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Channel: ~星の欠片~
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蒼い月 28

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臨月を迎えた私は最近とても退屈していた

それというのも何かにつけダメ出しされる事が多くなったからだ

それはシン君だけじゃなく、お姉ちゃんも同様だった

でもね・・・あれダメこれダメってあまり行動を制限されると、却って動きたくなるものなんだよね

徐々に公務にも連れて行って貰えなくなり、退屈した私は仕方がないから安産体操を始めることにした

もちろん無理な姿勢を取ったわけではない

安産体操だもん・・・危険がある筈はない

なのに・・・突然感じた脚の間を流れていく生温かい感触・・・えっ?こっこれって・・・

みるみる血の気が引いていく私を見て、お姉ちゃんは慌ててコお兄さんを部屋に呼びつけた

そして担架のようなものに載せられた私は、すぐに王立病院に搬送された

それまで感じたことのない痛みが私を襲う

もう生まれちゃうの?ダメだよ・・・パパが立ち会いたいって言ってたから、もうちょっと辛抱してね

そんな風にお腹に言い聞かせても、破水してしまったら止められる筈も無い

王立病院に搬送された私は、すぐに分娩室に運ばれた

痛みで気が遠くなる・・・

お姉ちゃんは白衣に着替え、公務中のシン君に代わり必死に私を励ましてくれた

慌てんぼうの赤ちゃんは、パパの帰りが待てなかったみたい

『ふぎゃ~~~!』

力強い産声が響いた時、私は漸く普通に息ができるような気がした

『妃殿下・・・お生まれになりました!!』



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チェ尚宮からかかってきた二度目の電話を、俺は慌てて受けた

『チェ尚宮・・・状況は・・・どうなのだ?』

恐る恐る俺は問い掛けた

そしてチェ尚宮も恐る恐る答えた

『殿下・・・たった今、親王様がお生まれになりました。』
『な・・・なにっ?・・・そっそうか・・・生まれてしまったか。』

楽しみにしていただけに少し落胆した声になる

だが・・・初めての子が誕生したのだ。落胆などしている場合ではない

俺はチェ尚宮に問い掛けた

『チェギョンも子も元気なのだな?』
『はい。妃宮様も親王様もとてもお元気でいらっしゃいます。』
『そうか。車を急がせよう。急いでそちらに向かう。』
『はい。つい先ほど皇帝陛下と皇后様も病院に向かうと連絡がございました。』

な・・・なんだと?大人しく宮殿で待っていてくれればよいものを・・・

『わかった。すぐに向かう。』


電話を切った後俺は運転席に座るハンイギサに告げた

『妃宮が男児を出産したそうだ。急いでくれ。』
『はっ!かしこまりました。殿下・・・親王様ご誕生おめでとうございます。』
『あぁありがとう。』

ハンイギサ…今はそれどころではないのだ。一刻も早く王立病院に到着してくれ・・・

俺の願い通りハンイギサはスピードを上げ、俺の護衛についている者達もそれに従いスピードを上げた

チェ尚宮の電話からおよそ40分ほども経った頃、車は漸く王立病院の駐車場に到着した

走りたい・・・そう心から思いながら、俺はほぼ走っていると同じほどの早足で分娩室の前に着いた

しかし・・・

『太子や・・・遅かったではないか。どうだ?とても美しい皇子だろう。』
『こ・・・皇帝陛下・・・』

既に皇帝陛下の腕に初めての子は抱かれているではないか!

あぁ・・・なんてことだ。俺が一番最初に抱くつもりだったのに・・・

『太子おめでとう。とてもしっかりした赤子だ。陛下・・・そろそろ太子にも抱かせてあげてください。』
『お?おぉ・・・そうか。ずっと抱いていたい気分だが仕方がない。太子、落とすでないぞ。』

生まれたばかりの我が子を落としたりするものか!

俺は少し苛立った気持ちで、初めての子を腕の中に抱いた

陛下や皇后様に先を越されたことが、悔しくてならなかったのだ

な・・・なんだ?温かくて頼りなげなこの赤ん坊は、本当につい先ほどまでチェギョンのお腹にいた子なのか?

