『ピョル・・・支度はできた?』
『うん。準備万端だよ~♪』
『式場からそのまま空港に行くんだから、忘れ物がないようにね。』
『ばっちりだよ~♪』
チェギョンとピョルは二泊三日の済州島旅行の為のバッグをそれぞれに持って、車に乗り込んだ
『本当に忘れ物はないわね?』
『もちろ~~ん♪』
ピョルは肩掛けバッグの中を開けると、手で大切な物を確認し満面の笑みを浮かべた
式場に着いたチェギョンはミンにピョルの相手を任せ、花嫁控室に入って行く
『ピョルちゃん・・・とうとうこの日が来たわね♪』
『はいぃ~グランマ❤』
『打ち合わせ通りに・・・ね♪』
『もちろん~♪』
口元に握り拳を当て含み笑いする一卵性祖母孫は、花嫁と花婿の準備が整うのをワクワクしながら
待っていた
『グランマ・・・その衣装すごく綺麗~♪』
『うふふ・・・今日の為に新調したのよ。似合うかしら~?』
『はい!グランマ、とっても良く似合ってますぅ~♪』
『お~ほほほほ♪ピョルちゃんにも礼服を作ってあげればよかったわね。』
『私は~まだまだ大きくなりますから、今作ってももったいないですぅ。もっと大きくなったらお願いしますぅ~♪』
『そう?』
『だって~~あのパパの子ですよぉ~♪』
『それもそうね~おほほほほ~~~♪』
実に楽しそうな二人の光景を、遠巻きにヒョンと支度のできたシンが見ていた
『母さんとピョルはとても仲良しですね。』
『ああ、私の入り込む余地などない程だ。もうすっかり私もチェギョンさんの連れ子という意識はなくなったよ。』
『不思議な子です。ピョルは・・・初めて逢った日から、忘れられない存在になりました。』
『お前はいい人を選んだな。』
『はい。自分でもそう思います。これで私も本当の家族が持てます。』
まだ・・・真実に気づいていない鈍感なこの二人は、そんなことをしみじみと語り合っていた
やがて花嫁控室からチェギョンが、純白のウェディングドレスを纏い姿を現すとピョルはすぐに駆け寄った
『ママ・・・すごく綺麗・・・』
目を開けていられないほど眩しいチェギョンの姿に、ピョルは目を細め立ち尽くした
『ありがとうピョル♪』
その様子を見てシンもチェギョンの元に駆け寄った
そしてやはり感無量の思いで立ち尽くす・・・
『シン君・・・どう?』
『あ?・・・あぁ・・・』
『あぁじゃなくて・・・おかしくないかしら?』
『おかしいところなんてどこもない。とても綺麗だ・・・』
腕を組んだ新郎新婦の前を愛娘のピョルが歩く
挙式だけはごく限られた親しい人だけの参列となり、シンの≪こじんまり≫の願いは叶えられた
誓いの言葉を神父の前で告げる時、シンは不覚にも10年前の事を思い出していた
(10年前・・・何の感情も持たない相手に永遠の愛を問われた時・・・
俺は義務的にイエスと答えた。
今は心からその問いに答えよう。永遠の愛を誓うと・・・
あの暗く冷たい家から解放され、俺は本当の家族を手に入れた。
陽の当たる場所で・・・漸く俺は生きていける。
チェギョンとピョルと共に・・・)
指輪の交換をした時、不覚にもシンの目に涙がこみ上げた
チェギョンにその涙を見せたくないと、シンはそれを誤魔化すかのように誓いのキスを贈り
閉じた目の奥に涙を閉じ込めた
無事夫婦となった二人・・・だがミンの仕切りの結構披露パーティーはシンの願いに反し盛大に催された
レーザー光線の飛び交う会場・・・そんな華やかな場所でピョルはミンとヒョンの間に座り始終ご機嫌だった
それを目にしたシンの親友ギョンは、そんな光景を不思議そうに呟いた
『ガンヒョン・・・シンの両親の間にいる女の子って、チェギョンの連れ子だよね?
