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Channel: ~星の欠片~
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蜃気楼の家 11

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再び公園近くの駐車場に車を停めたシンは、チェギョンと共に▼■食堂に向かった

育ちのいいシンの事・・・その様な庶民の通う食堂などに行った経験がなく、初めての場所に少し緊張を募らせる

(いや・・・ユル兄貴でさえここに来た事があるのだから・・・。
しかしユル兄貴の奴、チェギョンに随分馴れ馴れしい態度だった。
立派な社会人が高校生目当てに通うなんて、おかしいだろう?ったく・・・)

何に対して腹を立てているのかシン自身にも解らない。ただユルがチェギョンに親しげにする様子を思い出し

面白くなかったのだ

(これでもしチェギョンがシン家の本当の娘だなんて知ったら・・・騒ぎになりそうだ。)

チェギョンが▼■食堂の扉を開ける時、シンはユルがそこに居る様な気がして一瞬身構えた

だがチェギョンが辞めたと聞いたユルが、まだ通っている筈もないと気持ちを落ち着かせた

ランチタイムも終了に差し掛かった時間・・・店内は忙しさのピークを過ぎていた

『こんにちは~♪』

チェギョンはスタッフに向かって声を掛けた

『いらっしゃい・・・あ!!チェギョンちゃん!!』

一番近くに居たアルバイトスタッフのその声で、店内のスタッフはおろか客さえも一斉にチェギョンに目を向ける

奥からオーナー夫妻が姿を現し、チェギョンの前に立った

『オーナー、奥さん・・・急にやめることになってしまい申し訳ありませんでした。』
『本当にビックリしたよチェギョンちゃん。』
『あなたの本当の御両親という方達が、一昨日ご丁寧に挨拶してくれたのよ。』
『そうだったんですか・・・ホントすみません。』
『いいんだよチェギョンちゃん。それより良かったなぁ。一人ぼっちじゃなくって・・・』
『はい。私にも信じられない話なんですけど・・・』
『詳しい事は聞かなかったけど、何やら事件に巻き込まれたそうじゃないか。』
『この人ったら・・・あなたのご両親に向かって食ってかかったのよ。チェギョンちゃんが天涯孤独だと知って
何か悪事でも働こうって言うんじゃないかって。名刺まで頂戴したのよ。ほら・・・』

オーナー夫人はポケットから名刺を取り出すとチェギョンに見せた

『シン・ナムギルさん・・・大きな会社の社長さんなんだってね。』
『あ・・・実は私もまだ詳しい事は知らなくて・・・』
『のんきな子だよチェギョンちゃんは。まぁとにかく・・・幸せになりなさい。これで私達も安心できる。』
『オーナーと奥さんには本当にお世話になって・・・ありがとうございました。』
『そんなことはいいんだよ。それより・・・おい!!お前!チェギョンちゃんのアルバイト代を・・・』
『あ・・・そうだったわね。』

小走りに店の奥に消えるオーナー夫人は、チェギョンに封筒を手渡した

『一昨日の分までちゃんと入っているからね。』
『ありがとうございます。それで・・・友人と来たんですけどオーナーの≪おすすめ定食≫を二つ
お願いできますか?』
『おやいいのかい?大きな会社の社長令嬢がこんな店で食事だなんて・・・』
『もう!!オーナー・・・私は私。これからだってこちらに食事に来ます♪』
『嬉しいね~~♪今日は俺のおごりだ。さぁ座って!!』
『はい♪』

≪おすすめ定食スペシャル二つ~お願いします♪≫
『あいよ~!!』

オーナーと夫人の明るい声を聞きチェギョンは席に着くため、後ろを振り向いた




チェギョンがオーナー夫妻と話をしている時、シンはなぜか自分に注がれる視線を感じその方向に目を向けた

(っつ・・・なぜユル兄貴が・・・)

