鳴り続ける呼び出しブザー・・・観念したチェギョンはシンの座るテーブルに向かった
心の中では≪けっ!≫と思いながらも、接客スマイルは忘れない
『大変お℗待たせいたしました。』
チェギョンは呼び出しブザーを止めながら笑顔でそう言う
シンはチェギョンが漸く自分のテーブルに来たことに安堵し、チェギョンの頭のてっぺんから足先までを
一瞬で見渡した
(っつ・・・絆創膏だらけじゃないか。女の子がなんて恥ずかしい姿だ。
痛くはないのか?あぁ・・・脚に打撲があるな・・・真っ青だ。)
と・・・思いながらも口をついて出た言葉は『しもべ・・・アイスコーヒーを持ってこい!』だった・・・
チェギョンは少し呆れながらシンに小声で告げた
『イ・シン君・・・今私はお金を貰ってここで労働しているの。しもべしていられないんだよ。
一杯だけ持ってきてあげるから、後は自分でお願いね♪』
できるだけやんわりとそう告げ、チェギョンはドリンクバーコーナーに向かいアイスコーヒーを注ぐと
シンの元に届けた
テーブルの上にそれが置かれた時、シンは再びいう
『だったら仕事が終わってからでいい。向かいにコンビニがあるだろう?
そこでニャンドエイドを買って車に届けろ。』
『そんなの自分で行った方が早いじゃん!』
『いや・・・俺がコンビニなど行けるか?いいな!仕事が終わった後ここの駐車場で待っている。
必ず届けろ!』
『・・・(チッ・・・)わかったよ。』
理不尽だと思いながらも一年間のしもべ稼業を何とか静かに終わらせたいチェギョンは、コクリと頷くと
仕事に戻っていった
その後の二人は口に合うとは到底思えない料理を必死に口に運んだ
『これ・・・あまり美味しいドレッシングではないな。』
『シン…残すなよ。男たるものこのくらいの試練は乗り越えなくちゃ~♪』
互いに文句を言い合いながらも、行儀の悪い客だと思われたくない二人はすべての料理を残さず食べた
そしてドリンクバーなるものにやはり並び、面白がって思い思いの飲み物をお替りする
『味はどうってことないけど・・・これはなんだか楽しいなぁ。』
『あぁ・・・とても物珍しい。』
そしてチェギョンが仕事終わりの時間まで、飲み物を飲みながら互いに違う女性を観察する
『よく働くな。』
『本当に・・・あの凛とした立ち姿イカシテるぅ~♪』
『ギョン・・・お前、イチゴラテ事件の時あのイ・ガンヒョンって子に気が付かなかったのか?』
『えっ?ああ。なぜ気が付かなかったんだろう。』
『イチゴラテをぶっかけたチェギョンの印象が強すぎたんだろう。』
『気が付かなかったことが不思議で仕方がない。あの子・・・彼氏いるのかな・・・』
『どうだろうな。隙を作らなそうなタイプだ。』
『確かに・・・。ところでシン、ニャンドエイドなんかどうするの?』
『あ?あぁ・・・ちょっとな。』
『お前のやってる事って小学生の意地悪みたいだな。』
『っつ・・・お前に言われたくない。しかし…今まで出逢ったことのないタイプだ。アイツは・・・』
『全く~すごく新鮮だね♪』
女性の全てが御曹司にへつらうわけではない
チェギョンとガンヒョンはどちらかというと、そういった生活水準の高い人種には近づかないタイプだ
もちろん下心など全くないから、ご機嫌取りなどするはずもない
二人のバイトあがりの5分前、シンとギョンは会計を済ませた
それから10分後・・・並んで停まった車の中で待っていたシンは、女性二人の姿を見つけライトをパッシングさせた
その合図に気が付いたチェギョンは、シンの車の運転席側に回り車の中を覗き込むと
御用命の絆創膏ニャンドエイドをコンビニの袋から出して見せた
ところがシンは運転席側のドアを開けることなく、助手席側の扉を開けた
不思議に思ったチェギョンだったが助手席側に回り、シンに声を掛けた
『はい。これ・・・ご用命のニャンドエイド。』
『あぁご苦労様。中に入ってくれ。』
『えっ?』
『金を渡さなきゃならないだろう?早く乗ってくれ。』
『えっ?うん・・・』
『ドアを閉めて!』
『は?うん・・・』
ドアを閉めるなりシンの車は動き出し、チェギョンは相当慌ててシンに問い掛けた
『ど・・・どこへ連れていく気?』
当然の驚きだろう
シンの車に乗る意思など全くチェギョンにはなかったのだ
『っつ・・・自転車が壊れて家まで歩いて帰ると聞いたから送るだけだ。』
『えっ?』
『家はどこだ?』
『あ?えっと・・・』
突然のことに戸惑いながらも、チェギョンは昨日キム運転手に言ったように説明をする
シンは車を走らせながら心の中で呟いている
(〇〇と言ったらここから自転者では随分かかるじゃないか。
こんな時間に自転車で帰るなんて。若い女の子がなんて物騒な。明日も・・・来てやるか。
自転車が壊れた責任を感じるしな。)
『自転車は修理中なんだろう?』
『えっ?うん。でも明日、直って返って来るんだ♪』
