≪夫は・・・まだ歩く事も出来ない幼い息子との入浴さえも禁じます。
なぜかと言うと・・・息子も異性だからだそうです。どんだけ嫉妬深いんでしょう。≫
チェギョンのそんな呟きで始まった最新の漫画・・・それを読んで爆笑しているのは南宮殿のギョン皇子だった
『ちょっと・・・ガンヒョン見てみろよ。シン兄貴・・・相当嫉妬深いんだ。ははははっ』
『ちょっとギョン・・・それはフィクションだって書かれているでしょう?話し半分に読まなきゃダメよ・』
『いや、これは絶対に実話だ。今度兄貴に確かめてみようっと♪』
同じ様に東宮でチェギョンの掲載したネット漫画を読んでいたシンは、深く溜息を吐き頭を抱えた
『確かに・・・確かに言った。俺がチェウォンを風呂に入れるなと。
だが・・・自分の息子に嫉妬する夫が居るか?』
チェギョンは思い余って反論してみる
『えっ>だってシン君が言ったんでしょう?
≪俺が居ない時はチェ尚宮に入浴は任せて、お前は一緒に風呂に入るな!≫って・・・』
『そっ・・・それは嫉妬じゃなくて、妊娠中のお前に負担にならないかと案じての事だ!
誤解・・・するな!』
『その漫画はあくまでもフィクションですっ!!』
ただ今チェギョンは第二子懐妊中。漫画の中で女の子を待ち望むセリフを連発したので、宮中の者達は
密かに≪次は内親王≫と噂されている
第一皇子のファンのところも婚礼してすぐ御子が授かり、更にはユル皇子のところも少し遅れて妊娠が発覚した
北宮殿のイン皇子のところは・・・妻のヒョリンと共にクラシックバレエの推進活動に力を入れ始め、
第二子どころではないらしい
現に幼い≪ヒョリ≫にすらトゥシューズを履かせ、レッスンを始める始末だ
それと同時にチェギョンを除く他の三姉妹達は、得意分野の絵画関連で国の芸術賞の審査員なども勤め始めた
皇太子妃シン・チェギョンだけは・・・アンダーグラウンドの活動なので、表立った芸術活動はしていないものの
その分だけ妃殿下としての公務に追われている
妊娠中であるにも拘らず、皇太子イ・シン夫人として公務に同行する事も多く、また単独でも福祉活動などに
力を入れていた
そして東宮に戻れば一人の母として育児に妻として夫の世話に・・・夜になると寸暇を惜しんで漫画を描く
それが一日の終わりのチェギョンの楽しみなのである
もちろん結婚する時の条件がそれだったのだから、夫のシンは文句も言わない
時々・・・自分とあまりにも似通った描写や言動が飛び出すと、やんわりと窘めるだけだ
各宮殿其々が充実した学生生活と宮中での執務をこなすうち、兄弟・元姉妹達が初めて出逢った冬から
5年の月日が流れていった
第一皇子ファンの住む中宮殿では妃のスニョンが内親王を立て続けに出産し・・・その子は≪スヨン≫≪ファル≫
と名付けられた。二人の小さなお姫様は二歳と一歳になる
第二皇子のインの住む北宮殿には妃のヒョリンと、内親王の≪ヒョリ≫が一人っ子ではあるが
一人っ子ゆえの溺愛ぶりで、四歳にして小さなバレリーナさながらに踊る姿は宮中の者を魅了している
第三皇子のユルの住む西宮殿では、妃のヒスンがスニョンの後を追う様に親王≪ヒス≫と内親王≪ユニ≫を
出産した。こちらもファン皇子と同じく二歳と一歳になる
第四皇子・・・皇太子殿下イ・シンの住まう東宮殿では、妃殿下チェギョンが三歳になる
親王≪チェウォン≫を筆頭に、内親王≪シニョン≫親王≪ジン≫と年違いの三兄弟を育てている
第五皇子ギョンの住む南宮殿では、ギョン皇子の押しの強さから妃のガンヒョンはお腹の空く暇もなく
四歳の内親王≪ガンジュ≫を筆頭に、親王の≪ガンウ≫内親王の≪ヒョンジュン≫親王の≪ギジュ≫と
二男二汝に恵まれ、南宮殿は宮中で一番賑やかな宮殿と言われている
まだ春の足音も聞こえて来ない冬真っ盛りな頃・・・チェギョンの元にシン夫妻が宮中を訪れると言う連絡が入り
チェギョンはすぐさま各宮殿に集合を掛けた
報せを受けた各宮殿は、皆ベビーカーや御子の手を引いて迎賓館に集まった
