朝食の後其々に着替えを済ませ、ユル君夫妻が挙式を挙げる教会に向かう為にロビーに集まった私達
ホテル側が用意してくれたバスに乗り込み、思い思いのフォーマルウエアに身を包んだ私達は
全員が一台のバスに乗り込んだ
これもギョムにとって初めての経験だ
やはり嬉しそうに座席に腰掛けてはイギサのお兄さん方や女官のお姉さん方に話しかけている
職員の皆さんもこんな風に私達と同じバスに乗り合わせるなんて事は無いから、少し戸惑っているみたい
でもいつもの堅苦しい制服と違い、自前のフォーマルウエアに身を包んでいる分だけ表情は柔らかい気がする
今日は私達家族とギョン君ガンヒョン夫妻だけじゃなく、職員も全員参列者となるのだ
もちろんこれはシン君が勝手に決めたことで、誰にも了承を得ていない
ユル君夫妻にとってはとんでもないサプライズ挙式となるわけだ
教会にバスが到着しぞろぞろと私達は降りていく・・・そんな時でもイギサのお兄さん方は、前と後ろに配置し
万が一に備えるのだ
だけど周りから見たら・・・やはりただの挙式参列者と見えるだろう・・・
シン君も普通のフォーマルスーツ。私はクリームイエローのワンピース
決して畏まった服装ではない
そんな中にただ一人、ピカピカのタキシードを着ているギョムだけは・・・ちょっと異質に見えるかな。
もう恐らく新法新婦の支度が整ったと思われる頃、私達はまず新郎の控室をノックした
<トントン>
『はい!!』
ユル君の声だ。シン君は微笑みながらその扉を開けた
『ユル・・・』
『えっ・・・』
いきなり入っていった私達家族三人に、ユル君は目をまん丸にして驚愕の表情を浮かべた
『ど・・・どうしてここに・・・』
『チェギョンがユミから情報を聞き出したんだ。必然的にこう言うことになったが迷惑だったか?』
『い・・・いや迷惑だなんてとんでもない。こんなところまでまさか来てくれるなんて・・・』
『くくっ・・・結婚おめでとう。ユル・・・』
『ありがとう・・・』
感極まった表情のユル君にギョムは足元まで歩いて行くと、新郎の顔を見上げた
『ユルおじちゃん、おめでとうございます♪』
ユル君はその場にしゃがみ込むと小さなギョムを抱き締めて満面の笑みを浮かべた
『ギョム皇子・・・ありがとうございます。』
ここで和んでいる場合ではない。私はまだ新婦のところに行かなきゃならないの
急いで仕事に掛からなくっちゃね♪
『ユル君・・・椅子に座って貰える?』
『あ・・・うん。でもなぜ?』
『今日の髪型・・・とても素敵なんだけど、ちょ~~っと気に入らないの。手直ししてもいいかな?』
『えっ?チェギョンがセットしてくれるの?』
『うん。もちろん~~♪まだこれからユミのところに行かなきゃならないから、大急ぎで仕上げるよ~~♪』
『わかった。お任せするよ。』
椅子に座ったユル君の髪に、私はドライヤーの熱風を当て・・・そしてヘアアイロンで毛先に遊びを持たせた
その間ユル君はずっと目を閉じ、必死に涙を堪えているようだった
『さて~~イケメン新郎の出来上がり♪じゃあ私・・・ユミのところに行って来るね。
シン君、ギョムをお願いしてもいいかな?』
『あぁ。ギョムはここに置いて行けよ。』
『ありがとう。じゃあ行って来ます~~♪』
私は新郎の控室を出て、少し離れた場所にある新譜の控室をノックする
<トントン>
『はい。』
ユミのお母様の声かな?ユミの声じゃない。私は恐る恐る扉を開けた
『失礼いたしま~す♪』
そしてゆっくり顔を覗かせた
『えっ?チェギョン・・・お父さんお母さん・・・妃殿下が・・・』
あまり大騒ぎされると困るのよ。私はその部屋の中に入りご両親に頭を下げた
『この度はおめでとうございます。ユミ・・・お祝いに駆けつけちゃった♪』
『まさか・・・うそぉ~~~!!』
『シン君もギョムも東宮の職員さん達も、それからギョン君とガンヒョンもみ~~んなフォーマルで
駆けつけたよ。くすくす・・・』
『うそぉ・・・・』
驚きを隠せないユミの御両親は、私に深々と頭を下げるとシン君に挨拶する為に新郎の控室に向かった
二人きりになった新婦控室。私はユミを椅子に座らせた
『ユミ・・・最高に素敵な新婦に仕上げようね。』
『うん~~♪』
まず私は鞄の中からジュエリーケースを取り出し、その中に入った真珠のネックレスをユミの首に掛けた
『えっ?チェギョンこれは?』
『これは皇太后様からの贈り物だよ。ほら・・・私とお揃い♪孫嫁にってくださったの。』
『えっ・・・』
その後は言葉に詰まってしまったユミ。声もあげずに大粒の涙を零しその細い肩を上下させた
もう~~いちいち構っていられない。お化粧直しは最後にしようと、私はユミの前髪に少しシャギーを入れ
そして顔の両サイドの髪をヘアアイロンでカールさせた
それからアップに結いあげられた髪を少し手直しし、自分で持ち込んだパールの髪飾りを髪に飾る
『どう?ユミ・・・』
『綺麗・・・・』
自分jで言うかっ!くすくす・・・そして落ちてしまったお化粧を直した
すっかりパンダ目になっっちゃったんだもの・・・もぉ~~~っ!!
