皇太子殿下イ・シンを駅のホームで捕える事の出来たコン内官は、宮に戻る車中シンに苦言を呈した
『殿下・・・行き先も告げず一人でお出かけになるなどとんでもない事です。
もう既に皇帝陛下の耳にも届いております。このような事は二度となさらないでください。』
『あぁ。次の時はコンには言ってから出掛けることにしよう。』
『宮に戻られましたら王族の令嬢方の釣書が届いております。目をお通し下さい。』
『解った。』
そう答えるとシンは車外の雑踏に目を向けた
わずかばかりの反抗心からのプチ家出は実に楽しかったと、初めて逢った少女の顔を思い出したのだ
飾り気がなく子供みたいでいて、しっかりしたところのあるあの娘・・・
(シン・チェギョンと言ったか?)
その名前を思い出しシンは思わず口角を上げ笑っていた
『なにか・・・楽しい事でもあったのですか?』
助手席に座るコン内官は、珍しく含み笑いをするシンに尋ねた
『いや・・・別に何も・・・』
その時にあったことなど誰にも言いたくはなく、シンはその後無言のまま外の景色を見つめた
そんな頃電車を降りて家路に向かって歩くチェギョンは、やはりシンの事を思い出していた
『しかし失敗したな~~!まさか3個も食われちゃうとはね・・・
あの子どんだけお腹空いていたんだろう。腹ペコ君・・・くすくす・・・
いいところのお坊ちゃんって感じ?まぁ・・・借金踏み倒すタイプじゃないよね。
って・・・なんで私がお金返して貰うのに、あんな遠くの無人駅まで行く訳?
よく考えたら変じゃん・・・騙されたかなぁ~~~。
まぁきっと来週来るでしょ♪』
並んで歩いている時に、その腹ペコ君を随分背の高い子だと思ったチェギョン
よもやその腹ペコ君呼ばわりしている少年が・・・この国の皇太子殿下だなんて思いもしないことだった
東宮殿に戻ったシンは、執務室に山積みにされた釣書に渋々目を通す
(なんだこれは・・・皆、張り付けたような笑顔だな。
こっちの女など・・・いじってないか?作りものって明らかにわかるだろう?
しかし・・・13歳から18歳って年齢幅が広すぎるだろう?これなんか明らかにアジュマだ・・・)
ひとまずすべてに目を通したシンは、机の隅にそれらを放り投げた
(あのシン・チェギョンの大口開けてエッグタルトを頬張る顔がここにあったら、俺は即決するんだがな・・・)
そう心の中で呟いてしまったシンは、よもやあり得ない事だと頭を横に振った
約束した翌週の金曜日・・・もちろんシンはスケジュールを確認してその日を提案したのだ
シン・チェギョンに返すお金を用意し、もちろん自分の交通費も用意した
また借りる様な不手際があってはならないと、その辺りに抜かりはなかった
そしてラフなスタイルに着替えキャップを目深にかぶるとコン内官を呼びだした
『コン・・・少し出掛けて来る。』
『どちらに行かれるのですか?』
『私用だ。』
『それはなりません。皇帝陛下からも殿下の行動に注意するよう、きつく申し渡されております。』
『だったら・・・コン、お前は私が皇族であるにも拘らず、平気で嘘を吐く人間になって構わないと言うのか?』
『はっ・・・嘘はいけません。』
『そうだろう?だったら行かせてくれ。約束した相手にお金を借りたんだ。
皇太子が借金を踏み倒すような事は出来ないだろう?』
『どなたかに・・・お金を借りられたのですか?』
『あぁそうだ。』
『でしたらその相手が何か企んでいるかもしれません。私もお供いたしましょう。』
『あぁ?私は一人で行きたいのだ。それに相手は私の素性を知らない。コンが一緒に付いてきたら
相手は変に思うだろう?』
『でしたらその場所までご同行いたします。車で参りましょう。』
ここでコン内官とやり合っていて時間がなくなっては大変だと、シンは渋々公用車に乗り込んだ
そして帰りは相手と一緒に電車に乗るので、先週迎えにきた駅まで来て欲しいと告げた
『こちらでよろしいのでしょうか?』
ひなびた無人駅の前で公用車を降りたシン
『あぁ。ではあとであの駅まで来てくれ。』
『かしこまりました。』
切符を購入しホームに向かって歩いて行く・・・待合室の窓から、小さな頭が一つ見える
『もう来ていたのか・・・』
そう一人呟きながらシンは待合室の扉を開けた
『よぉ!先週は助かった。』
『あ・・・来たんだ~♪