まさかいないだろうと思っていたイ・ユルが、そこで食事をしていたのだ

ユルはシンを見掛けると席を立ちあがりシンに向かって歩み寄った

『シン♪』
『ユル兄貴・・・』
『チェギョンちゃんと一緒に来たのか?』
『あぁ。(シマッタ・・・他の店に行けばよかった。)』

オーナーの話声は意外と大きく・・・どうやらユルの耳に届いたらしい

『えっ?シン・ナムギルの娘?シン・・・一体どういうことだい?』

ユルは血相を変えシンに詰め寄った

『その辺りは俺の口からは言えない。』
『じゃあこれだけは答えてくれ。シン家の娘だって言うのは本当か?』
『あぁ。』
『じゃあ・・・ヒョリンは?』
『ヒョリンはシン家の本当の娘じゃない。』
『・・・そうか。』

その時話を終えたチェギョンが振り向き、シンとユルの二人が話をしている事に気がつく

『ユルさん!!』
『チェギョンちゃん♪また逢えるとは思わなかった。』
『はい。オーナー夫妻にご挨拶したくて・・・』
『そうだったんだ。まさかチェギョンちゃんがシン家の娘だなんて思わなくて驚いたよ。』
『私も驚きました。』
『シンがヒョリンとの縁談を断ったということは、もしかして今後チェギョンちゃんはシンの許嫁になるの?』
『えっ?』

ユルから飛び出したとんでもない質問に、チェギョンは驚いて目を丸くする

その様子が見ていられずシンはチェギョンの代わりに答えた

『ユル兄貴・・・そんなことチェギョンが知っている筈ないだろう?』
『そうか。じゃあ許嫁って言うわけじゃないんだね?』
『・・・(チェギョンを混乱させるな!!)』

ユルは安堵の頬笑みを浮かべチェギョンに話しかけた

『チェギョンちゃん、今度君の家に遊びに行くよ。』
『えっ?』
『僕もシン家とは満更知らない間柄でもないんだよ。』
『そうなんですか?』
『うん。ご両親によろしく伝えてね。』
『はい♪』
『じゃあまた近いうちに・・・』

柔らかい笑顔を残しユルは去っていった

ずっと気になっていた高校生が・・・守ってあげたい女の子が、母の言うところの≪ちゃんとした家柄≫の

娘だと知り俄然勇気が湧いてきたようだ

(しかし・・・気になるな。一体シン家に何が起こったんだ?)

会社に戻るとユルは早速チェギョンの事を母に報告し、その詳しい事情を調べてくれるよう手配した



ユルが去っていった後チェギョンと向かい合って食事をしながら、シンは何かに憤っていた

(っつ・・・知られてしまったか。なにが≪家に遊びに行く≫だよ。いい年をしておかしいだろう?
チェギョンはまだ高校生なのに、その高校生に何を言おうって言うんだ?
って・・・俺は一体何に腹を立てているんだ?)

しかめっ面をし食事をしているシンに、チェギョンは核心を突いた質問を投げかけた

『シン君・・・さっきの許嫁って・・・』
『あ・・・あぁ?それは・・・』

シンは一呼吸置き、それからその質問に答えた

『ヒョリンと・・・というわけではない。元々はチェギョン・・・お前とだ。』
『えっ?・・・えっと・・・』

ミンから昨日聞かされてはいたが、チェギョンはシンの≪お前とだ≫という言葉に困惑の表情を浮かべた

『つまりうちの母さんとシン家のおばさんがお腹に俺達を宿した頃
両家の祖父が≪生まれてくる子供が異性だったら縁を結ぼう≫と約束したそうだ。
その時お腹に居たのはお前なんだから・・・その相手はチェギョンだろう?
うちの母さんは今回の事が発覚して、ヒョリンとの縁談を白紙に戻したってわけだ。
俺とヒョリンでは・・・祖父たちの遺志にそぐわないだろう?』
『あ・・・お腹の中に居た時の約束の話はおば様から聞いた。うん・・・確かにそうだね。』
『だからユル兄貴は≪チェギョンが許嫁になるのか?っ≫て聞いたんだ。
だが18年別の人生を歩いてきたチェギョンだ。今そんなことを言って煩わせたくない。
だから考えなくていいが・・・一応、そう言う約束があったという事だけは覚えておいてくれるか?』
『うん。』
『今はまずシン家での暮らしに慣れなくちゃな。』
『うん。そうだね。』

