それは・・・私が大学に入学し夏休み直前の出来事だった
授業とサークルとバイトと
忙しくも充実した日々を過ごしていた私の日常は・・・
その日を境に一転した
『チェギョン・・・お腹もいっぱいだけど、ドリンクのお替りしよう。』
『うん~私、次はイチゴラテにしようっと~♪』
中学からの腐れ縁・・・いや大親友のイ・ガンヒョンと、学校内のカフェで昼食を済ませたチェギョン
二人は意気揚々とドリンクバーで次なるドリンクを注ぎ、席に戻ろうとしていた
『全くさ~あの教授ったら宿題多すぎでしょ?』
『ホントよね。大学生にもなってあの量はあり得ない~~!』
うんうんと頷きながらチェギョンは後ろ向き歩きガンヒョンと向かい合った時だった
『あっ・・・危ない!』
ガンヒョンはカフェの入り口から入ってきた男子学生に気が付き、咄嗟にチェギョンを引き寄せ居ようとした
だが・・・それは一歩遅かったようだ
<どんっ!>
<バシャーーーッ!!>
チェギョンは背の高い男子学生にぶつかり、手に持っていたイチゴラテをその学生の洋服に
ぶちまけてしまったのだ
『あっ・・・』
目の前にイチゴラテを被った男子がいることに動揺し、チェギョンはひたすらペコペコと頭を下げた
『ごっ・・・ごめんなさい。本当に申し訳ないっ!』
すると間髪を入れず、イチゴラテの匂いをぷんぷんと漂わせた学生の怒声が響いた
『ここは子供の遊び場か?芸大生ともあろう者が学内でこんなふざけた真似をするなんてけしからん!』
『あ・・・本当にごめんなさい。弁償させていただきます。』
カッチリとスーツを着こなした男子学生だったので、チェギョンはてっきり先輩だと勘違いをした
だがそのぶつかった男の隣にいた男が呆れたように言った
『聞いたか?シン・・・。アルマーニャの一点ものを弁償するだってさ~♪
無理無理・・・アンタの一年間のバイト代でも、買えない貴重な品なんだぜ。』
『えっ?』
驚いたチェギョンは、そのアルマーニャとやらのスーツから視線を上げていった
(あっ!この人知ってる。確か・・・入学式の時に新入生代表の挨拶した人じゃなかった?
アルマーニャの一点ものって・・・そんなに高いの?)
てっきり先輩だと思っていた男子学生が同級生だと知って、チェギョンは思い切って交渉してみる
『弁償ができないなら・・・どうしたらいいですか?』
『金の問題じゃない!これはもう二度と手に入らない貴重な品なんだ。
お母様がわざわざ海外で買い付けてきてくださったものだ。その大事なものを・・・』
(お母様だって!こいつどんだけお坊ちゃんなの?しかし厄介なことになったなぁ・・・)
『だjから弁償はできないんでしょう?だったら私はどうしたらいいですか?』
男子学生は意地悪そうに口角を上げると、チェギョンに言い放った
『そうだな・・・だったらこれから一年間、俺のしもべになって貰おうか。』
横にいた男はその男に納得がいかないとばかりに横やりを入れた
『シン!何言ってるんだよ。こんな貧乏くさい女を一年間しもべにしたって、
アルマーニャの一点ものに敵うわけないだろ?』
『くくっ・・・あぁいいんだ。別に金銭で返済してほしいわけじゃない。ただの退屈しのぎさ。どうする?お前・・・』
問い掛けられたチェギョンは、即座に頷いた
『じゃあそれで・・・』
同じ大学の学生に借りを作るなんてまっぴらご免のチェギョンだった
(お金を要求されたわけでもないし、ちょろいちょろい~♪)
そうしてシン・チェギョンとイ・シンは互いの携帯データの交換をし合うのだった
しかし・・・ちょろいと思っていたチェギョンは、アルマーニャのスーツの賠償に
とんでもないことを引き受けてしまったことを知るところとなる
(ちょっとぉ~なんで休み時間の度にコンビニに走らせるのよ~~!)
