『嫡出子じゃ・・・ない・・・だと?』
父は眉間に皺を寄せ探る様な視線を俺に向ける・・・母も同様の表情で問い掛ける
『っと・・・言うことは、シン・・・あなた!そんな複雑なお嬢さんとお付き合いをしているの?
その政治家の愛人の娘って・・・ことでしょう?』』
とこか咎める意味合いを含んで投げかけられた言葉は、もちろん俺の想定するところだった
俺は自分ですら動揺したその事実を、両親が≪どうか自ら昇華させてくれるように≫と祈りながら返事をする
『愛人なんかじゃない。彼女のお母さんって言う人は、その家のメイドをしていて・・・つまり・・・』
やはり詳細を話すのは途轍もない勇気が居る
口ごもった俺に助け船を出す様に、父はその先の推測を口にしてくれた
『大方・・・夫人の居る身でありながら、そのメイドに手を出したんだろう?
お偉い政治家にありそうな話だ。』
『そう!そうなんだよ父さん!だけどその人が妊娠したと知った途端、その家から追い出されたそうだ。』
『じゃあ・・・その政治家の愛人ってわけじゃなかったのね?
世間には居るのね~~。抵抗できないか弱い女を手ごめにする卑劣な男っ!!』
何やら怒りの対象がチェギョンの父になったようだ。俺は両親の人の良さにつけ込む悪い息子だと思いながらも
態と同情心を煽る様ないい方で話を続けた
『その家を追い出された彼女のお母さんは、なんの援助も無いまま一人で彼女を産んで育てたそうだ。
だけど・・・無理がたたって亡くなって・・・身寄りのない彼女は、何も解らないまま
その政治家の家に引き取られた。
もちろんそんな状況下で産まれた彼女だから、その家で可愛がってもらえる筈などなくて・・・
将来的には父親の政治人脈を広げる為のパイプラインになるべく、大学卒業後は宛がわれた男のところに
嫁に行くと約束させられた。
今・・・彼女は大学四年間だけは自由にさせて欲しいと、自分で決めた大学に進学し
家の援助を受けずで一人で生活しているんだ。』
『可哀想・・・』
母のその言葉を聞いてシメタ!と思った俺だ。母に視線ぞ向けると、テーブルに置かれた箱ティッシュから
一枚ティッシュを取りだし両目頭に当てていた
つまり・・・チェギョンの境遇は、母の同情心を十分駆り立てるものだと言うことだ
『その話・・・お前は以前から知っていたのか?』
父は俺に先程までとは違う意味合いの苦悩の表情をする
『いや、昨日聞いたばかりだ。俺が大学卒業後の事を話したら、彼女から告白された。
彼女も出来るなら言いたくなかったと言ってた。
父さん俺・・・彼女にそんな想いをさせたくないんだ。
何よりも俺自身が大学卒業する時点で彼女と別れるなんて考えられない。
だけど・・・俺はまだただの大学生で、こういう時どう対処したらいいのか解らない。
それで二人に・・・相談に乗って貰おうとやって来たんだ。』
困り果てている様子が顔に出ていたのだろう。父は少し考えた後ぽつりと呟いた
『とにかく、そのお付き合いしているお嬢さんを一度連れて来なさい。』
『そうね!それがいいわ。』
大財閥のトップとして色んな人間の裏も表も見てきた父だ。人を見る目はある筈だ
チェギョンに・・・逢って貰いさえすれば、きっとその人間性は十分理解してくれるだろう
俺は表情を少し緩め、口角を上げると両親に頷いて見せた
それから数日後・・・俺もチェギョンもバイトが入っていた日に、俺は両親にチェギョンを連れて行くと約束した
チェギョンには何も言っていなかった。そんな事を言ってしまったら、チェギョンは絶対に行かないと言うだろう
半ば騙す様な形だが、俺は≪付き合って欲しいところがある≫と告げ、バイトが終わった後その足で
自宅に向かって車を走らせた
いつも通り自宅の門の前で待つと、俺の車を感知した大きな門扉は自動的に開いた
チェギョンはその光景に驚いたようで俺に困惑した声で問い掛ける
『シン君・・・ここはどこ?』
俺は何も言わず家の敷地内に車を乗り入れ、駐車スペースまで車を走らせた
車を停車させエンジンを切る
『シン君・・・』
