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Channel: ~星の欠片~
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孤独な皇子に愛の手を 5

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宮殿に入って行く高級車・・・チェギョンは成す術もなくうろたえていた

(ねえ・・・何の因果で宮殿なの。それにこの人が王族って・・・もぉ~~一体どうしたらいいのよ!!)

悪い事は何もしていない。後ろめたい事も何一つない

だから隠れる必要性は無いのだが、やはり心のどこかに抱いてしまった感情がチェギョンをそうさせるのだろう

『さぁチェギョンさん着きました。降りましょう。』

柔らかな物腰でチェギョンの手を取るハン・チョルス。だがチェギョンはこの期に及んで足掻いてみる

『あの・・・すみません。宮殿なんて困るんです。』
『なぜです?チェギョンさん・・・。あ~大丈夫ですよ。王族の令嬢はたくさん来ていますが、
あなたほど愛らしい人は居ないでしょうから・・・。僕も鼻が高いです。』
(え~っ・・・こんな取ってつけた様な正装をさせられて、愛らしいとか言われても嬉しくないんですけど・・・)

それに困るのはそんな意味ではない。この場所は皇太子殿下イ・シンの住まいだ

こんな場所での再会を果たすなどあり得ない

(私って・・・飛んで火に入る夏の虫?あ~でも・・・私が気にするほど、シン君は気にしていないかもしれないし
素知らぬ顔をしていれば・・・大丈夫かも♪)

なんとか気持ちを立て直し、ハン・チョルスの後に続く・・・だがもちろん俯いたままだ

目立たない様に・・・大人しく大人しく・・・していれば見つかる筈はない



ハン・チョルスの後に続き迎賓館の中に入ると、そこにはチェギョンの知らない世界が広がっていた

目も眩むほど煌びやかなシャンデリア・・・耳を擽るクラッシック音楽の調べ

クラスを鳴らす音、ひそやかな話し声・・・

大勢の人の中に居てもやはり目についてしまう、飛び抜けて背の高い男・・・それはシンだった

あの最後の無人駅で逢った日よりも更に神々しい皇太子のオーラを放っていた

チェギョンはますます項垂れ・・・とにかく顔が見えないように振舞っていた

『チェギョンさん・・・何か飲みませんか?』
『(ひぃ~~名前呼ばないでっ!!)いえ私は結構です。』

ところが・・・シンから隠れよう隠れようとと必死だったチェギョンは、もう一人の皇子に見つかってしまったらしい

『あ!あれ~~?チェギョン!!シン・チェギョンじゃない?』

<ギクリ・・・>

背中を冷たいものが流れていく・・・その声の主は(来ないで!来ないで~~!)と心の中で叫ぶ

チェギョンの元に、足取りも軽くやって来た

『ユ・・・ユル・・・くん・・・』
『また妙なところで逢うなぁ~♪なんだか嬉しいよ。』

屈託なくオレンジジュースをチェギョンに手渡すユル

『それで?チェギョンは王族だったの?』
『えっ?いえまさか・・・私はただ・・・』

そこに飲み物を持って戻ったハン・チョルスは困惑しているチェギョンの代わりとばかりに答えた

『ユル殿下・・・ご機嫌いかがですか?彼女は私のフィアンセです。』
『フィアンセ・・・?』

いきなり婚約者呼ばわりされた事に憤ったチェギョンは、つい大声を上げた

『違いますっ!!!』

迎賓館のフロアー内に響き渡ったチェギョンの声・・・シンはその声を聞きつけて足早にその方向に向かって歩く

『チェギョンさん・・・お願いですから僕のメンツも考えてくださいよ。
今日はパートナー同伴のパーティーなんです。僕が恥ずかしいじゃないですか・・・』
『すっ・・・すみません。』

もうシンはすぐそこまで迫ってきている。チェギョンはその気配をひしひしと感じながら深く項垂れた

『ユル・・・知り合いか?紹介してくれないか?』
『あ・・・シン。うん♪僕の席の隣でいつも親切にしてくれているシン・チェギョンだよ♪』
『ほぉ・・・我が校の生徒か?だったら私も顔見知りになりたい。
シン・チェギョンさん・・・一曲踊っていただけますか?』
『い・・・いえあの・・・殿下っ・・・私はダンスなど・・・』
『まぁそう言わずに。よろしいですね?ハン・チョルスさん。』
『あ・・・はい。構いません殿下。』