妙にシンの両親と馴染んでいるみたいだけど・・・』
『そうね。ふふふ・・・』
『しかしまさかあの二人が結婚することになるとは思いもしなかったな。』
『そう?私はちっとも不思議じゃないけど?』
『不思議じゃ・・・ない?』
『ええ。こうなることは最初から決まっていたのよ。ふふふ・・・』
そう微笑んだきりその後の言葉を濁すガンヒョン・・・夫のギョンにさえ親友の秘密は守るガンヒョンだった
順調に進行していくパーティー・・・ミンが化粧室に立った時、チェギョン側の招待客から声を掛けられた
『初めまして。新郎のお母様でいらっしゃいますね?』
『ええそうですわ。あなた様は・・・?』
『私は新婦の取引先会社の会長をしているソ・ファヨンと申します。』
『まぁ~チェギョンさんの?うちの嫁がいつもお世話になっておりますぅ~♪』
チェギョンの仕事関係者だと知り、ミンは精一杯の笑顔で愛想を振りまいた
ところが・・・
『よくお許しになりましたね。』
『はっ?』
『子供のいる女性と結婚なんて・・・イ家といったら名門の御家柄でしょう?もっといい家との縁談が
≪たとえ二度目だとしても≫あったでしょうに・・・』
その無礼極まりない物言いに、ミンの機嫌は一気に悪くなる
『あら・・・何を仰るんです?チェギョンさんはとても気立てがいいですし、ピョルちゃんも利発でいい子ですのよ。
うちからお願いしてお嫁に来ていただいたようなものですの。』
『そうですか?』
その時ファヨンの背後にいた息子のユルは、母の暴言を許せないとばかりに母の腕を掴む
『母さん・・・失礼な言い方はやめてください。祝いの席で・・・』
『だってあなた・・・あなたがどんなにあの人にご執心でいたか、私が知らないとでも思っているの?』
チェギョンを牽制しておきながら、やはり強欲なソ・ファヨンはユルが袖にされたことを悔しく思っているようだ
めでたい席での母の暴言を、ユルはミンに詫びた
『だからって言いがかりはやめてください。イ家の奥様、大変失礼いたしました。
僕はチェギョンさんの取引先の社長でイ・ユルといいます。
チェギョンさんはとても素晴らしい女性です。僕は長い間彼女を見てきましたが、
僕は全く男として見て貰えませんでした。それほど身持ちの固い女性ですので、
どうぞ誤解なさらない様お願いします。』
ユルのチェギョンを弁明する言葉に、ミンはユルの想いを知った
そしてユルの言葉で、チェギョンがシン以外の男に心を許すことがなかったことを感じ安堵する
『誤解なんて・・・しませんわ。うちのお嫁さんはあなたが仰る通り素晴らしい女性ですもの。
あなたもどうか、素敵な人を探してくださいな。』
ソ・ファヨンから受けた侮辱の言葉は、ユルの言葉によって洗い流された
ミンはその後も機嫌良く、シンとチェギョンの門出を祝うことができた
たくさんの人に祝福され、和やかに結婚披露パーティーが終わった後・・・シンとチェギョン、そしてピョルは
ミンがデコレーションを依頼したシンの車で空港に向かった
<カンカンガラガラ>と音を立てて走るシンの車に、シンは閉口していた
『ママ~~この車、煩いね~あはは~~~♪』
『そうね。ちょっと恥ずかしいかしら・・・』
『ちょっとどころじゃないだろう?すぐにでも外したいよ。』
運転席のシンはすれ違う対向車に、散々好奇の目を向けられうんざりした表情だった
それでも何とか空港に辿り着き、搭乗手続きを済ませチェギョンが洗面所に向かった時の事だった
『ピョル・・・荷物を渡しなさい。これは手荷物で持ち込めないから・・・』
『あ~これはいいんですぅ~♪私はお留守番しようかと思って・・・』
『えっ?留守番?なぜ!』
『グランマが~新婚さんの邪魔をしちゃあいけないっていうから~♪』
『グラ・・・ンマ?』
不思議そうに首を傾げた時、ピョルのずっと背後に母ミンの姿をシンは発見し驚く
『か・・・母さん・・・』
驚いて目を丸くしているシンにピョルは満面の笑みで問いかけた
『シンさん・・・今日からパパって呼んでもいいんでしょう?』
『あ?あぁ・・・もちろんだ。』
『だったら・・・結婚祝いにいい物あげますぅ~♪』
ピョルはカバンの中から≪例のアレ≫を取り出し、シンに手渡した
『なんだ?これは・・・』
『だから~結婚祝い❤』
シンは封筒から中身を取り出し、その書類に目を通した
(イ・シンとシン・ピョルの・・・親子鑑定結果?・・・・えっ?
親子である確率99.9%・・・な・・・なにっ・・・)
『ぴょ・・・ピョル・・・これは・・・』
『じゃあパパ、いってらっしゃ~~い♪
あっ!そうだ!私・・・お土産は弟か妹がいいから~♪じゃあね~~♪』
満面の笑みで手を振りミンの元に走っていくピョル
『ぴょ・・・ピョル~~!!』
シンが大声で叫んでもピョルはシンの元に戻ることはなく、やがてミンの元に辿り着くと二人揃ってシンに向かって
手を振り空港から去って行った
(ピョルが・・・俺と親子?つまり・・・俺の娘?)
その親子鑑定書を握りしめながら、シンはあまりにも衝撃的な事実に頭の中が真っ白になり
ただただその場に立ち尽くすのだった
シン君に真実を告げるお役目は~
ピョルにしていただきました~♪
予想・・・当たってましたか?
さて次はヒョンさんに告白と
チェギョンから語られる真実です❤