夕方になって私の熱は随分楽になった
安心しゆっくり休めたのが良かったのだろう
赤ちゃんに授乳している時、シン君がギョムを連れてきてくれた
シン君・・・あまり眠れなかったのかな
とても疲れた顔をしていた
無理はない・・・昨日の今日だもの。きっと私より寝ていない筈だ
ギョムは赤ちゃんの顔をうっとりと眺め興奮気味。そうよね・・・大人ばかりの宮で仲間ができたんですもの
『とうさま~僕のいもうとはなんと呼んだらいいんですかぁ?』
あ・・・それ、私も気になっていた
『そうだな。いくつか候補があったのだが、今ここで決めてしまおう。・・・ウナはどうだろう?』
『ウナ❤ウナですかぁ?かわいいですぅ。おかおもかあさまとそっくりだし、きっと人気者になります。』
ギョムはすっかりウナに夢中。この可愛がり様には少々、先が思いやられるわ
たくさん母乳をのんでよく眠るウナ
退院時には生まれた時よりも一回り大きくなった気がした
私はシン君のお迎えで東宮に戻ることとなった
ウナを抱いて病院の裏口から出ていくと、大勢のマスコミ関係者が私とウナを待っていた
『皇太子殿下・妃殿下・・・内親王様お誕生おめでとうございます。』
『ありがとうございます。』
『お名前はウナ様と発表されましたが・・・』
『ええ。その通りです。』
『お顔を・・・撮らせていただいてもよろしいでしょうか?』
『ええ。フラッシュを焚かないと約束していただければ・・・』
私はマスコミ各社に見えるように、ウナを抱き直した
テレビカメラやウナの顔を写そうと押し寄せるカメラマンを、ホン・ジュソン君が私たちの前に立って阻んだ
『危ないですからもっと下がって一列に並んでください。内親王様が怪我でもされたら責任が取れるのですか!』
威圧的なホン・ジュソン君の剣幕に押され、マスコミ各社は順番にウナの顔を見てはその表情をカメラに収めた
『とても愛らしい内親王様です。国民も成長を楽しみにしておりますよ。』
其々に賞賛の言葉を残し去っていくマスコミ各社
シン君は私の隣で、満更でもない顔で微笑んだ
あまり長時間その場にいるのはウナの為によくない
ホン・ジュソン君に誘導され私達は公用車に乗り込んだ
迎えの公用車の運転席にはコお兄さんが座っていた
『妃宮様・・・内親王様お誕生おめでとうございます。』
『ありがとうございます。コイギサさん・・・見てください。私に似ているでしょう?』
振り向いたコお兄さんはウナの顔を見てこれ以上ない程に目を細めた
『良く・・・似てらっしゃいます。では出発いたします。』
決して口数の多くないコお兄さん・・・いつかウナにも護身術を教えて貰おうと私はその時思った
東宮に戻ると女官のお姉さん方や内官さん・・・そしてイム親子も私達を出迎えた
ギョムなどは車が到着するなり駆け寄り、ホン・ジュソン君に止められたほどだ
『妃宮様・ウナ様お帰りなさいませ。』
『ただいま戻りました。』
女官のお姉さん方は病院にも顔を出していたのでほとんどの人がウナの顔を見ていたけれど、
その短い入院期間で大きくなったウナに目を見張った
私はウナを抱きながらイム世話係さんに声を掛けた
『イムさん・・・ウナを沐浴させたいのですが・・・』
『は・・・はい!かしこまりました。』
私とイム世話係・・・そしてお姉ちゃんは私の部屋に向かった
そして私のベッドに寝かせたウナの元に、イム世話係は爪切りを持って近づくと、両手両足の爪を綺麗に整えた
新生児の頃は爪の伸びが早いのだ
爪が伸びていると無意識のうちに顔に傷をつけてしまうことも多い
その後シャワールームにベビーバスを用意し、適温のお湯を満たした後ウナを連れに来た
その頃には私の手で裸ん坊にされたウナは、ジタバタと手足を動かしながらイム世話係に抱かれて
シャワールームに向かった
ガーゼタオルでウナの顔や頭を洗いながら、イム世話係は泣いているようだった
『ずいぶん・・・大きくなられましたね・・・』
『あなたがこの子にミルクを与えてくれたおかげです。』
『そんな・・・とんでもない。私は・・・この大きな罪を忘れず、ウナ様に生涯お仕えいたします。』
生涯って・・・ウナもいつかは結婚するのよ
その時が来たら、私はイム世話係を宮から解放するつもりだった
そこまでで十分な罪滅ぼしをしてくれるだろう
ウナだってどんなところにお嫁に行くかわからない
世話係を養ってくれる男性に嫁げるのかどうかもわからない
それまではどうか・・・このウナを孫のように慈しんで欲しい・・・私は心からそう願った
『とうさま~またお仕事なんですかぁ?』
コン内官と打ち合わせをしていると、すぐに邪魔をしに来るギョム
『あぁそうだよ。ギョムはそろそろお勉強の時間じゃないのか?』
まだ四歳だというのに、既に皇帝学を学んでいるギョムが少し可哀想に思える
だが・・・この宮で皇位継承者として生まれた以上、避けては通れないことだ
『え~~っ!とうさま・・・今日はウナが戻ってきたんですぅ。今日くらいは・・・』
『そういう怠けた考え方、お父様は好きじゃない!』
『ふぅ・・・わかりました。でもお勉強したらウナと遊んでいいですか?』
いやまだウナは遊べないと思うが?