腹ペコ・・・違った・・・シン君。』
『約束は守ると言っただろう?シン・チェギョン・・・』
『今日はお腹空いていないの?』
『空いていない。くくっ・・・』
『な~~んだ。折角美味しいマフィン持って来たんだけど、お腹空いていないのかぁ・・・
じゃあこれ、持って帰ろうっと。』
『待て!食べるよ・・・』
『ホント?じゃあ食べようよ♪』
また今日もチェギョンはホームの自動販売機に向かい、ミネラルウォーターを二本買った
(ん~~?なんだろう?あの黒塗りの車・・・)
ホームから見える位置に停車している三台の黒塗りの高級セダン・・・中には品の良さそうな男性が乗っていた
ミネラルウォーターを二本手に持ったチェギョンは、待合室の中に入りシンに尋ねた
『ねえシン君・・・ここまで車で来たの?』
『あ?あぁ・・・まぁな。』
『もしかして外に停まっている車・・・シン君の家の車?』
『えっ?(マジか・・・)』
シンは窓から外を眺め、公用車がこの待合室を見張っている事に気が付き舌打ちをした
『いや違う。』
『じゃあ誰か待っているのかな・・・。まぁいっか~♪』
二人でミネラルウォーターを飲みながらマフィンを食べる
今日は空腹ではないシンは、その箱の中に入っていたマフィンをチェギョンと仲良く半分の量を食べた
『あ・・・これ先週借りた電車代だ。』
『あ・・・うん♪』
もう・・・逢う理由は何もない。だがシンは何か理由を付けてチェギョンにもう一度逢いたいと思った
『チェギョン・・・来週もここで逢えないか?』
『えっ?来週も?』
『あぁ。ダメか?』
『ダメじゃないけど・・・』
『俺・・・先週も今週もご馳走になってばかりだ。次は俺が何か持って来る。』
『うん。いいよ♪』
『本当か?』
『うん♪来週また同じ頃に逢おう。』
『あぁ。』
夕暮れが迫ってくる
『そろそろ帰らなきゃ・・・。シン君は迎えの車が来るの?』
『いや、電車に乗って帰る。』
『じゃあ行こう。電車きたよ~~♪』
遠くから電車の音が聴こえ、慌ててホームに出ていった二人
黒塗りの車の中からは三人の男性が車を降り・・・その男性達を降ろした車はその場所から居なくなった
(っつ・・・コン内官、電車までついて来るつもりか?)
チェギョンに気がつかれない様に、離れた場所で二人を見守るコン内官とイギサ達
そんな事も知らずにチェギョンは、先週知り合ったシンとまた逢う事になった不思議さを覚えながらも
電車の中でおしゃべりを楽しむ
『ところで・・・先週言っていた話はどうなったんだ?』
『あ~~結婚?まだお返事していない。もちろんこれから高校生だから先の話だよ。
だけどさぁ~~15歳で将来決められちゃうのってどうよ!
何かたまんないよぉ・・・』
『だよな。まったくだ・・・』
まさにシンも同じ考えだった。大した出会いもなく・・・唯一の友人と言ったら財閥の御曹司三人だけ
女の子とこんな風に親しく話すのは初めてのことだったのだ
『シン君はどこの高校に行くの?』
『俺か?俺は王立高校だ。』
『おぉ~~名門だね。』
『お前は?』
『私は・・・』
チェギョンがその問いに答えようとした時に車内アナウンスが駅に到着した事を知らせた
『じゃあシン君・・・また来週ね♪』
『あぁ。また来週・・・』
電車のドアが閉まり、満面の笑顔で手を振るチェギョン。シンも笑顔でチェギョンに手を振った
そんな皇太子殿下の様子を目の当たりにし、コン内官はなんとも言えない切なさを覚えた
宮に居る時にあんな笑顔を見せたことが無い皇太子殿下
こんな出逢いが、皇太子殿下の心の傷にならなければ良いがと、自由にならないシンの未来を案じていた
『殿下・・・行き先も告げず一人でお出かけになるなどとんでもない事です。
もう既に皇帝陛下の耳にも届いております。このような事は二度となさらないでください。』
『あぁ。次の時はコンには言ってから出掛けることにしよう。』
『宮に戻られましたら王族の令嬢方の釣書が届いております。目をお通し下さい。』
『解った。』
そう答えるとシンは車外の雑踏に目を向けた
わずかばかりの反抗心からのプチ家出は実に楽しかったと、初めて逢った少女の顔を思い出したのだ
飾り気がなく子供みたいでいて、しっかりしたところのあるあの娘・・・
(シン・チェギョンと言ったか?)
