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Channel: ~星の欠片~
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偽装と現実(リアル) 15

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それから程なくして、皇帝陛下は亡き孝烈皇太子殿下の追尊を見送る決定を下された

シン君は心から安堵したみたいで、食事の時などは声を上げて笑う様になった

そんなシン君を見ることが出来て安堵する半面・・・学校では隣の席に座るユル君の、

冴えない表情に不安を抱いた

恐らく・・・故孝烈皇太子殿下の追尊が見送られた事は、ユル君にとって想定外だったのだろう

私を見ても今までの様な絵空事を話して聞かせるのではなく、ただ一点を怖いくらいの表情で

見つめているユル君に、私は恐怖心さえ覚えた

極端な事を考えて欲しくない

いや・・・考えて貰っては困る

その不安は正直者の私には、愛する人に隠し通せるものではなかったみたい

ある晩・・・シン君は私に問い掛けた

『チェギョン・・・どうしたんだ?なんだか顔色が優れないな。』
『うん・・・ユル君の事なんだけど、このまま終わるとは思えなくって・・・』
『そうだろうな。あのソ・ファヨンが他の手を打って来ない筈がない。
ひょっとして・・・俺の命が狙われるのじゃないかと心配しているのか?』

もちろん本音はそれが一番怖い。だけどそんな縁起でもない言葉は言いたくなかった

『まさかぁ。いくらなんでもそんなことが起こる筈ないよ。だって・・・従兄弟でしょう?』
『そうだな・・・』

そう返事をしながらも自分自身不安で仕方がない顔をしたシン君の胸元に顔を擦り付け、

背中に腕を回しきつく抱き締めた

『おっ・・・どうしたんだ?』
『ただ・・・甘えたいだけ・・・』
『そっ・・・そうなのか・・・』

シン君があの一方的な合房の儀式の後、私を必要以上に大事にしてくれているのは解っていた

そんなシン君にこんなアプローチは良くないとも知っていた

でも自分が抑えきれなかったの

シン君のくれる優しいキスは徐々に深さを増し、それと同時に私は自分のパジャマのボタンに自ら手を掛けた

心の奥底に潜む不安も彼と共有したかった

その日私は・・・本当の意味で彼と抱き合った

身体の深いところでしっかり繋がり・・・本当の夫婦となった

だけどたとえ本当の夫婦になったとしても、この不安は払拭されることはない

幸せなのに怖くて堪らない・・・そんな想いで私はいつまでも彼にしがみついていた

あの恵政宮様の企みを潰さない限りは・・・私達に平穏な日々は来ないのだろう




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最初が最初だっただけに、もっとチェギョンを大切にしようと思っていた

だがチェギョンからの誘惑に俺が打ち勝てる筈もなく、呆気なく俺は白旗を上げ俺達は本当の意味で結ばれた

チェギョンがこんな甘い声を上げるなんて知らなかった

合房の儀式の時は呻き声しか記憶にない・・・

本当に可哀想な事をしてしまった

俺はその時の事を償いたくて、これ以上ないほどチェギョンに優しく触れることができたと思う




それからしばらく経った頃、俺は皇后様に遭いに行った

もしかしたらあの言葉足らずの皇帝陛下は、皇后様ときちんと向き合ってくれたのではないかと言う

淡い期待を抱いていたのかもしれない

皇后様は珍しく部屋を訪れた俺を、満面の笑みで迎えてくださった

『太子や・・・珍しいな。そなたが私のところに顔を出すなど・・・』
『はい。たまには皇后様をお話しがしたいと思いまして・・・』
『まぁ・・・どんな話をしようか。そうだ・・・そなたと妃宮は・・・上手くいっていないと聞いたが
努力できないものなのか?』
『それは・・・何れ解決する問題だと思います。』
『何れ解決する?』
『はい。色々な問題が片づいた後に・・・。私の事はともかく、皇后様はどうなのですか?
皇帝陛下と何かお話されましたか?』
『皇帝陛下と?いいや・・・特別話をする事もない。』

あぁ・・・あの言葉足らずの皇帝陛下は、まだ皇后様に誤解を受けたままなのだな

まぁ長く夫婦でありながら13年他人より遠い人だった二人だ。無理もない・・・

『まだ陛下の事がお許しになれないのですか?』
『なんの事を言っておる?』
『陛下の婚姻前の恋愛の事をまだお怒りなのですか?』
『そんな事・・・婚姻前には恋の一つや二つ誰だってあるだろう。そんな了見の狭い女ではないぞ。
ただな・・・この宮中でと言うのはいただけない。それは背徳行為だ。』
『ですが陛下は・・・婚姻後にそのようなことは無かったと私にはっきり仰いました。』
『だったらなぜ・・・ユルが陛下の子だなんて話が出るのだ?
それに・・・あの二人が密会していたという情報が私に入って来たのだ。』
『それは誰から聞いた話なのですか?』
『当時私に仕えていた女官だ。』
『今もその女官は皇后様にお仕えしているのですか?もしそうであったらここに呼んでいただけますか?』

皇后様は少し頭を悩ませ、思い出したように俺に答えた

『おぉ・・・そう言われてみれば、恵政宮が宮殿を去った後その者も辞めたと聞いた。』

そんな昔からソ・ファヨンは、自分の手の者を敵陣に送りこんでいたのか・・・

『それはもしかしたら、陛下と皇后様を仲違いさせようと企んだ、恵政宮様の仕業かもしれませんね。』
『なんと!』
『つまり・・・恵政宮様はお二人を仲違いさせる必要があった。
それは何れユルに、皇位を継がせる為の策略の一端でしょう。』
『だが・・・陛下からはあの当時もあのあとも、一切何も語られなかったのだ。
それはきっと心に疾しさがあるからではないか?』

俺はチェギョンが本当に妻でよかったと思う

お互いがこうして意地の張り合いをしていたら、このような結果になってしまう事を俺はずっと見て来たのだ

チェギョンがあの時、本音を言ってくれたから・・・俺達は互いの本心が言えるようになった

『皇后様・・・陛下は元々口の立つお方ではありません。
皇后様から話し掛けてみてはいかがですか?』
『今更・・・か?皇帝陛下の前で笑顔を作ることすら忘れてしまったというのにか?』
『はい。それでもです。聞きたい事は時間をおかずに聞く。言いたい事は言い合う。
それが夫婦なのではないかと思います。』

これもチェギョンに教わった事だ。言葉にしなければ解り合えない事はいくらだってある

陛下が故孝烈皇太子を追尊しなかった事も、きっと皇后様にはよい印象に映った筈だ

両陛下が俺の幼い頃の様に、また微笑み合える夫婦になってくれたら・・・

そんな日を心待ちにしていた時・・・とうとうソ・ファヨンは強硬手段に及び俺に刃を向けてきたのだった



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軽く流したのは・・・暑いから(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
だって・・・本当に暑いんだもん
無理っ(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!











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