あぁ・・・そういえばこの長い指や目鼻立ちは、俺の遺伝子を受け継いだのだろう

自分が我が子を一番に抱けなかった・・・そんな思いはどこかに消えていった

どうでもよくなったのだ

なんて・・・綺麗な子なんだろう

なんて利口そうな顔をしているのだろう

我が子だというのに自慢したい気持ちが胸の中に沸々と沸き上がった

陛下と皇后様が何かを話しかけているが、俺の思考はすべて腕の中にいる子に集中しつい顔が緩んでしまう

『ふ・・・にゃぁ・・・』

まるで猫のような愛らしい泣き声を上げた時、無情にも看護師は我が子を連れて行ってしまった

『殿下・・・妃殿下がお部屋に移動しますので、お部屋の方でお待ちいただけますか?』
『わかった・・・』

我が子を連れて行かれ後ろ髪を引かれる思いはあったが、俺はチェギョンがしばらく入院する特別室に向かった

部屋の前ではコイギサが俺に向かって頭を下げた

『殿下・・・おめでとうございます。』
『ありがとう。コイギサ・・・私が留守中に迷惑をかけたな。』
『とんでもございません。母子共にお健やかで何よりです。』

コイギサにしても大事な妹が出産したような思いだろう

とても嬉しそうな表情でチェギョンが戻ってくるその部屋を守っていた


程なくしてストレッチャーに乗せられたチェギョンが、部屋に戻ってきた

『シン君~♪ごめんね・・・公務に出かけている間に産まれちゃって・・・』
『そんなこと気にしなくていい。それより陛下と皇后様もいらしたんだが、お前は逢えたか?』
『うん。分娩室から出て来たところでお逢いしたよ。赤ちゃんにも逢ったって仰っていたよ。
無事出産したことを褒めて貰った♪』
『そうか良かったな。あぁ・・・お二人は大層喜んでいた。お手柄だなチェギョン・・・』
『シン君は?嬉しい?』
『嬉しいに決まっているだろう?』

ただ誕生に立ち会えなかったことは非常に残念だがな

『良かった。私も生まれてすぐ腕に抱かせて貰ったんだけど・・・なんだか意識が朦朧としていて
よく覚えていないんだ。赤ちゃん・・・どっちに似ていた?』
『俺・・・』
『え~~っ?シン君なの?』
『あぁ。嘘だと思うなら明日ゆっくり観察してみたらいい。今夜はひとまずゆっくり身体を休めないとな。』
『うん。シン君・・・お名前よろしくね♪』
『あぁ。』

そうだ。出産したからとそれで安堵している場合ではない

国民に発表しないと・・・

俺は皇室広報部と打ち合わせをし、その夜遅くテレビや新聞の号外で親王の誕生を世間に発表した



その後チェギョンが入院している間に、生まれた子の名前を発表した

イ・ギョム…いい名前だろう?

俺に瓜二つのギョムは、間違いなくこの国に名を轟かす名君になるに違いない

苦難を乗り越え俺の元に戻ってきたチェギョンの子だもの、そうに決まっている



チェギョンとギョムが退院し、東宮はとても賑やかになった

皇太后様は毎日のようにギョムの顔を見に来てはチェギョンとお茶を楽しんで帰る

皇太后様にとってもギョムはかけがえのない宝物だろう



そんなある日・・・公務から帰ってきた俺は、宮殿の入り口で立っている図体の大きな男達に出迎えられた

あれは・・・皇室奨学生じゃないのか?

いや元相撲部五人組といった方が早いな

だが・・・皆大学に進学したり警察学校に入学してから、少し締まった印象だ

俺は車から降り懐かしい彼らに近づいていった

『君達…こんなところでどうしたんだ?』
『皇太子殿下・・・ギョム様御誕生おめでとうございます。』

いきなり手渡された大きな箱・・・

『これは?』
『ギョム様の御誕生祝です。俺達はお二人に感謝しきれないほどの御恩があるのに、
ご成婚の時には何もできませんでした。ですので今回は五人でアルバイトして購入したものを
お祝いに持参いたしました。。どうぞお納めください!』

ギョムへの誕生祝だと?俺はその大きな箱を開けてみる

中には小さなものはおしゃぶりだったり、ベニーベッドに取り付ける玩具だったりと

この屈強な男達がどんな顔をしてこれを買ったのかと思うと笑みが零れるほどのベビーグッズが入っていた

『ありがとう。ありがたくいただく。チェギョンもきっと喜ぶことだろう。』

それを聞いた時、五人は満面の笑顔を浮かべた

間違いなく彼らは、新しい学びの場で充実した毎日を送っていると感じられた

しっかりした大人になれ。それは俺とチェギョンの願いだ・・・



イメージ 2
と・・・言うわけで、シン君は第一子出産に
間に合わなかったんですぅ。

お子の名前なんですけど・・・
もう色々考えるのが面倒になっちゃって
混乱するけどギョムでいいやね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
うちでは一番多く使っている名前化も♪


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