『ハヌルはいい子ね~♪さぁ~ねんねしなさい。』
『ママ~♪まだ・・・あそぶ~・・・ムニャムニャ・・・グゥ~・・・・・』
その晩・・・ベビーベッドの傍らでハヌルの胸をトントンとあやし、漸く眠ったハヌルに布団をかけたチェギョンは
シンの待つベッドに向かった
『漸く寝たわ。全くハヌルのあの寝つきの悪さはシン君そっくりね。』
『くっ・・・それを言うならピョルが布団に入ってお休み三秒なのは、君に似たんだな。』
『確かにそうかも・・・あわわ~~・・・』
チェギョンは欠伸をしながらベッドに潜り込み首元まで布団を掛けた
シンはチェギョンが眠ってしまう前にと、その布団を剥いだ
『なにっ?シン君・・・眠いのよ。』
『チェギョン・・・相談したいことがあるんだ。』
『なあに?』
チェギョンは眠そうな目を擦りながら枕を抱いてうつ伏せになると、シンに顔を向けた
『もう一人…子供が欲しくないか?』
『えっ?・・・ちょっちょっと待ってシン君。ハヌルを産んだ時点で私は高齢出産だったのよ。もう無理よ。』
『まだそんな年じゃないだろう?今からなら40前にもう一人産める。』
『無茶を言わないで!産むのは私なのよ。もうキツイって・・・』
『いや…まだ大丈夫だ。』
『それにお義母様の事も考えて。もうお義母様に子供の面倒をお願いするなんてできないわ。
お義母様は今でさえ大変な筈よ。』
『だが・・・ピョルが妹が欲しいと言っているんだ。俺はどうしてもその願いを叶えたい。』
『えっ?ピョルが・・・妹?あっ…ちょっと待って!ダメだってば・・・シン君~~!』
もはや相談ではない
それから二か月後・・・チェギョンは自分の体調不良の原因を突き止めるべく、妊娠検査薬をトイレで試していた
(あ~~~っ!もぉっ!シン君ったら、あれほどダメだって言ったのに馬鹿ぁ~~~!!)
見事陽性反応の出た妊娠検査薬・・・それを紙袋に入れて捨てたあとチェギョンはいつも通り出勤していった
そして開店準備を済ませた後、チェに仕事を任せ馴染みの総合病院の産婦人科に向かった
『シン・チェギョンさん・・・妊娠おめでとうございます。』
『あ・・・ありがとうございます。』
(ああ困ったことになったわ。仕事もまた軌道に乗って来て忙しいというのに・・・
それにもうさすがにお義母様にお願いはできない。ただでさえハヌルは目が離せない時だもの。
どうしよう・・・どうしたらいいのかしら・・・)
もちろん子供が授かったことが嬉しくないわけではない
ただ・・・今でさえ忙しい毎日であり、これからピョルも難しい年頃になる・・・それを考えると
手放しで喜べないチェギョンだった
診察室から出ていくと見覚えのある人物と目が合った
『あらっ?』
ハヌルより幼い女の子と一緒に座っている女性は、驚いたことにシンの前妻ミン・ヒョリンだった
『こんにちは。』
『妙なところでお逢いするわね。』
こういう場合・・・余計なことは聞かない方が身の為だと思ったチェギョンは、
ちょうど空いていたミン・ヒョリンの娘の隣りに腰掛けた
しばらく無言でいる二人
その時、意外なことにミン・ヒョリンの方が声を掛けてきた
『生まれた息子さんは?』
『あ・・・息子は義母が面倒見てくれているんです。』
『えっ?イ家のお義母様が?・・・いいわね。私なんか姑に嫌われているから、孫の面倒など見て貰えないわ。』
『そう・・・なんですか。』
なんとなく・・・その嫌われている理由が想像できてしまうチェギョン
余計なことは言うまいと口を噤んだ
だがやはり・・・ミン・ヒョリンは話し相手が欲しかったらしい
『今日は一体・・・どうして受診したの?』
その問いかけに一瞬悩んだチェギョンだったが、嘘を吐いても仕方がないと事実を口にした
『妊娠したんです。』
『えっ?妊娠・・・羨ましいわ。私は一度目の妊娠で流産してからお腹の中で胎児が定着してくれなくて・・・
この子を産んだ後何度も流産しているの。姑からは後継ぎが産めないって罵られるし・・・嫌になっちゃうわ。』
『男の子だって女の子だって大事なお子さんですよ。男の子を産まなくちゃって
プレッシャーに感じる必要はないんです。
却ってそんなことを考えていたら、お腹に赤ちゃんが宿った時・・・ここにいてもいいのかって
不安になっちゃいますよ。』
ミン・ヒョリンにそう言いながらチェギョンは自分に言い聞かせていた
望まない妊娠・・・そんなことは決してない
愛するシンの子だ
先程までの戸惑う気持ちを自分の中から消そうと、自分の為に言った言葉だった
『主人は・・・とても優しくしてくれるの。でも主人の親はダメなの・・・』
『あなたがそう思い込んでいるだけかもしれませんよ。もっと甘えて歩み寄ったら・・・
きっと仲良くなれる筈です。』
『あなたはすごいわね。あのイ家のお義母様と上手くやっているんでしょう?』
『ええ。とてもよくしてくれています。だけどそれも・・・私が甘えることを覚えたから・・・
あなたもきっとお姑さんに甘えることを覚えたら、もっと信頼関係が築けるかもしれませんよ。
自分が変わらなきゃ上手くなんかいきません。こんなに可愛いお嬢さんがいるんですから、
友好的な関係を築く為の立派な武器になります。そうしたら…きっとあなたも必要以上のプレッシャーに
苦しむこともないでしょう。』
『できるかしら・・・私に。』
『やるんです。ご主人の事を愛しているなら・・・』
『ありがとう。あなたにここで逢えて本当に良かったわ。』
ミン・ヒョリンが診察室に消えた後、チェギョンは病院を出て店に戻っていった
そして接客をする合間にこれからの事をよく考えていた
イ家の人間関係は人も羨むほど良好だ
だがそれも現時点では・・・ということになる
これ以上姑のミンの負担を重くすることは、折角のいい関係に亀裂が生じる恐れもあった
悩み抜いた末チェギョンは結論を出した
その日帰宅したチェギョンは義母の用意してくれた夕食をすべて平らげ、片付けを済ませた
その後家族全員をリビングに呼び出した
チェギョンの出した結論は一体なんなのか
そして家族は・・・どう反応するのだろうか
ここで切ったからって
変な方向にはいかないから安心して♪
女性にとって流産って本当に辛い経験だよね。
私も経験あるけど・・・
そんな話題をさらっと書いてしまって
不愉快に思う人もいると思うので、先に謝っておきます。
申し訳ない。
そして
このお話は30話で完結させていただきます。
あと少しお付き合いくださいね~❤