シンはチェギョンの手をやんわりと捉えると、ホールの中央に誘った

その光景を見ていたコン内官はもちろん目を見張った。今シンに誘われているのはあの時逢っていた少女だ

フロアー内に居る王族ご令嬢方は、皇太子殿下が女性をダンスに誘ったことに驚愕の表情をする

シンはとても女性にダンスを申し込む様なタイプではないのだ

フロアー中央にシンが辿りつくと、それが合図とばかりに音楽が流れ始めた

チェギョンはシンのリードに合わせてひとまず動いてみる

腰を抱かれ自然と身体が密着する。するとシンは小さな声でチェギョンに話し始めた

『久し振りだな・・・』
『う・・・ん・・・』
『なぜ同じ高校だと教えてくれなかった?』
『それは・・・・(言える筈ないし。)』
『あの男の家がお前の家の借金を肩代わりしたのか?』
『うん・・・』
『なんとかしてやろうか?』
『はぁっ?何言ってんの・・・』
『あの男と結婚する気か?』
『そんな気はないよ。』
『だったら・・・俺がなんとかしてやる。』
『いい!それはうちの問題だから余計な事はしないで!!』
『そうか。だが本当に困ったら相談してくれ。同じ学校と解ったんだ。学校内で逢っても無視するな。』
『うん。解った。』
『素性を黙っていてすまなかった。だが言えなかったんだ。
言ったら気まずくなってしまうだろう?』
『うん確かに・・・』

曲が終わってしまう・・・シンは改めてチェギョンの今日の装いを見て、そっと褒めたたえた

『王族会の娘など目じゃないな。』
『えっ?』
『くくっ・・・なんでもない。こちらの話だ。』

チェギョンを解放した後、シンは王族の令嬢方に取り囲まれダンスを踊っていただけるよう催促を受けたが

結局チェギョン以外の誰とも踊らなかった

そしてユルにしてもシンにしても何かとチェギョンに視線を向け気に掛ける

そんな様子をホールの隅で見ていた皇太后陛下は、コン内官に話しかけた

『のぉコンよ。』
『はい。なんなりとお聞きください皇太后様。』
『シンもユルもあのハン家の息子が連れて来たお嬢さんを随分気にして居るが、
あのお嬢さんはどこのお嬢さんなのだ?』
『あのお嬢さんは殿下が一度宮を飛び出した時に親切にしてくれた方だそうです。
聞いたところによるとユル様と同じクラスに通っていらっしゃるとか・・・』
『そうか。不思議な子よのぉ・・・我が国の皇子が二人共・・・あのお嬢さんを恋する目で見ておる。
一度調べてみては貰えぬか?』
『はい。かしこまりました。』

結局・・・シンにチェギョンの存在はばれてしまい、チェギョンは憔悴しながらハン家の車に乗って帰って行く

家に送って貰う車中、チェギョンはハン・チョルスに漸く、今日話したかった事を口にできた

『あの・・・私と結婚したいとか言う理由がわからないのですが・・・』
『チェギョンさんのおじい様と言う方が、先帝と非常に懇意にしてらっしゃったとか・・・
そのおじい様の孫であるあなたをお嫁さんにしたら、きっと皇室との関係も上手くいくだろうと言うのが
両親の最初の考えでした。
そして今日・・・見ていてよく解りました。やはりあなたの血筋は皇族を虜にするようだ。
たとえ両親はそうでも僕は違います。
この話が出てから一年・・・あなたの事を遠くから見せていただいていました。
実に明朗活発で・・・私はすごくあなたを気に入ったんです。
だから借金の形にあなたと結婚しようとは思っていません。』
『でしたら私からお願いがあります。私はまだ高校生で無力ですが、いつかきっと自分の力で
その借金をお返しします。ですので借金の形に私と結婚しようという考えは諦めてください。』
『ははは・・・;解りました。でしたら僕からもお願いがあります。
借金関係なく、もしあなたが僕に好意を抱いてくれたら、その時は無条件で結婚してください。
金銭的な駆け引きなしであなたと恋がしたいんです。もちろん返済はあなたが大人になるまで待ちます。』
『解り・・・ました。』

ハン・チョルスから金銭的な駆け引きは無しと言われても、チェギョンにとってそれは難しい

出逢う前から既にもうその様にインプットされているのだ

今更撤回するのは難しいだろう

そして不可抗力とはいえシンの謝罪を聞いてしまったチェギョンは、また波乱万丈な学生生活になりそうである

シンとユル・・・そしてハン・チョルス

三人三様の口説き方をして来そうな予感がする


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チェギョン・・・いきなりモテ期の到来で
大変なことになりそう~♪

許嫁と言う決まりごとは無いけど
祖父同士が親友はありです❤



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