『ユミ・・・もう泣かないで。』
『だって・・・嬉しすぎて涙が出ちゃうんだもの・・・』
その気持ちはわかるけど本番はこれからよ♪
最上級に綺麗な花嫁さんを私は式場の入り口まで送り、ユミのお父さんにユミを託すと
そそくさと式場の中に入っていった
チェギョンがユミの支度を仕上げている頃、俺は少しばかりユルと話をしていた
『こんなところまでよく来てくれたね。』
『そりゃあ家族だからな。みず臭いぞユル。内緒にするなんて・・・』
『いや・・・迷惑にならない様にとハワイまで来たんだ。だけど逆に迷惑になっちゃったね。』
『くっ・・・だが国内で挙式だったら、誰の目に触れるか解らないから参列できなかったかもしれない。
ここだったら変装しなくて済むから楽だ。』
『シン・・・本当にありがとう。それしか言えないことが情けないけど、すごく感謝している。』
その気持ちは十分伝わっているさ
その時ドアがノックされチョン夫妻が恐縮した面持ちで部屋を訪れた
俺は≪従兄弟として当然のこと≫だとチョン夫妻を諭したが、なんだか少しくすぐったかった
やがて挙式の時間が迫り、俺とギョムはチャン・ギョン夫妻や職員を伴い式場に入っていった
イギサだけは数名教会の入り口や式場の内と外に立ち、フォーマルスタイルのまま警護に当たる
宮の職員にまでユルやチョン夫妻は深々と頭を下げ、心からの感謝の気持ちを示していた
後は式が始まるばかり・・・俺はギョムと二人、新郎側の前から二列目に腰を下ろした
一番前の席は・・・たとえ姿は見えなくても故孝烈皇太子殿下とソ・ファヨンが参列しているだろうと
その場所は空けておいた
やがてチェギョンが息を切らせ式場内に入ってきたと同時に、ハモンドオルガンの調べと共に新婦が入場する
ソ・ファヨンは今・・・どんな心情だろうか
ふとそんな事が頭に過る
神の前で永遠の愛を誓い合った二人。時間をかけて成就した二人の想いは、きっとすぐに実を結ぶ事だろう
挙式の直前に≪結婚指輪を神父に届ける≫大役を賜ったギョムは、初めてのことで緊張しながらも無事に
その大役を果たし、少し興奮気味に俺達の元に戻ってきた
だたその直後の誓いのキスを目の当たりにし、頬を真っ赤に染めたギョム・・・なんてマセガキなんだ
将来が少し心配だ。くくっ・・・
厳かでありまた温かい雰囲気の挙式は無事に終了し、俺達はライスシャワーの雨で新郎新婦を送った
新郎新婦二人共堪え切れずに涙を零していたのが印象的だった
無事式も終わりそこで解散となる筈が、やはりハワイまでやってきた東宮一行をそのまま帰せないと思ったのか
チョン夫妻の仕切りで昼食を共に撮ることになった俺達は、急遽教会の最寄りのレストランに移動した
ギョムはウェディングドレス姿のユミが相当気に入ったらしく、昼食の場でもユミを褒め讃えている
『ユミおばちゃん・・・とってもきれいでした~♪
ガンヒョンおばちゃんもあ~ゆ~の着たんですか?』
ガンヒョンは得意満面の笑みで答えた
『着ましたよギョム皇子♪そりゃあもうすんごいのを♪』
『すんごいの・・・ですか?僕、見たいな~♪』
『今度お写真をお見せしますねギョム皇子♪』
『はい~♪あ・・・お母さまも着たんですか?』
突然話を振られたチェギョンは、少し困ったような顔をする
皇族の挙式にドレスは存在しないからだ
『ギョム・・・お母様は着ていないのよ。でもその代わりにすごく歴史のある衣装を着たの。』
『そうなんですか~?お母さまも着たらきっと似合うのにね~~!!
ね♪お父さまそう思うでしょう?』
もちろんそう思うに決まってる。この国のどの女性よりも純白のドレスが似合う人がお前の母様だ
いつかお前もそんな人と縁を紡げたらいい
遠い未来のことなのにユルの挙式に立ち会って、俺はすっかり父親の気持ちになってしまったようだ
このお話は40話で完結させていただきますね❤
あと少しお付き合いくださいね~~★