もちろんそれは元姉妹達や皇孫ばかりでなく・・・夫である皇子達も一緒だった
皇子達。元姉妹達それに親王・内親王が12人と言う大人数である
シン夫妻がゆっくり迎賓館の中に足を進めると、元姉妹達は子供達を夫に任せ一斉に夫妻の元に駆け寄った
『『お父さんお母さん~~♪』』
『皆元気そうだな。』
『今日はお母さんの手料理を持参したのよ♪』
嬉しそうな元姉妹達・・・チェギョン以外は血の繋がりはないと言っても18年共に暮らした両親である
やがて皇帝陛下・皇后陛下・皇太后陛下もその輪に加わり・・・迎賓館はちょっとしたパーティーさながらとなった
イン皇子の娘≪ヒョリ≫は家族の前で誇らしげにバレエダンスを披露し、三陛下もシン夫妻も
皇孫の成長ぶりに目を細めた
『陛下・皇后や・・・こうして兄弟同士が手を取り合って、仲良くする姿は見ていて気持ちの良いものだな。』
『そうですね皇太后様・・・』
『皇太后様・・・ひょっとして先帝は、今ある様な家族像を思い浮かべて、あのような遺言を
遺されたのではないでしょうか。』
『そうかもしれないのぉ・・・』
陛下は微笑みながら皇孫達を見つめる
『確かに・・・この先どんな苦難があったとしても、兄弟姉妹の絆は揺るがないでしょう。
それに皇位継承で争う事もないでしょう。
宮中にある皇子達の五宮殿が共に手を取り合い、そして協力し合うに違いありません。』
その時・・・ダンスを披露していた≪ヒョリ≫がターンで失敗し床に転んでしまった
『痛い・・・』
失敗したのを恥じたのか、それとも本当に痛かったのか・・・≪ヒョリ≫は目に涙を浮かべ口をへの字に歪めた
すかさず駆け寄るガンヒョンとチェギョン
『ヒョリ・・・立てる?』
『痛いの痛いの~~飛んでけ~~♪』
赤くなってしまった≪ヒョリ≫の膝に息を吹きかけるチェギョン。ガンヒョンは≪ヒョリ≫の両脇を持つと
ヒョリを立ち上がらせた
『大丈夫。ありがとうございます。妃宮様・・・ガンヒョン様。』
涙を堪え笑顔を浮かべる≪ヒョリ≫
ヒョリンはそんな愛娘の幼くして真摯な態度に喜びを隠そうともせず、≪ヒョリ≫の頭を撫でると抱きかかえた
『ヒョリは偉いわね。それにお行儀もいいわ。さぁ!おばあちゃんの作ってくださったお料理をいただきましょう。』
≪ヒョリ≫はイン皇子とヒョリンの間にちょこんと腰掛け、シン家の母スンレの作ってきた料理に手を伸ばす
賑やかで幸せな皇室一家
もちろんシン皇子とチェギョンの仲が良いのは言うまでもないが、他の宮殿の主も皆一様に
輝く笑顔を浮かべている
シン夫妻は呟く
『幸せだな。こんな光景が見られるなんて思ってもみなかった。』
『本当に・・・娘達を手放した時は寂しかったけれど、18年間娘達を育んだ私達への・・・
先帝からのご褒美をいただいた気分だわ。』
正真正銘自分達の娘チェギョンばかりでなく、他の四人の娘達も同じ様に幸せを掴んだ事
これはシン夫妻にとってこの上なく幸せなことだった
『あ!雪が降って来たよ~~♪』
窓の外を見つめ≪チェウォン≫が目を輝かした
≪チェウォン≫の声に窓の外に一斉に目を向けると、そこにはパウダースノーが舞い踊っていた
きっとこの雪の様に幸せが・・・皇室一家の未来に降り積もって行くことだろう
先帝の心からの願い・・・各宮殿にこの先もずっと、幸せが降り積もりますようにと・・・
パウダースノーの降る夜に (完)
200万HIT記念のお話にお付き合いいただき
本当にありがとうございました。
5対5・・・しかも皇室物と、非常に無茶ぶりました。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
登場人物が多い故、萌えどころも少なかったのではないかと思います。(激爆)
今後も細々と・・・
続けていけたらなと思っております。
また良かったらお付き合いいただけると嬉しく思います。
どうもありがとうございました❤
~星の欠片~ 管理人 ★ emi ★