ミンの言いつけを守り、それからピョルは毎朝毎晩・・・チェギョンのお腹に話し掛けた
『あかちゃ~~ん、お姉ちゃんだよぉ~♪早く大きくなってね。』
両掌をチェギョンのお腹に当て、そんな風に話し掛ける
チェギョンはそんなピョルが不憫に思えた
ピョルを妊娠した時・・・事あるごとにお腹に向かって話し掛けたのは自分自身だけだったからだ
今は夫のシンもピョルに負けず劣らずの溺愛ぶりをお腹の胎児に発揮する
『なかなか大きくならないな。』
『もぉっ!シン君までピョルみたいなこと言わないで!くすっ・・・』
イ家の両親はピョルの時に関われなかった罪悪感があるのか、過干渉なほどチェギョンを労わった
家事の負担を軽くしようとおかずを届ける為に毎日のようにマンションに顔を出す
そんな溺愛ぶりを最初は戸惑っていたチェギョンだったが、そのうちには慣れて心からありがたく思うようになった
年度末が過ぎ・・・年度初めがやってきた時、ミンはチェギョンに告げた
『チェギョンさん・・・もうすぐピョルちゃんの10歳のお誕生日ね。お誕生日パーティーを我が家でしましょう♪』
幸いピョルの誕生日は店を臨時休業と決めていたチェギョンは、満面の笑みで答えた
『そうですねお義母様。ちょうど土曜日ですし私もお店はお休みですから。』
『まぁ~そうなの?良かったわ。じゃあ一日中大騒ぎできるわね。』
『えっ?一日中ですか?』
『そうよぉ。私達が初めてお祝いできるピョルちゃんのお誕生日なのよ。思いっきり楽しまなくちゃ~~♪』
『くすっ・・はい♪』
確かに罪悪感はあるが、ずっとその存在さえ知らなかった孫の誕生日を存分に祝いたい・・・
そんなミンの厚意をチェギョンは心からありがたく思った
そして誕生日当日・・・
イ家を訪れたシンとチェギョン…そして主役のピョルは、玄関を開けるなり驚かされた
『『ピョルちゃんお誕生日おめでとう~♪』』
出迎えたミンとヒョンの後ろには使用人達がずらっと並び、ピョルに祝いの言葉を掛けた
『『『ピョル様、10歳のお誕生日おめでとうございます~♪』』』
面食らう三人・・・しかも使用人達の背後は、まるでクリスマスさながらに飾り付けがされていた
ピョルは今までにこんな祝い方をされたことがなかったので、一瞬口をポカンと開けその後必死にお礼を言う
『あ・・・あ・・・ありがとうございますぅ~~♪』
啞然とした状態から漸く我に返ったピョルは、平常心を取り戻した
『さぁ~みんな中に入って頂戴♪』
ミンは三人をいつも通りリビングに通した
するとピョルはそこにいつもはない不思議な家があることに気が付き、それに向かって走り寄るとじっと凝視した
『グランマ・・・これは何ですか?』
『これ?ほらぁ~童話にあるでしょう?お菓子でできたおうちよ。』
『えっ?これが全部お菓子?』
ピョルはそのお菓子の家に顔を近づけるとクンクンと匂いを嗅いだ
『本当だ~~!美味しそうなクッキーの匂いがする~~!』
『ピョルちゃんが食べていいのよ。』
『えっ!・・・食べたいけどぉ・・・こんなに食べられません~~!』
『おほほほ~~いっぺんに食べなくていいの。これね・・・解体できるの。解体して密封容器に保存できるのよ。』
『ほぉ・・・すごい!!じゃ・・・じゃあ・・・このクッキーを一枚だけ。』
恐る恐るという仕草で、ピョルはクッキーを一枚外すとその場で口に放り込んだ
『ん~~~❤グランマ・・・これ、すんご~~く美味しいですぅ♪』
『でしょう?グランマの一番好きなお菓子屋さんが作ったのよ。
さぁ~ピョルちゃん・・・お茶菓子をそこから取って頂戴。みんなでいただきましょう♪』
『あ・・・でもグランマ・・・このおうち、崩れたりしないですか?』
『崩れても大丈夫なように、下に大きなお皿が置いてあるのよ。安心して取って頂戴。』
『は・・・はぁ~い!』
そうは言われても折角綺麗に作られたお菓子の家を崩したくないピョルは、慎重にひとつずつお菓子を外す
まさにビックリドッキリゲームをしているようだった
『はぁ~♪崩さずに取れたぁ~♪』
満面の笑みで菓子皿に菓子を盛りつけたピョルは、ソファーに向かっていく
