Quantcast
Channel: ~星の欠片~
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

蒼い月 44

$
0
0


それから話はトントン拍子に進み、ウナとホン・ジュソン君の婚約が国民に発表され婚姻の日も間近となった

そんなある日、婚姻前で忙しいはずのホン・ジュソン君が本殿を訪ねてきたのだ

それも自分一人ではなく、昔懐かしい相撲部出身の面々を引き連れての訪問だった

皆すっかり大人になった元相撲部五人組は、私とシン君の前になぜかたくさんの贈り物を届けてくれた

『今の私達があるのは両陛下のおかげです。』

贈り物は青磁の壷だったり素晴らしい絵画だったり・・・どれもこれも宮殿にいる私達でさえ目を見張るほどの

品物ばかりだった

あの時ホン・ジュソン君と共に警察学校に進んだ二人は、それぞれに皇室警察と民間の警察の

高い位に就いていた

そして韓国芸術大学に進んだうちの一人は、国内でも有名な画家になっていた

もう一人は大学卒業後司法試験に合格し、努力の末自分の法律事務所を持つまでになり

今では≪弱者の味方≫と称される敏腕弁護士になっていた

みんな出世したなぁ・・・あの時、シン君がこの五人を奨学生として受け入れてくれなかったら、

今のような立派な姿は見られなかったかもしれない

でも中でも一番の出世頭は、やはりホン・ジュソン君ね

ホン・ジュソン君は王族となり、もうすぐこの国の公主を妻に迎えるのだから・・・



懐かしい顔ぶれと逢った数日後・・・また懐かしい顔が私達の元を訪れた

カン・イン君だ

カン・イン君は15歳になったお嬢さんを連れて、私達の前に立った

『皇帝陛下・皇后様・・・お元気そうで何よりです。』
『イン・・・久しぶりだな。元気にしていたか?』
『はい。とても元気にしておりました。』

イン君の舅に当たるミン家の当主は、五年前獄中で病死していた

シン君にはメールで何れ舅の墓を作るつもりだと言っていたイン君

もしかしたらミン家の墓を作るつもりで帰国したのかしら・・・私はそう思った

『一緒に連れてきたのは・・・インの娘か?』
『はい。その通りです。』

この子がヒョリンに罪を自覚させた子なのね

ヒョリンに似て手足は長いけど顔はイン君に似ているかもしれないわ

『そうか。皇室警察署で遺骨は保管している。私から連絡しておこう。』
『ありがとうございます。実はこの度、私の本社勤務が決まり娘と一緒に帰国いたしました。』

えっ?ヒョリンは・・・どうしたの?

『奥さんは・・・どうしたんだ?』

戸惑いがちに問い掛けるシン君

『実は二年前に義母が・・・そして三カ月前にヒョリンが他界いたしました。』
『なにっ?』

シン君が驚くのも無理はない。私にとってもそれは衝撃的な言葉だった

人を押しのけても頂点に君臨しようとしていたヒョリンが、そんなに若くしてこの世からいなくなるなんて

とても信じられない

ヒョリンはアメリカに渡ってからすべての欲が全くなくなったという

14歳から続いた私とヒョリンの戦いはとうとう幕を下ろした

安堵していい筈なのに・・・どこか一抹の寂しさが残るのはなぜだろう



その後ウナは皇室で定められた仕来り通りの儀式を済ませ、皇族から抜けホン・ジュソン君の元へ嫁いでいった

もちろんイム世話係も一緒だ

今まで公主として生きてきたウナは、家事全般などに非常に苦労しているようだ

だがそこはホン・ジュソン君。自分自身も家事を手伝いながら、またウナの手本となってくれるメイドも数人

雇ってくれたそうだ

ウナの相談役にはイム世話係がいる

私は何の心配もしていなかった

娘を嫁がせたシン君は暫く魂が抜けたように脱力していたが、すぐに皇帝たる威厳を取り戻した

だって・・・私という妻がついているんですもの当然よね



イメージ 2





ウナがホン・ジュソンの元に嫁いでいってから数カ月が過ぎた

昨年はギョム・・・今年はウナと皇室の慶事は続いていたが・・・まさかここで番狂わせが起こるとは・・・

ある日ホン・ジュソンが、俺の元に今まで見せたこともないような笑顔で訪れたのだ

『陛下・・・ご報告がございます。』

ホン・ジュソンの訪問を聞き、チェギョンも部屋に入ってきた

俺の隣に並ぶと一体何の報告だろうかと首を傾げた

『一体どうしたのだ?そんなに慌てて・・・』
『ウナ様が・・・ご懐妊なさいました。』

な・・・なんだと?ホン・ジュソン・・・お前、私の大事なウナを妊娠させるなど・・・なんて鬼畜な行いを・・・

あぁ・・・そうだった。ウナはこいつにやったんだ

『まぁ・・・それはおめでとう♪』

嬉しそうに祝福する妻チェギョン・・・だが俺の心は真逆だった

『そ・・・そうか。』

待て!!よく考えたら先に婚姻した皇太子ギョムのところは、まだめでたいニュースが入ってこないのに

ウナが先だなんて・・・

いや・・・そんなことを今更嘆いても仕方がない

もう既にウナのお腹には新しい命が宿っているのだ

『おめでとう。』

よく考えてみれば・・・俺がチェギョンを妊娠させたのも、婚姻してすぐの事だった

諦めよう・・・・ウナはもうこいつの妻だ

番狂わせに飛び込んできたウナの妊娠報告・・・

皇太子であるギョムにプレッシャーをかけてしまうのではないかと少し心配していたが、それから二カ月して

ギョムからも妃宮の懐妊報告があった

来年は両方の出産で皇室は騒がしくなりそうだ




『シン君・・・ウナの妊娠がそんなにショックなの?』

ギョムのところはともかくウナに関しては喜びよりも複雑な表情をするほうが多かった俺に

チェギョンハ問い掛けた

『いや別に・・・』
『なんなら・・・今からもう一人産もうか?まだ産めるわよ?』
『ばっ・・・馬鹿を言うな。孫よりも若い子供だなんて・・・』

そういいながらも珍しい妻からの誘いに、応えない筈はない

もちろん・・・不測の事態が起こらないように、十分な注意を払った俺だった



宮殿を出て以来、ウナはなかなか顔を見せてくれなかった

少しお腹がふっくらした頃、一度だけご機嫌窺いに訪れたきりだ

ウナに逢いたい・・・そんなことを思っていた時、俺のスマホにメールが届いた

ん?なんだ?動画付きだ

相手はホン・ジュソン・・・まさか!

慌ててメールを開けた俺は愕然とした

≪皇帝陛下・・・ウナ様に女児が誕生いたしました。≫

チェギョンと二人で食い入るように添付された動画に見入る

『シン君・・・ウナの赤ちゃんの時にそっくり。』

それはつまり・・・お前によく似ているということだチェギョン

『あぁそうだな。』
『病院から退院したら、一度ホン家を訪ねましょう。』
『そうしよう。』

俺は一度として初めての抱っこが許されなかったが、ホン・ジュソンはきっとその名誉ある一番を

手にすることができただろう

羨ましい・・・

今更ながらそんなことに嫉妬してしまう俺だった




イメージ 1

では次回・・・45話にて
このお話を完結させていただきます。
最後までどうぞお付き合いくださいね♪

お盆休みを頂く前に
来週は短編をお送りする予定です❤



















Viewing all articles
Browse latest Browse all 1451

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>