しかも買って来いと命じられた物は、校内の売店にも売っていそうな物ばかり・・・
明らかにチェギョンはイ・シンの≪退屈しのぎ≫のおもちゃ≫となっていった
そんな日々もきっと夏休みに入れば静かになる・・・そう思っていたチェギョンだったが大きな間違いだった
夏休みに入ったある日、シンからの電話を受けたのだ
『シン・チェギョン・・・明日俺の家で友人を招いたパーティーがある。お前・・・手伝いに来い。』
『えっ?でも私バイトが・・・』
『おい・・・お前のバイトスケジュールくらい、俺は知ってるんだぞ。明日は確か休みの筈だよな?』
『(バレたか・・・)あ・・・そっか。明日はお休みだった。わかった行くよ。』
しもべの立場としては命令に背けない
『俺の家わかるか?高級住宅街の一番大きな家を目指せばそこが俺の家だ。』
『(それ…自慢?)あ~じゃあきっと迷わないね。時間は?』
『10時からだ。送れずに来いよ。わかったな。』
『了解=!』
翌日・・・チェギョンは愛用の自転車に乗って高級住宅街を目指した
バスで行くことも考えたのだが、高級住宅街にバスなど走ってはいない
しかも緩い上り坂を永遠に上っていく高台にある高級住宅街
夏の焼けつく太陽がチェギョンの肌を焦がす
必死の思いで上り切ったその先に見えてきた一番大きな家の門扉・・・
『でかっ!』
門扉の前で表札を確認したチェギョンは、インターホンを押した
<ピンポーン♪>
『どちら様?>
『あ・・・私、今日のパーティーのお手伝いに来ましたシン・チェギョンと申します。』
『はいはい、伺っております。中へどうぞ。』
重厚な門扉が音を立てて開いていく
そこを恐縮しながら、自転車に乗ったチェギョンはイ家の敷地に入っていった
『遠い・・・』
門扉からかなり長い距離を走った時、漸くお屋敷が見えてきて安堵したチェギョンは木陰に自転車を止めると
鍵を掛けた
『誰も盗まないだろうけど一応ね~♪』
そしてガーデンパーティーが開かれている場所に向かって走る
『あ・・・あの~遅くなりました。』
『シン・チェギョン・・・15分遅刻だ。キッチンに行って肉を持ってこい。』
『は~~い!』
ひとまず任務遂行の為、大きな屋敷の勝手口に走っていったチェギョン・・・
勝手口を開けそこにいた女性に声を掛けた
『おばさ~~~ん、お肉を持ってこいと言われたんですが・・・』
『(お・・・おばさん?このアタクシをおばさんって呼んだ?この子・・・)お肉?わかったわ。』
奥からバーベキュー用の肉を皿に載せチェギョンの元に運んできた女性
『これを運んでいただける?』
『解りました~♪』
『あ・・・ところであなたはお友達でしょう?一緒に召しあがらないの?』
『あ・・・私はここのお坊ちゃんの≪しもべ≫なんですぅ。アルマーニャのスーツにイチゴラテぶっかけちゃって・・・
その賠償の為に・・・』
『(まぁ!あのイチゴラテの娘さん?)そうなの。じゃあ・・・皆さんと一緒に食事はしないの?』
『するわけないですよぉ。大丈夫です。コンビニでおにぎり買ってきましたから~♪』
『そうはいってもこの暑さじゃあ傷んでしまうわ。後て手が空いたらここにいらっしゃい♪』
『へっ?』
『お昼用意しておくわ。』
『でもぉ・・・私は≪しもべ≫なので、手が空くかどうか・・・』
『大丈夫よ。みんなお腹が一杯になれば、きっと手が空く筈よ。しかし・・・災難だったわね。』
『弁償するって言ったんですけどぉ・・・私のバイト代じゃあ払いきれないって~~。
でも本当にあのスーツはそんなにするのか・・・自分でも疑問なんですぅ。
私にはそこら辺の吊るしのスーツと変わんなく見えたんですよぉ・・・』
『(まっまぁ~この子ったらなんて大胆な。あのスーツがいくらしたか・・・言ったら腰を抜かしそうね。
言わないでおいてあげるわ。しかし・・・なかなか肝の据わった子だわ。気に入っちゃった~おほほほほ)
スーツなんて似たり寄ったりだものね。じゃあ後でいらっしゃい。』
『はい~~♪』
まさかこの人がイ家の女主人であるとは知らず、チェギョンはこの家の使用人だと思って軽口をたたいたのだ
きっと後日その真実を知った時には、硬直するに違いない
大変お待たせいたしました。
短編で終わるかどうかわからないので
書庫作ってみました(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
今回ぶっ飛びミン様が
活躍してくれそうですよ~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
台風が来ているそうで・・・
どうか被害がないようにと祈るばかりです。
どうぞお気を付けくださいね❤