東宮に戻っていった四人のイギサのうち、一番位の高いイギサはシンのいる執務室に報告をする為に向かった
<トントン>
『殿下・・・失礼いたします。』
『入るが良い。』
執務室に入っていったイギサは、本日の様子を述べた
『つい先ほどシン・チェギョンさんは御自宅に戻られました。』
『そうか。別に変った事は無かったのだろうな?』
『はい。別段変った事は無かったようにお見受けいたしました。』
『それで・・・一体どのような話をしていたのだ?』
『恐れ入りますが・・・そこまでは解りかねます。』
『っつ・・・そうか。とにかく家に無事戻ったと言う事だな。』
『はい。私達イギサ四人が確認いたしました。』
『解った。私用を申しつけてすまなかった。』
『いいえ。では殿下、私はこれで失礼いたします。』
『御苦労さま・・・』
(っつ・・・無事に帰って来たのはいいが、何を話していたのかも確認していないとは
職務怠慢だろう?・・・っつ・・・いや・・・これでは俺の職権乱用か?
・・・はぁ・・・このままでは気になって、執務が手に着かない。電話・・・してみるか・・・)
シンはポケットの中からスマホを取りだしチェギョンのナンバーを発信する
すると三回目のコールでチェギョンはその電話を取った
『もしもし・・・』
『なあに?シン君・・・ふわぁ・・・』
実に眠そうな声のチェギョンは欠伸交じりに第一声を発する
『無事・・・帰っているか気になって・・・』
『ん?無事??無事帰って来るに決まってる。』
『今帰って来たのか?』
『ううん。少し前だよ。』
『一体どこへ行ったんだ?』
『んっとね・・・チョンダムドンでウィンドウショッピングして・・・』
『(あいつ・・・物で釣る計画か?)色々買って貰ったのか?』
『っつ・・・まさか!そんな恩を着られるようなことしないよ!!チョンダムドンなんて歩いているだけで
場違いの私だよ。似合いもしない服やバッグをプレゼントするって勧められたけど・・・』
『勧められただと?それで・・・どうしたんだ?』
『≪高校生には不釣り合いです!≫って御断りしたよぉ・・・』
『(よし!!いいぞシン・チェギョン!!)まぁ・・・それが無難な対応だろうな。』
『ちょっとシン君!!まさかと思うけど、私が高級品をねだる様な女だと思ったの?
ただでさえ私の家はあの人に、借金の負い目があるんだよ!そんなもの買って貰ったりしていたら
お嫁に行かなきゃならなくなっちゃうじゃん!!』
『そうだな。そんな事は思っていなかったが、相手がどう出るかちょっと気になってな・・・。
それで・・・それからどうしたんだ?』
『高級レストランでお食事・・・』
『(今度は胃袋を買収する気かっ!!)ほぉ・・・美味しかったのか?』
『多分・・・』
『多分ってどういう意味だ?』
『味なんか解る筈ないよぉ。ただでさえ場違いな場所に連れて行かれてさ・・・
目の前にずらっと高級料理が並んでみ?味わう気分じゃないから。
なんか・・・消化できなくて帰ってきて胃腸薬飲んだよぉ。』
チェギョンのそんな口ぶりに少し安堵するシン。決してチェギョンはハン・チョルスと逢うことを
楽しんでいないと知り心のどこかでほっとする
『そうか。胃が痛いのか?』
『うん。少しだけね・・・。だってさ・・・帰りがけハン・チョルスさんたら、お金の入った封筒渡そうとするんだよ!』
『受け・・・取ったのか?』
『受け取る訳ないよ。金曜ごとに逢うのだって借金の利息代わりだもん。
その上お金なんか受け取ったら・・・私すごく悪い女じゃない?』
『くっ・・・確かにな。まぁチェギョンが元気そうでよかった。』
『元気じゃないよ。あ・・・シン君!!今度呼び出しされた時は、また勉強教えてくれる?』
『あぁ構わない。なんなら毎日来ても構わないが?』
『それはちょっとクラスメートの目もあるからやめておく。』
『くくっ・・・そうか?じゃあ次に呼び出した時には、勉強道具持ってこいよ。』
『うん、そうする~~♪じゃあ…私もう眠いから切るね。』
『あぁ。早く休め。』
『うん。おやすみ~~♪』
『おやすみ・・・』
