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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 8

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ハン・チョルスから解放され家に戻ったチェギョンは、着替えを済ませバイトの面接に向かった

持ち前の明るさが幸いし≪洗い物係り≫として採用をして貰える事となった

もちろんハン・チョルスとの約束は破るわけにはいかない

金曜日だけはバイトを入れず、平日三時間・土曜日は午後から・・・

日曜日は終日と言うアルバイト尽くめの生活が明日からスタートする

この借金における一番責任を感じなければならない父は、不況の煽りを受けなかなかいい就職先が見つからず

生活さえも保険外交員の母の収入に頼っていた

家に帰ったチェギョンは自室に籠って今後の事を考える

電卓を片手に借金返済計画思案中である

(えっと・・・この分でいくと月に・・・たったこれだけ?でも高校卒業してフルタイムで働き始めたら、
もっと稼げるよね?はぁ・・・でも私、この分じゃ恋もできない・・・)

そう・・・約束したからと金曜日だけはハン・チョルスの為に空けた

唯一自由になる時間が金曜日だけなのである

となると・・・必然的にハン・チョルスが近い人間になっていってしまいかねない

(いやいや・・・そんなこと考えちゃあダメ!あの人とは約束だから逢うだけ!!)

悪い人じゃない事ももちろん解っている。だがチェギョンには二度逢っただけのハン・チョルスを

利害の為に恋愛対象として見ようと思うほどしたたかではなかった

『はぁ~~っ・・・』

先の事を考えると溜息ばかりがついて出る

『あ・・・そうだ明日の準備・・・』

チェギョンは鞄を開けて明日の授業の準備をしようとした。そこでシンから今日受け取った焼き菓子の箱が

入っている事を思いだした

机の上に箱を置き、それをそっと開けてみる

『う~~ん・・・』

シンを目の前にしても以前の様には振る舞えない。昼休みに一つだけ食べた焼き菓子を、もう一つ取り出して

口の中に放り込んだ

『美味しい・・・』

正直な気持ちなのだがやはりどこか以前とは違う

シンの素性が明らかになった今、チェギョンがシンに抱いていた親近感はどこか遠くにに行ってしまい

今はただの友人にもなれない雲の上の人に思えた





チェギョンがそんな風にシンの事を考えていた頃、シンは皇帝陛下に呼び出され本殿で問い詰められていた

『太子・・・先日のパーティーで心は決まったのか?』
『いえ陛下、それはまだです。』
『なんの為にパーティーを開いたと思っている?そなたが花嫁候補と直接逢い自分の目で選ぶためだ。
早く心を決めなさい。』
『陛下・・・そう申されましても、私にとっては一生の事ですから、慎重に判断させていただきます。
婚姻を決めたのはいいけれど・・・合わなかったのでは私も相手も一生不幸ですから・・・』
『そうか。なるべく早い決断を待っている。』

いくら皇族の婚姻が早いとは言っても、まだ15歳のシンである

いくら急かされたとしても強力な印象を持った令嬢でもいない限りは即決は無理だろう

(はぁ・・・)

皇帝陛下からパーティーの事を蒸し返され、記憶に唯一残ったチェギョンを思いだす

いや・・・記憶に残ったと言うより気にしていると言った方が正しい

(チェギョンが王族だったら・・・)

そんな夢のまた夢の話を思い浮かべ、ただ溜息を吐く

なんとなく肩を落とし東宮に戻って行こうとするシンを、皇太后が呼びとめた

『太子・・・太子や。』
『なんでしょう皇太后様。』
『私の部屋で茶でも付き合わんか?』
『はい。伺います。』

皇太后と共に慈慶殿へ向かったシン。皇太后の部屋のソファーに向かい合って座り、茶を楽しんでいる

『それで・・・太子、この間の親睦パーティーで気に入った娘は居るのか?』
『あ・・・いえ、皇帝陛下からも催促を受けましたが、決断できるような令嬢は・・・おりませんでした。』
『おや?ではダンスを踊った娘さんも気に入らなかったと言うのか?』

