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Channel: ~星の欠片~
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パウダースノーの降る夜に 22(其々のバレンタイン)

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その日はギョン皇子の言った通り、お昼休みが終わる頃から細やかな雪がチラチラと舞いだし

やがて本格的な雪景色が広がっていく

放課後にはしっかりチェーンを巻かれた公用車5台が、其々のカップルを乗せ各宮殿へと向かって行くのだ

さて・・・一体どんなバレンタインが待っている事か




≪中宮殿≫

『スニョン、僕の部屋に行こう。』
『はい。』

ファン皇子に促がされ入っていった部屋。スニョンは以前来た時と違う何かに目を奪われる

『ファン皇子・・・これって。』

古式麗しいその部屋に場違いな程置かれたメッセージボード・・・そこにはいつ撮られたのか全く記憶に無いほどの

スニョンの写真で溢れかえっていた

『スニョンがここに来る度・・・帰宅する時・・・こっそり撮り溜めた写真なんだ。気に入ってくれた?』
『はい。すごいです。これだけ私がいっぱいいると圧巻です。でもぉ・・・ファン皇子
もうちょっと可愛いショットはなかったんですか?ほら・・・これなんか半目開けて怖いですぅ。』

スニョンが一枚の写真を指差すと、ファン皇子はクスリと微笑み返答した

『ふふふ・・・何を言っているんだい?自然体のままが一番いい。この顔だってものすごくキュートだ。』
『本当ですか~?』

少しふくれっ面になりながらも、スニョンは本来の目的を思い出し花柄模様の包装紙でラッピングした

一枚の額を取りだした

『あ・・・これ、バレンタインのプレゼントです♪』

そんなに大きなものではない。だが優しい色合いを選んで描いたファンの肖像画は、韓服を着たファン皇子が

応接間のソファーに腰掛けている姿が描かれていた

本来であれば派手な色彩を使うところだが、柔らかい色彩の方が穏やかなファン皇子を描くのにふさわしいと

判断したスニョンの力作だった

『これは・・・実によく描けている・・・素晴らしい。スニョン・・・どこに飾ろうか?』
『ファン皇子、でしたらこの壁面が良いのではないかと・・・』

スニョンの言う通りその場所に水彩画を飾ったファン皇子。見ているだけで優しい気持ちにさせてくれるその絵を

ファン皇子は目を細め満足そうに眺めている

『部屋の中に僕とスニョンで一杯になった。これからはもっともっと・・・一杯にして行こう。』
『はい!ファン皇子♪』

スニョンを優しく抱き寄せたファン皇子。恋の速度はゆっくりではあるが、確実に互いの心を深めたようである




≪北宮殿≫

『ヒョリン・・・君が今日俺のために踊ってくれるって言うから、少し早いけどレッスン室を作ったんだ。
見てみるかい?』
「えっ?イン皇子…本当に?』
『ああ。』

イン皇子は出来上がったばかりのレッスン室にヒョリンを案内する

『すごい・・・』

ヒョリンが学校で使用しているレッスン室よりも更に広い、その部屋を目の当たりにし唖然としていると

イン皇子は満足したように微笑んだ

『気に入って貰えた?』
『ええ、ものすごく・・・あ!!イン皇子、少し準備があるのでお部屋で待っていて貰えますか?
尚宮さんをお借りしたいのですが・・・』
『ああいいよ。じゃあ俺は部屋で待っている。準備が整ったら尚宮に迎えに来させてくれ。』
『はい♪』

