『大変なことって・・・一体何があったんですか?』
チェギョンの問いかけにチェは溜息交じりに答えた
『数日前・・・この辺り一帯の建築物の検査が入ったんです。』
『でもうちは・・・また30年にも満たないわ。』
『ええそうです。この店舗や住居は何の問題もありません。ですが・・・』
何か嫌な予感がチェギョンの胸を掠めた
『お隣のビルが・・・』
『あぁ・・・確かにお隣のビルは相当古いわ。』
『老朽化が進んでいて、今にも倒壊の恐れありと診断されたそうなんです。国からの命令なので背くこともできず
また倒壊の恐れありといわれたら・・・うちの店も危険に晒されますし・・・』
『そうね。確かにそうだわ。』
『先ほどお隣のビルのオーナーが訪ねてきたんです。ビルを建て直すと・・・』
『それは仕方がないことね。文句など言えないわ。』
『ただ・・・ピョルの時もオーナーがここで子育てしながら仕事をしていたことを知っていますから、
とても恐縮してらして・・・』
『確かに・・・隣接しているから、取り壊しの時も建てる時も騒音や振動は・・・』
『そうなんです。ハヌルを店舗で育てするのは難しいかと・・・』
『取り壊しから建て直しまでどお位の期間掛かるって?』
『予定では二年かかるそうです。』
『二年も・・・はぁ・・・』
隣接するビルが建て直すとなると、チェギョンの店舗もその影響を受ける
売り上げは愕然と減ってしまうだろう
また生まれたばかりのハヌルの世話をしながら仕事するのは不可能となってしまう
『どうしよう・・・』
電話を切った後スマホを見つめながら独り言を呟いた時、ミンは心配そうに声を掛けた
『チェギョンさん・・・一体どうしたの?何かお店にトラブルでも?』
『あ・・・お義母様、そうじゃないんです。ただ困ったことが起こってしまって・・・』
『困ったこと?何でも相談に乗るから話してみなさい。』
『店舗の隣のビルが・・・建て直すそうなんです。』
『まぁ~あの高いビル?あ・・・でもそう言われてみれば、随分年季が入っていたものね。あのビル・・・』
『はい。国の検査で取り壊し命令が出たそうなんです。』
『それは大変だわ。お店の売り上げにも響くわね。』
『はい。でも一番の問題は・・・』
『ハヌルの事でしょう?』
『はい。そうなんです。』
『そんなこと心配しないでいいわ。ハヌルは私が責任をもってお世話するから・・・』
『でもそれではお義母様の負担が・・・』
『私の負担?うちにはメイドさんもた~~くさんいるのよ。心配はいらないの。ピョルのお迎えだって
今まで通りするから心配しないで。そういうことは分担しましょう。
あなた一人が大変な思いをすることはないわ。』
『すみません・・・』
知らぬ間に産後一カ月の同居が、そのまま続行されることになってしまったのは不可抗力だろう
ハヌルの世話だけ見て貰う・・・そんな虫のいいことはチェギョンも…またシンもできる筈が無い
そしてその晩、妻のミンからその話を聞かされたヒョンは、満面の笑みで妻を褒め称えた
『偉いぞ母さん・・・なんて素晴らしい案なんだ。』
『そうでしょう?おほほほほ~~。神は私の味方をした様ね。』
これでハヌルの成長を毎日見届けられ、またピョルとの離れがたい親密な関係が継続できる
ミンは心の中で大きな高笑いをしていた
ハヌルの一カ月検診の日・・・チェギョンは会社を抜けて検診に付き合ってくれるというシンの車に乗り込み
ハヌルを産んだ病院に向かった
ハヌルの検診結果はすこぶる順調であり、やはり他の生後一カ月の子供よりもさらに大きく成長していた
チェギョンの来院を知った入院病棟の看護師たちは、競うようにして外来を訪れそしてシンとチェギョンに
声を掛けた
『まぁ~大きくなりましたね。』
『はい。随分大きくなったでしょう?』
『益々ご主人様に似てきたみたい・・・❤』
『そうですね。くくっ・・・』
目当てはハヌルではない・・・チェギョンでもない
シンなのだ
ハヌルが元気に成長していると太鼓判を押され、病院を後にした時・・・チェギョンハ呟いた
『シン君って・・・動物園のパンダみたい。くすっ・・・・』
『パンダはひどいな。』
『あ~確かに、そんなに愛嬌はないわね。じゃあ・・・ヒョウ?
