その日の夕食時、チェギョンはシンに告げた
『シン君・・・今夜のお庭のお散歩・・・無理みたい・・・』
『あぁ?一体なぜ。何か急用でもできたのか?』
宮に於いてシンの知らないチェギョンの急用などあり得ない
『いや実はさ・・・帰ってきた時ついうっかり、チェ尚宮さんに学園祭のミスコンの話を愚痴っちゃったんだよね。
そうしたら・・・今夜からダンスのレッスンをするって・・・』
『あぁそういう事か。だったら致し方ない。』
『でもさ~私がミスに選ばれるなんてありえないのに・・・チェ尚宮さん、張り切っちゃってるの。』
『ダンスは覚えておいて損はない。これからだって俺と踊る機会はいくらでもあるしな。』
『そっか~じゃあ・・・近い未来のために頑張って覚えようかな。』
『それがいい。俺も参加しようか?』
『いや・・シン君は執務だって忙しいから参加しなくていいよ。
ちゃんと踊れるようになったら、パートナーになって。』
『わかった。じゃあ頑張れよ。』
『うん。』
食事が終わっていつも夜の訓育を受けていた時間に、チェギョンはチェ尚宮から指示された格好をすると
部屋から出ていく
(いくら基礎レッスンからとはいえ、なぜジャージ?)
宮でこんな格好をしているのは自分だけだと少し羞恥しながら出ていくと、チェ尚宮は女官服のまま部屋の前で
待っていた
『チェ尚宮さんは制服なんですか?』
『はい。私は指導するだけですから・・・。では妃宮様、参りましょう。』
『はい。』
チェ尚宮に連れて行かれた迎賓館
そこはダンスのレッスンの為に煌々と明かりが灯されていた
『チェ尚宮さん・・・私一人のレッスンにこんなに明かりを灯しては、電気代の無駄では?』
『いいえ妃宮様、雰囲気から慣れていただかないとなりませんので・・・』
雰囲気に慣れろといいながら、まず最初に始まったのは体操からだった
『妃宮様・・・運動のご経験は?』
『お恥ずかしい話ですが・・・ありません!』
『承知いたしました。』
身体を解す為に体操をさせられる羽目になったチェギョン・・・
煌々と明かりの灯る迎賓館で、体操するチェギョンの姿はなかなかユニークだったらしい
その噂を耳にした皇太后と皇后は、邪魔にならない様磨き上げられた窓から中を窺っていた
『こうしてみるとチェギョンは、皇太子妃というより普通の女子高生だのぉ。』
『そうですわね皇太后様。ですが可愛いではありませんか。太子の為にあんなに必死になって・・・。
しかし妃宮・・・身体が固すぎるのでは?おほほほほ~♪』
『あれでは筋肉痛になりそうだのぉ・・・』
『はい。きっと筋肉痛になるに違いありませんわ。』
宮に嫁いでから訓育から始まりダンスのレッスンまで・・・チェギョンの苦労は続いていた
『ひぃ・・・チェ尚宮さん、手加減なしだから身体が痛~い!』
東宮にようやく戻ってきたチェギョンをシンは出迎えた
『チェギョン・・・その格好は?』
『あ・・・まだダンスのレッスンにまで行きつかないの。体操からスタートだよ。身体が痛くって・・・』
『くっ・・・マッサージしてやろうか?』
『あ~~いい!汗臭いから部屋に戻ってシャワー浴びるね。じゃあシン君、おやすみ~♪』
『っつ・・・』
もっと夫婦間のコミュニケーションを深めたいシンだったが、チェギョンの女子としての恥じらいがそれを阻んだ
もちろんマッサージを受けたことはあっても、シン自身が人に施したことなど一度としてない
(折角マッサージしてたろうと思ったのに・・・)
仕方なく部屋に戻っていったシン
その一方でチェギョンは部屋に戻るなりシャワー室に直行し、その後身体中に湿布を貼るという情けない姿で
すぐに眠りについた
それから程なくしてチェギョンが夜、迎賓館でダンスの練習をしているという噂を聞きつけた王族会の娘達は
宮殿への入宮許可を得て迎賓館に向かった
『あ・・・本当fだわ。妃宮様ダンスの練習をなさってる。』
『殿下はお忙しいのかしら。ここにいらっしゃらないなんて・・・』
『きっと執務なさってるんじゃないかしら。』
『噂によると・・・芸校のミスにノミネートされたとか・・・』
『あ~でも、強敵に舞踏科のプリマドンナがいるみたいよ。』
『妃宮様・・・大変ね・・・』
『あなた確か、芸校にお友達がいらっしゃらなかった?』
『ええ。その方達にはもう逢って妃宮様を推しておきましたわ。』
『私もよ。チェ尚宮さんと二人では、なんだか盛り上がらないわね。』
『じゃあ・・・お邪魔しようかしら?』
『そうね。私達で盛り上げましょう。』
王族の娘達の中には、命運をチェギョンに握られている者もいる
迎賓館の中に流れる音楽が途切れた時、娘達は中に入って行った
『妃宮様こんばんは。』
『私達・・・妃宮様のレッスンの応援に参りましたの。チェ尚宮さん・・・ご一緒しても宜しいですか?』
『構いません。妃宮様のパートナーをしてくださる方はいらっしゃいますか?』
『私がさせていただきます。』
ジャージ姿のチェギョンとチョ・ユラが踊る周りで、他の娘達もダンスを楽しんだ
翌日からチェギョンはチェ尚宮からダンスにふさわしい格好を許され、ヒールの低い靴から徐々に慣らすよう
訓練された
もちろん王族の娘達は、まるで課外活動のように毎晩集いダンスを踊るようになった
チェギョンも苦しい基礎レッスンだけではなく、王族の娘達の美しい動作を学びながら
ダンスを楽しめるようになっていった
そうしていよいよ最終段階という時・・・シンは執務の合間を縫って迎賓館に顔を出すようになり
チェギョンのダンスパートナーを務めるようになった
(あ~やっぱり、チェ尚宮さんやチョ・ユラさんと違って、シン君は背が高いから安心感がある~♪
それに・・・なんだか意識しちゃう。)
背中に回された手は力強くチェギョンをリードする
『ずいぶん上手になったな。これもチェ尚宮や王族の娘達のおかげだな。』
『うん。本当にありがたい。』
王族の娘達を交えこんな時間が過ごせるのも、チェギョンが下した温情の賜物
今は決して≪命綱を握られている≫からではなく、人間としてのチェギョンを心から応援している王族の娘達だ
同じようにギョンやガンヒョンの作戦も校内中を駆け巡り、また校外にも広まっていった
決戦の学園祭は・・・もう目の前だ
各地で雨の被害が出ていますね。
観光地など酷いことになっていて
テレビを観て驚くばかりです。
この辺りは今夜以降お天気が回復する予報ですが
皆様お住まいの地域はいかがでしょうか。
これ以上被害が拡大しないことを願っています。