晴れの日・・・一点の曇りもない青空に恵まれ、ピョルは我が家に派遣されたヘアメイクさんの手で
いつも以上に美しく変身させられた
リビングに顔を覗かせたピョルは、照れ臭そうにその姿をそっと披露した
ピョルの支度が完成するのをじっと待っていた私たち家族は、ピョルのあまりの美しさに一瞬息をのんで
何も言葉が発せられなかったわ
『えへへ・・・』
照れ臭さを誤魔化すように笑うピョル
きっと自分でも感極まったのね・・・その瞳には涙が溢れそうになっていた
この家にチェギョンさんと一緒にやって来てからもう16年・・・ここにはたくさんの思い出があるものね
私も同じ気持ちよピョル・・・
今でも≪自分のお父さんが誰なのかを知りたい≫と相談を受けた日の事を、昨日のことのよう鮮明に思い出すわ
あらやだわ・・・そんなことを思い返してしまったら、私まで涙目になって来ちゃったじゃないの~~!
元々大人びた子だったけど、すっかり一人前のレディになったわね
とうとう・・・私の最愛の孫娘はテヤン君の元に嫁ぐ
こうなることを望んでいた私だったけど、いざとなると寂しくて底なし沼に沈みそうな気分よ~~!
なにかを必死に言おうとしているピョル・・・でもその想いは言葉にすることができなくて、ピョルは深々と頭を下げ
ただ一言『ありがとうございました。』といったわ
その言葉に・・・万感の思いを込めたのが私にはわかるの
ピョルの気持ちを一番理解しているのはこの私だから・・・
静まり返ってしまったリビング・・・シンはその静寂を打ち破るように言ったの
『早く行かないと花嫁が挙式に遅れてしまう。ピョル・・・急ごう。』
シンのその言葉で私達は一斉に時計を見る
あ・・・あら~大変だわ。感慨に耽っている場合じゃないわ
慌てて玄関に向かう私達…するとシンは玄関から少し離れたところに横付けした車まで
赤い毛氈をコロコロと転がした
つまり玄関から車までバージンロードができたのよ
そして満足そうにピョルに話しかけたわ
『ピョル・・・この上を歩きなさい。ドレスが汚れずにすむ。』
『はいパパ。』
そのピョルに続いたハヌルとウォル・・・シンは二人に向かってこう告げたの
『ハヌルとウォルはママと一緒に来なさい。ピョルはドレスだから一緒には乗れない。』
ハヌルとウォルは花嫁姿のピョルと、少しでも一緒にいたかったのね
シンに対して口答えなんかしたことがないのに、今回ばかりは小さく舌打ちしていたわ
その気持ち・・・グランマもよくわかるわ
でもここはシンに譲ってあげなくちゃね
シンは花嫁のピョルだけを乗せ車を発進させた
私達もすぐに別の車で後を追いかけたわ
だって新婦の親族が遅刻なんてシャレにならないもの・・・
でもね、教会に到着した時・・・そこはすごい群衆で溢れかえっていたの
その群衆の中にピョルがいて、シンは困った顔で頭を下げながらも必死に教会の中に入ろうとしていたわ
一体・・・この群衆は何なのかしら?そう思って首を傾げた私に、チェギョンさんはその答えをくれたの
『お義母様・・・商店街の皆さんときっとお客様です。みんな今日のことを知って、
お祝いに駆け付けてくれたんでしょう。』
『まぁ・・・なんとありがたいこと。』
結婚披露パーティーは簡素にという約束通り、小規模なものになったの
だけどそこに呼ぶことのできなかった人たちは、こうして挙式会場に駆けつけてくれたのね
私と同年代だと思われるご婦人やそのご主人もいらっしゃってる
きっとチェギョンさんが一人で産んだピョルを、自分の孫のように慈しみ愛してくれた方ばっかりね
チェギョンさんが…そしてピョルが引き継いだ歴史のあるお店・・・二人がどれほど愛されているかが
分かる光景だったわ
なんとかピョルは新婦控室に入ったみたい
私達もお祝いに駆け付けてくださった方々に、お礼を述べて教会の中に入っていったの
あぁぁ・・・・やっぱり?ハン家の皆さんはもうお揃いね
私はバージンロードを挟んで反対側にいらっしゃるハン家の奥様に話しかけた
『遅くなってしまって申し訳ないですわ。』
『よろしいんですのよ。新婦は御支度に時間がかかりますもの。
それよりイ家の大奥様・・・外がすごいことになっていましたわね。』
『ええ。ピョルのお店の商店街の皆さんなんです。お祝いに駆け付けてくださって・・・』
『こんな人気者のピョルちゃんをお嫁さんにできるのですから。テヤンは本当に幸せ者ですわ。』
やがて厳かなパイプオルガンの音色がチャペルに鳴り響き・・・新婦の入場を知らせた
ドアが開きシンと腕を組んだピョルは、一歩一歩バージンロードをテヤン君に向かって歩いていく
綺麗よ・・・ピョル
今まで見たどんな花嫁さんより綺麗だわ
お母さんのチェギョンさんにだって負けていないわ
あら?私はピョルと一緒に入場してくるシンに目を向けた
いつもならまっすぐ前を見据えて歩くシンなのに、今日は若干視線を落とし前髪で目を隠しているわ
その頬に堪えきれず零れる涙を見た時、私も我慢できずに嗚咽を漏らしてしまったの
シン…息子であるあなたの気持ちは、誰よりもわかっているつもりよ
最愛のピョルの幸せを願い、そして今日からの我が家の寂しさを思って・・・思い切り泣きましょう
とうとうピョルがお嫁に行ってしまいました。
さて次回でグランマも最終話です。
どうぞ最後までお付き合いくださいね❤