公園の管理責任者に案内され、式典の会場に向かった皇太子夫妻
公園内の式典会場には溢れるほどの人が集まっていた
この時の為に作られたステージに二人は上がり、シンはマイクの前に立った
『皆さん・・・この国営公園がオープンして本日で三年になります。
こんなにたくさんの皆さんが、集まってくれることを心より喜ばしく思います。
ここでひとつ・・・感謝の言葉を言わせてください。
この公園は国の所有です。オープン以来、近隣の方がこの公園の美化に努めてくれていると
管理責任者から聞きました。心から感謝いたします。
入り口から中の様子を見て参りましたが、ゴミが落ちていることなどなく・・・とても美しく
整備されていました。
これもひとえに近隣の有志の方の努力の賜物だと思っています。
これからもこの公園が皆さんの憩いの場であるようにと願っています。
三回目のセレモニーに今年も参加できてとても嬉しく思います。
私事ですが・・・この夏婚姻いたしました。今日が妃宮を同伴しての初めての公務です。
皆さんにご紹介させていただきます。シン・チェギョンです。』
シンはマイクの前から一歩退き、チェギョンを前に出した
前日チェ尚宮から・・・
≪妃宮様・・・恐らく殿下はご自身が挨拶された後、妃宮様をご紹介なさるでしょう。
念の為ご挨拶の言葉をお考え下さい。≫
そう伝えられていたチェギョンは、大勢の民衆の前でも臆することなく一歩前に出てマイクに向かった
『皆さん、こんにちは。民間出身のシン・チェギョンと申します。
皇室に嫁いでまだ日が浅く、毎日覚えることが多い私ですが・・・一日でも早く皇太子殿下の支えになれるよう
努力してまいります。今後メディアに顔を出すことも多いかと思いますが、どうか温かい目で応援していただけると
嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。』
シンに倣って会釈をしたチェギョンは、民衆に向かって穏やかに微笑んだ
ついこの間まで友人と屋台のトッポギを食べていた自分が信じられない想いだった
チェギョンが微笑んだ時・・・民衆の中から次々と拍手が沸き起こった
恐らく自分たちとそう変わらない環境に育ったチェギョンに親近感を覚え、応援したい気持ちになったのだろう
無事式典を終えた二人は、公営施設内のパーラーのフレッシュジュースで喉を潤した
『ん~~♪果物が新鮮だからかな。すごく美味しい~~!天然の甘さでこんなに美味しいフレッシュジュースは
ソウルでもなかなか飲めないよ。』
『そうなのか?・・・確かに美味しいな。』
『うん。でも欲を言えば・・・』
『何か不満があるのか?』
『暑い夏の公園に来るわけでしょう?子供連れもいると思うんだ。
美味しいソフトクリームの販売があってもいいんじゃないかなって。えへへ~♪
だってこんなに熱い太陽の光を浴びながら食べるソフトクリームの美味しさは格別だよ。』
『くっ・・・さすが食いしん坊の奥様だな。いいだろう。企画書を出しておこう。』
『わぁ~い♪』
パーラーを出た二人はイギサに守られながら公園内を散策する
『夏だから春ほど花は咲いていないが、それでも見事だろう?』
『うん。この時期にこれだけのお花が見られるなんてすごいよ。』
時折目についた花の近くに寄り、スマホで撮影をするチェギョン・・・
『今度春にも来てみたいな。』
『あぁ。大学に入ったらまた来よう。』
『本当?』
『あぁ。お忍びでな・・・くくっ・・・』
公にしてしまうとそれだけ民衆も集まってしまう
そうなると警護も万全を期すために、余計人の手を煩わせる
少数人数で密かにやって来ようと目論むシンだった
大人数での公園内の移動・・・日が翳ち始めた頃、シンがプロデュースした噴水に二人は到着した
ふんだんに噴き出す水は夕陽を浴びてキラキラと光り、それは美しい光景だった
『わぁ~見ているだけで涼しげだね。この中に入りたい。』
『くくっ・・・チェギョン…それは一般人でも無理だ。この噴水内には立ち入り禁止になっている。』
『え~~っそうなの?普通の公園の噴水は子供達が水遊びする場所だよ。』
『残念だがここは観賞用だ。』
『そうなんだぁ・・・』
チェギョンの少し落胆する様子に、シンはとっておきの仕掛けを説明することにした
『水遊びはできないが…この噴水には特色があるんだ。』
『えっ?特色?見たところ普通の立派な噴水だけど?』
『いや・・普通御噴水ではない。日が暮れるとライトアップされ、噴水の水量に合わせて色が変化するんだ。』
『えっ?本当?それは是非見なくちゃ♪』
『残念だが・・・もうホテルに入る時間だ。』
『えっ・・・えっ・・・えぇ~~~~っ?そこまで期待させて、見せてくれないなんて酷いよ~~!』
『実は俺も実際に見たことはない。その光の演出を俺がプロデュースしたんだ。』
『見たい見たい!絶対に見たい~~~!』
本音を言うとシンも動画でしか見ていないのだから見てみたい
だが・・・予定を変更すると、滞在先のホテルに迷惑をかける
シンは傍に控えているコン内官に打診してみる
『コン・・・この噴水のライトアップを見てからホテルに戻りたいのだが・・・
ホテル側に夕食の時間を遅らせて貰えるか問い合わせてくれ。』
『かしこまりました殿下。』
コン内官はすぐにホテルに連絡を取り、シンの元へ戻って耳打ちをした
『殿下・・・夕食の時間は遅らせられるそうです。』
『そうか。もうすぐ日が沈むから一時間半ほどホテルに入るのが遅くなると伝えてくれ。』
『かしこまりました。』
ホテル側から快諾を得たシンはチェギョンに満面の笑みを向けた
『チェギョン・・・ライトアップが見られる。』
『本当?』
『あぁ。だがホテル側に迷惑をかけるから、到着した時にはお礼を言わないとな。』
『うん。もちろん♪』
やがて夕陽は沈んでいき・・・薄暗くなった噴水に普段より少し早めのライトアップが始まった
噴き出す水量に合せて色とりどりのライトが照らし出される
まるで光の噴水を見ているような気分だった
そこに集まっていた民衆も皇太子夫妻がその場にいる事も忘れ、ただひたすら感嘆の声を上げた
そしてそれはシンやチェギョン・・・周りを取り囲む仕える者達も同様だった
『綺麗・・・』
『あぁ。ここまで美しいとは思わなかった。やはり動画で見るのとは迫力が違う。』
『すごい・・・』
皆の心の中に幻想的な美しさを残した噴水
シンはそれの設計に自分が携わったことを誇りに思った
いつまででも眺めていたいと思う気持ちを堪え、シンはチェギョンに告げた
『チェギョン・・・そろそろホテルに向かわないと・・・』
『あ・・・うん。そうだね。でも名残惜しい。ギョン君とガンヒョンに教えてあげなくちゃ。
この公園には絶対に来るべきよ。』
『あぁ。来てよかったな。』
『うん。最高に幸せな気分。また・・・連れてきてね。』
『あぁ。また一緒に来よう。』
色とりどりの光を背中に浴びながら、皇太子一行は公園を後にする
そして車に乗り込むと滞在先のホテルに向かっていくのだった
話しを引っ張るつもりはなかったけど
噴水で終わっちゃった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!