翌年から私はイ財閥の旅行の日にはハン家の奥様を誘って、小旅行に出かけるようになった
ハヌルやウォルもだんだん知恵がついてきて、誤魔化すのが大変になってきたからよ
ピョルは・・・私と一緒に旅行に出かけている・・・そう思わせておけばあの子たちも納得するから
チェギョンさんもその考えに賛同し、ピョルも異存はなかったわ
上手く行っていたのよ・・・二年間はね
だけど・・・ピョルが大学四年生の旅行に出かけた時・・・偶然にも私達の予約したホテルと
ピョルとテヤン君が滞在するホテルが一緒になってしまったの
ぬかったわ・・・私
ちゃんと確認するべきだったわ
それに気が付いたのは旅行先での夕食時だったわ
『イ家の大奥様・・・ここのレストランのお料理、とっても美味しいですわ。さすが大奥様、お目が高いです。
お部屋も素晴らしかったし・・・』
『あら~ネットで調べて評価がよかったから予約したんですのよ。実は私も初めてのお宿なんですの。』
『まぁ~素晴らしいですわ。そういった評価って当てにならないものが多いのに、
大奥様は先見の明があるんですわね。
このお肉なんか蕩けるほど柔らかくて、最高のお味じゃないですか~~♪』
絶賛するハン家の奥様・・・いや本当にネットの受け売りよ
でも本当に美味しいお料理だわ。このお宿にしてよかった~~♪
また私の株が上がっちゃったわね~おほほほほ~♪
な~んてご機嫌で夕食を楽しんでいる時のことだった
いきなりハン家の奥様が、料理を喉に詰まらせたらしくむせ始めたのよ
『ひっ・・・ゲホッ・・・ゲホゲホ・・・』
『まぁ・・・大丈夫?ほら…お水を飲んでくださいな。』
ハン家の奥様は私から渡されたグラスの水を飲み干し、呼吸困難になって青ざめた顔を私に向けた
『イ家の大奥様・・・あれを・・・』
ハン家の奥様が指差す方向に目を向けると、なんとレストランから出ていこうとするピョルとテヤン君の姿があった
『あ・・・』
困り果て言葉を失った私にハン家の奥様は憔悴した顔で俯いた
『も・・・申し訳ございません。テヤンがお友達と一泊旅行に行くとは聞いていたんですが、
まさかその相手がピョルちゃんだったとは・・・』
あ~そのまさかを黙認していたなんてとても言えやしないわ
『ハン家の奥様…もうあの子たちも長いお付き合いですし、成人もしているんですよ。』
『でも・・・申し訳なくって・・・あの子たちを追いかけなきゃ・・・』
あら~意外と頭の固いハン家の奥様は、今にも椅子を立ち上がりそうな雰囲気よ
というか・・・そんなことして馬に蹴られたいのかしら?
『ハン家の奥様・・・そんなことはやめましょう。あの子たちだってちゃんと考えて
真面目にお付き合いしている筈ですわ。楽しい時間に水を差すようなことをしてはいけません。』
『ですが・・・ピョルちゃんを傷ものにするなんて・・・』
あ~~・・・傷ものって何よ。そんな古臭いこと言うなんて一体いつの時代の人なの?