イン皇子がレッスン室から出て行った後、ヒョリンは使用する音楽とその部屋の照明について尚宮と

短時間の打ち合わせを済ませ、それから特別に誂えた衣装を身に纏った


『失礼するよ。』

尚宮に呼ばれたイン皇子がレッスン室に入っていくと、そこには一つの椅子にスポットライトが当たっている

尚宮に促がされその眩しい光を浴びた椅子にイン皇子は腰掛けた

不思議そうにその室内を見渡すイン皇子・・・すると軽やかな音楽が流れ始め暗闇の中から純白のチュチュ姿の

ヒョリンが姿を現す

軽やかにターンしながらイン皇子の元へと近づき・・・近づいたと思えば離れて行く

何度も近づいては手を差し伸べ、触れそうな距離になるとまた離れて行く・・・

そんな繰り返しに焦れてしまったのはイン皇子の様である

何度か目に近づいた時・・・また離れて行こうとするその手を掴み自分に引き寄せる

もちろん≪求愛ダンス≫と言いながらも、それはヒョリンの作戦であった

『イン皇子・・・まだ終わっていないのに・・・』

抱き寄せられた膝の上で拗ねたような顔をしてみせるヒョリン・・・

『っつ・・・そんなに離れて行かれたら、捕まえたくなるに決まっているさ。』

言うや否や重なったイン皇子の唇・・ヒョリンは漸くやって来たこの機会に、静かに目を閉じるとその唇を

しっかり受け止めた




≪西宮殿≫

シン家の元姉妹の中で一番プレゼントを出し渋っているのは、なにを隠そうこのヒスンであった

それというのも彼女の得意分野は水墨画・・・持参したプレゼントは掛け軸になっているのだ

そんなこととは思っても居ないユル皇子は、ヒスンを自室に招き一生懸命考えた演出を見せてみる

『ヒスン座って。』
『はい。あの・・・ユル皇子?以前お邪魔した時と随分お部屋の様子が違うようですが・・・』
『うん。殺風景だったから女の子が好きな雰囲気にしようかと、カーテンとか・・・全部取り替えたんだ。』

殺風景ならまだよかった。この洋風でメルヘン雰囲気に水墨画の掛け軸はあまりにも不似合いだとヒスンは思う

だがそれでも一生懸命描いたのだ。渡せずすごすご帰るなんて有り得ない

意を決してヒスンは掛け軸をユルに手渡してみる

『ユル皇子・・・バレンタインの贈り物です。でも・・・でもね~~!!あまりにもこの部屋には似合わなくって・・・』
『えっ・見せて。』

あまりに困った顔のヒスンからユルは掛け軸を受け取ると、紐を解きくるくるとその絵を閲覧する

『すごいよヒスン!!僕の全身を墨だけで描くなんて・・・』
『地味だから気に入らないかも・・・。それにこの部屋に似合わないかも・・・』
『そんなことないよすごく気に入ったよ。長い手足にサラサラの髪まですごくリアルだ。』
『本当ですか?気に入って・・・くれました?』
『うん。本当だよ。』

