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Channel: ~星の欠片~
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陽の当たる場所 16

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その後冬休みを終えたシンは会社が始まり、同時にピョルも学校が始まった

チェギョンも住まいが変わった以外は、今までと変わらない日々が過ぎていった

だが学校が始まるとピョルとなかなか逢えないミンとヒョンは、週末になるとシンとピョルをイ家に

呼び寄せるようになった

もちろん仕事があるからチェギョンは共に行くことができないのだが、イ家の家族がピョルの面倒を

見てくれていると思うと、チェギョンは安心して仕事により打ち込むことができた

シンとピョルが早い夕食を済ませ週末イ家から帰る折には、ミンはチェギョン一人では食べきれないほどの

料理を持たせ、帰宅したチェギョンはそれをありがたくいただくという日々がしばらく続いた



そんな生活がひと月半ほど続いたある土曜日の朝の事だった

『シン君・・・早く朝食を食べて。ピョルとご実家に行くんでしょう?』
『あぁ。』

チェギョンの作った朝食を美味しそうに食べ、コーヒーを飲み終わった時・・・向かいに座るチェギョンが

いつになく顔色を悪くしていることに気が付いたシンは問い掛けた

『チェギョン・・・食欲がないのか?』
『えっ?あ・・・うん。このところあまり食べたくなくて・・・』

そういいながら冷蔵庫から出してきたオレンジジュースをグタスに注ぎ、チェギョンは一気に飲み干した

(んっ?これってギョンの言っていた悪阻ってやつじゃないのか?
そう言えば・・・あの旅行以来チェギョンが生理中だったことは一切ない。
もしかして・・・もしかしたら・・・ピョルへの土産がとうとう形になったのかも・・・)

残念なことながらピョルを身籠った時チェギョンがどのような状態だったのかを、全く知らないシンは

緊張と期待に胸を膨らませ、その日イ家で昼食を食べ終えた時ピョルに告げた

『ピョル~パパはこれから少し用事があって出掛けなきゃならないんだ。
グランパやグランマとお留守番していてくれるか?』
『はぁ~い♪いつ帰って来るの?』
『夕方帰って来るよ。』
『わかったぁ~。行ってらっしゃい♪』
『あぁ。行ってくるよ。』

シンはピョルの頭を撫でて車に乗り込むと、チェギョンの店に急いだ



チェギョンの店のドアベルが鳴る

『いらっしゃいませ♪』

チェギョンがそう声を掛けると、驚いたことにそこに立っていたのは夫のシンだった

『シン君~一体どうしたの?』
『あ?あぁ。ちょっと急用で・・・少し店を抜けられるか?』
『えっ?今?』

チェギョンはスタッフの人数を確認し、一番年長者のスタッフに伝えた

『悪いけど少し出て来るわ。』
『解りました。』
『そんなに時間は取られないと思うけど、店の事よろしくね・』
『はい!行ってらっしゃい。』

バッグを持って店から出ると、チェギョンは待っていたシンの車に乗り込んだ

『シン君・・・一体どこに行くの?』
『ピョルを産んだ病院はどこだ?』
『ピョルを産んだ病院?すぐそこの総合病院だけど?』
『あぁ。あの病院か。』

シンは何も言わず車を発進させた

『シン君?』
『いや・・・君が妊娠ているんじゃないかと思って、診て貰おうかと・・・』
『えっ?どうして?』
『このところあまり食欲がないし、今朝は美味しそうにオレンジジュースを飲んでいただろう?』
『あ・・・そっか。実は相談しようと思ってはいたんだけど・・・確かに遅れているの。』
『結婚してから…来ていないよな?』
『ええ。その通りよ・・・』
『だったらすぐにでも診て貰わないと・・・』
『ええ。そうね。』

嬉しそうにハンドルを握る夫の横顔を、チェギョンは万感の思いで眺めていた

(こんなに嬉しそうな顔をするなんて思わなかったわ。)

そしてその反面でこうも思う

(でも・・・確率は二分の一よね。お義父様と約束したんだけど・・・そんなに上手く男の子が生まれて来るかしら。
次は必ず・・・って言っちゃったのよね。私・・・)

そんなことを心の中で悩むくらいだから、チェギョン自身にも自覚はあったのだ

シンは総合病院の駐車場に車を入れ、チェギョンと共に産婦人科の受付に向かった

幸い土曜日の午後も診療していた総合病院・・・受付を済ませたチェギョンは、すぐに妊娠の検査を行った

チェギョンがピョルを産んだ日から既に10年近い歳月が経っていたにもかかわらず、主治医は以前ピョルを

産んだ時と同じ医師だった

名前を呼ばれシンと共に診察室に入って行ったチェギョンを、主治医は満面の笑みで迎えてくれた

ピョルの時は・・・誰一人付き添う人はいなかったからだ

『先生、ご無沙汰しております。』
『シン・チェギョンさん、お久しぶりです。そちらの方は?』

その雰囲気からして結婚したに違いないと思いながらも、主治医は敢えてそう聞いた

『主人です。今年に入ってから私、結婚したんです。』
『そうですか。それはおめでとうございます。二重の喜びですね。』
『えっ?二重・・・』
『ええ。妊娠三カ月に入っています。おめでとうございます。』
『ありがとうございます。』
『あの時のお子さんは?』
『ピョルですか?とても元気にしております。今主人の実家で遊んでいますわ。』
『そうですか。幸せそうで本当に良かったです。ご主人・・・幸せにしてあげてくださいね。』
『はい。』

