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可愛い姫は棘だらけ 1

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若葉も萌える四月・・・韓国芸術高校最終学年の始業式を迎えたシン・チェギョンは、

新学期早々寝坊するという大失態をおかした・・・

今朝も母スンレにたたき起こされ、慌てて朝食を口に詰め込んだ

『チェギョン…お願いだからアニメの≪ドニャえもん≫みたいに、トーストを咥えて家から飛び出さないでよ!』
『お母さん違うよ。トーストを咥えて学校に行くのは≪にょび太≫君でしょ?』

遅刻しそうだというのに親の揚げ足を取る娘を、スンレは睨みつけた

『もぉ~!人の揚げ足を取っている場合?時計を見なさい!』
『いや~~っ!ヤバい。急がなきゃ遅刻だ~~!!』

チェギョンは残りのトーストを牛乳で流し込むと、慌てて席を立った

『行ってきま~~す!』
『気を付けていくのよ~!安全運転よ!あ・・・もういないわ。』

また慌ただしい日常が始まろうとしていた

だが・・・まさかその日が娘の運命を左右する日になろうとは、母スンレは思いもしなかった





『ガンヒョ~~ン♪おはよ~~♪』
『おはようじゃないわよ。アンタ・・・ずいぶんごゆっくりな登校じゃないの?』
『うん~寝坊しちゃってさ。クラス替えどうだった?また同じクラスになれた?』
『なってたわよ~!ホント・・・アンタとアタシは腐れ縁ね。』

イ・ガンヒョンとチェギョンは幼稚園の時から、なぜかずっと同じクラスだった

こうなると腐れ縁を通り越して、運命的なものを感じずにはいられないチェギョンである

『やっぱさ・・・私の白馬の王子様はガンヒョンなんじゃ?』
『馬鹿言ってんじゃないわよ。アタシにはギョンというれっきとした彼がいるんだから
アブノーマルな世界に引き込まないで!
って・・・そんなことより大変なのよ。』
『何が・・・大変なの?』
『クラス編成表の隣を見てみな!』
『うん。』

ガンヒョンの深刻そうな顔を不思議に思い、チェギョンはクラス編成表の隣に目を向けた

すると・・・掲示板に大きな張り紙がされていた

『なになに?禁婚令?きん・・・こん・・・れい~~?なんじゃこりゃ・・・』
『あ~アンタさ、新聞やテレビ見てこなかったの?』
『だから~~寝坊したって言ったじゃん。そんなの見ている時間はなかったよ。一体何?これ・・・』
『つまりね・・・我が国の皇太子が婚姻時期を迎えたから、国中の16~20歳の娘は
皇太子の妃候補となるってわけ。』
『へっ?昔のドラマじゃあるまいし…そんなのあり?
それにさ・・・そんなのどうせ出来レースで、お妃なんか内定しているのが常じゃん!』
『だとしても・・・皇太子が婚姻するまでは結婚できなくなるって事よ。』
『ひぃ~なんて迷惑な話!だってさ・・・早婚なら20歳で結婚を控えている人だっているはずじゃん!
そういう人にはメチャクチャ迷惑な話だよね。まぁ私には関係ないけど~♪』

ガンヒョンは皇室広報部からのお触書を指差した

『それがそうも言ってられないのよね。国民の義務だって・・・候補願を出すのは。』
『はぁ~?義務?なんかよくわかんない。こんなのスルーでいいよ。スルースルー♪』

だが・・・やはり国を挙げての妃選びをスルーするような者はほとんどおらず、その日のうちに候補願を出す者が

続出した

万が一のことがあれば・・・民間人が棚ぼた式に皇太子妃になる可能性もあるのだ

その年齢の女性たちは宝くじよりも確率の低いお妃の夢を抱き候補願を出す

もちろん王族に至っては、既存の書類だけでなく釣書や写真まで同封する始末である

今まで王族の中で選ばれてきた皇太子妃の座を、民間人になど奪われてなるものかと必死な様子だ




それから一週間が過ぎた・・・

慈慶殿では皇太后がお付の内官に尋ねていた

『のぉ・・・例の娘から候補願は届いたのか?』
『いえそれが・・・まだ届いておりません。』
『なんと・・・そうであったか。確か締め切りはもうすぐであったな?』
『さようでございます。皇太后様・・・』
『すまぬが・・・例の娘に催促の書状を出しては貰えぬか?』
『かしこまりました。すぐにお出しいたします。』



その頃学校では不合格の通知を受け取った生徒たちが、大勢項垂れていた

『はぁ~・・・不合格だってさ。』
『ヒスンあんたも?』
『ってことはスニョンも?』
『まったく・・・書類選考で落とされるなんてさ~。チェギョンはどうだったの?』
『へっ?私…出してないけど?』
『マジ?あんた・・・これは国民の義務よ。』
『そんなこと言われたって納得できないしさ~~。だってそんなの出しても不合格が帰って来るんでしょ?
郵送代の無駄だと思わない?それにガンヒョンだって出してないよね~~♪』

