ピョルの夏休みはあっという間に終わり、新学期が始まった
ピョルという理由が店にいないのに、休憩時間にチェギョンの店に顔を出すことのできなくなったシンは
週末のお昼頃店を訪れ、ピョルと共に食事をした後チェギョンの許可を得てピョルを連れだすことにした
チェギョンはもちろん仕事があるから一緒に出掛けようとは言えない
チェギョンによく似たピョルと少しでも親交を深めたい・・・そう願うシンだった
『ピョル・・・どこか行きたいところはあるか?』
『えっ?ん~~とね明洞の街を歩きたい~♪』
『明洞?若者の街だな。』
『シンさんだってまだ若いよぉ~♪』
ピョルを車に乗せシンは明洞に向かって車を走らせた
駐車場に車を停め、二人で歩きだす
チェギョンのミニチュアのようなピョル・・・あどけなさはあと数年で失ってしまうだろう
あっという間に女性と呼ばれる美しさになってしまうに違いない
シンはそんな思いでピョルと共に明洞の街を歩く
『何か欲しい物はあるのか?何でもいいなさい。』
『えっ?別に欲しい物なんてないですぅ。ただ~シンさんみたいなカッコいい人と、明洞を歩きたいな~って
思っただけ~♪えへへ~❤』
『そうなのか?しかし・・・人が多いな。』
思い返せばチェギョンとは・・・当時婚約者のいる身のシンは隠れるように逢うしかなかった
(こんな風に日中の街中をデートしたこともなかったな・・・)
今更ながらに悔やまれる10年前の短く愛おしい日々
チェギョンと一緒に歩いているような錯覚に陥っていたシンに、ピョルは唐突に核心をついた質問を投げかけた
『シンさんは・・・ママの事が好きですか?』
『あ?・・・あぁ。』
『どのくらい?』
『今まで出逢った人の中で一番だ。』
『じゃあ・・・ピョルの事は?』
『ピョルは・・・もちろんその次に好きだ。』
『でもぉ・・・ああ見えてうちのママって結構モテるんですよ。出入り業者さんなんか・・・
み~んなママを狙っています。』
『なにっ?・・・そうなのか?』
『はいぃ~♪だって~~まだ若いのにあの店のオーナーでしょ?商売も結構やり手だしぃ~
なんたってママは可愛いから~。その上ピョルみたいな可愛いおまけもついて来るんですよぉ~!
みんな両手上げちゃいますよぉ・・・』
『そっそれは大変だな。』
『でしょ~?だからシンさんボヤボヤしていたら他の人にとられちゃいますよぉ~♪』
≪もしもピョルちゃんとシンが親子でなかったとしても、私はもうピョルちゃんのおばあちゃんになるつもりよ。≫と
ミンから言われたピョルはかなり強気になってみる
(でもおばちゃんからの連絡・・・なかなか来ないなぁ・・・
もしかして…やっぱり違っていたのかな・・・)
目の前にいるシンが父であることを前提に、作戦を実行にうつし始めてしまったピョル
なかなか来ないミンからの連絡に、ピョルはじれったい思いを募らせていた
そんな時・・・
『ピョル…このバッグ可愛いじゃないか?』
唐突にシンに話しかけられ、ピョルはシンが目を留めた物に視線を向けた
『わっ・・・可愛い~♪』
『ピョルにプレゼントしよう。』
『えっ?シンさん・・・いいんですかぁ?』
『あぁ。これなら学校にも塾にも持って行けるだろう?』
『うん!!ありがとう~♪』
ピョルはシンからプレゼントされた猫の刺繍を施された布製バッグを、嬉しそうに抱き締めた
(チェギョンもこんな風に喜ぶのだろうか。そうだ・・・チェギョンになど何一つとしてプレゼントしていない。)
それはチェギョンが思い出に残る物を嫌がり拒んだからなのだが、シンはそんな解消のない昔の自分を思い返し
後悔で胸を痛めた
シンとの楽しいデートから帰宅したピョルは、チェギョンにそんなに楽しかったかを報告した
『もうね~シンさんカッコいいから~、綺麗なお姉さん達がわざわざ振り向いて顔を見るんだよ~♪
ピョルね~シンさんみたいなパパが欲しいな~♪
お友達にだって自慢できるし、何より優しいし最高~♪』
『そう・・・よかったわねピョル。』
今まで受けたことのない父親の愛情
ピョルは本当に幸せそうに、シンの事を自慢げに話す
(そのシンさんがパパだなんて・・・あぁ・・・いえないわ・・・)
