滞在先のホテルに到着した皇太子夫妻は、恭しくホテルの従業員に出迎えられ到着が遅くなったことを
心から詫びた後最上階のレストランに案内された
コン内官からホテルに入る時間が遅くなることの理由について聞いていたホテル側は、
二人を一番夜景の良く見える国営公園側の席に案内した
席に着いた二人は外の夜景を眺め、再び感嘆の声を上げた
『シン君・・・ここからも噴水のイルミネーションが見えるよ。』
『本当だ。高い場所からだとまた違った趣がある。』
『すごく綺麗ね~♪』
宮廷の料理人監修の元作られた料理が次々と運ばれてくる
いつも東宮で食べている料理とは一風違う美しく盛りつけられた料理に、二人は一日の疲れを忘れ
夢中になって食事をする
『あの噴水を見ながら食事ができるなんて最高!きっとこの時間のレストランはすごく混雑するんじゃ?』
そう思って辺りを見渡したチェギョン
だが・・・周囲には皇太子夫妻に仕える者とレストランのスタッフしかいない
シンはお茶を運んでくれたウエイターに問い掛けた
『普段この時間帯は混雑するんじゃないのですか?』
『あ・・・はい。ですが本日は皇太子ご夫妻がお越しになるということで、宿泊されるお客様は夕食の時間を
ずらしていただいております。』
『そうですか。それなのに夕食の時間に遅れるなんて申し訳なく思っています。』
『いいえとんでもございません。あの噴水は皇太子殿下がプロデュースされたと伺っておりますから
当然の事でございます。』
ウエイターが去って少し経った頃・・・噴水のイルミネーションは一際華やかに輝き・・・そして消えた
『あ・・・終わっちゃった。』
とても名残惜しそうに夜景を眺めるチェギョンに、シンは微笑んだ
『国営公園も閉園の時間だからな。冬は噴水が凍ってしまうから国営公園の閉園時間は早いんだ。』
『そうなんだ。きっとみんな名残惜しい気持ちで帰っていくんだろうね。』
『あぁそうだな。今のお前と一緒だ。』
チェギョンの寂しそうな顔を見ているのが辛くなったシンは、近くにいたウェイターに声を掛けた
『そろそろ・・・デザートをお願いできますか?』
『はい、かしこまりました。』
シンのその言葉を聞いたチェギョンは再び目を輝かせ問い掛けた
『デザート?♪』
『あぁ。チェギョンの好きそうな物がやって来る。』
待つほどもなくワゴンに載せられ目の前に置かれた皿には、フワフワのパンケーキが載っていた
『わっ♪パンケーキだ~~♪』
『あぁ、ここのパンケーキはとても有名らしい。美味しいから食べてみよう。』
『うん~~♪わっ・・・見て見て~~このフワフワ感。わぁ~口の中で蕩けるよ~♪』
『本当だ。甘さもちょうどよくて軽い口当たりだな。こんなのをお前は何枚も食べたのか?』
『えっ?あ~王族のお嬢様と一緒のお茶会の時?うん。もっと大きなパンケーキだったけどね。あはは~♪
食事でお腹が一杯だったけど、これだったら全部食べられる。幸せ~~♪』
まだまだ花より団子の妃殿下だった
食事を済ませた二人はチェ尚宮に案内され宿泊する部屋の扉を開けた
『リビングルームを挟んで右側のお部屋は皇太子殿下が、左側のお部屋は妃宮様がお使いください。』
そう言ってチェ尚宮は部屋の扉を閉めた
『えっ・・・』
同じ部屋に入って行ったからてっきり同室だと思っていたチェギョンは、呆気に取られて立ち尽くした
そして左側の部屋の扉を開け中を覗き見る
『あっ・・・』
部屋にはセミダブルのベッドが置かれ、どう見ても≪おひとり様専用≫だとアピールしていた
チェギョンは次にシンの部屋に向かい、自分の部屋と全く同じ中の様子を見て徐々に棘が起き上がるのを感じた
<しゅぴーん!>
『ねえシン君・・・私達って結婚したんだよね?公務先まで別々なの?』
『あぁ?まぁ合房の儀式が済んでいない俺達への配慮だろう。』
<しゅぴんしゅぴーん!!>
『でもさ・・・たまには夜遅くまでおしゃべりするとか、一緒に寝るとか・・・してもいいと思わない?』
『あぁ?まぁそれは・・・』
<しゅぴんしゅぴんシュピシュピシュピーーーン!!>
『せめて同じ部屋にベッドがふたつだったら許せるけど・・・部屋の中で別室だなんて~~そんなの嫌だ!』
久し振りに棘を出したチェギョンに、シンは半ば困りながらも微笑んだ
『あぁチェギョンわかったよ。一緒に寝よう。この部屋には誰も入って来られない。お互いにシャワーを浴びて
パジャマに着替えたらリビングに集合だ。それでいいか?』
<しゅるしゅるしゅるしゅる~~♪>
『うん♪なかなかこんな機会ないもんね。一緒に寝よう~~♪じゃあ私~シャワールーム先に使ってもいい?』
『あぁ。』
『行ってくる~~♪』
チェギョンが浴室に消えた後、シンはスーツの上着を脱ぎネクタイを外すとソファーに腰掛け深い溜息を吐いた
チェギョンが一緒に寝たいと言ったことは、本音を言うと嬉しくて仕方がない
シン自身もチェギョンと一緒の朝を迎えたいと願っていた
だが・・・皇帝陛下と交わした約束が立ちはだかる
果たして自分が抑えられるのか・・・愛する人を目の前にしてシンにそんな自信はなかった
程なくして風呂上がりの桜色の頬をしたチェギョンが、リビングに戻ってくる
持参したシルク製の白のパジャマを身に纏い、喉が渇いたのか徐に冷蔵庫を開けた
『あ・・・イチゴ牛乳もフルーツ牛乳も~コーヒー牛乳もないや。』
『くくっ・・・ここに入っているのはミネラルウォーターや缶ジュースの類だろう。缶のカフェオレだったらあるが?』
『ん~~却って喉が渇くかも。お水飲もうっと。』
『くくっ・・・そうしておけ。じゃあ俺はシャワー浴びて来る。』
『うん♪』
浴室に入ったシンは、約束と本能の板挟みになっていた
チェギョンから一緒に寝たい・・・そんな言葉を言われて揺れない筈はない
あまり長く待たせたらチェギョンがまた棘を出すんじゃないかと気が気じゃなく、
いつもより急いで入浴を済ませたシンは、髪を乾かすのもそこそこにリビングに戻っていった
そしてミネラルウォーターのペットボトルを膝に抱えたまま、眠ってしまったチェギョンを目にする
その瞬間・・・シンは陛下との約束とチェギョンとの約束・・・両方を守れることに落胆しながらも安堵する
シンはチェギョンが持っているミネラルウォーターのペットボトルをテーブルの上に置き、
そっとチェギョンを抱き上げた
そして自分の部屋に連れて行くとチェギョンをベッドに横たえた
『ん・・・シン・・・君?』
『あぁ。一緒に寝ような。』
シンの声に安堵したかのようにチェギョンは再び瞳を閉じ、静かな寝息を立て始めた
シンはそんなチェギョンの唇に触れるだけのキスを落とし、気が済むまで愛する人の寝顔を眺め続けた
こうして二人きりで過ごす初めての夜は更けていった
翌朝シンが若干寝不足だったのは・・・言うまでもないだろう
暑い・・・めちゃくちゃ暑いです。
午後からエアコン付けていましたが
もう今は窓全開。
明日は・・・物置の天井にペンキ塗るのよ、
私・・・干からびるかも(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!