暑い暑い夏が終わりを告げ、皇太子夫妻は新学期を迎えようとしていた
婚礼後ひたすら訓育に勤しんだ妃殿下チェギョンは、たった一泊の夫婦同伴公務を心の糧にし
残りの夏休みを宮の中で過ごした
公務の宿泊先で、≪一緒に寝る!≫と棘を出しシンを困らせたチェギョンだったが
どうやら夫婦間で≪寝る≫の意味は全く違っていたようだ
チェギョンは宮に戻ってから落ち着きを取り戻し、棘を出すこともなく訓育を一通り終えた
そして夜はシンと共に勉強会の名目で、恋人のように充実した時間を過ごした
新学期・・・皇太子夫妻が登校していくと、やはり正門の前には祝福ムードの近隣住民が集っていた
シンとチェギョンは祝福してくれる近隣住民たちに微笑みながら手を振った
『ではチェギョン、また昼休みに・・・』
『うん。シン君あとでね♪』
イギサに護衛されながら美術科の棟に入って行ったチェギョン
婚礼の儀からもう一カ月ほども経つ
さすがに生徒たちはそれほどの騒ぎはなく、日焼けした眩しい肌を見せつけて夏の思い出話に花が咲く
だがそれでもごく親しい友人たちは祝福ムードだった
『チェギョンおはよ~♪結婚おめでとう~♪』
『おはよう♪どうもありがとう~♪』
そのうちにはガンヒョンも登校し、クラスの中は久し振りに逢う顔で溢れて行った
そんな時・・・ヒスンがぽつんと呟いた
『ミランは・・・やっぱり来ていないね。』
『ミラン?ミラン・・・どうかしたの?』
『チェギョン・・・アンタは知らなかっただろうけど、ミランが大変なことになったのよ。』
ガンヒョンは周囲に聞こえないよう配慮しチェギョンに言った
『夏休み中に妊娠が発覚しちゃって…大騒ぎだったのよ。』
『えっ?ミランが妊娠?』
『ええ。両家の間で大騒ぎの末・・・ミランは学校を辞めて子供を産むことにしたんだって。』
『でもあと半年で卒業だよ。学校・・・辞めなきゃいけなかったの?』
『アンタね~~世間知らずにもほどがあるわよ。高校生が妊娠したなんて発覚したら
風紀を乱すって何らかの処分になるに決まってる。』
『ミランが結婚しても・・・ダメなの?』
『アンタ生徒手帳読んでないの?生徒の結婚は認められないのよ。』
『じゃあ・・・私は?私は退学にならないよ。』
『アンタは特別なケースよ。もちろん相手が皇太子だから認められたんだろうけどね。
妊娠したのがアンタなら、学校側も両手上げて喜ぶかもしれないけど・・・
ミランは無理ね。』
『そうなの?ミランが…可哀想。』
『仕方ないわよ。自分たちが招いた結果だもの・・・。ところでアンタはどうなの?
深夜よくアタシに電話かけてきてるけど・・・』
『あははは~♪』
(実はさ・・・ガンヒョン、私妊娠を心配されるようなことないのよぉ~~~!
とはとても言えないよなぁ・・・
宮はなんでも儀式化されるし、唯一一緒に寝た公務の時は・・・あぁそうだ。私が爆睡したんだ。)
クラスメートのミランが学校を辞め、子供を産むことを決心したと聞いて・・・チェギョンはミランの幸せな未来を
祈らずにはいられなかった
ホームルームが始まって、案の定ミランが学校を去ったことを担任教師から聞かされたクラスメート達
辞めた理由について知っている者は複雑な心境になり、知らない者はその理由についてあれこれ噂をしていた
チェギョンたちはその件に関して口を閉ざし、噂している生徒と一線を引いた
その日の昼休み、なぜか相変わらず食事の席に一緒にいるギョンとガンヒョンだった
四人で宮廷弁当を囲みながら、夏の思い出を語り合う
『ガンヒョン・・・シン君といった公務先の国営公園の噴水がね~夜になるとライトアップされて
すごく綺麗なんだよ。シン君の提案なんだって。』
『国営でそんなところがあるの?やるわね皇太子・・・』
『まあな。宿泊先のホテルのレストランでもその光景が見られてすごく綺麗だった。』
『え~~っ?シン…それはどこだよ。教えてくれよ。』
『あぁ。』
シンは国営公園のパンフレットと宿泊したホテルのパンフレットをギョンに手渡した
『おぉ~~♪これは素晴らしい…是非行かないとね。ガンヒョン・・・大学の受験はもうすぐだろう?