だが二人でその掛け軸を壁に掛けてみて、あまりのミスマッチにお腹を抱え笑い転げる

まだまだ発展途上のこの二人・・・留学先で徐々にこの想いは深まっていくだろう





≪南宮殿≫

『ガンヒョン!!早く俺の部屋行こうよ~~♪』

ガンヒョンの手を引っ張る様にして足早に歩くギョン皇子を、ガンヒョンは窘める

『ギョン!転んだら危ないでしょう?ゆっくり歩いて!』
『あ・・・そうだったね。ごめんガンヒョン・・・』

今度はガンヒョンの肩を抱いて自室に向かうギョン皇子・・・全く人目など気にならないようである

ギョン皇子の部屋に辿りつくと、ギョン皇子は自分でその扉を開けようとはせず

ガンヒョンが開けるのを待っている

『早く開けて♪』
『もぉ~なんなのよ一体・・・わぁっ!!』

ガンヒョンが驚いたのも無理はない。部屋の中は色とりどりのバルーンアートで埋め尽くされているのである

『ど・・・どうしたの?ギョン・・これ・・・』
『キット買って作ったんだよ。毎晩毎晩さ~~♪どう?気に入ってくれた?』

そのバルーンアートはプードルを模ったものだったり、花だったりクマだったりする

『よく・・・これだけの数、作ったわね。』
『うん♪お腹の子供が喜ぶかな~~って思ったら張り切っちゃった。でもさ・・・唇が痛いんだ。
後で癒してくれる?』

年下で末っ子の武器を最大限に発揮しガンヒョンに哀願するギョン

『ふふふ・・・解った。あ…これは私からのバレンタインプレゼントよ。』
『わっ・・・なんだろう~~♪』

やはり額に入れられた油絵の包みをギョンは解いて行く・・・そして膝の上で数段いい男に描き上げられた自分に

感嘆の声を洩らす

『お・・・俺だよね?すげ~~カッコいい~~♪』
『どう?気に入った?』
『うん、うんうん!!ものすごく気に入ったよ。抱いて眠りたいくらい。』
『じゃあアンタはそれを抱いて眠りなさい!』
『えっ?嫌だよ。だって・・・今夜は恐らく帰れないよ。こんな雪だもん。またガンヒョンと一緒に眠れる~♪』

窓の外を見つめガンヒョンは降り積もった雪の量に驚いた様だ

『本当だ。これじゃあ迎えの車も無理だし・・・公用車だって出せないわね。』
『当然だよ!それにガンヒョンは大事な身体なんだから、こんな時は大人しく俺と一緒に寝よ♪』

もうすっかり夫婦気取りのギョン皇子に気圧されているガンヒョン

年下で甘えん坊で頼りなく見えるが・・・これでいて結構いい父親になりそうなギョンであった





≪そして東宮殿≫

雪の中・・・落ち着きのない様子で東宮に戻ってきたシン皇子とチェギョン

まずはプレゼントを渡したくて自室に行きたいとチェギョンは言うが、なぜかシン皇子は

チェギョンを執務室に案内した

『シン君・・・ここで渡していいの?』
『あぁ。』
『じゃあ・・・これ・・・』

恥ずかしそうに手渡した一冊の漫画本・・・それはすべて手作りで自分で製本した物だった

シンはソファーに腰掛けその漫画を1ページ1ページ丹念に読んでいる

その出逢った日から今までの事を書き記した漫画は、その時々のチェギョンの心情も盛り込まれ

次第にシンは漫画の世界にのめり込んでいく

とはいっても・・・リアルに自分の居た場所もセリフも全部そのままなのであるから

シンにとってみれば少々気恥かしい様な想いもあった

中には≪キスしたい≫と思ったチェギョンの心の声なども全部正直に描かれ、

チェギョンの今の気持ちを知るのに十分な一冊だった

最後のページには【この先の物語は、シン君と二人で作り上げていきたい】で締めくくられている

胸の真ん中に灯りがともった様に暖かい

チェギョンは恥ずかしくなったのかソファーから立ち上がり、執務室の窓に向かて歩き・・・そして大声を上げた

『わっ!!シン君・・・雪すごいよ!!こんな雪見たことない・・・車、動くのかなぁ。。。』
『あぁ?』

シンは心臓が跳ね上がらんばかりに動揺しながら、チェギョンの隣に歩み寄った

『チェギョン・・・早く帰らないと、車が出せなくなる。帰るか?』
『えっ?でもさっき来たばっかりだよ。もしかして・・・漫画、気に入らなかった?』

シンは首を何度も横に振ると苦しげな表情でチェギョンに答えた

『いや、ものすごく嬉しい。こんなプレゼント貰ったのは初めてだ。
ただ・・・このままだと、またここに泊まる事になってしまう。
前回は・・・辛いことが色々あって俺もそんな気にはならなかったが、今度は自分を抑える自信がない。』

困惑し必死に自分の気持ちを口にしたシン・・・チェギョンは必死に背伸びをするとシンの唇に自分の唇を

そっと押し当て・・・そして微笑んだ



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じゃあ…本格的バレンタインのお話は金曜日に❤
いや~~5カップル書くのはしんどかったぜ。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!







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