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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 12

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ハン・チョルスと逢う約束の金曜日・・・嫉妬心からか金曜日には必ず、シンからの呼び出しが入る

アルバイトと学業の両立を一カ月続けたチェギョンは、一日とて休みのない日常に疲れ果ててしまったようだ

そこに追い打ちを掛けるようにユルからの誘い・・・チェギョンは苛立つ気持ちのまま

≪皇太子ルーム≫に赴いた


<トントン!ガチャリ・・・どすん!!>
【ふぅ~~!!』

挨拶もせずいきなり扉を開けソファーに腰掛けたチェギョンではあるが、シンはその顔色を見て

そんな無礼な態度を咎める気にもならなかった

『どうしたんだ?』
『ん~~~・・・・』

目を伏せたままのチェギョンは憔悴しきった顔をしている

『宿題教えるんだろう?あぁ?宿題持って来ていないのか?』
『うん~~・・・』
『一体何があったんだ?話してみろ。』

漸くチェギョンは顔を上げ、シンに視線を向けた

その目にはうっすらと涙が浮かんでいた

『どっ・・・どうしたって言うんだ。何があったんだ?』
『嫌になっちゃった・・・』
『嫌になった?一体何がだ?』

もちろんシンにはそんなチェギョンのハードな日常を知っている。だが敢えて聞いてみたのだ

『アルバイトも・・・ハン・チョルスさんも・・・ユル君も・・・』
『あぁ?・・・』

頑張り屋のチェギョンが弱音を吐くなんて初めての事で、シンはそのあまりの憔悴ぶりに心が揺れた

『逃げたく・・・なっちゃったの。』
『逃げたい?』

それはシンも全く同じ気持ちだった

常に監視される生活・・・自由などまったくない毎日。自身の生涯の伴侶でさえ偏った世界の中から

選べと言われ、まさに逃げ出したい気分だった

チェギョンのそんな気持ちに同調し、シンは徐に立ち上がるとチェギョンの腕を掴んだ

『だったら・・・逃げよう。』
『えっ?・・・』

チェギョンが驚いている間にシンはチェギョンの腕を引っ張るとソファーから立たせ、≪皇太子ルーム≫を出ると

普段は鍵の掛かっている裏口に向かって階段を降り始めた

『しっ・・・シン君・・・』

どこへ行くのかと聞きたい気持ちと、聞きたくない気持ちの両方があった

イギサの目を掻い潜りまんまと学校から出ていった二人・・・二人の向かった先は駅だった





(シン君・・・)

揺れる電車の中窓ガラスに映るシンの横顔にチェギョンは心で問い掛けた

なぜ一緒に電車に乗っているのか・・・そしてシンにも逃げ出したいほどの事があるのか・・・

聞きたいことはたくさんある。だが互いに黙ったまま窓の外の景色を眺めていた

幸い電車の中は乗客もまばらで、二人を気に留める者もいなかった

逃げるように走った息が漸く整った時、シンはチェギョンに話しかけた

『なぁ・・・どうしてお前はすべてをしょい込むんだ?
お前の父親が背負った借金なら、お前の父親に責任があるだろう?なのになぜお前なんだ?』
『それはね・・・この国が中高年に安定した職場を与えてくれないからだよ。
お父さんも一生懸命仕事を探している。でも・・・雇ってくれるところがないんだ。』
『だからってお前が背負うものじゃないだろう?』
『仕方ないよ。いつかシン君がこの国を変えて!私みたいな子が増えない様に・・・中高年にも安定した職場を
提供して!!いつか・・・お願い。』
『っつ・・・そんな大変な事を俺に成し遂げろと?』
『うん。覚えておいてほしいな。そんな友達がいた事・・・』