チェギョンが混乱することを恐れて隠してきた真実を、シンはチェギョンに打ち明けた

打ち明けることによって、今後シン家を訪れるだろうユルに心が揺らがない様にという下心があったとは

シン自身もまだ気が付いていない


▼■食堂のオーナー夫妻とスタッフに別れを告げ、二人はイ家に戻っていく

『チェギョン・・・オーナーにご馳走になってしまったな。』
『うん。スペシャル美味しかったね。てか・・・シン君の口に合った?』
『あぁ。とても美味しかった。』
『良かった~~♪』

シンがあの様な店に入ったことがないのは、シンの暮らしぶりを見ていれば十分に解った

だがチェギョンは自分に合わせてくれるシンの気持ちが嬉しかった

誰にも話せなかった秘密を打ち明けて以来・・・やはりチェギョンの中でシンは特別な存在と

なっていったのである

『シン家に戻ったら正式にデートしような。』
『うん!!誘ってくれるの?』
『あぁ。今まで遊びになんか行けなかっただろう?いろんなところに行こう。』
『あ・・・でもシン君・・・よく考えたら私達受験生・・・』
『進学する気になったのか?』
『うん。だってシン家の両親の手前・・・やはり大学に行かないと・・・』
『両親の為に大学に行くのか?そんなのおじさんもおばさんも喜ばない。』
『そうじゃない。大学に行きたいって言える事が本当は嬉しいんだ。』
『そうか。それなら良かった。だが確かチェギョンは・・・≪どこの会社にも入れるほど成績優秀≫なんだよな?』
『うん!!そうだよ。』
『だったらデートするくらい平気だ。遊びに行こう。』
『ホント?うん~~遊びに行こう♪』

男の子から初めてデートに誘われたチェギョン。それがこんなに胸をときめかせるものだなんて

今まで知る事もなかった

(これからは・・・きっと幸せになれる。)

シン家に堂々と戻れることになって、チェギョンは未来の自分の姿を思い描き心が弾んだ




『ただいま。』
『おば様・・・戻りました。』
『まぁお帰りなさい。チェギョンさん、ちょっと来て来て~~♪』

帰るなり手を引っ張られ客間に連れて行かれたチェギョンは、窓に掛かったカーテンやベッドカバーなどが

実に女の子らしい物に変わっていることに驚いた

『どう?チェギョンさん気に入った?』

非常に困り果ててしまうチェギョンである。困惑した面持ちでミンに言わなければならない事を言えなくなっていた

その時部屋に入って来たシンが、呆れた口調でミンに報告する

『母さん・・・チェギョンは明日シン家に戻るよ。』
『えっ?なぜ?』
『ヒョリンが納得したんだよ。』
『えっ・・・えぇぇぇぇ~~~っ!!明日は可愛い洋服ダンスが届くのに・・・』

明らかに落胆した様子のミンに、チェギョンはすまなそうに声を掛けた

『おば様・・・すみません。』
『いいの・・・いいのよ。まぁ・・・ヒョリンと喧嘩した時はうちに来ればいいんだわ。
チェギョンさんが帰れる場所はここにあるから、安心していいのよ。』
『はい。ありがとうございます。』
『そうと決まったら・・・お夕食は腕を振るうわよ~~♪』

お気に入りのチェギョンがたった二泊で帰ってしまうことは本当に残念だったが、シン家に戻ることが

今のチェギョンの一番の幸せなのだとミンは自分を納得させた

(じゃあ次は・・・チェギョンさんとの縁談をね♪)

もうミンの気持ちは本人達と関係なく固まっているのだった





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さて・・・次回チェギョンは漸くシン家で暮らし始めます。
どうなるかな~~楽しみだな~~♪

イケズな管理人の細々とした意地悪
どうぞ楽しみにしていてね~~❤

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