先の皇后様の妙案によりウナとホン・ジュソン君の縁が繋がった夜・・・私はこっそりイム世話係を
部屋に呼び出した
もうイム世話係も高齢だ
この辺りであの時の処罰から解放してやろうと思ってのことだった
与えられた刑罰などではなく心からウナに尽くしてくれたイム世話係
皇太子妃として公務に多忙だった私にとって、なくてはならない人だった
<トントン>
『お呼びでしょうか?皇后様・・・イムでございます。』
『どうぞ。入ってください。』
『失礼いたします。』
どこか嬉しそうな表情のイム世話係を、私はソファーに掛けるよう促した
イム世話係は私の前に腰を下ろし、祝福の言葉を放った
『皇后様・・・公主様のご結婚の事・・・おめでとうございます。私もこんなに嬉しいことは今までにございません。』
『ありがとう。イムさんは二人の想いに気が付いていたのね?』
『はい、皇后様と同じように気が付いておりました。』
一応母である私の顔を立ててくれる気遣いはさすがだと思う
『円満な解決法が見つかって安堵したわ。』
『はい。私も本当に安堵いたしました。』
『ウナが結婚してからの事なんだけど・・・あなたはあの日から18年・・・いいえ19年近く
とてもよくウナに尽くしてくれたわ。もうこの辺りであなたを世話役から解放してあげたいの。』
『・・・皇后様・・・それはもしかして解雇・・・と言うことでしょうか?』
『いいえ違うわ。円満退職よ。あなたがウナに尽くしてくれた年月に対するお礼はちゃんと用意させていただくわ。』
するとイム世話係は動揺し目に涙を溜めて私に訴えかけた
『皇后様・・・それだけはどうぞお許しください。ウナ様のお世話をすること以外、私に生きる術はございません。
ウナ様の傍を離れたとしたら・・・どうやって生きたらよいのかさえわかりません。
どうか・・・ウナ様が結婚なさったあとも、ウナ様の生んだお子様の世話役にご任命ください。』
真剣にそう告げたイム世話係
でももう・・・高齢も高齢・・・老人に近い年齢だ
普通の企業ならばずいぶん昔に退職し年金で悠々自適な老後を過ごしている筈だ
なのになぜ?
あ・・・そうか。イム世話係の一人娘は、今では皇帝陛下付きの尚宮となり・・・イム世話係は
退職して宮殿を出たところで一人ぼっちになってしまうのだ
思案する私にイム世話係は問い掛けた
『どうしても・・・辞めなければならないのでしょうか・・・』
今まではウナの成長を見守り続け・・・陰に日向にウナのことを思い一生懸命世話してくれたイム世話係だ
一人ぼっちになってしまうと知りながら、今更退職を促すことなどできない
『わかったわ。イムさん・・・あなたの身体が辛くないのなら、このまま世話係を続けて貰いましょう。』
『ありがとうございます!心から感謝申し上げます。』
イム世話係は目に涙を浮かべながら嬉しそうに微笑んだ
その日・・・どうやらホン・ジュソン君の部屋で酔い潰れたシン君は、部屋に戻って来なかった
まぁ・・・自分と同じ歳の娘婿を受け入れたのだから、自棄酒くらい飲みたいだろう
でもねシン君・・・ある意味ウナは、誰よりも頼もしい旦那様と結婚できると思うのよ
だって生まれる以前からホン・ジュソン君は、ウナを見守り続けてくれたし・・・腕っぷしもイギサの中でピカ一
ウナの身の保証されたようなものだわ
ホン・ジュソン君の怪我が落ち着いて、身体を起こしてもよいと主治医から許可が出た時・・・
私達は再びギョン君に迎えの小型ジェット機を依頼した
その小型ジェット機には・・・もちろんホン・ジュソン君も一緒に乗っていだった
ホン・ジュソン君は先皇后様の兄上を訪ね、その日からミン家の隣にある屋敷に住むこととなった
そして毎日先皇后様の兄上から王族としての教育を受けた
それは半年にもおよび・・・教育が終わる頃には王族ミン家の隣にあるホン家の改修工事も済んだ
ソウルに戻って半年後・・・ホン・ジュソン君はどこからどう見ても王族たる風格を備え・・・王族会の席に座っていた