今更どう告白してよいものか。チェギョンもチェギョンで実は悩んでいたのだった
その夜・・・ピョルが寝たと思われる頃、シンはチェギョンの店の前まで車を走らせチェギョンに電話を掛けた
『もしもし?シン君?』
『あぁ。ピョルはもう寝たのか?』
『ええ。シン君にたくさん遊んで貰ったおかげで、すぐに眠っちゃったわ。今日はありがとう。
ピョルに可愛いバッグをプレゼントくれて・・・』
『今から出てこれないか?』
『えっ?』
『今、店の前まで来ているん。少しだけ出てこられないか?』
『今っ?ご・・・五分だけ待って!そしたら出ていくから・・・』
『あぁ待っている。』
チェギョンが焦ったのも無理はない
すっかり就寝スタイルになってしまっていたチェギョンは、慌てて着替え髪を梳かし玄関から店の前に出て行った
すると・・・10年前良く送ってくれた場所に、シンは車を停めていた
『シン君お待たせ。スッピンでごめんね。』
『いや・・・もしかしてもう眠るところだったか?』
『いいえ。まだ起きている時間よ。でもピョルと一緒に行動しているとどうしてもね。
ピョルがね・・・シン君から貰ったバッグを、抱いて寝ているのよ。とても嬉しかったみたい・・・』
『そうか。喜んで貰えてよかった。あぁそうだ。チェギョンにこれを・・・』
シンは身を乗り出し後部座席から紙袋を取ると、それをチェギョンの膝の上に置いた
『えっ?私に?』
チェギョンはその紙袋の中を覗き込み、満面の笑みを浮かべた
『わぁ~すごくいい香り。どうしたの?』
『あ・・・いや、別に意味はないが、再会の贈り物だ。』
今まで贈り物などしたことがなかったシンは、手始めにアートフラワーから贈ってみようと思ったのだ
『とても綺麗。いいの?頂いちゃって・・・』
『あぁ。部屋に飾ってやってくれ。』
『そうするわ。』
『ところで・・・君の取引業者には独身男性が多いのか?』
『いいえ、そんなことないわ。どうして?』
『ピョルが≪ママは取引業者に人気がある≫といっていたから・・・』
『ぷっ・・・もうお孫さんもいるおじいちゃんとかばかりだけどね。人気があるのは男性だけじゃないわ。
その奥様とだって仲良しなのよ。』
『そ・・・そうか。だがあのイ・ユルという男は独身なんだろう?』
『ええ。そうだけど・・・』
『あ・・・いやいっそのこと、ピョルの父親に逢わせて貰えないか?』
『えっ?』
一瞬チェギョンは絶句する
(もう・・・バッグの中のコンパクトを開いて、シン君に見せつけてあげようかしら・・・)
『だからそれは無理なの。先方はピョルのこと知らないんだから・・・』
『あぁそうだったな・・・』
若干会話がチグハグではあるが、シンはシンで必死にアプローチを開始したようだ
学校から帰宅したピョルがまずすることは、机の中にしまってある携帯電話を確認することだった
(あ!おばちゃんから着信が・・・すぐ電話しなくっちゃ!!(
ピョルはミンの番号を押す
するとミンはすぐにその電話を取った
『ピョルちゃん?』
『はいぃ~♪学校だったので電話が取れなくてごめんなさい。』
『いいのよ~♪今…おうち?』
『はいそうです。』
『この間のパーラーまで来られる?今そこに向かっているのよ。』
『大丈夫です♪』
『私はあと五分ほどで到着するわ。じゃあまたその時にね。』
『はいっ!』
ピョルは部屋から飛び出すと、店にいるチェギョンに声を掛けた
『ママ~消しゴムがなくなっちゃったから、ちょっと買いに行ってくるぅ~♪』
『解ったわ。気を付けて行ってくるのよ。』
『はぁ~~い♪』
ピョルは胸を躍らせながら、ミンと待ち合わせているパーラーに向かった
長く待たされたシンとピョルの親子鑑定・・・さて結果は如何に・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
結果は如何に・・・って決まってるんだけどね(爆)
そう締めくくって見たかったの(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
いやぁ・・・曇っていて蒸し暑い。
でも朝晩はなんとなく空気が秋らしくなってきました❤
最近シジミチョウがめちゃくちゃ多い。
皆さんのところはいかがですか?