その日の授業が終わり憂鬱な気持ちで美術科の棟から出て行ったチェギョンは、
いつも公用車の中でチェギョンが出て来るのを待っているシンが、わざわざ車から降り校舎の入り口で
待っていたことに相当驚いた顔をする
『シン君!』
『チェギョン・・・今日は少し遅かったな。』
『えっ?そんなことはないと思うけど・・・』
『いや、いつもより遅かった。さぁ東宮に戻ろう。』
『うん♪』
歩き出そうとした時、シンはチェギョンのカバンを取りあげると自分の右手に持った
『えっ?シン君?』
『お前のカバン・・・重そうだから・・・』
そう言いながらシンの空いている左手はチェギョンの背中に添えられた
『あ・・・あのっ///』
『なんだ?』
『あっと・・・えっと・・・ここは学校・・・』
『あぁそれは良く知っている。』
『背中の手・・・それにカバン・・・』
『何かおかしいか?夫だったら妻をエスコートするのは当然だろう?』
『///はいぃ~~///』
チェギョンは心の中で≪絶対におかしいよ≫と思いつつも、それ以上口答えすることなくシンに従った
『そうだ。今夜夕食の後庭を散策しないか?』
『えっ?夜のお散歩?』
『あぁ。夜は散歩したことがないだろう?』
『う・・・うん///』
シンがチェギョンに話しかける度に、校内の女生徒たちは悲鳴を上げた
その悲鳴がシンの人気を物語っている
(どう考えてもおかしい・・・)そう思いながらも、シンに振り回されっぱなしで乗り込んだ公用車
東宮に向かって車が走り出した時、チェギョンは改めて問い掛けた
『ねえシン君・・・一体どうしたの?何かあった?』
『あぁ?』
『今まで学校であんな態度取ったことないよ。』
『別になにもないが?』
『だったらやめた方がいいよ。女子の反応見たでしょ?明らかにショック受けてた。
こんなことじゃあシン君・・・ミスターになれないよ。』
『くっ・・・別にミスターになどならなくていいんだ。』
『え~~~っ?一国の皇太子がノミネートされたにも拘わらずミスターになれなかったら、笑いものでしょ?』
そうシンに対していいながら自分はどうなのだ?とチェギョンは自分自身に問い掛ける
落選するのは間違いないにしても、あまり惨めな結果に終わりたくないと願うチェギョンだった
皇太子夫妻の下校の様子を見ていたギョンは、≪シンのやつ・・・早速実行に移してる~♪≫と口角を上げながら
特進クラスの生徒を捕まえてこっそり耳打ちをする
『ねえねえ・・・あれ見てよ。教室にいる時とシンは別人だろ?』
『そうだね。殿下…別人のようだね。』
『ここだけの話なんだけど~お妃選考会でチェギョンにb一目惚れしたらしいんだよね。シン・・・』
『ってことはシン・チェギョンが殿下の望んだ人って事?』
『そうなんだよ。どう見ても好き好きオーラ全開じゃん。』
『へえ~~シン・チェギョン・・・いや妃殿下は凄いな。あの皇太子に一目惚れされるなんて・・・』
ギョンの言っていることはあながち嘘ではない
正確には3歳の頃に一目惚れしその想いを貫いた結果なのだが、ギョンは敢えてそんな噂を流した
そして・・・≪ここだけの話≫というのは尾ひれが付いて広まるものだ
『皇太子がシン・チェギョンじゃなければ結婚しないと駄々をこねたらしい・・・』
『すごい女だな。シン・チェギョン・・・』
『だけどアイツ、なにかにつけて食って掛かるクレーマー女だったよな。』
『今は違うだろう?きっとシン・チェギョンも恋をして、変わったんだな♪』
『よく見ればさ~シン・チェギョンって可愛くね?』
『あ~~俺もそう思ってたんだ。あのキツイ性格さえなければ付き合いたいって・・・』
『今となっては高嶺の花だな。』
『確かにな~~ははは~~♪』
『ミスコン・・・お前はヒョリンに入れるつもりだろう?』