自分の結婚相手さえままならないシンにとって、それは途轍もなく重い課題だった

そしてどんなにチェギョンに心が傾いても、チェギョンが手に入る事はないとシンは知った

『ひとまず・・・目の前の問題をなんとかしたい。ハン家への借金・・・手助けしても構わないか?』
『だから・・・それはダメだって言ったでしょう?シン君は自分の立場を考えろって!!』
『だったらなぜ、俺に泣き事など言った?聞く事だけしかできない自分がどれだけ歯がゆいか
お前には解るか?』
『聞いてもらえてありがたいと思ってる。こんな事話せる人はシン君しかいなかったから・・・』

シンは腕時計を眺めポツリと呟いた

『もう俺が居なくなった事が知られている頃だ。』
『そうだ!!シン君はどうして私と一緒に逃げたの?』
『俺だって逃げたいことの一つや二つはある。』

本当はすべてを投げ出したいと思っているシン・・・

『とにかく俺達が一緒だと分かればきっと騒ぎになるだろう。
だがお前の身柄は必ず俺が守る。だから安心してくれ。』
『私の身柄・・・って?』
『恐らく皇室警察が来てしまうだろう。』
『えっ?まさかと思うけど・・・私がシン君を誘拐したことになっちゃうの?』
『だからそうならないよう、ちゃんと事情を説明する。』
『冷静なシン君にしては・・・無計画だね。』
『くっ・・・確かにそうだな。』

やがて電車はあの思い出の無人駅へと到着し、シンはチェギョンを誘って電車から降りた

そしてあの待合室の中に入り、二人は並んで腰掛けた

『このまま一緒に逃げられたらいいのにな。』
『逃げても現実は何も変わらないし、何よりもシン君はこの国一番の有名人だもの。無理・・・くすくす・・・』
『笑ったな。確かにな・・・俺と一緒に逃げたんじゃ、お前が悪者にされてしまう。』

久し振りに見るチェギョンの笑顔・・・その笑顔はあの時の様な天真爛漫さはないが、

それでもシンの胸を熱くさせた

『お前には迷惑を掛けない。』

チェギョンに迷惑を掛けることなく、チェギョンを今の現状から救い出してやりたい

チェギョンの心と体を守ってやりたい・・・そう願うシンだった



やがて予想通り無人駅に公用車と皇室警察の車が到着し、駅は瞬く間に包囲された

『しっ・・・シン君、私ひょっとして誘拐犯・・・になっちゃうの?』
『馬鹿・・・そんな筈ないだろう?学校からお前を連れだしたのはこの俺だ。』
『だけど・・・そんないい訳が通じる?』
『俺がきちんと話をする。だから心配するな。』

待合室から二人は出ていき、改札に向かう

シンの後ろから困惑の表情を浮かべたチェギョンは、堂々としたシンに隠れるように無人の改札を抜けた

すると一斉にイギサと皇室警察署員が二人の前に立ちはだかった

『殿下ご無事ですか?』
『怪我などしておられませんか?』
『私はなんともない。無事だ。』

皇室警察署員はシンから発せられたその言葉を聞き、即座にチェギョンの両腕を捕えた

『この者を連行いたします。』
『待て!!この者は何も悪くない。彼女を連れ出したのは私だ。だから家に返してやれ!!』
『申し訳ございませんが殿下・・・一応事情だけでも警察署で伺う決まりになっております。』
『なにっ?チェギョン・・・』
『シンくん・・・・』

警察官に囲まれ車に乗せられ連行されて行くチェギョン・・・その時、シンのイギサの中に

見覚えのある人物がいて頭の中を混乱させた

(さっきのシン君の護衛の人・・・以前私を助けてくれた人とバッグを取り返してくれた人だ。
一体どうしてシン君の護衛の人が、私を助けてくれたの?)

さて運命の歯車は、二人を素直に導いてくれると良いのだが・・・

紆余曲折の道を歩みそうである



イメージ 1


遅くなっちゃったけど
書けたので出しちゃう~~♪

ここ心労で・・・胃が痛かったと言うのに
体重増えていたの
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
笑い事じゃない・・・ひ~~ん

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