『明日?そうなのか・・・(随分早いな)』
『うん♪』
『修理費とかかなりかかるんじゃないのか?』
『ううん。仲良しのおじさんが修理してくれるから、微々たる金額で直るんだ。』
『そうなのか・・・』
そしてシンの車は昨日キム運転手に送って貰った場所に到着する
『あ・・・ここで停めて。』
『あぁ?ここでか?』
『うん。うちはこの路地を入っていったところなんだけど、この道はとても狭くて車のすれ違いが大変なんだ。
だからここで降りる。あ・・・そうそう!ニャンドエイドを渡さなきゃ。』
『あぁ・・・これは代金だ。』
シンにニャンドエイドが3箱は買えるほどの紙幣を出され、チェギョンは思わず財布を取り出した
『えっとおつりおつり・・・』
『あぁ…駄賃だ。取っておけ。』
『えっ?そうなの?うん・・・』
なんだか釈然としない思いでその紙幣を受け取ったチェギョンが車を降りようとした時
先程買ってきたニャンドエイドを膝の上に返される
『えっ?』
『お稀のだ。』
『はぁ?』
『脚や腕に貼るのに何枚あっても困らないだろう?』
『おぉ?』
『じゃあまた連絡する。』
『うん。じゃあまた・・・』
チェギョンが車から降りた後走り去っていくシンの車
テールランプを見送りながらチェギョンは呟いていた
『イ・シン君・・・えっと意味わかんないんですけど~~。何のためのニャンドエイド?
わざわざお金払って私にくれるなんて~~~!』
その不可解な行動に首を傾げながらも、チェギョンはシンの金で買ってきたニャンドエイドをありがたく思い
傷口に貼った
一方・・・チェギョンを乗せた車が急発信して、その場に取り残されたガンヒョンは一人慌てふためいていた
『チェギョン・・・一体どこに?』
するとシンの車の横に停まっていたスポーツカーからギョンが顔を出す
『イ・ガンヒョン・・・送っていくから乗って♪』
『結構よ。イ・シンはチェギョンをどこに連れて行ったの?』
『ん?家まで送り届けただけだよ。心配ないよ。』
『本当に?』
『本当だよ。だから車に乗ってよ。』
『乗らないわよ、アタシの家はすぐ近くなの。徒歩圏内よ。』
『でも~~女の子がこんな時間に一人歩きは危ないよ。』
『アンタみたいなのが一番危ないのよ。とにかくね・・・女ならだれでもアンタ達みたいな御曹司に
のぼせ上がると思ったら大きな間違いよ。じゃあね!』
踵を返し歩いて行ってしまったガンヒョン
『ちょっと待ってよイ・ガンヒョン!!」
ギョンは慌てて後を追いかけたが、駐車場を出た時にその姿は見えなくなっていた
その夜・・・帰宅した頃シンの携帯にギョンからの着信があった
『なんだ?ギョン・・・』
『チェギョンは送れたのか?』
『あぁ送ってきた。近くまでな・・・』
『いいな~~~~!俺なんかさ送るって言ったのに、無視された。』
『手厳しそうなタイプだからな。イ・ガンヒョンは・・・』
『なあシン・・・また食事に行かない?今度は俺が奢るからさ・・・』
『あぁ?あぁ構わないが・・・』
『イ・ガンヒョンに逢えるなら少々味に不足があっても我慢する!』
『くっ・・・相当ご執心だな。』
『とにかくチェギョンからガンヒョンのスケジュール聞き出しておいて。』
『くっ・・・わかった。』
こうして三日と開けずにシンとギョンのファミレス通いが始まるのだった
そしてイ家では・・・ドリンクバーコーナーの虜になったミンが、翌日には各業者を呼び出して
最高級機種を物色をしていた
イ家にふさわしく味にこだわった最高級のドリンクが楽しめる機械を、メイド全員に試させ吟味した
業者側も財閥であるイ家に自社の機械が置かれるのは非常に名誉なことだ
この契約が結べれば上客が増えるのは間違いない
必死になって価格競争をし、ミンはその中で一番気に入った機械をあり得ない価格で
イ家に設置することになった
イ家にはそれから程なくしてドリンクバーコーナーが設けられ、それを満足げに見ながらミンは一人呟いていた
『くぅ~このドリンクバーはお味だって侮れないのよ。チェギョンちゃんに見せたいわ~~♪
シン・・・またガーデンパーティーを開かないかしら?
あ~でもぉ・・・おバカな女子大生はシャットアウトしないと・・・鬱陶しくて仕方がないわ。
何かいい案はないかしら・・・』
一人思案するミン・・・必死に頭を捻ってあることを思いついた
シン君とギョン君がチェギョンとガンヒョンに近づきつつあります。
ミン様も早速ドリンクバーをご購入(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ミン様の計らいで、何か楽しいことが起こりそう~♪
荒れ模様のお天気です。
蒸し暑かったのに…現在涼しい風が吹いています。
窓…全開よ。エアコン消しちゃった。
皆様・・・体調にはくれぐれもご注意くださいね。