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孤独な皇子に愛の手を 1

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孤独な王子に愛の手を
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俺は一体・・・なんのために存在しているんだ?
国の為?国民の為?
俺自身で決定できる事は何一つなく
皇帝陛下の操り人形でしかない
ただ言われた事だけをこなし
自分の意見など耳を傾けてもらった事もない
こんな俺が
未来の皇帝陛下になるのか?
笑えるな・・・



自分の存在価値に常日頃から疑問を抱いていた皇太子殿下イ・シン15歳の春

シンはイギサやコン内官の目を掻い潜り、わずかばかりの小銭をかき集め東宮を後にした

いわゆるプチ家出と言うやつだ

シン自身ももちろんそのような囁かな反抗が、皇帝陛下の胸に響くとは思っていない

だがわずかばかりでも抵抗を形にしてみたかったのである

(なんだと?王立高校に入学したら、王族会の娘の中から適当に器量のいい娘を見繕え?
俺の妃が適当でいいと言うのか?あり得ないだろう・・・)

今まで思い通りになることなど一つもなかったシンである

だがさすがに今回ばかりは納得がいかない

こんな子供じみた行為が皇帝陛下の胸に響くとは思えないが、やらないよりはましだろうとシンは考えたのだ

(しかし・・・朝食を食べたきりだから空腹だ。)

空腹などという状態にかつて陥ったことが無いシンは、初めて戦う空腹感に非常に悩まされていた

かき集めた小銭は行ける場所までの電車の切符に使い、今その行きついた先の無人駅の待合室で

夕陽を浴びながら何度も溜息を吐いた

ふと・・・誰もいないと思っていた待合室の反対側から、鼻腔を擽る匂いがシンを誘惑した

(な・・・なんだ?美味しそうな匂いがする・・・)

思わずその方向に視線を向けると、まだ幼さの残る少女が一人・・・エッグタルトを頬張っていた

『ん~~~っ♪うまっ❤やっぱ家出の友にはエッグタルトよね~~♪
あんっ?・・・うがっ・・・』

誰もいないと思って大口を開けエッグタルトと格闘していた少女は、そんな自分に向けられている視線に気付き

喉を詰まらせ胸元を拳で叩いた

<トントントントンッ!>
『ゴクゴク・・・ぷぁ~~っ・・・もう、死ぬかと思ったよ。』

そして自分を凝視しているその少年が、自分ではなくエッグタルトを見つめている事に気がついた

『エッグタルト・・・食べる?』
『あ・・・あぁ?あ・・・あぁ・・・』

少女はその5個入りのエッグタルトの箱を少年の方に向けた

『じゃあどうぞ。』
『あぁ。』

だが少年はその場所に座ったまま微動だにしない、

『食べていいよ。』
『あぁ。』

目は確かに欲しそうなのに、その少年はその場所から一向に動こうとしない

少女は少年が遠慮しているのかと思い、席から立ち上がると少年の隣まで歩いて行き横にちょこんと座った

だがシンは決して遠慮していたのではなかった

なぜなら自分から食べ物を貰いに行く・・・などと言う事をしたことがなく、少女が自分の元へ持って来るのが

当たり前だと考えていたのだ

『どうぞ。』
『あぁ。』

少年は漸く手を伸ばし箱の中からエッグタルトを一つ摘まむと、あっという間に平らげた

『あなた・・・飲み物ないの?』
『あぁ・・・小銭を切らしてしまって・・・』

小銭どころか紙幣も持っていないのが本当のところだ

少女は『仕方ないなぁ・・・』と呟きながら、外の自動販売機でミネラルウォーターを購入し少年に手渡した

『飲んで。喉に詰まらせちゃうから・・・って~~あぁぁ・・・私のエッグタルト3個も食べちゃった・・・』
『あ・・・悪い。』
『最後の1個は私のだからね~~!!』

少女は少年に食べられないうちにと、慌てて最後のエッグタルトを口に運んだ

『ご馳走になったな。』
『いいよ~~。だってあんな目で見られていたら一人で食べられないでしょ?』
『ところで・・・お前家出人なのか?』
『うん。家出して来たの。てか私の場合は日常茶飯事なんだけどね。』
『どうして家出しようと考えたんだ?』
『いやそれがさ~~聞いてくれる?うちの親・・・借金があってね、それもなんだかすごい家柄の御主人に・・・
その借金の肩に先方から私を嫁に欲しいって言う話が来たからさ~~。
そんなのってムカつくじゃん!だから逃げて来ちゃった・・・』
『だが・・・何も荷物は持っていないようだが?』
『うん。だって逃げたってどこにも行けない。結局帰る場所は家しかないでしょう?
だから身一つで放浪していたの。
でももう夕方だからそろそろ帰らなくっちゃね・・・』

少女は口をへの字に曲げて項垂れる

『年はいくつなんだ?』
『15歳・・・中学を卒業したばかりだよ。』
『じゃあ俺と同じ年だ。お前童顔だな・・・小学生かと思った。』
『もう~失礼ね。てっ・・・同い年なの?てか・・人のことばっかり聞いているけどあなたはどうしたの?』
『俺もちょっとした家出って感じかな・・・』
『くすくす・・・私と同じでお父さんと喧嘩したんでしょう?』
『喧嘩?喧嘩か・・・してみたいよ。』

複雑な表情を浮かべる少年に、少女はこれ以上聞いてはいけない様な気がして口を噤んだ

『そろそろ帰らなくっちゃ・・・。でもあなた、実はお金持ってないんでしょう?』
『なぜわかる?』
『だって・・・さっき≪お腹が空きました≫って顔していたもの。お札を持っていたら何か食べていた筈でしょう?』
『くくっ・・・なるほど、すごい洞察力だな。』
『帰りの切符代貸してあげる。だから帰ろう。』
『折角家出したのに家に帰るのか?』
『うん。だって・・・私は養われている身だもん。』
『そうだな・・・』

(確かに俺も国民の血税で養われている身だ。こんな事をしている場合ではないな。宮に帰るか・・・)


少年は携帯のGPS機能を使ったイギサが迎えに来るだろうから、この場所で待っていればいいとも思ったが

その少女に借りを作りたくなったようだ

『いいのか?俺を信用して・・・』
『くすくす・・・嘘はつきそうにないもの。』
『しかしお前・・・中学生なのに金持ちだな。』
『う~~ん・・・豚さんの貯金箱を壊して、有り金全部持って来たんだよぉ~~!』

帰りの電車の中・・・同じ方向に乗り込んだ二人

自分が降りる駅の一つ手前で少女が降りる際、振り向いて少年に告げた

『じゃあ来週の金曜日の同じ頃・・・あの無人駅で逢おう。』
『あぁ解った。俺の名はイ・シンだ。』
『私はシン・チェギョン。じゃあシン君、気を付けて帰ってね~♪』

手を振って電車が発車するのを見送ったチェギョン

そして電車が見えなくなった時、家路に向かって歩き始めた

次の駅に電車が到着した時、既にホームは厳戒態勢になっており・・・シンは自分を迎えに来た

イギサやコン内官に連れられ東宮に戻って行った

意味のないアクションを起こしても無駄に終わる

≪これからは自分の考えをしっかり皇帝陛下に述べよう≫と心に決めたイ・シン15歳の春だった



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なんとなく原点に戻ろうかなって感じ?
でも今回のお話・・・許嫁と言う鉄板がございません。
さて~~この二人をどう料理しようかな~♪

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