その日の王族会の議題は、かねてより催促のあった公主の結婚問題についてだった
もう準備も万端・・・あとはホン・ジュソンをウナの結婚相手として王族に認めさせるだけだ
先皇后様の兄上の隣に座ったホン・ジュソンは、実に堂々として年齢以上の風格さえ感じさせた
『今日は公主の結婚問題についてだったな?』
『さようでございます皇帝陛下。』
『是非当家の長男に公主様を嫁がせていただきたい・・・』
『黙らぬかキム家・・・血統では我が家の方が上だ!』
『待ちなさいソン家・・・我が家の息子の方が優秀だ!』
あぁぁ・・・烏合の衆め、もう諍いが始まったか
俺は騒ぎ立てる王族達を一喝した
『黙らぬか!父親である私の話も聞かず、それぞれ勝手なことばかり申すでない!』
俺が声を荒げると、王族達は水を打ったように静かになった
『公主の結婚相手の事だが・・・私には心に決めた者がいる。
先皇后様の御出身であるミン家の血筋を引く・・・ホン・ジュソンだ。』
王族達は皆驚いて、先皇后様の兄上を見つめ…それからその隣にいるホン・ジュソンを凝視した
恐らくウナの相手にしては歳を取りすぎていると、誰もが思った事だろう
『陛下・・・私から経歴を紹介させていただいてよろしいですか?』
ミン家の当主・・・つまり俺の伯父上に当たる人は俺に許可を求めた
『あぁ。構わぬ。』
『私の隣に座っている男はホン・ジュソンといいます。
ミン家とは遠縁のホン家の血筋です。
皇帝陛下や皇后様と同じ高校に通い、その後警察学校を卒業し宮殿のイギサに配属されました。
そして20年近く真面目に勤め上げ、この度王族ミン家の後を継ぐ者としてイギサの職を辞しました。
ホン・ジュソンと公主様の気持ちは固まっています。どうか今後・・・私の分もこのホン・ジュソンをお引き立て
頂けるようお願いいたします。』
経歴詐称などという愚かな真似はしない
ホン・ジュソンはいつもイギサとして先頭に立っていた
ホン・ジュソンを知っている者もいる筈だ
つまらない嘘は・・・どこから綻ぶかわからないからな
『ですが皇帝陛下・・・大学も出ておらず、最終学歴が警察学校・・・そのような男が公主様の婿になるなんて
前例のないことでございます。』
あぁ・・・そういうだろうと思っていた
『そなた達は知らないだろうが、このホン・ジュソンはイギサの中でも非常に優秀な男だった。
その忠誠心たるや、そなた達はホン・ジュソンの足元にも及ばないだろう。
それに私はホン・ジュソンが公主を任せるにふさわしい男と認めたのだ。
それでもまだ異議を唱える者があるなら言ってみるがいい。
私を敵に回してもよいというならな・・・。』
以前ミン・ヒョリンの生家を抹消させたことの或る俺だ
敵に回したらどんなに怖いかわかるだろう
王族を集めた会議は誰一人文句を言わせることなく、満場一致でウナはホン・ジュソンに嫁ぐこととなった
ウナはまだ大学二年生になったばかりの春の日の事だった
嫁に出すには・・・正直惜しいが、もう足掻いても無理だろうな
昨晩深夜一時半・・・
ものすごい猫の叫び声で目を覚まし
慌てて階下に降りて行った私
みると・・・めるはいるのに
ふぅちゃんの姿がない
夜、私が寝る時にはいたはずなのに・・・
慌ててドアを開けてみると
ふぅちゃんが…家に飛び込んできたんです。
どうやら長男が車に忘れ物を取りに行った際
一緒に外に出てしまったようです。
深夜に二時間・・・家の周りを彷徨い続けたふぅちゃん
今日は全くご飯を食べてくれません。
二時間の間に・・・どんなに怖い目に遭ったのか
教えてはくれませんが・・・
外傷等はないのですが・・・ぐったり寝てばかりのふぅちゃん
そんな理由で今日はふぅちゃんをしっかり見てあげようと思います。
お話の御返事は明日になります。
どうぞよろしく。
お話の方はいよいよ次回シン君とチェギョンは
花嫁の両親になりそうです❤