『とにかく・・・私達は私達で楽しみましょう。あの子たちの事は見なかったことにしましょうよ。』
『ですがイ家の大奥様・・・』
どうやらハン家の奥様は確実にピョルを孫嫁に迎える覚悟を決めてしまったみたい
その日の事は不問に付したけど、その後ピョルの話になると≪一日も早くピョルちゃんと結婚しないと…≫と
テヤン君にいうようになってしまったそうよ
でもその言葉の裏に≪責任を取らないと≫という思いがあるような気がして、なんだか少し気が咎めるわ
ピョルはそんなことで責任を取ってほしいと思う筈がないもの
なんたってピョルがお腹にできても、責任を問わなかったチェギョンさんの娘だものね~♪ほほほ・・・・
旅行から帰ってから程なくして、いよいよピョルは就職活動の時期がやってきたわ
ある日の夕食時ピョルは家族を前に宣言したの
『みんな…聞いてください。私・・就職先をどうしようか悩んだんです。ママの言う通り最初は企業に就職して
勉強してくるのも手かなって思ったりもしました。でもやはり・・・それよりも実践で学びたいんです。
ママのお店でお仕事したいと思います。パパ・・・構いませんか?ママ・・・いいですか?』
もちろんピョルはそう決断するだろうとみんな予測していたわ
シンはピョルが高校生の頃の家出事件以来、ピョルの進路について口を挟むことはなかったわ
『あぁ。それがいいだろう。あの店には有能な販売スタッフさんが多いからな。』
チェギョンさんも頷いた
『そうね。ママとしては2~3年はどこかの会社に入って世間にもまれて来るのもいいと思っていたけど
ピョルがそうしたいというのなら反対はしないわ。』
『ありがとう。パパ・ママ・・・グランパとグランマも構いませんか?』
夫は何の異存もないと満面の笑みを浮かべた
『ピョルが選んだ道なら、その道を行くのがいいよ。ただ・・・時折イ財閥から注文が入るだろうが
その時にはピョルが配達してくれるかい?』
『もちろんです~グランパ♪』
『ピョル・・・私もお買い物に出かける楽しみが増えるわ。その時には差し入れしますからね。』
『あ~んグランマありがとうございますぅ♪』
ハヌルとウォルはあのお店でピョルがお仕事するのがやはり楽しみのようだ
ハヌルなどはピョルにこういったの
『ピョル~友達の誕生日のプレゼントとか~自転車で買い物に行くからさ、その時には安くしてくれる?』
なんてちゃっかりしているのかしら・・・姉に向かって値切り交渉だなんて~~!
『ハヌル~それはできないかも。でもお姉ちゃんのポケットマネーで安くしてあげるからおいでよ。』
『やった~♪』
家族満場一致の採決でピョルはチェギョンさんのお店に勤めることになった
さて次は現在店の責任者を任せているチェさんに、ピョルの就職の件を話さなきゃいけないわ
翌日チェギョンさんはチェさんを家に呼び出したの
チェさんは開店準備を済ませた後すぐにやってきたわ
『オーナーこんにちは。奥様お邪魔いたします。』
『どうぞおあがりになって♪』
いつも礼儀正しいチェさんはリビングの椅子に腰かけた
チェギョンさんはすぐに本題に入ったわ。善は急げだものね・・・
『チェさん…娘のピョルのことなんですけど、お店で働きたいと言っているの。』
『まぁ!ピョルがですか?それは願ってもないことです。』
『構わないかしら・・・』
『ええもちろん。ピョルなら店の事をよく知っていますし、誰よりも商品を大切に扱うと思うんです。』
『そう。良かったわ。』
『実はオーナー・・・私もお願いしたいことがあるのです。』
『何かしら?』
『オーナーが一線を退いてから、私は責任者を任されてまいりました。
あれからもう10年が経ちます。その間に私の環境も変わって・・・本音を申し上げて責任者の立場が
少し荷が重くなってきてしまいました。この際・・・ピョルに責任者を任せたらどうかと思うのですが・・・』
『えっ?チェさんそれは時期尚早だわ。チェさんが荷が重いというのなら、その立場は退いても構わない。
でもピョルを新卒でいきなり責任者にするのは・・・厳しいわ。
せめて一年・・・チェさんがピョルを育てて貰えないかしら。』
『一年・・・わかりました。その間にピョルをみっちり育てようと思います。
オーナー、突然こんなことを申し上げて本当にすみません。』
『いいのよ。チェさんは両親の代から店の為に尽くしてくれた人ですもの。
でも責任者を退いても・・・お店には来ていただけるでしょう?』
『ええ。パートという形になってもお店は勤務させていただきます。』
『ありがとう。チェさん・・・』
ピョルのことをお願いするつもりで呼んだチェさんだったけど、チェさんの環境もずいぶん変化したのでしょう
人には色々な事情があるものね
ピョルが責任者になる頃、チェさんは一線を退いて肩の荷を下ろすことになるわね
ピョル・・・責任重大な立場になるけど、チェギョンさんも歩いた道だから負けずに頑張るのよ!!
もうピョルが大学四年生だなんて・・・
なかなかのぶっ飛ばしっぷりです(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
あはは~~このお話、シンチェの影が薄くてすまんですぅ。
主役はグランマとピョルだから~(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!