『う~~ん・・・よく考えてみようかな。なんたってシン・チェギョンは皇太子妃殿下だしな~~♪』
ギョンの作戦が着々と進行している頃、同じようにガンヒョンも作戦に取り掛かっていた
『アタシ・・・皇太子夫妻と仲いいじゃん。』
『うん。ガンヒョンが羨ましいよ。』
『アタシだけが知っている内緒の話があるんだけど~~♪』
『えっ?内緒?なになに?聞きたい~~♪』
内緒話程人の探求心を煽るものはない
大概の人間はその話に飛びつくだろう
『アタシ・・・お妃三次選考会にチェギョンの付き添いでついていったのよね。』
『うんうんそれで?』
『会場で大変だったわよ。皇太子からの熱烈アプローチ。』
『えっ?あの殿下が?チェギョンに熱烈アプローチしたの?』
『そうよぉ・・・チェギョンとじゃなきゃ結婚しないって大変だったの。』
『じゃあチェギョンは殿下に根負けしたって事?最初はとんでもないって息巻いてたよね?』
『最初はね・・・でも今じゃチェギョンも皇太子が大好きよ。』
『そうだよね~あのチェギョンが好きじゃない人との結婚を決めるなんてありえない。』
『似合いだと思わない?あの二人。』
『思う思う~~♪チェギョンもずいぶん皇太子妃らしくなってきたしね。』
『はぁ・・・アタシはあの二人が後夜祭でダンスを踊るの・・・みたいんだけどさ・・・』
『そうだね。私も殿下と踊るのはチェギョンがいいな。なんたって夫婦だしね。』
そしてそんな内緒話は確実に女生徒の間でも広まっていく
『ねえねえ・・・お妃選考会の時、殿下がチェギョンにプロポーズしたんだってよ。』
『え~~~っ?そうなんだ~~。あの殿下を射止めるなんてシン・チェギョンってすごいよね。』
『うん。私達じゃあり得ないでしょ?だって普段の殿下って恐れ多くて声も掛けられない。』
『さっきの下校時の二人を見た?』
『見てたよ~。もう蕩けそうな笑顔をチェギョンに向けてたね。』
『あんな笑顔で見つめられたい~~♪』
『きゃぁ~~~❤』
瞬く間に皇太子殿下イ・シンを虜にするシン・チェギョンの噂は広まり、チェギョンには女生徒の羨望の眼差しが
注がれる存在となっていった
そんなことは何も知らないチェギョンは、東宮に戻り部屋に入って行った時今日起こったことをチェ尚宮に
ぼやいていた
『チェ尚宮さん・・・今日大変なことが起こっちゃったんですぅ。』
『妃宮様・・・一体どうなさったのですか?』
『学園祭のミスコンにノミネートされてしまいました。』
『まぁ!それはようございました。』
『ようございませんよぉ・・・』
『妃宮様はきっとミスに選ばれることでしょう。ミスとミスターは・・確か後夜祭でダンスを披露するんでしたね?』
『よくご存知ですね。』
『ええ。実は私も韓国芸術高校の卒業生ですから。』
『えっ?そうなんですか?』
『はい。とても懐かしゅうございます。私も殿方と一緒に踊りました。』
『ちぇ・・・チェ尚宮さん、ミスに選ばれたのですか?』
『ふふふ・・・過去の栄光です。妃宮様、そうと決まりましたらダンスのレッスンをなさいませんと・・・
今夜から就寝前の一時間、ダンスのレッスンをいたしましょう。』
『いえ・・・そんな必要は・・・』
『妃宮様・・・弱気になってはいけません。それにいずれにしてもダンスは習得しなければなりません。
よろしいですね。今夜から早速始めましょう。』
『は・・・はいぃ~~!』
チェ尚宮の迫力に負け、その日からチェギョンはチェ尚宮にダンスの手ほどきを受けることとなった
雨ですね・・・
台風が接近している地域の皆様
どうかお気を付けくださいね。
すっかり学園祭のミスコンに振り回されるチェギョンです。
ギョン君とガンヒョンの流した噂は
校内を駆け巡っていますよ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!