『う~ん・・・寝苦しいなぁ・・・』
夜中に目を覚まし何度も寝返りを繰り返す皇太子妃チェギョン・・・夫のシンは、その都度目を覚ましてしまい
最近寝不足の様子である
『どうしたんだ?チェギョン・・・』
『えっ・・・あ・・・また起こしちゃった?ごめん。私・・・自分の部屋で寝る事にしようか?
でないとシン君・・・寝不足でしょう?ほら~~目の下にクマが!』
チェギョンはそっとシンに手を伸ばし、その目の下にできた疲れを癒したくてそっと触れた
『いや。お前の姿が見えない方が逆に気になって眠れない。ここにいろ。』
『うん。』
シンはやんわりと目の下に当てられたチェギョンの手を捉え、指先を握り締める
『早く休め。』
『わかったぁ・・・』
身重の妻を気遣いながらも、あまり刺激されると己が気の毒になるシン
重責の中漸く授かった我が子・・・妻を大事に想う気持ちと若さゆえの本能との間で揺れ動くシンであった
妃殿下チェギョンの≪フィクションと言う名の実生活の暴露漫画≫は、宮中及び一般人にも
広く人気を集めていった
もちろん一般人はその作者が妃殿下である事など知らない。
それに気が付いているのは、高校生時代から彼女のファンだった一部の人間である
もちろんペンネームは当時と変わっていても、その画風や描写の表現などは隠す事は出来ない
昔からのファンは知っていながら黙って静かに見守り、密かに楽しんでいるようだ
ネットでたまたま見つけてしまったユーザーは、ただ等身大の女性の恋愛と結婚を赤裸々に綴った
ネット漫画は、世間の女性の共感を呼び注目の的となるに相違なかった
大学も夏休みを迎える頃になると、公務などの空いている時間に皇太子夫妻は庭を散策したりして
相変わらず仲睦まじい姿を見せていた
チェギョンも出産予定日まで一カ月となり、大きなお腹を持ち上げる様にして歩いている
『いてっ・・・イタタタっ・・・』
顔を顰めチェギョンが立ち止まる
『どうした?チェギョン・・・』
『ん~~お腹パンチされた。』
『パンチ?そんなこと解るのか?』
『うん。わかるよ~~今のはグーパンチだな・・・』
『へえ・・・』
生命の神秘を目の当たりにし、シンは目を細めるとチェギョンのお腹に目を向ける
『うおぉ~~!!ほら・・・シン君ぐにょ~~って動いてる・・・』
いきなりシンの手を捕まえ、チェギョンは自分のお腹に当てた
『あぁっ・・・・なんだこれは・・・』
『赤ちゃんがグルンってひっくり返ったの。』
『痛いんじゃないのか?』
『うん、少しね。でも平気だよ♪』
一人取り残されたようで辛かった日々は今はどこかに消え去り、穏やかな時間が流れて行く・・・
前方からはギョン皇子とガンヒョンが、ベビーカーに乗せた≪ガンジュ≫を連れ散歩している
『ガンヒョ~~ン♪』
チェギョンがガンヒョンに向かって手を振ると、ギョン皇子とガンヒョンは満面の笑みで二人に近づいてきた
『チェギョン・・・この暑いのにその大きなお腹は拷問ね。』
『うん。そうなんだよ。ただでさえ暑いのに・・・この子暴れん坊でさ~。もう大変・・・』
『ふふふ・・・アンタに似て暴れん坊なんじゃないの?』
『えっ?やだなぁガンヒョン・・・私はおしとやか。』
ガンヒョンは皇太子殿下とギョン皇子が何か話しているのをいい事に、チェギョンに耳打ちをする
『アンタさ・・・おしとやかな妃殿下が・・・あ~~んなことやこ~~んなこと・・・描くかしら?』
『えっ?だからガンヒョン・・・あれは話の流れで・・・』
『もぉ~~いやいや!!ギョンったら・・・アンタの漫画をバイブルにしてるわよ。』
『バイブル?』
『アンタの漫画の主人公が言ったセリフとか、まんま言ってのけるから・・・アタシ興醒めよ。』
『えっ・・・だからちょっと待って!!確かにシン君を参考にはしているけど、
そのまんまシン君が言ったセリフじゃあないから・・・』
『それだけじゃあないわよ。まぁ・・・いいんだけど・・・夫婦仲良しって言うのは
だけどさ~~ほどほどにしてよ。』
