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蒼い月 45 (最終話)

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ウナに・・・女の子が生まれた

もちろんすぐにその情報は宮殿に入ったのだけど、私の元にはイム世話係から直接電話が入った

『皇后様・・・ウナ様が、女の子をご出産なさいました。』
『そう!母子共に健康?』
『はい。それはもう・・・ウナ様がご誕生なさった時のように愛らしい赤ちゃんで・・・』

イム世話係はそういいながら声を詰まらせた

あの時の事を思い出し胸を痛めているのだ

『イムさん・・・もう忘れなさい。』
『ですが皇后様・・・私には、どうしても忘れることができません。』
『ウナと同じように・・・その子もしっかり面倒を見てくださいね。』
『はい!もちろんです。この命が燃え尽きる時まで・・・しっかりお世話させていただきます。』

未だ過去の罪にとらわれているイム世話係・・・ヒョリンはこの人にとんでもない重い罪を背負わせた

もう・・・ヒョリンはいないというのに、その時を思い出し少しヒョリンが憎らしく思う

んっ?・・・ウナの赤ちゃん。つまり私の初孫?いや~~んおばあちゃんなの?まだ45歳にもなっていないのに・・・

でもすぐにギョムのところにも赤ちゃんが生まれるんだわ

これから忙しくなりそう・・・

シン君はウナに赤ちゃんが誕生したのを聞いて、最初は仏頂面をしていたけど・・・退院したとの知らせに

我慢できなくなったみたい

スケジュールを調整して、翌日ホン家に向かうことになった

久し振りの赤ちゃん・・・なんだか胸がドキドキして高鳴るって言うのかしら・・・ときめくわ

ホン家に入って行った時・・・私はなんだか尋常じゃない雰囲気を感じ取った

確かにウナは皇室出身者なのだから、ホン家に警護の人間がいてもおかしくはない

だけどこの数って・・・いくらなんでも多すぎない?

ホン家に入って行った時・・・その理由がよ~~く解ったわ

『まぁ~陛下と皇后もやってきたのか?』
『先帝に先皇后様・・・ここで一体何を?』

シン君はとても不機嫌そうな顔でホン家で出迎えに出た先皇后様に問い掛けた

『ひ孫の顔を見に来たに決まっておる~♪なあにホン家の迷惑にならぬよう、私の実家に身を寄せておるので
心配はいらない。』

つまり・・・この屋敷をホン・ジュソン君に贈り、ミン家の後釜にホン¥ジュソン君を据えたのも・・・

もしかして・・・もしかして・・・ひ孫の顔が頻繁にみられるという副産物を見越しての事?

