり火傷の痕も薄くなり、包帯など全く必要のない状態なのに・・・
まだ送迎をしているシンと、送迎してくれるシンに甘えているチェギョン
その理由に気がついて居ながらも、生活環境の違いがそこから先に踏み出すのを阻んでいた
『明日の夜…連絡しろ。』
『えっ?見合いの報告するの?』
『あぁ。ちゃんと断れたのか確認する。』
『ふぅ・・・わかった。じゃあまた明日ね。』
暗い気持ちでシンの車を降り自宅に向かって歩くチェギョンを、シンは溜息交じりに見送った
『あいつ・・・ちゃんと断れるのか?あぁ…それは俺も同じだな。なんと言ってもこっちはあのお母様が乗り気だ。
そうだ!あの有名ブランドの目がチカチカしそうなスーツを着ていこう。
あんなスーツで現れたら、きっと相手は面食らうはず・・・そしていつも以上の俺様ぶりを発揮すれば
相手は尻尾を巻いて逃げ出すに違いない。問題は・・・うちのお母様だけだ。
お母様の顔を潰すわけだからな。まぁ・・・お母様に叱られるのは慣れている。』
チェギョンの姿が闇の中に消えた
シンは再び車を走らせ自宅に戻っていった
『ほら・・・チェギョン急ぎなさい。もうお約束の5分前よ。』
見合いの会場は有名ホテルのレストラン・VIPルームだった
そんな場所を会場に選んだだけで、相手の家柄が分かるようで娘を急かす母スンレ
『お母さん…まだ約束の時間前でしょう?遅刻したわけじゃないじゃない。』
『保険外交員は約束の10分前には先方に出向くものなの。あなたが素直にワンピースを着ないから
こんな時間になってしまったのよ。』
『仕方ないじゃん・・・お見合いなんて行きたくないんだもん。』
『そんな仏頂面しないの。』
レストランに到着しVIPルームに案内された二人は、部屋の前で顔を強張らせた
そんな気持ちを知らないボーイは、そのドアをノックすると室内にいる客に声を掛けた
『お連れ様がいらっしゃいました。』
『どうぞ~お入りになって♪』
その声を聞いた瞬間・・・チェギョンの頭の中に疑問符がいくつも浮かび上がった
(あれ?この声って・・・イ家のばあやさんに似てない?)
伏し目がちに部屋に入っていき頭を下げた二人・・・
『シン・チェギョンと母でございます。』
『まぁ~ようこそ♪お越しいただきありがとうございます♪』
(ん❓やっぱりばあやさんの声だ。もしかしてばあやさんが
自分の息子さんを紹介してくれるつもりなのか・・・な?)
おずおずと顔を上げたチェギョンとスンレ・・・やはり目の前にはミンの顔があり
席から立ち上がると満面の笑みを浮かべていた
『あれっ・・・やっぱりおばさん~~♪』
『チェギョンちゃ~~ん♪』
その時チェギョンはミンの横に立っている長身の男に恐る恐る目を向けた
『し・・・シン君っ!』
シンは目を見開き仰天している
そしてやっとの思いで口を開き母に問い掛けた
『お・・・お母様、これは一体どういう・・・』
シンのその発言にチェギョンは一瞬にして全身の血が凍りつきそうな気分になった
『お・・・お母様って・・・?』
『チェギョン・・・こちらは俺のお母様だ。』
『えっ?えぇぇぇぇ~~~きゅぅ~~~・・・・』
今にも失神しそうなチェギョンの身体を、母スンレが支え問い掛けた
『チェギョン・・・お知り合いなの?』
『う…うん…』
『一体どういう・・・お知り合い?』
『ちょっと待ってお母さん、その前にお詫びしないと・・・』
チェギョンは血の気が引きそうな思いでミンの元へ行き頭を下げた
『す・・・すみません。私が勘違いしちゃったばかりに今まで随分失礼なことを・・・
ひっ!ひょっとして先日ファミレスにご一緒されたのは・・・』
『シンの父よ。チェギョンちゃん♪』
『ひぃ~~~っ・・・』
頭を下げ直角の姿勢のまま、チェギョンハその頭を抱えた
シンはなんとなく事情が見えてきたようだが、チェギョンの母スンレは何が何だかわからずキョトンとしていた
『いいのよ~そんなこと気にしないの♪』
必死の思いで席に戻っていくチェギョン
『さぁ~お掛けjyださいな。』
『はい。』
ミンとシンの向かいに腰掛けたスンレとチェギョン
スンレはどうしても気になるらしく、テーブルの下でチェギョンの手を突いた
『あ・・・あのねお母さん・・・こちらはイ・シン君といって私の大学の同級生なの。そしてお隣にいらっしゃるのが・・・
彼のお母様・・・』
『まぁ~チェギョンの同級生のお母様でいらっしゃいましたか。』
『ええそうなんですの。』
まだ事の重大さに気づいていないスンレは、営業スマイルを浮かべ余裕を見せている
『あ・・・あのねお母さん・・・こちら・・・イ財閥の方々・・・なの・・・』
『何言ってるのよチェギョン・・・そんないいおうちから我が家に縁談が持ちかけられるはずないでしょう?』