『えっ?だからガンヒョン違うって~~~~!!あくまでもフィクションだって!!』
かなり誤解を受けているようだが、夫のシン自身が≪リアルか?≫と思うほどなのだ。
ガンヒョンにそう言われても決しておかしくはないのである
そんなある日・・・チェギョンの漫画がアップされ・・・宮中はまたまた大騒ぎになった
≪男の子が生まれました~~♪≫
もちろんチェギョンもシンも主治医に生まれてくる子の性別など聞いてはいない
なんとなく・・・インスピレーションでそう漫画に描いただけなのだが、これに反応した宮中の人間が
またしても東宮に集まり大騒ぎとなった
もちろん一早く駆けつけたのは皇太后と皇后である
二人は息を切らせて東宮のチェギョンの元を訪れ、矢継ぎ早に聞いて来る
『妃宮・・・親王が生まれるとは本当か?』
『チェギョンや・・・でかしたぞ。』
『えっ?・・・』
困ってしまったのはチェギョンである。あくまでも願望的に描いた漫画のセリフがこんな大騒ぎになるとは
思いもしなかったのである
『いえ・・・あのっ、皇太后様・皇后様・・・あれはあくまでもフィクションで・・・』
『いやいやそんな事はなかろう。』
『そうですとも。懐妊の時だってチェギョンの予言は当たりましたよ。』
話はとんでもない方向に向かっている。チェギョンは漫画で自分の未来を予言していると思われているらしい
だが、胎児の性別についてはまだ何の情報も得ていないのである
もし万が一生まれてきた時に、この国母二人をぬか喜びさせてしまってはと思い
チェギョンがその事を否定しようと思った時、隣にいつの間にか現れた皇太子殿下が、チェギョンの代わりに
二人に笑顔を向け話しかけた
『皇太后様・皇后様・・・性別など医師からも聞いていないので解りませんよ。
チェギョンはただでさえ重責を担っているのですから、あまり過剰な期待は寄せないでください。
どちらが生まれてきてもいいじゃないですか。この宮中には何れ5組の若夫婦が住むのですから
そのどこかには男児も生まれてくるでしょう。そのくらいおおらかに見守ってください。
きっと先帝もそう仰られると思いますよ。』
シンの話を聞いて皇太后も皇后も嬉しさのあまり駆けつけてしまったが、こんな行動の一つ一つが
チェギョンにとっては全てプレッシャーとなる事に気が付き、二人共すまなそうにチェギョンを見つめた
『おぉ・・・そうだった。チェギョンや、すまなかったな。』
『妃宮・・・残り少ない妊娠生活を楽しみなさい。お腹の子が生まれてしまえば・・・本当に忙しくなるからな。』
『はい♪』
そう・・・今はお腹の中にいるのだから、例え身重だとしても一人で自由に動けるのである
生まれてしまったあとではそうはいかない。だがまだチェギョンにはそんな事にまで気が回らない
お腹の中の子が下りてきて食欲全開になったチェギョンは、食事が大変美味しく
この上を向いても横を向いても一向に眠れないという状況から早く脱出したいと、その兆候が訪れるのを
心待ちにしていた
そして出産予定日を一週間後に控えたある晩・・・それは突然やって来た
いつも通りベッドに潜り込み、右へ左への寝返りを繰り返していたチェギョンが突然シンを揺すり起こした
『シン君!!シン君・・起きて!!お腹痛い・・・』
『あ?お腹・・・痛い?何分間隔だ?』
『ん・・・まだ30分くらい・・・』
『30分・・・いや、初産だと解らないと医者も言っていた。病院へ行こう。』
深夜だと言うのににわかに騒がしくなった東宮殿・・・
まだ余裕のある妃殿下ではあるが、万全を期すため夫シンと共にかかりつけの王立病院へと
向かったのであった
さて・・・次回チェギョンは出産♪
もうあと二話しかないので・・・軽く飛ばします。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
もうあと二話しかないので・・・軽く飛ばします。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!