ひとまずハン・チョルスは紳士的な男だったと知り、シンは心から安堵する
だがやはりシン・チェギョンを週に一度でも独占するなんて、許せないと思う部分もあった
どうにかしてハン・チョルスとの縁を切らせる術は無いものかと頭を悩ますシンであった
それから数日後・・・もちろんシンは皇太子ルームにチェギョンを呼び出してはおらず、毎日受ける
イギサからの報告を聞き、チェギョンが今日も無事家に戻った事に安堵をしていた
ところが・・・その日の報告は違っていた
いつもチェギョンを見送って報告にやって来るイギサだが、今日はいつもより30分ほどもその報告が遅れた
<トントン>
『殿下・・・失礼いたします。』
『今日は遅かったな。なにか・・・あったのか?』
『それが・・・シン・チェギョンさんが乗った自転車の背後からやってきたバイクが、彼女の持ったバッグを
盗んで逃げまして・・・』
『なっ・・・なんだって?それで・・・彼女に怪我は?』
『すぐに駆け付け確認しましたところ、バッグを守るために必死で自転車が転倒しまして
脚に擦り傷を負いました。』
『病院には行ったのか?』
『病院にお連れしようとしたのですが≪こんなのかすり傷です。≫と仰いまして・・・家まで送って参りました。』
『そうか。彼女の盗まれたバッグはどうなったのだ?』
『すぐに他のイギサが追跡し、バッグは取り返しました。その犯人は警察に引き渡しました。』
『はぁ・・・そうか。御苦労であった。』
『では殿下、私はこれで失礼いたします。』
『あぁ。』
イギサが去っていった後シンは居ても立っても堪らず、あの金曜日以来掛けていなかった
チェギョンのナンバーを押した
いつもより電話を取るまでに時間が掛かった様な気がする
イライラする気持ちでチェギョンが電話に出のを待った
『もしもし?』
『俺だ。あ・・・元気か?』
『えっ?元気・・・じゃない。ちょっと怪我した。』
『怪我?一体どうしたんだ?』
『帰り道ひったくりに遭ってさ・・・転んだの。』
『大丈夫なのか?病院は行ったのか?』
『ううん。病院に行くほどの事じゃないもん。今消毒して絆創膏貼ったよ。
親切な通りがかりのお兄さんが、家まで送ってくれたんだ。お仲間がバッグも散り返してくれてさ~
親切な人っているもんだね♪』
出来る事ならその親切な人に自分がなりたかったと思うシンである
『そうか。怖い思いをしたな。』
『うん。今日給料日だったから・・・もしかして狙われていたのかも。
ホント信じられない~~!!でも人の情けが心に染みたよぉ~♪』
『そうか。怪我も大したことがないのなら良かった。なぁ・・・もうアルバイトなんか辞めた方が
いいんじゃないのか?』
『じゃあ私に・・・ハン・チョルスさんと結婚しろと?』
『いや、そう言うわけではない。俺が力になると言っているんだ。』
『あのさ・・・シン君に力になって貰ってその先どうする?
シン君は皇族でその私的財産を平民の私に用立てたなんて世間がもし知ったら、
どんなバッシングに遭うか解らないよ。心配してくれるのはありがたいけど・・・
もうちょっと自分の立場を考えて。』
シンにとっては一番痛い言葉だった
ただでさえお妃候補から目を背け、シン・チェギョンに向いている心・・・
陛下からの催促は連日続くが、一向に気持ちがお妃候補になど向かないのである
そんなシンの行動も、そろそろ陛下の耳に届くところとなり・・・陛下としては一刻も早く王族の娘の中から
婚約者を選出し発表してしまいたいところなのである
だが・・・シンの一生連れ添う相手だと思うと、勝手に決める事も出来ずシンの返事を待っている状態であった
チェギョンのアルバイト生活も一カ月を過ぎた頃・・・奇しくもその日はハン・チョルスと約束の金曜日だった
チェギョンの隣の席に座ったイ・ユルは、チェギョンがあまりにも疲れ果てた顔をしている事に気が付き
声を掛けた
『チェギョン・・・チェギョンってば!!』
『・・・・えっ?あ・・・なぁに?ユル君。』
『なんだかすごく疲れているみたいだよ。確か今日はバイトがお休みの日だったよね?
