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Channel: ~星の欠片~
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蒼い月 32

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生まれたばかりの親王・・・女性が子を生み落とす現場に立ち会った俺は、圧倒され感激の涙を零し

その子の顔さえよく見えない状態だった

女の子だと?早く抱きたい・・・

今度はチェギョンに似ていると嬉しいな・・・そんなことを思いながら、分娩室の廊下でじっと待っていた

産湯というのは随分時間のかかるものなのだな・・・待ち遠しい気持ちからなのか、

かなり待っている気がした

だがその場に一緒にいるチェ尚宮も、長い時間待たされることにおかしいと感じたようだ

『殿下・・・随分時間がかかりますね。私が中の様子を見て参ります。』

そういって分娩室の扉を開けようとした時・・・中から先ほど子を取り上げてくれた医師が、

血相を変えて姿を現した

『皇太子殿下・・・』

様子が・・・おかしい。まさか生まれた子に何か起こったのでは・・・

恐る恐る俺は問い掛けた

『先生・・・なにか・・・』
『申し訳ございません。』

いきなり腰を折り俺に詫びる医師

『一体・・・どうしたのですか?まさか生まれた子に異変が・・・』
『そうではございません。・・・いなくなってしまわれたのです。』
『いなく・・・なっただと?』

一瞬にして頭に血が上るのを感じた

俺は今にもその意思の胸ぐらを掴み、手を出しそうな気分になった

国内では一番信頼のおける病院の医師が、たった今生まれたばかりの子供がいなくなったと口にするとは・・・

『ただいま院内をくまなく探しております。』

あり得ない・・・そんなことがあってよいのか!

『分娩に立ち会った者の中でいなくなった者は?』
『内親王様を産湯に連れて行った年配の看護師が・・・姿を消しました。』

年配の看護師だと?

『その者の履歴書をすぐに持ってこさせるように・・・』
『はい。』

あの子が…いなくなっただと?そんな馬鹿な話があるか!ついさっき生まれたばかりの子だ

チェ尚宮は不安そうにポツリと呟いた

『妃宮様は・・・大丈夫でしょうか。』

すぐにでもチェギョンの元に駆け付けたい気分だったが、とにかく先にその年配の看護師の素性を

確かめなくては・・・

医師が一枚の履歴書を持って俺の元に戻ってきた

『殿下・・・この者です。』
『イム・ソリ・・・この者は信頼できる者なのか?』
『はい、非常によく働く看護師です。当病院にも五年勤務していますが、非常に真面目な性格で・・・』

五年?・・・何かが俺の胸に引っかかった

その時、隣りでチェ尚宮が悲痛な叫び声をあげた

『で・・・殿下!もしかしてこの者は、五年前・・・宮殿を追われたイム女官の母親ではありませんか?
ミン家の使用人をしていたという・・・』

チェ尚宮の言葉で俺の背筋は凍り付いた

その時・・・一緒にいたコイギサの携帯が振動した

『失礼いたします。』

そういって電話を取ったコイギサは・・・電話を握りしめて絶句した後、血の気を失った顔で俺に報告した

『殿下・・・本日、ミン・ヒョリンが更生施設を出たとの事です。』
『な・・・なにっ?』

目の前が暗くなる

更生施設で模範的な態度を取っていたのは、この日の為なのか?

元使用人を王立病院に送り込んでまで、成し遂げたかったことは生まれたばかりの赤ん坊の略奪か?

それがミン・ヒョリンの復讐なのか?

あり得ない・・・信じられない

生まれたばかりの子を連れ去るなんて・・・

俺はすぐコン内官に皇室広報部からの発表を見合わせるよう連絡させ、コイギサに皇室警察と連携し

ミン・ヒョリンの身柄を確保することと内親王を保護することを命じた

そしてそれから自分の携帯を取りだし、カン・インに連絡を付けた

インなら居場所を知っているかもしれない

インはすぐに俺の電話を取った

『シンか?久しぶりだな。元気か?そろそろ二人目が生まれる頃じゃないのか?』

明るくそう問いかけてきたインに俺は言った

『ミン・ヒョリンはどこにいる?』
『えっ?知らないが・・・』
『しらを切るな!お前が俺との約束を破って、ミン・ヒョリンと逢っていたのは確認済みだ。』
『シン・・・そのことなら謝る。今日出てきたことは知っているが、どこにいるのかは俺も知らない。』
『ヒョリンが・・・生まれたばかりの内親王を連れ去った。』
『ふっ・・・まさか!そんなことができる筈ないだろう?』
『元使用人を使って連れ去ったんだ。イン・・・いいかよく聞け!ミン・ヒョリンと俺の娘を王立病院に連れて濃い!
くれぐれも言っておくが・・・俺の娘にたとえ一筋でも傷をつけたら、俺はヒョリンの家族を絶対に許さない。
分かったな。』
『わかった・・・わかったよシン・・・』