その名前を思い出しシンは思わず口角を上げ笑っていた
『なにか・・・楽しい事でもあったのですか?』
助手席に座るコン内官は、珍しく含み笑いをするシンに尋ねた
『いや・・・別に何も・・・』
その時にあったことなど誰にも言いたくはなく、シンはその後無言のまま外の景色を見つめた
そんな頃電車を降りて家路に向かって歩くチェギョンは、やはりシンの事を思い出していた
『しかし失敗したな~~!まさか3個も食われちゃうとはね・・・
あの子どんだけお腹空いていたんだろう。腹ペコ君・・・くすくす・・・
いいところのお坊ちゃんって感じ?まぁ・・・借金踏み倒すタイプじゃないよね。
って・・・なんで私がお金返して貰うのに、あんな遠くの無人駅まで行く訳?
よく考えたら変じゃん・・・騙されたかなぁ~~~。
まぁきっと来週来るでしょ♪』
並んで歩いている時に、その腹ペコ君を随分背の高い子だと思ったチェギョン
よもやその腹ペコ君呼ばわりしている少年が・・・この国の皇太子殿下だなんて思いもしないことだった
東宮殿に戻ったシンは、執務室に山積みにされた釣書に渋々目を通す
(なんだこれは・・・皆、張り付けたような笑顔だな。
こっちの女など・・・いじってないか?作りものって明らかにわかるだろう?
しかし・・・13歳から18歳って年齢幅が広すぎるだろう?これなんか明らかにアジュマだ・・・)
ひとまずすべてに目を通したシンは、机の隅にそれらを放り投げた
(あのシン・チェギョンの大口開けてエッグタルトを頬張る顔がここにあったら、俺は即決するんだがな・・・)
そう心の中で呟いてしまったシンは、よもやあり得ない事だと頭を横に振った
約束した翌週の金曜日・・・もちろんシンはスケジュールを確認してその日を提案したのだ
シン・チェギョンに返すお金を用意し、もちろん自分の交通費も用意した
また借りる様な不手際があってはならないと、その辺りに抜かりはなかった
そしてラフなスタイルに着替えキャップを目深にかぶるとコン内官を呼びだした
『コン・・・少し出掛けて来る。』
『どちらに行かれるのですか?』
『私用だ。』
『それはなりません。皇帝陛下からも殿下の行動に注意するよう、きつく申し渡されております。』
『だったら・・・コン、お前は私が皇族であるにも拘らず、平気で嘘を吐く人間になって構わないと言うのか?』
『はっ・・・嘘はいけません。』
『そうだろう?だったら行かせてくれ。約束した相手にお金を借りたんだ。
皇太子が借金を踏み倒すような事は出来ないだろう?』
『どなたかに・・・お金を借りられたのですか?』
『あぁそうだ。』
『でしたらその相手が何か企んでいるかもしれません。私もお供いたしましょう。』
『あぁ?私は一人で行きたいのだ。それに相手は私の素性を知らない。コンが一緒に付いてきたら
相手は変に思うだろう?』
『でしたらその場所までご同行いたします。車で参りましょう。』
ここでコン内官とやり合っていて時間がなくなっては大変だと、シンは渋々公用車に乗り込んだ
そして帰りは相手と一緒に電車に乗るので、先週迎えにきた駅まで来て欲しいと告げた
『こちらでよろしいのでしょうか?』
ひなびた無人駅の前で公用車を降りたシン
『あぁ。ではあとであの駅まで来てくれ。』
『かしこまりました。』
切符を購入しホームに向かって歩いて行く・・・待合室の窓から、小さな頭が一つ見える
『もう来ていたのか・・・』
そう一人呟きながらシンは待合室の扉を開けた
『よぉ!先週は助かった。』
『あ・・・来たんだ~♪
腹ペコ・・・違った・・・シン君。』
『約束は守ると言っただろう?シン・チェギョン・・・』
『今日はお腹空いていないの?』
『空いていない。くくっ・・・』
『な~~んだ。折角美味しいマフィン持って来たんだけど、お腹空いていないのかぁ・・・
じゃあこれ、持って帰ろうっと。』
『待て!食べるよ・・・』