不安そうな声が聞こえたが、構わず俺は車から降りると助手席側に回りドアを開けた
『降りて・・・』
『シン君っ!!』
『いいから早く!!』
もう既にチェギョンはその場所がどこであるか悟ったようだ。ほぼ俺に引き摺られるようにして玄関に辿りついた
『父さん母さんただいま。』
掴んだ手首を離さないままそう玄関で声を掛けると、両親は揃って玄関まで出迎えに来てくれた
『父さん母さん、彼女が・・・俺の付き合っている人で、シン・チェギョンさんだ。』
『いらっしゃい♪』
『よく来たね。さぁ上がりなさい。』
チェギョンは困惑した表情のまま頭を下げ、俺の手を振り払うとキッと睨みつけ、そして観念したように
俺の後に続いてリビングに入って来た
そして掛けるように勧められたソファーに掛ける前に、頭を下げて自己紹介をした
『あのっ・・・はじめまして。シン・チェギョンと申します。こんな遅い時間にお邪魔して・・・すみません。』
ドーナツショップが閉店してから来たのだから、もう23時に近い時間となっている
『そんなに固くならないでリラックスしなさい。』
『そうよ。チェギョンさんと仰ったかしら?お腹空いていない?』
『あ・・・いえっ・・・大丈夫です。』
いや本来なら軽い夜食を食べる時間である。俺はそのことも母に伝えてあったので敢えて言ってみる
『母さん、バイト先からそのまま来たんだ。何か軽いものないかな?チェギョンもお腹空いているだろう?』
『えっ?いえっ・・・』
ぶんぶんと首を横に振るチェギョンを見て、母は笑いながらキッチンから既に用意してあったキムパを持ってくる
『軽くつまめるように作っておいたのよ。二人で食べて頂戴ね♪』
『あ・・・すみません。ありがとうございます。』
母手製のキムパを二人で食べ終えた時、父は口火を切った
『アルバイトで疲れている時間に悪かったね。少しばかり君の事をよく教えて貰いたいと思って
今日は来て貰ったんだ。』
父がそう話しかけると、チェギョンはさらに困ったように俯いた
『あ…えっと・・・あのっ・・・』
『父さん、俺・・・彼女に何も言わないで連れて来たんだ。何か言ったら来ないって言われそうで。』
『そうなのか?シン・・・ダメだろう?ちゃんと説明しないと。』
叱りつける様に俺に言った後、父はチェギョンに優しく語りかけた
『大学卒業したら・・・結婚が決まっているそうだね?』
『あ・・・まだ具体的なことは何も決まっていないんです。お相手の方も・・・』
『君は本当にそれでいいのかね?親の犠牲になる様な結婚で幸せになれると思っているのかね?』
『・・・幸せになれるかどうかは問題じゃありません。もうきっとシン君から話は聞いていると思いますが
私にできることは、父の政治的な人脈を広げるための駒になる事だけです。』
『どうしてそこまで自分を犠牲にするんだね?十分な愛情を受けたわけではないだろう?』
『・・・それは・・・否定できません。ただ・・・母が亡くなって行く当てのなかった私を、拾ってくださったんですから
そのご恩は返さないと・・・・。』
『そうか。もうひとつ聞いてもいいかね?君のお母さんって言う人は、お父さんを愛していたのだろうか?』
『・・・残念ながらそうではなかったと思います。母から父の話を聞いたことは一度もありませんでした。
父も同様です。単なる火遊びの結果でしかない厄介者の私が、役立つのはその時だけでしょうから。』
チェギョンの言葉に母は目を潤ませ鼻の頭まで赤くする
父もしばらく黙りこんでしまった
重いよな・・・重い話だよな
だけど漸く口を開いた父は笑みを浮かべると、チェギョンにこう言ったんだ
『チェギョンさん、私に任せておきなさい。』
俺はこの時ほど自分の父を頼もしく感じた日はなかった。。。
いやはや。。。もうなんとも・・・萌える部分の無いお話で恐縮です。
でもヒョンさんが何やら力になってくれそうな予感ですぞ~~❤
なお・・・土日は
ふぅめる・マジカル通信をお送りいたします❤
でもヒョンさんが何やら力になってくれそうな予感ですぞ~~❤
なお・・・土日は
ふぅめる・マジカル通信をお送りいたします❤