皇位を退いた今・・・逢いたい時に逢いたいだけミン家に滞在できるお二人

もちろん・・・そんな計算高い方ではないけど・・・結果的に≪してやられた!≫そんな気分が私を苦笑させた

シン君は不機嫌極まりない顔で更に問い掛けた

『それで生まれた赤ん坊は・・・もう抱いたのですか?』
『あら~当然よ。昨日のうちにやってきたんですもの。ねっ?あなた♪』
『ああその通りだ。』

先の陛下まで同調しシン君に勝ち誇った笑顔を向けた

『っつ・・・』

あぁ・・・なんて不機嫌なシン君。でも・・・ウナと赤ちゃんの部屋を訪れ赤ちゃんを腕に抱いた時、シン君はまるで

蕩けるような瞳でウナの赤ちゃんを見つめた

『なんて可愛い赤ん坊なんだ・・・』

父親がホン・ジュソン君だなんて事は既に忘れているみたい

生まれたばかりの赤ちゃんを前に嫉妬の感情はすぐに消え去った



その後皇太子ギョムのところに親王が生まれた

皇位継承者の誕生に、国中がお祭り騒ぎとなった

シン君は私を伴い早速病院に駆け付け、早めの親王抱っこを許された

もちろん…それはギョムよりも後だったけどね・・・



子供たちの出産が続き・・・漸く落ち着いて安堵した時、親友のガンヒョンが夫のギョン君と共に宮殿を訪れた

『陛下・皇后様・・・ご無沙汰しております。』

なんだか仰々しい挨拶だったけどそれは女官や内官の手前だったみたい

折り入って話したいことがあるというので、二人で私の部屋に向かた後は・・・あの頃のガンヒョン

高校生の頃と何ら変わらないガンヒョンの態度に戻った

『チェギョン・・・アンタ覚えてる?いつかアンタの絵本を出版したいって話したでしょう?』
『えっ?あ・・・そういえばそんなことがあったわね。』
『とうとうその時が来たわ。』
『えっ?』
『そろそろギョンの仕事も忙しくってね。この度アタシ・・・退職してギョンのサポートをすることになったのよ。
編集長として最後の仕事を、アンタの絵本出版で締めくくりたいのよ。』

色んな事が解決し、漸く少し絵を描いて楽しむ時間も持てるようになってきた頃だった

『そう・・・編集長にまで上り詰めたのにとうとう退職?』
『ええ。皇后様の描かれた絵本を、手掛けさせてもらえない?アタシの最後の仕事として・・・有終の美を飾るの。』
『でも・・・シン君はなんというかしら・・・。』
『陛下?陛下なら説得上手なギョンが、今説得しているわ。間違いなく承諾をもらっている筈よ。』
『そう。じゃあ・・・描いてみようかな。』
『そう来なくっちゃ♪』

私はその日から公務の合間を縫って、子供向けの絵本製作に没頭した




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親友のチャン・ギョンと妻のイ・ガンヒョンが訪ねてきたのは、チェギョンに絵本を描かせてほしいと

お願いするためだった

もちろん国の母たるもの・・・それが自分の私利私欲を肥やすことになっては困る

ギョンとガンヒョンはその辺りの事もしっかり煮詰めて、俺を説得にやってきた

チェギョンにギャランティーは発生しない

また絵本で得た収益は、すべて恵まれない子供たちの為に使われるという

それだったらと・・・俺は快くその話を許可した

チェギョンはその後・・・寸暇を惜しんで絵本を描くことに没頭していった

元々絵を描くことが好きだったというチェギョン

皇室に嫁いでから・・・そんな余裕は全くなかった

少しでもこの世にチェギョンの想いが伝わるといい・・・そんな気持ちもあった

思えば・・・皇太子の許嫁という立場だった為、チェギョンは波乱万丈な年月を送った

親とも離れ生きていかねばならなかった

だがそんなチェギョンが、自分を追い詰めた人間達に与えた罰はとても慈愛に満ちたものだった

それらは何れすべてがチェギョンの元に忠誠心という形で返ってきた

まぁその忠誠心が、俺達の愛娘を奪っていったんだが・・・



チェギョンの描いた絵本は、ミリオンセラーとなった

その絵本の帯には、元相撲部で現在有名画家となった男が絶賛する文章を載せ・・・チェギョンの絵本は

益々売り上げを伸ばした

タイトルは≪蒼い月≫

雲に隠された月がその全貌を現し・・・そして時に厳しく…そして時には優しく、暗黒の闇を淡い月の光で

照らし出すという内容だった

これは・・・チェギョンの半生を間近で見てきた俺には、自叙伝を比喩した絵本に思えた

この絵本で得た収益は・・・たくさんの子供達の就学資金となることだろう

いやそれでもすべての恵まれない子供に、それが行き届くとは思えない

だからこれからも俺達は、慈愛に満ちた目で国民を見守っていく

俺達の背中をきっとギョムもウナも見ていてくれることだろう

親として国民の父母として、俺達はこれから手を携えて互いを高め合っていこう・・・そう思う



永遠の命なんてものはない

だがその想いは永遠に残る・・・そして誰かの記憶にも残る

なにかをこの世に残したくて・・・俺達はこれからも足掻くのかもしれないな





蒼い月 完

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ん~~最終話だというのに
昨日の疲れが残ってて
ふぅちゃんの添い寝でワッショイしてしまいました。(爆)

死後のシン君の呟きは、私の呟きでもあります。

しょっぱなからショッキングなお話でしたが
最後までお付き合いくださった皆様
本当にありがとうございました❤

ちょこっと短編を書いて
夏休みを頂きます❤

これからもお付き合いいただけると嬉しく思います。

ありがとうございました❤

~星の欠片~管理人★ emi ★


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