クリスマスにでも行っちゃう?』
『あはは~~ギョン君残念だけど、冬は噴水が凍っちゃうからライトアップはないんだって。』
『ちぇ~~っ。じゃあ春になったら行こうよガンヒョン。このホテルのスイート予約するからさ~♪』
『っつ・・・アンタは呑気でいいわね。』
その時チェギョンが満面の笑みで言い放つ
『私達も~春にお忍びで行くんだ~♪』
『こ・・・こらっチェギョン・・・』
『え~~っシン達も行くつもり?じゃあ・・・日程合わしちゃおうかな~♪
ところでさシン君・・・この豪華なホテルにチェギョンと同室だったわけ?』
『あ?あぁ・・・まぁ・・・』
口ごもるシンをチェギョンは突いた
『同質って言っても部屋の中で別々で~~!』
『えっ?嘘だろ?』
『本当だ・・・』
『じゃあシン・・・まだ?』
『あ?あ・・・///それは///』
『でも一緒に寝たもんね~♪』
チェギョンの暴走する発言にシンは慌てふためいた
『チェギョン・・・誤解を招かないようにちゃんと言えよ。あれは寝たんじゃなくて、一緒に眠っただろ?』
『えっ?同じじゃん~~♪』
『同じじゃない!』
それを見ていたギョンとガンヒョンは、なんとなく皇太子夫妻の現在の状況を察したようだ
(はは~~ん・・・シン君そうなんだ~なんて可哀想な。
つまり宮を出てお泊り先でも我慢させられたのか?あ~~皇族なんて面倒くさくて嫌だね。)
(ちょっと待ってよ。今の皇太子のセリフ…この二人まだ本当の夫婦になってないんだ。
だからチェギョンは頻繁に電話を掛けてきたのね。そうよね・・・皇太子と一緒に寝てたら
電話なんかかけてくるはずないもの・・・。なんだか少し可哀想な二人。)
夫婦になっても自由に愛し合うことができない二人
そんな二人がギョンとガンヒョンは、少し哀れに思えた
その日東宮に戻った二人・・・シンは着替えを済ませ執務室に入り、チェギョンは着替えると
皇太后の元へ向かった
訓育が終了するまではなかなか皇太后の元へも訪れることができなかったチェギョンは、
皇太后とお茶を飲みながら夕食前のひと時を楽しく過ごす
『妃宮や・・・宮には慣れたか?』
『はい!もうすっかり慣れました。』
『太子とは仲良くしておるのか?』
『はい!シン君はとても優しく接してくれます。勉強を教えてくれるときは鬼のようですけど・・・。』
『そうか。夫婦仲が良いのは良いことだ。』
『でも・・・ひとつ腑に落ちないことがあるんです。』
『なんだ?なにか嫌なことでもあるのか?』
『殿下と夜一緒に勉強するのは許されたんですけど、未だに夜は見張りが・・・』
『おほほほ~そうだな。確かに夫婦であるというのに制約があって、色々と煩わいところだ宮は・・・
だが皇帝陛下には何かお考えあってのことなのだ。そなたたちが大学生になる頃には、
それも緩和されることだろう。』
『本当ですか?』
『あぁ。だからその時を待っていなさい。』
『はい。わかりました。』
部屋を同室にしてもらえないのは皇帝陛下の考えがあっての事・・・
それはシンとチェギョンの互いに対する想いの温度差が、なくなるのを待っての配慮だった
ムシムシしますね~~!
こう湿度が高いと
怖いのは蚊とGさん・・・
あ・・・むかむかも怖い。
虫は全般に嫌いです~~~!!