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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 9

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翌日からチェギョンの超多忙な日々が始まった

休み時間にも授業で出された宿題に着手するチェギョン・・・それは家に帰ってから宿題をやる気力が

残っていない様気がしたからだ

そんな忙しないチェギョンの様子を見て、チェギョンから何も聞かされていないガンヒョンは首を傾げた

(チェギョンったら一体どうしたって言うのかしら?
休み時間に宿題を片付ける・・・そんなこと今までなかったわよね・・・)

中学時代からチェギョンと友情を育んでいるガンヒョンではあったが、そんなガンヒョンにもチェギョンは

さすがに家の借金問題など相談する事は出来なかった

そしてその日の昼休み・・・お昼のお弁当をみんなで食べている時、チェギョンはポケットに手を入れ

マナーモードになっている携帯が鳴っていることに気が付いた

『あ・・・うん。えっ?今日も?・・・うん解った。あとでね。』

電話を切ったチェギョンにガンヒョンは問い掛けた

『誰から電話?』
『ひっ・・・えっと友達。あ・・・私もうお腹いっぱいだから、行って来るね~♪』

(行って来るってあの子どこに行くんだろう?なんか最近怪しいわ・・・)

勘の鋭いガンヒョンは心の中でそう思いながらも、友人に向かってその疑問について問いかけはしなかった

話したくなればきっとチェギョンは話してくれる・・・そう信じていたからだ




息を切らしながら映像科の階段をチェギョンは上る・・・

先程掛かってきた電話は皇太子殿下イ・シンからの呼び出しだったからである

(確か≪たまには・・・≫って言っていたよね?これじゃあ毎日じゃん!!もぉっ~~!!)

文句の一つも言ってやろうという気分だった

チェギョンは皇太子ルームの前に立ち、乱れた呼吸を整えてからドアをノックする

<トントン>
『どうぞ』

チェギョンは部屋の中に入りドアを即座に閉め、それから口を開いた

『シン君・・・今日は一体なあに?』
『まぁ・・・とにかく座れ。』
『うん。』
『昨日の電話の話では、今日からアルバイトに行くんだよな?』
『そうだよ。』
『バイト先はどこだ?』
『えっ?まさか・・・先生にチクる気?』
『くっ・・・そんなんじゃない。ただ庶民がアルバイトするところは、一体どんな場所なのか興味があるだけだ。』
『ふ~~ん。なんか私の苦境を楽しんでる?』
『そんな訳ないだろう?いいから教えろよ。一体どこなんだ?』
『駅前のファミレス・・・』
『駅前の・・・ファミ・・・レス?』
『くすくす・・・解らないんだから聞かないでよ。もぉ~~!』
『いや・・・そうではなくファミレスと言うのはなんだ?』
『あ・・・ファミリーレストランの略称だよ。家族で気軽に行けるリーズナブルな店って言う意味。
もちろんシン君は行ったことなんかないだろうけど・・・』
『あぁ・・・行った事はない。』

こんな些細なところまで二人の生活環境は違う

『用件はそれだけ?』
『あ・・・いや、金曜日の約束と言うのは絶対なのか?』
『うん。約束しちゃったから・・・』
『撤回はできないのか?』
『約束を破る人間にはなりたくないもん!』
『そうか・・・』
『じゃあ私そろそろいくね。宿題やらなくっちゃ・・・』
『あぁ。また連絡する。』

チェギョンが去って行ったあとで、シンはタブレットを取りだし地図検索をしてみる

チェギョンの言った通り、最寄りの駅前にはファミリーレストランがあった

『ここか・・・』

そう呟いてシンはタブレットの電源を落とした





その日一旦家に戻ったチェギョンは、夕食を済ませバイト先に向かった

皿洗いなど母の手伝いでいつもしている事だ。容易いと思っていたチェギョンである

だがその量たるやチェギョンの想像を超えていた

(ひぃ~~頑張らなくっちゃ・・・)

洗剤のついた食器は滑りやすい。うっかりすると食器を割りそうになる

次から次へと運ばれて来る食器を、まんべんなく洗い上げ乾燥させる

荒いがしっかりしていないと食中毒の元となる。そうなったら責任問題だ

裏方の仕事とはいえ・・・実に責任重大なバイトをしているチェギョンなのであった

三時間みっちり働いたあとは、立ちっぱなしの作業の為足は棒の様に重い

(疲れた・・・)