シンが知らない妊娠中のチェギョンを見守って、ピョルを取り上げてくれた医師の言葉にシンははっきりと答えた

ピョルの時に何一つしてあげられなかった無念の想いを、今度こそは晴らそうと決意に満ちた返事だった

診察室から出て車に向かう間、シンはチェギョンの手を握りしめていた

『子供が授かるって言うのは・・・こんな気分なのか。超音波写真のあんなに小さい胎児が
秋には生まれて来るなんて・・・。』
『不思議よね。』
『あぁそうだ。ピョルの超音波写真もあるのか?』
『ええ、あるわよ。母子手帳に入っているから見せる機会がなかったわ。』
『今度・・・見せてくれ。』
『解ったわ。』

新しくお腹に宿った命と同じだけ、ピョルの成長の記録に目を通したいとシンは思う

シンは再びチェギョンを店に送り届け、イ家に戻る前にチェギョンに告げた

『チェギョン・・・今夜はイ家で夕食にしよう。報告もしたいし・・・閉店時間に迎えに来る。』
『えっ?二度手間になるから、私が車で行くわ。』
『いや・・・そうすると帰りの車が俺か君・・・どちらかが寂しいだろう?』
『くすっ・・・確かにそれもそうね。わかったわ。じゃあ・・・またあとでね♪』



イ家に戻ったシンはミンに今夜チェギョンを連れてくることを報告した

すると察しの良いミンは何かを感じ取ったらしく、いそいそと買い出しに出かけてしまった

そして案の定、大量の食料品をキッチンテーブルの上に並べると、メイドと共にご馳走の準備に取り掛かった

その間ピョルはヒョンやシンと共に、ボードゲームをしたり楽しく過ごした

そして閉店時間が近づいた頃、シンはチェギョンを迎えに行った

チェギョンはスムーズに閉店準備を済ませ、閉店五分後には店から出て待っているシンの車に乗り込んだ

『シン君、お待たせ~♪』
『いや。さぁ…行こうか。』
『ええ。』

チェギョンにとっても初めての妊娠報告だ

若干胸が高鳴るのを感じながら、短い時間シンと二人きりのドライブを楽しんだ

『ただいま~♪』
『お義父様お義母様、こんばんは♪』

二人が戻ってくると三人は満面の笑みで出迎えた

『ママ~お疲れ様~♪』
『ピョルただいま♪』
『さぁさぁ・・・みんなお食事にしましょう。』

ミンに促されキッチンに向かった五人・・・テーブルを埋め尽くさんばかりの料理に、一同驚愕する

チェギョンは小声でシンに問い掛けた

『シン君もしかして。もう話しちゃったの?』
『いや・・・言っていないが・・・』

明らかに何かを察知していると言わんばかりの料理の数に、シンもチェギョンもミンの勘の良さに感心する

『さぁ~召し上がって♪』
『母さん随分ご馳走じゃないか。』
『そうよぉ~♪おほほほほ~♪』

並んで座ったシンの右腕を、チェギョンはちょんちょんと突いた

それを受けてシンは全員の顔を見渡し、満面の笑みで喜びの妊娠報告に入る

『あの・・・チェギョンに子供ができました。』
『まぁ~やっぱり~~♪』
『なっなにっ・・・それは本当かい・・・』

喜びを隠しきれないミンとヒョン・・・だがピョルだけは不思議そうにシンとチェギョンの顔を見つめ

椅子から立ち上がり何かを探し始めた

『えっ?どこにいるの~?』

チェギョンは自分のお腹に手を当てて、ピョルに答えた

『ピョル・・・ここにいるのよ。』
『えっ・・・ママのお腹の中?』
『そうよ。これから大きくなって秋になったら生まれて来るわ。』
『え~~~っ・・・秋まで待つのぉ?』
『そうよ。これから育つんだから。秋まで待っててね。』
『パパ=~=!!約束が違うぅ~~!二カ月待ったら弟か妹をお土産にくれるって言ったのにぃ・・・』

ピョルの腕は何かを抱えるようなポーズになってシンに訴えかける

『ピョル・・・あぁ・・・弟か妹は、そんなに早く大きくならないんだよ。あと7カ月待ってくれないか?』
『ふぅ~~~ん・・・・』

膨れっ面になってしまったピョル・・・そんなピョルをミンは諭した

『ピョルちゃん、そんなこと言ったら、ママのお腹の中の赤ちゃんが困っちゃうでしょう?
毎日ピョルちゃんが、元気に生まれてくるようにってママのお腹を撫でてあげるのよ。そうしたらすごくいい子が
生まれて来るんだから~♪』
『ホント?グランマ♪』
『本当ですとも~もうお腹の赤ちゃんにピョルちゃんの声は届いているのよ。
毎日話しかけてあげなさいね~♪』
『解りましたぁ。グランマ♪』

ミンのおかげでピョルの機嫌はすっかり直ったようだ

これから良いお姉ちゃんになるべく、ピョルは朝に晩にチェギョンのお腹に話しかける事だろう




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シン君とピョルの間にある誤解・・・
これだったんですよ。

土日はとても忙しくて・・・
多肉やふぅめる記事があげられなくてごめんね~!


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