そうチェギョンがガンヒョンに問い掛けると、ガンヒョンはひとつ溜息を吐いて俯いた

『あのさ・・・アタシの親が勝手に出しちゃったみたい。』
『え~~っ!裏切者~~~!』
『別にアンタを裏切ったわけじゃないわよ。親が勝手にね・・・おかげでギョンと喧嘩になっちゃって・・・』

不合格の通知を受け取ったヒスンとスニョンは、興味津々といった風にガンヒョンに詰め寄った

『それで?ガンヒョン~~♪』
『あんたは・・・どうだったのよ。』

ガンヒョンは更に深い溜息を吐く

『はぁ~・・・何を間違ったのか書類選考で合格しちゃって・・・』
『『『え~~~~っ!!』』』

一瞬たじろぐ他の三人・・・

するとその騒ぎを聞きつけたのか、ミン・ヒョリン率いる舞踏科の女子がそこに集まってくる

『あなたが・・・合格?』

いつも皇太子の取り巻きの中の紅一点として君臨するミン・ヒョリンは、信じられないとばかりに問い掛けた

『そうよ。但し書類選考だけどね。アンタは?皇太子の仲間なんだからもちろん合格したんでしょう?』
『私は・・・不合格よ。』
『えっ?なぜ?』

ミン・ヒョリンは口惜しさを隠し切れないといった表情で答えた

『元々合格基準に達していないのよ。うちは片親だから・・・』
『あ・・・そっか。残念だったね。アタシが代ってやりたいくらいよ。』

チェギョンはそこで疑問に思ったことをつい口走った

『でもさ~なんで片親だといけないの?』
『それはつまり・・・皇太子妃になるには健康であることが一番重要だからじゃないの?』
『だけど片親になった理由が病気とは限らないでしょ?事故だって多いはず・・・』
『確かにそうだけど両親が揃っているって言うのが第一条件だからね。』

そこまで聞いたヒョリンは、我慢しきれなかったようで泣き声をあげ走り去っていった

『あ~~~!!』

それを見ていたチェギョンとガンヒョンは、罪悪感に囚われ呟いた

『傷つけちゃったかしら・・・・』
『かもしれないね。でもさ~皇太子の一番身近にいるのに、書類選考で不合格だなんて可哀想だね。』
『こればっかりは仕方ないわ。それよりアタシは・・・この先どうしたらいいのかしら。
ちょっとチェギョン・・・アンタも候補願すぐ出しな!』
『えっ?絶対にヤダよ~~!』


中庭でそんな話をしているガンヒョンを見つめ、ギョンはシンに告げた

『ったくなんだって俺の彼女を合格になんかするんだよ。おかげで喧嘩になっちゃったじゃん!』
『すまないギョン。だが何か考えがある筈だから、しばらく辛抱してくれ。』
『一体いつまでなんだよ~』
『もうしばらくだ。』
『しかしチェギョンは候補願を出していないんだな。まぁチェギョンが書類選考に残ったからって
そこから先に残ることはないだろうけど・・・』

そう断言するギョンにシンは問い掛けた

『なぜだ?ギョン・・・』
『チェギョンはあんな可愛い顔してさ・・・自分の身を守るためにはハリネズミに変身するんだ。』
『なにっ?あの娘には棘が生えるのか?』
『馬鹿だなぁシン・・・ただの例えだよ。ただ・・・今後面接なんかを受けた日には、あいつは不合格になるために
相手を刺しまくるに決まってる。
あいつはそうやって自分を守ってきたってガンヒョンが言っていた。』
『そうか・・・』

シンの記憶の中に残っている小さな女の子

その子は笑顔を絶やさずとても優しい子だった

(あいつに一体何があったのだろうか。しかも俺を覚えていないなんて・・・)

忘れられたこと・・・それが悔しくて堪らないシン

だがチェギョンにとってみればそれは三歳の頃のことであり、記憶の中に残片さえも残っていなくても

なんの不思議もなかった



その日は女生徒たちの不合格の声があちこちで聞こえ、なんとも騒がしい一日を過ごした

いつも通り帰宅したチェギョンは、ポストを覗いて自分宛ての封書が届いていることに気が付いた

(ん~~なになに?私宛?差出人は?はっ?皇室お妃選定委員会・・・ひぃ~~~っ!)

慌ててその封書を開けてみる

すると中には速やかに候補願を提出するようにと書かれていた

(えっ・・・ちょっと待って。これを出さなかったら財産差し押さえ?何それ~~~!はぁ~~もう信じられない~)

仕方がなくチェギョンは、妃殿下候補願の文書に自分の名前を書き備え付けの封筒に入れた

そして≪どうか不合格になりますように~~!≫と願いを込めポストに投函した

カタン・・・と音を立てその封書がポストに落ちた瞬間から、シン・チェギョンの人生は波乱に満ちていく

この妃殿下候補という名の大海を、ハリネズミのチェギョンは泳ぎ切ることができるのだろうか・・・



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当ブログ・・・めでたく本日
8周年を迎えました。
つまり今日から9年目に突入です。
てか年々・・・書き手の方が少なくなって(引っ越しされたりやめてしまったり)
なんだか身の置き所がないんですけどぉ・・・
ひとまず私はマイペースで続けてまいります。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます❤

~星の欠片~ 管理人 ★ emi ★








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