ミンはありったけの笑顔であくまでもフレンドリーに話しかけた
『実は・・・そうなんですの。』
『えっ・・・?・・・きゅ~~っ・・・』
今度はスンレが失神しそうな思いだった
必死に気持ちを立て直し、非常に畏まった口調でスンレはミンに話しかけた
『奥様・・・あの・・・ご存知ないかもしれませんが、イ家と我が家は義父父の代の時に主従関係にありまして・・・
縁組などとんでもない事でございます・・・』
『存じ上げております。それは重々承知の上ですわ。チェギョンちゃんの人柄をよく見せて貰って・・・
こんな娘さんがうちにお嫁さんに来てくれたらってそう思ったんですの。
もちろんすぐに・・・なんて非道なことは申し上げません。
ただ我が家がこういう特殊な環境ですので、もし二人が好き合っていたとしたら・・・
互いに言い出せないんじゃないかと思いましてね。恋愛できる環境を整えたかったんですの。
あ・・・でもチェギョンちゃんに嫌だと言われたら、諦めるほかありませんが・・・
どうも私の勘では、二人はとっても好き合っている気がするんですのよ。
現に我が家のシンも・・・何も言わず見合いをセッティングしましたら、このような格好ですしね~おほほほ・・・』
チェギョンはシンの着ているスーツに視線を向け、思わずプッと吹き出した
『シン君・・・いくら何でもやりすぎ。そのスーツで目くらましでもするつもりだったの?』
『くっ・・・チェギョンこそ、あれほど言ったのに可愛いワンピースなんか着てきて・・・』
『だって~相手の事なんか何もわからなかったし、お母さんの立場もあったから~』
『まさかお前が見合いの相手とはな・・・』
『シン君もお見合いがあるなんて、一言も言わなかったじゃん!』
『それは・・・まぁ・・・』
二人の母の視線を感じ、シンはそれ以上は口を噤んだ
『どうです?イ・スンレさん・・・このように二人は仲良しなんですの。
チェギョンちゃんは凄いんですのよ。人に頭を下げたことなどないシンに、アルバイトをさせたくらいですから。』
『えっ?チェギョン・・・あなたなんて無礼な事を・・・』
『財閥のお坊ちゃんだからファミレスでバイトだなんてとても耐えられないと思ったの。
でも違ってた。結構骨のある男子なんだよ。お母さん♪』
『じゃあ・・・あなたが火傷してから送迎してくれているバイト先のお友達って・・・』
シンはスンレに微笑んで答えた
『私です。チェギョンはとてもドジだから放っておけなくて・・・』
『まぁ・・・』
漸く事情が理解できたスンレとチェギョン…そしてシン
運ばれてきた料理を安心して口に運んだ
『とにかくイ・スンレさん・・・このような状況ですのでね、この先二人が恋仲になっても反対しないでくださいな。』
『は・・・はぁ・・・ですが奥様、ひとつ腑に落ちないのですが・・・私の上司とはお知り合いですか?』
『いいえ違いますわ。公にはなっておりませんが、イ・スンレさんがお勤めの保険会社は
実はイ財閥の傘下にあるんですの。だから容易かったですわ~おほほほほ・・・』
『きゅ~・・・』
イ家の奥方から望まれた娘チェギョン・・・
格式が違うとかそんなことは、当人二人が会話する様子を見ていたら全く心配ないと思われた
何よりも奥方が・・・母スンレが驚くほどチェギョンと親しくなっている
若干の不安を残しながらも、チェギョンの将来は決まったようなものだとスンレには思えた
『ご主人様の説得は、イ・スンレさんにお願いいたしますぅ~♪』
『は・・・はい。義父の事がありますから主人は相当驚くと思いますが・・・』
『そこを何とかするのが~お母様の手腕ですのよ。おほほほほ~~♪』
デザートと食後のコーヒーを飲み終えた時、シンは徐に席を立った
『では・・・私達は今日、元々約束をしていたので出かけてもよろしいでしょうか?』
『構わないわ~二人でデートして来たら♪』
『チェギョン・・・約束してたのはイ・シンさんとだったの?』
『うん。私のバイト代でシン君に誕生日プレゼントを贈りなおそうかと思って~♪』
『そして私のバイト代で、チェギョンと食事をしようと思ったんです。』
『まぁ~素敵だわ。いってらっしゃいな~♪私とイ・スンレさんは・・・もうちょっとお話をして
仲良しになってから帰るわね。ゆっくりしてきてね~♪』
『では行ってきます。』
『行ってきます♪』
まだ互いの気持ちを交換していない二人・・・これから二人は何の心配もなく思いを育めることだろう
元々短編の筈だったので
ここで終わってもいいかなと思ったんだけど
どうしましょうか(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ってか・・・昨日からブログのカウンター
なんか変じゃない?