電話を取った時と明らかに違うトーンの声で、インは電話を切った

隣りを見るとコン内官が心配そうに俺を見つめていた

『大丈夫です殿下。きっとご無事でお戻りになります。』
『あぁもちろんだ。ところでチェ尚宮は?』
『妃宮様がこの騒ぎを聞きつけておられたらと・・・妃宮様の元に向かいました。』
『そうか・・・』

チェギョンの耳にはもう・・・きっと届いている事だろう

つい先ほど身を切られる痛みを味わったばかりなのに、今度は心を砕かれる痛みに苦しんでいる事だろう

俺は意を決して再び分娩室に入っていった



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分娩の後処理が終わった時・・・私はギョムの時と様子が違うことに気が付いた

そう・・・ギョムの時には産湯に浸ったばかりの赤ちゃんを、まず分娩台にいる私の元に連れてきてくれた

なのにいくら待っても私の赤ちゃんはやってこないのだ

おかしいな・・・そう思った私は、一人の看護師さんに問い掛けた

『あの・・・赤ちゃんはまだ見せて貰えませんか?』
『あっ!はっはい・・・』

そういって出て行ったきり、看護師さんは誰も顔を見せない

二時間は安静に・・・そう言われお腹の上に氷嚢のようなものを置かれ、じっと天井を眺める

段々不安が募って来る

もしかして今生まれたばかりの赤ちゃんに、なにか非常事態が起こったのだろうか

いや違う。あんなにしっかり産声を上げたんだもの・・・そんなことがある筈ない

不安に押し潰されそうになった時・・・お姉ちゃんが分娩室に入ってきてくれた

『チェギョン様・・・』

久し振りに名前で呼ばれた

冷静なお姉ちゃんにしてはあり得ないことだ

私はお姉ちゃんのそんな様子に、自分の中にある不安が的中したことを悟った

『赤ちゃんに何か・・・あったんでしょう?』

窺うような視線でお姉ちゃんを見つめた

お姉ちゃんはそんな私の不安を痛い程わかるのだろう。沈痛な面持ちで私の手を握り真実を話してくれた

『チェギョン様・・・どうか落ち着いて話を聞いてください。生まれたばかりの内心王様の
行方が分からなくなりました。』
『えっ・・・』

ただでさえ貧血気味なのに、私の血の気は更に引いていく

『ど・・・どういう事?詳しく教えて!』
『産湯を担当した看護師に・・・連れ去られたようです。』
『な・・・何ですって!』

私は横たえた身体を起こすとお腹の上の氷嚢を外し、ベッドから降りようとした

『探しに行かなくちゃ・・・』
『なりませんチェギョン様。』
『どうして?行かせてお姉ちゃん・・・まだ生まれたばかりなのよ。あの子・・・死んじゃう・・・』

最後は涙声になってしまった

だけど実際にベッドから降りようとすると目の前が暗くなった

無理もない・・・まだ出血は続いているのだから

お姉ちゃんに凭れかかった私は、お姉ちゃんの胸で涙がこみ上げて仕方がなかった

『どうして?どうしてあの子が連れて行かれるの?』
『どうやらミン・ヒョリンの仕業のようです。』
『ミン・ヒョリンの?』

更生施設に入っているとばかり思っていた私に、お姉ちゃんはミン・ヒョリンが今日出てきたことと

看護師の中に昔ミン家に仕えていた使用人がいたことを話してくれた

これは計画的な誘拐だ

ミン・ヒョリン・・・絶対に許さない!私だけじゃなく・・・私の子にまで手を掛けるなんて・・・

生まれて初めて私の中に憎悪の感情が芽生えた

≪うにゃぁ・・・≫あの子の泣き声が聞こえた気がして、お乳が張った

あの子は大丈夫だろうか

無事戻って来るだろうか・・・

安静にと言われても横になることもできず、ベッドに座ってただあの子の無事を願って涙していた時

シン君が分娩室の中に入ってきた

やはり怒りと不安を顔に浮かべ、ベッドに近づくと黙って私を抱き締めた


イメージ 2


いや~~ん皆様ごめんなさいね~♪
ここがかねてより予定していた
耐えてゾーン現場でございますぅ~♪

大丈夫だって!
根性ないからすぐ終わるよ。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

今日は次男君の最後の学園祭で
演劇部の劇を観てきました。
私がニャフーで購入した
おんぼろマントが、実によくお似合いでした~♪
明日はDさんと一緒に、行ってきます~♪

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