『ホント?じゃあ食べようよ♪』
また今日もチェギョンはホームの自動販売機に向かい、ミネラルウォーターを二本買った
(ん~~?なんだろう?あの黒塗りの車・・・)
ホームから見える位置に停車している三台の黒塗りの高級セダン・・・中には品の良さそうな男性が乗っていた
ミネラルウォーターを二本手に持ったチェギョンは、待合室の中に入りシンに尋ねた
『ねえシン君・・・ここまで車で来たの?』
『あ?あぁ・・・まぁな。』
『もしかして外に停まっている車・・・シン君の家の車?』
『えっ?(マジか・・・)』
シンは窓から外を眺め、公用車がこの待合室を見張っている事に気が付き舌打ちをした
『いや違う。』
『じゃあ誰か待っているのかな・・・。まぁいっか~♪』
二人でミネラルウォーターを飲みながらマフィンを食べる
今日は空腹ではないシンは、その箱の中に入っていたマフィンをチェギョンと仲良く半分の量を食べた
『あ・・・これ先週借りた電車代だ。』
『あ・・・うん♪』
もう・・・逢う理由は何もない。だがシンは何か理由を付けてチェギョンにもう一度逢いたいと思った
『チェギョン・・・来週もここで逢えないか?』
『えっ?来週も?』
『あぁ。ダメか?』
『ダメじゃないけど・・・』
『俺・・・先週も今週もご馳走になってばかりだ。次は俺が何か持って来る。』
『うん。いいよ♪』
『本当か?』
『うん♪来週また同じ頃に逢おう。』
『あぁ。』
夕暮れが迫ってくる
『そろそろ帰らなきゃ・・・。シン君は迎えの車が来るの?』
『いや、電車に乗って帰る。』
『じゃあ行こう。電車きたよ~~♪』
遠くから電車の音が聴こえ、慌ててホームに出ていった二人
黒塗りの車の中からは三人の男性が車を降り・・・その男性達を降ろした車はその場所から居なくなった
(っつ・・・コン内官、電車までついて来るつもりか?)
チェギョンに気がつかれない様に、離れた場所で二人を見守るコン内官とイギサ達
そんな事も知らずにチェギョンは、先週知り合ったシンとまた逢う事になった不思議さを覚えながらも
電車の中でおしゃべりを楽しむ
『ところで・・・先週言っていた話はどうなったんだ?』
『あ~~結婚?まだお返事していない。もちろんこれから高校生だから先の話だよ。
だけどさぁ~~15歳で将来決められちゃうのってどうよ!
何かたまんないよぉ・・・』
『だよな。まったくだ・・・』
まさにシンも同じ考えだった。大した出会いもなく・・・唯一の友人と言ったら財閥の御曹司三人だけ
女の子とこんな風に親しく話すのは初めてのことだったのだ
『シン君はどこの高校に行くの?』
『俺か?俺は王立高校だ。』
『おぉ~~名門だね。』
『お前は?』
『私は・・・』
チェギョンがその問いに答えようとした時に車内アナウンスが駅に到着した事を知らせた
『じゃあシン君・・・また来週ね♪』
『あぁ。また来週・・・』
電車のドアが閉まり、満面の笑顔で手を振るチェギョン。シンも笑顔でチェギョンに手を振った
そんな皇太子殿下の様子を目の当たりにし、コン内官はなんとも言えない切なさを覚えた
宮に居る時にあんな笑顔を見せたことが無い皇太子殿下
こんな出逢いが、皇太子殿下の心の傷にならなければ良いがと、自由にならないシンの未来を案じていた
≪御報告≫
危惧していた第二王子の併願校
私学特進科
合格いたしました~~❤
では・・・次は本命の県立
頑張っていただきましょう~~❤
母・・・ひとまず安堵いたしました★
それと・・・受験体制まっしぐらで
バレンタインのお話は今年書けそうもありません。
申し訳ないっす!
危惧していた第二王子の併願校
私学特進科
合格いたしました~~❤
では・・・次は本命の県立
頑張っていただきましょう~~❤
母・・・ひとまず安堵いたしました★
それと・・・受験体制まっしぐらで
バレンタインのお話は今年書けそうもありません。
申し訳ないっす!