皇室お妃選定委員会から催促の封書が届き、脅し文句に負けて名前と生年月日・住所だけを書いた書類を
ポストに投函したチェギョンは、その後校内の女子の様子を必死で窺っていた
あちこちから聞こえてくる不合格の嘆き・・・
書類選考で合格したのは学校内では親友のガンヒョンと二年生の生徒一人だけだ
実は・・・妃殿下候補願の文書には何やら細かい記入箇所があったのだが、
≪出せばいいんでしょ!≫とばかりに、空欄だらけの候補願をチェギョンは出したのだ
(大丈夫。これで不合格決定~~♪)
そう高を括ていたチェギョンだったが、それから数日後帰宅してポストを覗いた時・・・
信じられない速さでその合否を知らせる封書が届いたのを知り、やはり心穏やかではいられなかった
(あ~~来た。一人で開けるの嫌だな。明日学校に持って行ってガンヒョンと一緒に見ようっと。)
意外と小心者のチェギョンである
その晩チェギョンは両親から問い掛けられた
『ところでチェギョン・・・あなた、皇太子殿下のお妃候補願って出したの?】
『えっ?あ~出すつもりはなかったんだけど、督促状が届いてさ・・・仕方がないから出したよ。』
『出したのか!』
いきなり食事中の席から立ち上がって身を乗り出した父ナムギルに、チェギョンは少し驚き慌てて答えた
『だって・・・強制参加みたいなんだもん。仕方ないよ。』
『それで・・・結果は?』
『さ・・・さぁ・・・』
まだポケットの中で封も切られていない書状
少し胸の中に疚しさを覚えながらもチェギョンは答えた
『大丈夫だよ。合格するわけないじゃん♪』
チェギョンが自室に引き上げてから、両親は小声で話し合っていた
『母さん・・・まさかと思うが昔お父さんの言っていたことが現実になるんじゃないだろうな?』
『現皇太子殿下とチェギョンが結婚の約束をしたって話?そんな話、冗談に決まっているでしょう?』
『そうだよなぁ。あり得ないよな。たった一度逢っただけで・・・。
だけどあのあとチェギョンは≪アタチ・・・お姫様になるんだから≫って口癖のように言ってたじゃないか。』
『子供のたわ言よ。それに幼稚園に入ってからは、そんなこと全く言わなくなったでしょう?
不思議と性格もきつくなったけど・・・』
『そうだよなぁ・・・きっとあの頃の口癖はチェギョンのたわ言だよな。』
『そうよ。現にチェギョンは皇太子殿下に興味なんか全くないじゃないの。』
『そうだよなぁ・・・取り越し苦労はやめよう。』
だが・・・その取り越し苦労は、すでにその時には始まっていたのだが・・・
翌朝、チェギョンは早くガンヒョンとその書状を開封したくて珍しく速い時間に登校していった
そしてガンヒョンが登校すると、すぐさま美術部の部室に連れて行った
『ちょっとチェギョン・・・朝っぱらから一体何なのよ。』
『いいから早く来て!』
そして美術部の部室に入るなり、その封筒をガンヒョンに見せた
『届いたみたい。一人で開ける勇気がなくて・・・』
『チェギョン・・・アンタって子は変なところに小度胸なのね。いいじゃないのよ合格したって・・・
アタシが一緒でしょ?』
『いやいや・・・不合格だって。』
『じゃあどうして一人で開けられないのよ。』
『あ~~んだって怖いんだもん。』
『仕方ないわね。』
ガンヒョンはカバンの筆箱の中からペーパーナイフを取り出すと、その封を開けた
『ほら・・・見てみなさい。』
『ガンヒョンが見てよ~~!』
『ったく・・・世話が焼けるったらないわ。あ・・・合格してる。』
『え・・・・えぇ~~~~っ!ちょっと見せて!』
確かに中に入っている文書には合格の文字が書かれていた
『ど・・・どうして・・・』
『どうしてってアタシに聞かれても・・・』
『だって私、記入するところほとんど空欄で出したんだよ。どうして?』
合格通知を手に持ったまま立ち尽くしたチェギョンは、それを無造作にポケットに入れた
『ガンヒョン・・・確かギョン君は皇太子の親友だったよね。』
『そうだけど?』
『ちょっと映像科に付き合って!』
『えっ?なぜ?』
『ギョン君だったら皇太子を呼び出せるでしょう?』
『まぁ確かに・・・って、アンタ何をする気?』
『この合否の決定基準を聞くんだよ。』
そういうなりチェギョンは再びガンヒョンの手を引くと映像科に向かっていった
だがそのときガンヒョンは妙なことに気が付いてしまった
(ん~~?アタシの合格通知は確か色気も素っ気もない封筒だったけど、チェギョンに届いた封筒は
なんだか高級そうな封筒じゃなかった?しかもいかにも皇室って感じの模様まで入ってた。
変なの!!)