どちらにしても産婦人科でこんなに人気者の旦那様はあまりいないと思うわ。』
『くっ・・・褒め言葉として受け取っておくよ。』
車に乗り込んだ三人・・・チェギョンはシンにお願いをしてみる
『シン君・・・私のお店の前を通って貰える?』
『あぁ構わない。』
家族からイ家に住むことを続行すると聞かされていたシンは、車をチェギョンの店の前に一旦停車させた
『あぁ・・・チェギョン、これでは無理だな。』
『ええ。とても無理ね・・・』
『これは近所からも相当クレームが入るだろうな。』
『店舗のスタッフが心配だわ。騒音と振動で体調崩す人が出るかも・・・』
『そうだな。その辺りはチェギョンがちゃんと気遣ってやらないとな。』
『ええ。』
『今度の週末ピョルと二人で、マンションの荷物を運ぶよ。』
『そうして貰えるとありがたいわ。私の休みの日はお義母様をハヌルから解放してあげたいし・・・』
『あぁ。生活に必要な物は実家に運んでおくから心配するな。』
『ありがとう。』
ハヌルの育児場所としてイ家に継続して住むことになったイ・シン一家
その後すぐにチェギョンは仕事に復帰した
ハヌルを義母に任せピョルと共に家を出る
ピョルを学校に送り出し店舗を久し振りに自分の手で開けた
そして店内の掃除をしていると、取引先の社長イ・ユルが顔を出した
『チェギョン久し振り。』
『あ・・・ユル君、久し振りね。』
『出産おめでとう、男の子だって?』
『ええ。ハヌルって名を付けたの。』
『店に・・・いるの?』
『まさか・・・連れてこられないわ。お隣のビル、取り壊している最中だし・・・。お義母様が面倒見てくださってるの。』
『そうか。逢いたかったな。またいつか逢わせてよ。』
『ええ、工事が落ち着いたら連れて来るわ。』
『でもチェギョン・・・これからどうするの?』
『えっ?どうするって?』
『周りの店舗を見てごらん。食品を扱う店なんかは、みんな別の場所に引っ越したよ。』
ユルのそんな言葉を聞いてチェギョンは店から出て、周辺の店舗を確認した
『本当だわ。ソフトクリーム屋さんもお弁当屋さんも・・・移転って・・・』
『そうなんだ。この界隈で食品を扱っているのは、八百屋さんくらいだよ。』
『でもうちは食品を扱っている訳じゃあないから。』
『うん、そうなんだけど・・・本屋も移転したよ。この店は陶器も扱っているだろう?
解体工事の振動などで破損しないか心配だよ。もし・・・万が一移転を考えているのなら相談して。』
『ええ。ありがとう。でも店を移る気はないわ。両親が始めた店だもの・・・ここでやっていくわ。』
『わかったよ。でも困ったことがあったら相談して。』
『ありがとう。ユル君・・・』
実際、隣のビルが建て直すというだけで、周辺が随分閑散としてしまっている
そのうちスタッフが続々と出勤してきて、いつも通り開店したのだが・・・
やはり解体工事による騒音の為か客足は伸びず、チェギョンも責任者のチェも頭を悩ましていた
このままでは店の経営が非常に厳しくなってしまう・・・
そんな時だった
店のスタッフ数名が健康被害を理由に辞めたいと申し出たのだ
その頃にはビルの解体は終わり、新地になったその場所に基礎工事が始まろうとしていた
健康被害は店の責任ではないとはいえ、体調を崩した以上引き留めることもできない
チェギョンは店のスタッフの人数を以前の半分で賄うこととなった
だが売り上げが減ってしまった分、人件費にかかる費用も半分となり・・・結果的にチェギョンは何とか店の経営を
続けていく目途が立った
再び店の経営が軌道に乗るようになった頃、ハヌルは生後六カ月になっていた
今日は店の定休日だ
チェギョンはハヌルと接しながら、傍らにいるミンに話しかけた
『お義母様、お疲れじゃないですか?』
『何を言っているの?疲れているのはあなたの方でしょう?昼は仕事をして
夜はハヌルの面倒を見ているんだから・・・』
『ピョルの時も同じでしたから・・・。それに今は家事をお義母様に任せっきりで・・・』
『や~ね~!ピョルの時みたいに若くはないのよ。無理しないで今日はハヌルと一緒にお昼寝しなさい。』
『そんな・・・』
『あなたが元気じゃないとピョルが悲しむわ。いいわね・・・今日はゆっくりするのよ。』
『すみませんお義母様・・・』
日々家事一切とハヌルの世話をミンに任せていることを心からすまなく思いながら、チェギョンはミンの言葉に
甘えることにした
やはりずっと店舗にいると、隣りの工事による騒音の影響を受けているようだ
(このままじゃあいけないわ。スタッフを交代で、週にもう一日休みを作らないとダメかも・・・)
長く続くインテリア雑貨店のオーナーとして、チェギョンはこれ以上スタッフを手放さないためにも
週休二日制のローテーションを組んだ
昨日は体調不良でお休みしちゃってごめんなさい。
日曜日の成果もね~~
酷いんですよ。出来が(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
みせてもいものかどうか
ちょっと思案中です(激爆)
イ・シン一家がイ家に留まることになった理由は
店舗のお隣のビルの建て替え工事だったんです。
今回ピョルの登場シーンもなく
ちと寂しいですね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
すみません~~!!