お茶でも飲みに行こう。』
『今日はダメ。ハン・チョルスさんとの約束があるの。』
『僕が断ってあげるよ。だから気分転換に行こう。』
『そう言うわけにはいかないの。ごめんねユル君・・・』
『仕方ないさ・・・』
ただでさえ逢う回数が増すごとにハン・チョルスの好意が重荷になって来るチェギョンである
≪僕の事を知って欲しい≫と言う気持ちは、逢うごとに≪僕を好きになって欲しい≫に変わっていくのも
チェギョンにはひしひしと伝わっていた
そして昼休み・・・金曜日はどうしてもチェギョンの顔を見ないと気が済まないシンは、チェギョンを呼び出した
チェギョンは宿題を手に持って≪皇太子ルーム≫に向かった
その背中はとても・・・儚げだったのである
<トントン>
『殿下・・・失礼いたします。』
『入るが良い。』
執務室に入っていったイギサは、本日の様子を述べた
『つい先ほどシン・チェギョンさんは御自宅に戻られました。』
『そうか。別に変った事は無かったのだろうな?』
『はい。別段変った事は無かったようにお見受けいたしました。』
『それで・・・一体どのような話をしていたのだ?』
『恐れ入りますが・・・そこまでは解りかねます。』
『っつ・・・そうか。とにかく家に無事戻ったと言う事だな。』
『はい。私達イギサ四人が確認いたしました。』
『解った。私用を申しつけてすまなかった。』
『いいえ。では殿下、私はこれで失礼いたします。』
『御苦労さま・・・』
(っつ・・・無事に帰って来たのはいいが、何を話していたのかも確認していないとは
職務怠慢だろう?・・・っつ・・・いや・・・これでは俺の職権乱用か?
・・・はぁ・・・このままでは気になって、執務が手に着かない。電話・・・してみるか・・・)
シンはポケットの中からスマホを取りだしチェギョンのナンバーを発信する
すると三回目のコールでチェギョンはその電話を取った
『もしもし・・・』
『なあに?シン君・・・ふわぁ・・・』
実に眠そうな声のチェギョンは欠伸交じりに第一声を発する
『無事・・・帰っているか気になって・・・』
『ん?無事??無事帰って来るに決まってる。』
『今帰って来たのか?』
『ううん。少し前だよ。』
『一体どこへ行ったんだ?』
『んっとね・・・チョンダムドンでウィンドウショッピングして・・・』
『(あいつ・・・物で釣る計画か?)色々買って貰ったのか?』
『っつ・・・まさか!そんな恩を着られるようなことしないよ!!チョンダムドンなんて歩いているだけで
場違いの私だよ。似合いもしない服やバッグをプレゼントするって勧められたけど・・・』
『勧められただと?それで・・・どうしたんだ?』
『≪高校生には不釣り合いです!≫って御断りしたよぉ・・・』
『(よし!!いいぞシン・チェギョン!!)まぁ・・・それが無難な対応だろうな。』
『ちょっとシン君!!まさかと思うけど、私が高級品をねだる様な女だと思ったの?
ただでさえ私の家はあの人に、借金の負い目があるんだよ!そんなもの買って貰ったりしていたら
お嫁に行かなきゃならなくなっちゃうじゃん!!』
『そうだな。そんな事は思っていなかったが、相手がどう出るかちょっと気になってな・・・。
それで・・・それからどうしたんだ?』
『高級レストランでお食事・・・』
『(今度は胃袋を買収する気かっ!!)ほぉ・・・美味しかったのか?』
『多分・・・』
『多分ってどういう意味だ?』
『味なんか解る筈ないよぉ。ただでさえ場違いな場所に連れて行かれてさ・・・
目の前にずらっと高級料理が並んでみ?味わう気分じゃないから。
なんか・・・消化できなくて帰ってきて胃腸薬飲んだよぉ。』
チェギョンのそんな口ぶりに少し安堵するシン。決してチェギョンはハン・チョルスと逢うことを
楽しんでいないと知り心のどこかでほっとする
『そうか。胃が痛いのか?』
『うん。少しだけね・・・。だってさ・・・帰りがけハン・チョルスさんたら、お金の入った封筒渡そうとするんだよ!』
『受け・・・取ったのか?』
『受け取る訳ないよ。金曜ごとに逢うのだって借金の利息代わりだもん。
その上お金なんか受け取ったら・・・私すごく悪い女じゃない?』
『くっ・・・確かにな。まぁチェギョンが元気そうでよかった。』
『元気じゃないよ。あ・・・シン君!!今度呼び出しされた時は、また勉強教えてくれる?』
『あぁ構わない。なんなら毎日来ても構わないが?』
『それはちょっとクラスメートの目もあるからやめておく。』
『くくっ・・・そうか?じゃあ次に呼び出した時には、勉強道具持ってこいよ。』
『うん、そうする~~♪じゃあ…私もう眠いから切るね。』
『あぁ。早く休め。』
『うん。おやすみ~~♪』
『おやすみ・・・』
ひとまずハン・チョルスは紳士的な男だったと知り、シンは心から安堵する