勤務時間を過ぎたチェギョンは、愛車に跨ると家路へと急いだ





一方・・・チェギョンからバイト先を聞き出してしまったシンは、夜の9時半を回った頃から実に落ち付きがない

時計を見ては何度も溜息を吐くシンを、見兼ねたコン内官は問い掛けた

『殿下・・・先程から何か気になさっている様ですがどうなさいましたか?』

コン内官からそう言われ、シメタとばかりにシンは告げた

『コン・・・少し出掛けたいのだが・・』
『は?これからでございますか?あの・・・どちらに?』
『学校の最寄りの駅まで行きたいのだが・・・』
『最寄りの・・・駅でございますか?』
『あぁ。』
『かしこまりました。では今お車を手配いたします。非公式の外出ですので、あまり目立たない車にいたしますが
よろしいでしょうか?』
『あぁ。そうしてくれ・・・』

すぐさま車が用意され、護衛の車と共に駅前まで向かったシンである

前後はもちろん護衛の車がしっかりガードしていた

非公式の外出で皇太子殿下の身に危険が及んでは、コン内官が大変な責任を負わされることになってしまう

『殿下・・・駅前に着きました。』
『あぁ。』

シンは自分の腕に嵌めた腕時計を確認する。10時ジャストだった

付近にあるファミリーレストランに視線を向け、チェギョンが出て来るのを待つ

10分ほど待った頃、裏口から出てきたチェギョンをシンは発見した

『すまないが・・・あの娘の後を追跡してくれ。』
『は・・・はい?』

さすがのコン内官も驚いてしまったようだ

視線の先にはシン・チェギョンの姿があり、そのシン・チェギョンは自転車に乗って颯爽と走り去ろうとしている

コン内官は慌てて運転するイギサに声を掛けた

『君!あのお嬢さんを追ってくれ!!』
『はい。かしこまりました。』

シンはチェギョンの行方が気になりながら、その駅前の混雑した様子に驚いた

(この時間にこんなに人の多い場所で、酒に酔った男に絡まれでもしたらどうするんだ!
まったく向う見ずなのにも程がある。)

繁華街で三台もの車がぞろぞろと自転車の後をつけて行くのは明らかに怪しいと判断したコン内官は

既に調べてあったシン・チェギョンの住所を他の二台の車に伝え、そちらの付近で待機するよう命じた

それからはシンとコン内官の乗った車だけがチェギョンを追った

意外と早いチェギョンの運転・・・後を追跡しても怪しまれない速度で公用車は走っていた

やがてシン家の家の門をくぐりチェギョンが敷地に入っていくと、シンは暫くその家を見つめていた

(ここに住んでいるのか?)

そして自分の乗った車の前後に警護の車が並んだ事に気が付き、漸くシンは安堵しイギサに命令した

『車を出してくれ。』
『かしこまりました。』

三台の車は東宮に戻っていった


東宮に戻った時コン内官はシンに問い掛けた

『殿下・・・シン・チェギョンさんをお送りしたかったのですか?』
『あ・・・いや・・・』
『まさかと思いますがこれを毎日なさるおつもりですか?』
『・・・いけないか?』
『殿下、少し御自身のお立場を考えてください。こんなことが陛下に知れたら大変です。』
『陛下に・・・知られない様にしたい。』
『でしたら殿下は明日からこちらでお待ち下さい。私がイギサと一緒に行って参りましょう。
そして毎日無事帰った事を報告させていただきます。』
『私が行ってはいけないのか?』
『殿下が御一緒ですと毎晩三台の車が東宮から出て行く事になります。それが続きますと皇帝陛下の耳にも
入ってしまうでしょう。ですので殿下の代わりに私が参ります。』
『・・・そうか・・・ではすまないが、お願いしよう。』

本当は人任せになどしたくなかったシン。自分で行って自分の目でチェギョンが無事に帰った事を

確かめたかったのであるが、どうにも自由にならない自身の立場を歯がゆく思いながら

ひとまず毎日コン内官から≪無事帰宅した≫との報告を聞く事で、気持ちを落ち着かせるシンであった



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第二王子・・・試験が終わった感想
『受かる気はしないけど落ちた気もしない。』
っていったいどっちなんだ~~!!
後一週間冷や冷やしながら待ちましょう。

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