皇太后はもちろんすべてを知っていて言っている

つまりシンの本心を聞き出そうと言う魂胆である

『皇太后様、見ていらっしゃったのですか?・・・あの娘は王族ではありません。』
『王族ではないと?だが随分親しげだったが?』
『はい。少し前に偶然知り合った娘です。ハン家の子息が・・・なんでも経済的なことを理由に
彼女に結婚を申し込んでいるそうで・・・』
『ほぉ・・・なんだかややこしいのぉ。』
『はい・・・』
『だが私の目に狂いが無ければ、太子は相当あの娘を気に入った様子に見えたが?』

シンは溜息を洩らしながら苦笑する

『くっ・・・皇太后様はなんでもお見通しと言う事ですか。』
『そうじゃ。おほほほ・・・だが困ったのぉ・・・ややこしい上にユルもあの娘を気に入ったのではないか?』
『どうやらそのようです。ですが・・・所詮平民。私やユルが縁を結べる相手ではない・・・
そう仰りたいのではありませんか?』
『いや、そうとも言いきれないが・・・ひとまず太子の気持ちを聞きたかったのだ。』
『では逆に・・・もし私が望めば、あの娘を皇室に迎えることが出来ますか?』
『うむぅ・・・それはなんとも言えない・・・』
『期待しないようにします。平民である彼女を私が望んだら、彼女をきっと困らせてしまうでしょう。』

皇帝陛下の部屋から出てきた時と同じ様に、シンは肩を落として去って行った

シンとチェギョンの間には祖父同士が深い友情を築いていた縁があると言う事も知っていながら、

今はまだその事実を伏せておこうと思う皇太后なのである



東宮の自室に戻ったシンは、皇太后から念を押すように言われてしまった事でチェギョンの事を

思い出し本日入手したチェギョンの携帯番号を発信してみた


『もし・・・もし?』
『あぁ・・・俺だ。』
『俺様とはどなたですか?』
『イ・シン・・・声で解るだろう?』
『いやぁ・・・今時流行りの詐欺かと思った。』
『そんな筈ないだろう?今大丈夫か?』
『うん。』
『これが俺の携帯番号だ。登録しておけ。』
『解った。』
『焼き菓子・・・食べたか?』
『うん。一つだけ食べた。』
『気に入ったらまた持って来る。』
『えっ?いいよいいよそんなの。』
『だからたまにあの部屋に・・・来て欲しい。』
『うん。休み時間だったら大丈夫。なんたって放課後はバイトで忙しいからね~~♪】
『バイト?決まったのか?』
『うん。金曜日以外は全部埋まってる。』
『だったら金曜日にあの無人駅に来れないか?費用はもちろん俺が・・・』
『それが・・・金曜日はハン・チョルスさんと約束があるんだ。』
『借金の肩代わりの話は・・・無しになったんじゃなかったか?』
『うんそうだけど・・・それでも利息分は逢う事で払わないと。』
『毎週か?』
『うん。毎週だよ・・・』
『っつ・・・』

電話の向こうで舌打ちする音が聞こえる

『あ・・・あと、明日からこの時間はバイトに入っているから電話取れないよ。』
『解った。毎日何時に終わるんだ?』
『10時。』
『なんだと?そんな時間までバイトをするのか?』
『うん。』
『そもそもこの学校はアルバイト禁止だろう?』
『そうだけど・・・少しでも早く借金を返済したいのっ!!』
『解った。内緒にする。』
『じゃあ・・・シン君、私宿題やらなきゃ・・・またね。』
『あぁ。』

電話を切った後シンは、夜の10時を回ってからチェギョンが家に帰るのが心配で仕方がなくなる

(まったく・・・この俺を一体どうしようって言うんだ!!)

別にチェギョンには振り回しているつもりもない

だが実際にシンは平民のチェギョンにすっかり振りまわされている気分になっていた



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卒業式翌日・・・第一王子がパーマをかけました。
すっかり今時の若者って感じよぉ・・・
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!

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