東宮殿食堂にて食事を始めた二人・・・仕える内官や女官に人払いをした為、シンもチェギョンも
リラックスして食事を楽しんでいた
『全く・・・三次選考会の時にも思ったけど、なんでこんなにフォークやナイフがずらっと並ぶかな。』
『くくっ・・・チェギョン、今は二人きりだ。気を遣わずに自由に食事してくれ。』
『もちろんそうする。でないと食べた気がしないもん!』
シンはチェギョンが食べにくそうな肉料理を切り分け、チェギョンの皿と交換した
『ほら・・・これで食べやすいだろう?』
『うん///』
細やかなところまでこの国の皇子に気を配られて、決して悪い気はしないチェギョンである
『美味しい~~♪』
切り分けられた肉料理を口に運び、満面の笑みをシンに向けた
『あ///そうか。よかった。』
シンにとっては今まで一番の笑顔をプレゼントされた気分だった
『シン君もちゃんと食べてる?』
『シン君?///あぁ・・・食べているさ。』
そういいながらチェギョンが幸せそうに食べる姿に目を奪われ、ふと気が付くと手が止まっているシン
『来週も・・・ここに来い。』
『えっ?来週も?』
『あぁ。婚約発表まで時間がないんだ。少しでもお前と近づかないと・・・』
『近づく?///あっでも…まだ高校生だし・・・』
非常に意識しているチェギョンの反応に、シンは慌てて言う
『違うっ!心身ともにだ。』
『心・・・///身ともに?』
『あ~違う。今のは言葉の綾だ。もっとお互いの事を知る時間が欲しい。だから・・・』
『わ・・・わかったよ。来週も来る。』
そういいながらチェギョンは先ほど選んだ洋服の中で、どれを着てこようかと考えている自分に気が付き
我ながら驚愕する
知らない間にシンのペースに乗せられ、シンと婚約を前提に交際していることを受け入れている・・・
そんな心境の変化に動揺していた
そんな時だった・・・
食堂の外で何か騒がしい人の声がする
『なんだ?』
シンが眉間に皺を寄せドアを見つめた時、勢いよく食堂のドアが開いた
『シン~~♪帰国の挨拶に来たよ~♪あれ?・・・お客さんだった?』
『ユル!!』
食堂にいきなり入ってきたのは、シンの従兄弟で故孝烈皇太子の忘れ形見イ・ユルだった
『あ・・・食事中にごめん。シンの妃が決まりそうだって聞いて戻ってきたんだけど、ひょっとしてその人が?
どこのお嬢さん?・・・じゃなさそうな感じもするけど・・・』
『ユル・・・紹介しよう。こちらはシン・チェギョンだ。恐らく二カ月後には俺の婚約者となる。』
『王族・・・じゃないの?』
『あぁ。完全なる民間人だ。』
『どうして!お前だって知っているだろう?亡くなった僕の父上が、女優の母を選んだことで
どれだけ王族会からバッシングを受けたか・・・』
『伯父上と俺の婚姻は別問題だ。』
『だからって王族が黙っている筈ないよ。マスコミに公表していないけど、もう死人が出たって言うじゃないか!
シン・・・どうか考え直してくれ。』
『ユル・・・俺の婚姻にお前が口を挟むな!折角彼女との食事が台無しになってしまった。
出てってくれ!』
』また・・・日を改めるよ。』
非常に憤慨した面持ちでユルが立ち去った後、チェギョンハすっかり食欲を失くしナイフとフォークを置いた
『すまない。つまらない話を聞かせてしまった。』
『いや・・・さっきの従兄弟さんの言葉が正しいのかもしれないよ。
シン君・・・一度考え直してみたら?』
目を伏せてそういうチェギョンの顔をシンは覗き込んだ
『そんなに簡単に諦めるくらいなら、最初から始めていない。チェギョンは人の言葉に揺らいだりするな!』
『うん・・・』
なんとなく気まずい雰囲気で東宮を後にしたチェギョン
東宮で対面したシンの従兄弟ユルが、まさか自分のクラスに編入してくるとは夢にも思わずにいた
翌週、元気に登校していったチェギョンは、HRで担任が紹介した生徒を見て驚く
(あ・・・あの人だ。シン君の従兄弟・・・イ・ユル君。
わぁ~先生ちょっと待ってよ。なんで私の隣に彼を座らせる?
あっ・・・目が合っちゃった。あぁぁ・・・また何か言われる。)
チェギョンはこのところ封印しているハリネズミモードに変身し、何か言われたら棘を刺してやろうと考えた
ところが・・・
『この間はごめんね。随分失礼な事を言っちゃって・・・。
改めて自己紹介するよ。僕はイ・ユル・・・皇太子の従兄弟だよ。』
差し出された右手にチェギョンは応じることもせず言った
『シン・チェギョンです。あの件はどうかご内密に・・・』
『うん。皇太后様からも釘を刺されたよ。内緒だね♪
でも・・・チェギョンは本当に・・・それでいいの?後悔しない?』
『後悔しない為にただいま考え中です。』
初対面であまりにも自分という人間を否定された為、チェギョンはユルに警戒心を抱いた
いくらユルが優しく話しかけたとしても、どこか棘を含んだ言葉しか返せなかった
その日の昼休み・・・チェギョンはシンにそのことを報告した
『シン君・・・昨日の従兄弟さん、うちのクラスに編入してきたよ。』
『なにっ?お前のクラスに?・・・また余計な事を言われていないか?』
『別に・・・』
『ユルが何か言ってきても、何も気にするな。ユルは元々俺たち家族をよく思っていない。
きっとチェギョンにもいい事を言わないと思う。』
『気にしなくていいよ。』
そんな風にシンとチェギョンが話している前で、ギョンとガンヒョンは小声で囁いていた
『ガンヒョン・・・呼び方が変わったぞ。』
『ええ。週末の間に随分な進歩ね。』
『ほら・・・東宮に行ったから・・・』
『あ!そっか。何かあったのかしら?』
『ん~~何もなかったように見えるけど、まぁ皇太子から名前で呼ぶようになっただけすごい進歩だろう。』
『まぁそうね。』
そしてその日の下校時・・・愛用の自転車に乗って校門を出て行ったチェギョンは、黒塗りの車から降りてきた娘に
声を掛けられた
『シン・チェギョンさん・・・こんにちは。』
『あ・・・こんにちは。あの・・・どちら様でしたっけ?』
あまり見慣れない制服を纏ったその娘は、満面の笑みを浮かべて答えた
『私ったら余程印象が薄いのね。三次選考会の時にご一緒したチョ・ユラです。』
『あ・・・大変失礼しました。えっと・・・私になにか?』
『あの・・・お茶でもご一緒にどうかなって思って・・・』
チェギョンは目の前に立っている娘が王族の一人だと知り、かなりの警戒心を強めた
なにかを企んでいるような人間には思えなかったが、それでも一度同じ王族の娘に命を狙われたチェギョンである
きっと何かの情報を得たくてここまでやってきたのは想像できた
さて・・・チェギョンはこの後どう答えるのだろうか
ものすごい暑さから、曇天に代わった管理人地方。
深夜に雨が降るらしいです。
また気温差が・・・恐ろしい~~!
深夜に雨が降るらしいです。
また気温差が・・・恐ろしい~~!