『あぁ。やるべきことをやってしまってから、ウナのところに行きなさい。』
『はぁ~~い♪』
ギョムが去っていった後、俺はコン内官と打ち合わせを続けた
『ではコン内官・・・そのように手配してくれ。』
『はい。かしこまりました。直ちに皇室警察に行って参ります。』
チェギョンの恩赦によりミン家の夫人が釈放される日が決まり、その日はコン内官・コイギサ立ち合いの元
ミン終身刑囚との面会が行われた
コン内官からの報告によると、面会の場でのミン・ヒョリンは実に淡々としていたという
涙を見せるでもなくミン母娘は、囚人である父との永遠の別れを口にしたという
その場でもしも・・・チェギョンに対する悪意ある言葉が出ていたのなら、俺ばかりじゃなくコン内官・コイギサも
ミン・ヒョリンを許すことはなかっただろう
チェギョンがどんなに反対しても牢獄にぶち込んでやる!
そんな気持ちがどこかにあっただけに、そんな言葉が一片も出なかったと聞き俺は安堵した
チェギョンの出産から一か月程経った頃、俺の携帯にインから電話が入った
『シン・・・俺だ。』
『あぁイン。どうしたんだ?』
『明日、アメリカに旅立つよ。向こうの住まいももう決めた。』
『そうか・・・お前の家族は大丈夫だったか?』
『説得するのは大変だったけど、何とか説き伏せたよ。最後には諦めて
俺をカン電子アメリカ支社長にしてくれた。』
『そうか。家族と縁を切らせるようなことにならなくてよかった。たまにはこっちに戻って来いよ。』
『あぁ。いつかわからないけど・・・また逢えるのを楽しみにしているよ。』
『ヒョリンと母親の事、荷が重いだろうが頼んだぞ。』
『あぁもちろん・・・チェギョンとシンがくれた最後のチャンスだから・・・しっかり見張るよ。』
『体に気を付けて頑張ってくれ。』
『ああ。遠い地で母国の繁栄を願っているよ。』
『あぁ。』
インが家族から縁を切られるのではないかと、少し心配していた俺だったが・・・
良い結果が得られて心から安堵する
あとはチェギョンが思った通りに事が運ぶことを願う
我が子を産んでその子を抱いた時・・・ミン・ヒョリンが死ぬほど後悔するように・・・
そう願わずにはいられなかった
ウナは生後一カ月を過ぎて益々愛らしくなった
だが俺にはひとつ気にかかることがあった
それは目を開いた時の視線の送り方が・・・なんとも言えずクールなのだ
顔はチェギョンなのに・・・どこかクーtルな雰囲気を漂わせるのだ
つまり・・・目つきが悪いのだ
ひょっとして俺譲りなのか?
あの事件からも一カ月・・・イム世話係は非常によくやってくれている
今日もウナをベビーカーに乗せ、宮の庭を散歩中だ
そんな時には必ず誰かが付き添っている。いや見張っている
今日の見張り役はどうやらホン・ジュソンらしい
執務室の開け放った窓から、二人の会話が聞こえてくる
『イムさん・・・ウナ様はとても可愛い方ですよね。』
『はい。私もそう思います。王立病院でたくさんの赤ちゃんを見ましたが、こんなに愛らしい女の子は
他におりませんでした。』
『もう二度と過ちを犯してはいけませんよ。』
『はい。もちろんです。妃宮様とウナ様に救われたこの命・・・一生かけてこの方をお守りします。』
『私も…昔、罪を犯しました。妃宮様にとんでもないことをしてしまいました。
妃宮様はそれを許し、私が生きる道標になってくださいました。
もうミン家に主爆されずお互い頑張って心を尽くして参りましょう。』
『はい。』
その時…三人の元にギョムが駆け寄っていった
『ホン・ジュソンさ~~んイムさん・・・ウナ~❤』
『ギョム様・・・お勉強は終わったのですか?』
『今、お休み時間です。ウナ~♪ほら!ウナは僕を見ると笑うんですよぉ~♪』
ベビーカーの中を覗き込んだホン・ジュソンとイム世話係は、驚きの表情を浮かべた
きっとウナはギョムを見て、嬉しそうに微笑んでいるのだろう
不器用な俺に似た眼差しで精一杯笑っているに違いない
よち!書けた❤
では三者面談に行ってきます~★
コメントの御返事は夜になりますよ~♪
それとこのお話40話で終わろうと思ったんですが
ちょっと終わりそうにないので
もうちょっと続きます~♪