ガンヒョンを引っ張って映像科の特進クラスにやってきたチェギョンは、ガンヒョンを自分の前に出して頼んだ
『ガンヒョン頼むよ。』
『もぉ~仕方ないわね。ギョン~~ちょっと来てくれる?』
交際歴二年の愛しのマドンナが、長い髪を揺らして自分を呼んでいることを知ったギョンは
まるで尻尾を振る子犬のようにガンヒョンに駆け寄った
『ガンヒョン~~♪どうしたの?教室に来るなんて珍しいね。』
『あ~実はギョンに用事があってきたんじゃないのよ。』
『えっ?ガンヒョンが俺以外の誰に用があるって言うの?』
『アタシじゃなくてこっち・・・』
ガンヒョンは自分の後ろに隠れているチェギョンを押し出した
『チェギョン?』
『ギョン君・・・悪いんだけど皇太子呼んでもらえる?』
『えっ?うん。いいよ。シン~~♪』
ギョンから呼ばれたシンは、颯爽とギョンの元へやって来る
そして飄々とした表情で答えた
『なんだ?ギョン・・・』
『あ・・・この子シン・チェギョンっていうんだけど、シンに用事があるんだって。』
シンは視線をチェギョンに向けた
『俺に何か?』
『あ・・・私は美術科のシン・チェギョン。私にこんなものが届いたんだけど・・・』
チェギョンはポケットの中に無造作に入れた合格通知をシンに見せつけた
『そうか。合格おめでとう。』
『きぃ~~~っ!!おめでたくなんかないわよ!』
その瞬間ガンヒョンとギョンは≪シマッタ。チェギョンのハリネズミスイッチが入っちゃった・・・≫と身震いした
『お前・・・何をそんなに怒っているんだ?』
『あのね・・・この合格基準って一体何なの?こんな書類だけでなぜ合格したのか教えてよ!』
『さあな。俺にはわからない。俺は選考にタッチしていないから・・・。きっと内容が濃かったんじゃないのか?』
『プロフィールなんて何も書いてないよ!空欄で出した。』
『だったらとても字が綺麗だったとかじゃないのか?』
『そんなこと絶対にないよ。テキトーに書いたもん!!』
『そうか。だとしても合格は合格だ。書類の最後に書かれている二次選考には必ず来い。』
『なんであんたに命令されなきゃならないの?友達でもないのに・・・』
『これは・・・国民の義務だ。皇太子の妃候補になったんだ。名誉なことだろう?せいぜいめかしてこい。』
『そんなの名誉じゃないし、おめかしなんか絶対にしていかないから!
行こうガンヒョン。こんな奴と話をしてると頭が痛くなる。』
踵を返し立ち去ったチェギョンとガンヒョン
ギョンは恐縮した面持ちでシンに詫びた
『この間話したよな。あれがハリネズミになっちゃうチェギョンだ。
相当怒っていたみたいだ。口の悪いのは俺に免じて許してやってくれ。』
『あいつは・・・誰にでもあんな感じなのか?』
『うん。教師にさえあんな感じらしい。まぁ慣れて親しくなると棘も出さなくなるからさ・・・
でもシンもなんだか喧嘩吹っ掛けているように見えたけど?』
『くっ・・・まあな。だがあいつは・・・笑わないんだな。』
『今日はハリネズミだったからね。普段は普通に笑うよ。あ・・・だけど≪可愛い≫って言われると
ものすごく怒るらしいよ。だからガンヒョンはチェギョンに可愛いって言葉は使わない。』
『可愛い?女の子ならそう言われたら喜ぶはずだろう?』
『その辺りは・・・まだ俺にもガンヒョンは教えてくれないんだ。』
まるで頭から湯気が出そうなほど怒って帰っていくチェギョン
一体何があったのだろうか・・・シンの記憶の中にいるチェギョンは花のように優しく微笑んでいた
第一話にはたくさんのお祝いコメントを頂き
ありがとうございました❤
あぁぁ・・・お天気なのも今日までで
明日からぐずついた天気になるみたい。
嫌だなぁ・・・