だがやはりシン・チェギョンを週に一度でも独占するなんて、許せないと思う部分もあった
どうにかしてハン・チョルスとの縁を切らせる術は無いものかと頭を悩ますシンであった
それから数日後・・・もちろんシンは皇太子ルームにチェギョンを呼び出してはおらず、毎日受ける
イギサからの報告を聞き、チェギョンが今日も無事家に戻った事に安堵をしていた
ところが・・・その日の報告は違っていた
いつもチェギョンを見送って報告にやって来るイギサだが、今日はいつもより30分ほどもその報告が遅れた
<トントン>
『殿下・・・失礼いたします。』
『今日は遅かったな。なにか・・・あったのか?』
『それが・・・シン・チェギョンさんが乗った自転車の背後からやってきたバイクが、彼女の持ったバッグを
盗んで逃げまして・・・』
『なっ・・・なんだって?それで・・・彼女に怪我は?』
『すぐに駆け付け確認しましたところ、バッグを守るために必死で自転車が転倒しまして
脚に擦り傷を負いました。』
『病院には行ったのか?』
『病院にお連れしようとしたのですが≪こんなのかすり傷です。≫と仰いまして・・・家まで送って参りました。』
『そうか。彼女の盗まれたバッグはどうなったのだ?』
『すぐに他のイギサが追跡し、バッグは取り返しました。その犯人は警察に引き渡しました。』
『はぁ・・・そうか。御苦労であった。』
『では殿下、私はこれで失礼いたします。』
『あぁ。』
イギサが去っていった後シンは居ても立っても堪らず、あの金曜日以来掛けていなかった
チェギョンのナンバーを押した
いつもより電話を取るまでに時間が掛かった様な気がする
イライラする気持ちでチェギョンが電話に出のを待った
『もしもし?』
『俺だ。あ・・・元気か?』
『えっ?元気・・・じゃない。ちょっと怪我した。』
『怪我?一体どうしたんだ?』
『帰り道ひったくりに遭ってさ・・・転んだの。』
『大丈夫なのか?病院は行ったのか?』
『ううん。病院に行くほどの事じゃないもん。今消毒して絆創膏貼ったよ。
親切な通りがかりのお兄さんが、家まで送ってくれたんだ。お仲間がバッグも散り返してくれてさ~
親切な人っているもんだね♪』
出来る事ならその親切な人に自分がなりたかったと思うシンである
『そうか。怖い思いをしたな。』
『うん。今日給料日だったから・・・もしかして狙われていたのかも。
ホント信じられない~~!!でも人の情けが心に染みたよぉ~♪』
『そうか。怪我も大したことがないのなら良かった。なぁ・・・もうアルバイトなんか辞めた方が
いいんじゃないのか?』
『じゃあ私に・・・ハン・チョルスさんと結婚しろと?』
『いや、そう言うわけではない。俺が力になると言っているんだ。』
『あのさ・・・シン君に力になって貰ってその先どうする?
シン君は皇族でその私的財産を平民の私に用立てたなんて世間がもし知ったら、
どんなバッシングに遭うか解らないよ。心配してくれるのはありがたいけど・・・
もうちょっと自分の立場を考えて。』
シンにとっては一番痛い言葉だった
ただでさえお妃候補から目を背け、シン・チェギョンに向いている心・・・
陛下からの催促は連日続くが、一向に気持ちがお妃候補になど向かないのである
そんなシンの行動も、そろそろ陛下の耳に届くところとなり・・・陛下としては一刻も早く王族の娘の中から
婚約者を選出し発表してしまいたいところなのである
だが・・・シンの一生連れ添う相手だと思うと、勝手に決める事も出来ずシンの返事を待っている状態であった
チェギョンのアルバイト生活も一カ月を過ぎた頃・・・奇しくもその日はハン・チョルスと約束の金曜日だった
チェギョンの隣の席に座ったイ・ユルは、チェギョンがあまりにも疲れ果てた顔をしている事に気が付き
声を掛けた
『チェギョン・・・チェギョンってば!!』
『・・・・えっ?あ・・・なぁに?ユル君。』
『なんだかすごく疲れているみたいだよ。確か今日はバイトがお休みの日だったよね?
お茶でも飲みに行こう。』
『今日はダメ。ハン・チョルスさんとの約束があるの。』
『僕が断ってあげるよ。だから気分転換に行こう。』
『そう言うわけにはいかないの。ごめんねユル君・・・』
『仕方ないさ・・・』
ただでさえ逢う回数が増すごとにハン・チョルスの好意が重荷になって来るチェギョンである
≪僕の事を知って欲しい≫と言う気持ちは、逢うごとに≪僕を好きになって欲しい≫に変わっていくのも
チェギョンにはひしひしと伝わっていた
そして昼休み・・・金曜日はどうしてもチェギョンの顔を見ないと気が済まないシンは、チェギョンを呼び出した
チェギョンは宿題を手に持って≪皇太子ルーム≫に向かった
その背中はとても・・・儚げだったのである
さて~~次回から展開させて参ります❤
展開と同時に若干の耐えてゾーンあり(爆)
展開と同時に若干の耐えてゾーンあり(爆)