『すごいなピョルちゃん。崩さずにお菓子を取って来るなんて・・・』
『えへへ~~♪』
得意満面の笑みでソファーに腰掛けたピョル
もちろんその席はミンとヒョンの間だ
ヒョンは早速自分からの誕生日プレゼントを皆の前で発表した
『ピョルちゃん・・・私の選んだお誕生日プレゼントは、その窓の外にあるんだが・・・』
『えっ?』
ピョルは徐に立ち上がるとヒョンの指示した窓に駆け寄った
『うわぁ~可愛い自転車♪』
『今乗っているのはもう小さいと言っていただろう?だから・・・』
『グランパ~ありがとうございますぅ~♪』
負けていられないとばかりにミンも立ち上がると、奥の部屋から大きな箱を持ってくる
『ピョルちゃん、これは私からよ~♪』
『大きな箱・・・開けてもいいですか?』
『どうぞ♪』
嬉しそうにラッピングされた箱を開けたピョル
『わぁ~可愛いワンピース♪』
すぐさまピョルは箱からそのピンクのワンピースを取り出し、シンとチェギョンに見せた
『可愛い~~♪』
『良かったわねピョル♪』
『うん~♪でもぉ・・・グランマ、こんな可愛いワンピースをどこに着て行けと?
もう結婚式はないしぃ・・・』
友達と遊ぶ時に着られるようなものではないことを、ピョルも感じ取ったようだ
『うふふ~~♪それがね・・・あるのよ。会社の創立記念パーティーがね♪』
『ピョルも・・・行っていいんですか?』
『もちろんよ~♪』
『ああピョルちゃんが来なければ始まらないだろう?ははは・・・』
素敵なワンピースとそれに見合った場所まで用意されていると聞き、ピョルはとても嬉しそうに微笑む
昼食を終えた後、リビングにはピョルが今まで見たこともない程大きなバースディケーキが運ばれてくる
『大きなケーキ・・・』
立てられたキャンドルは10本・・・その一本一本にチェギョンへの感謝と、屈託なく育ってくれた
ピョルへの深い想いが込められていた
昨年まではチェギョンと二人きり、一番小さなバースディケーキでお祝いしていたピョル
『ピョルちゃん誕生日おめでとう。』
『さぁ~ローソクを吹き消してね。』
一生懸命10本のキャンドルを吹き消した
『ありがとうございます♪』
去年までの誕生日だって決して不幸などではなかったピョル
だが今は有り余るほどの愛情に包まれでいた
それを見ていたチェギョンも胸が詰まる思いだった
(寂しくないように育ててきた。だけどやはり今の方がピョルは幸せそうだわ。)
同時にそれはピョルだけでなく自分自身にも言えると納得する
チェギョン自身も今の家族に囲まれる幸せを十二分に感じていた
切り分けられたケーキを頬張り、同時に呟くミンとピョル
『『ん~~やっぱりデザートは別腹~♪』』
そして二人で顔を見合わせて、表情を崩して笑うのだった
イ家での楽しい誕生日パーティーを終えて自宅マンションに戻った三人
ピョルは朝から大はしゃぎだった為、自宅に戻るなり眠ってしまった
自分からの誕生日プレゼントを渡しそびれたシンは、ピョルの部屋に向かい机の上に
ピンク色の革製アルバムを置いた
そして健やかに眠っているピョルの頬に小さなキスをする
ピョルの部屋から戻った時、チェギョンはシンに問い掛けた
『シン君のプレゼントは何だったの?』
『革製のアルバムだ。』
『アルバム?』
『あぁ。これからピョルのアルバムに俺がたくさん収められるようにと思って。』
『くすっ・・・大丈夫。もうシン君はピョルの立派なパパよ。』
これからピョルのアルバムにはシンと一緒に写った写真がたくさん飾られることだろう
シンが願う通りに・・・
ピョルがクッキーを食べていたから
私も食べてしまった(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
ふぅちゃんが念入りに顔を洗っているので
これから雨が降りますよ~♪
追記 お友達のゆぱさんが
このお話のイラストを描いてくださいました。
ピョルの腕に抱かれているのはめるちゃんです。
アタクシ・・・不覚にも泣かされました。(爆)
どうもありがとうございます❤