皇子達も其々の宮殿に訪れる初めてのバレンタインを心待ちにしていた
もう今週はバレンタインという時、五人揃って食事をした日の事である
ギョン皇子は得意満面の笑みを浮かべ、兄弟達に問い掛けた
『ねえ~~兄貴達・・・バレンタインに向けて何か考えたの?』
同じ様に得意な顔をしたのはイン皇子だけだった
『そりゃあもちろん。ヒョリンが俺だけのために踊ってくれるって言うんだ・・・
急遽北宮殿にレッスン室を作らせたよ。照明まで完備した本格的なレッスン室さ。』
『ほぉ~さすがイン兄貴は違うね~~♪』
ギョン皇子とイン皇子の得意そうな顔を見て狼狽したのは他の皇子達だった
バレンタインは女性から男性に愛の告白をする日・・・自分達は受け身で待っていればいいと思っていたのである
『ギョン・・・何か考えなければいけない物なの?』
ファン皇子が不安そうに問いかけた
同時にユル皇子シン皇子も頷く
ギョン皇子は呆れ顔で三人の皇子を見渡すと小さく溜息を吐く
『はぁっ・・・兄貴達はだからダメなんだよ。婚約者と初めて過ごすバレンタインだろう?
思いっきりロマンチックに演出しようとは思わないわけ?ホント兄貴達って・・・
あの皇后様の血を引いているとは思えないね!!』
ギョン皇子から飛び出した皇后の名前・・・そこで皇子達はクリスマスイブのイルミネーションを思い出したようだ
『まさか!!今度は自分でライトアップしろと?』
シン皇子が不服そうに言うと、ギョン皇子はさらに呆れた顔をする
『ライトアップとか・・・そう言う事を言っているんじゃないって!!彼女達を迎える準備が
できているのか?って俺は聞いてるの!』
ユル皇子は困惑の面持ちでギョン皇子に問い掛ける
『一体どんな準備が必要なんだ?ギョン・・・』
『それは自分たちで考えてよ~~!!オリジナリティーってやつがその辺りに出てくるからね~♪
俺は助言しないよ。それにさ・・・・みてよ!』
ギョン皇子は自分のスマホを皇子達に提示してみせた
『バレンタイン当日の天気予報は大雪。近年にない大雪だってよ!
そんな日に彼女達はやってくるんだよ。すごい積雪量になるだろうね~~♪
翌日は学校が休みだしね。恐らく・・・チェーンを着用した公用車だって万が一の事故を恐れて
車が出せないでしょう~~♪
ってなると・・・必然的にご宿泊だよね~♪
まぁ・・・シン兄貴なんか、来たるべく合房の予行練習になるんじゃな~~い?あはははは・・・』
そんな事に考えが回っていなかった皇子達は、皆一様に顔に動揺の色を浮かべた
だがそんな中ファン皇子は毅然としてギョン皇子に苦言を呈した
『ギョン!!浮かれていないでお前は自重しなさい!!ガンヒョンさんは大事な時期なんだろう?
ダメだぞギョン!!』
兄達を叱咤激励するつもりが藪蛇である
ギョン皇子は肩を竦め、それでも悪態をついた
『俺は・・・例え抑えの利かない年齢でも、ガンヒョンの事を大事にしているから~♪
それに俺はオヤジになるんだしね。へへへ~~んだ!人の事は心配しないで・・・まっ兄貴達頑張ってよ~♪』
なんの計画も考えていなかったファン皇子・ユル皇子・シン皇子はその後自室に戻ってから
ネットなどで検索し各々ロマンチックな雰囲気作りに頭を悩ませたようである
しかも当日は大雪の予報・・・したがって宮に宿泊準備がなされるのは確実の事
婚礼前にそんな機会がある筈もないのだが、なぜか妙に意識してしまう皇子達
その中でも特にシン皇子は、ギョン皇子から飛び出した≪合房の予行練習≫の言葉が頭から離れない
一人っきりの部屋で動揺し挙動不審になっているシン皇子なのであった
バレンタインも数日後と迫った日・・・シン家元姉妹達は放課後美術科の教室に集まった
『ねえ~~プレゼント出来上がった?』
開口一番ヒョリンが皆に問い掛けた
するとみんな満面の笑みで頷いて見せる
『いいな~~みんなは・・・ちゃんと形に残る物だから。アタシなんかイン皇子の記憶にしか残らないのよ!』
『でもいいじゃない。アンタはその体全体を使ってイン皇子の視覚に訴えるのよ。
こんなインパクトの強いプレゼントはないと思うけど?』
ガンヒョンがそうヒョリンに答えると他の三人は同感だとばかりに頷いて見せた
『そうかなぁガンヒョン。ん?でもちょっと待って?体全体を使ってって言われ方・・・なんかイヤラシクない?』
そんなヒョリンの言葉にヒスンはクスッと笑いを浮かべた
『ヒョリン・・・あなた確か、求愛ダンスを踊るのよね~♪
ひょっとしたらガンヒョンにライバル心燃やしてない?』
『なにを言っているのよヒスン・・・そんな事…考えても居ないわ!!』
『本当に?』
『う~~ん。本音言うとちょっとだけ・・・先を越された気分はあるかもしれないわ。。。』
含み笑いをしながらスニョンが全員に問い掛ける
『ねえ!チョコレートは何を作ったの?』
『アタシはガトーショコラを焼いたわ。』
ガンヒョンがそう答えると、隣にいるチェギョンが困ったように呟いた
『私は・・・なんの変哲もないチョコレートケーキ・・・』
『チェギョンはチョコレートケーキかぁ。私は大きなハート型のチョコにデコレーションしただけ。ヒスンは?』
『私?私はトリュフを作ったわ。』
元姉妹達の話を聞いていて困惑の表情で叫んだのはヒョリンだった
『ちょっ・・・ちょっと待ってよ~~!皆手作りなの?私・・・お母様と一緒に某有名パティシエのチョコレート
買って来ちゃったじゃない。レッスンで忙しくて、作っている暇なんかなくて・・・
あ~~どうしよう、私だけ既製品?』
元姉妹達は手作り品を用意していると言うのに、自分一人が既製品である事を知りヒョリンは項垂れる
そんな様子にガンヒョンはヒョリンの肩を優しく叩き、その顔を覗きこんだ
『いいのよアンタは創作ダンスのレッスンだけでくたくただもの。イン皇子はそれだけで感動してしまうと思うわ。
落ち込むことなんかないの。堂々としていなさいよ!』
『そう?ガンヒョン大丈夫かしら?』
『ええもちろん大丈夫よ。』
いよいよ数日後と迫ったバレンタインに、準備万端の元姉妹達はその日が待ち遠しい思いだった
バレンタイン前日の昼休み、チェギョンはいつもの様にシンの皇子ルームを訪れた
<トントン>
『シン君、チェギョンで~~す♪』
『あぁ、どうぞ。』
『失礼しま~~す♪』
いつも通りソファーに向かい合って座る二人・・・必然的に話しは明日の事に触れる
『シン君、明日公用車で東宮に行ってもいいかな?シン君と一緒に・・・』
『あぁ構わない。』
いつも落ち着いた雰囲気のシン・・・だが今日はなんとなく・・・いや数日前から様子がおかしい
『シン君・・・何かあったの?ここ数日あまり話してくれないし、すごく気になるんだけど。』
『いや、別に何もない。俺の問題だから・・・』
『シン君の問題?私は無関係なの?』
『いや・・・関係はあるが・・・あぁ~~とにかく俺の問題だから気にしなくていい。』
『そっか~~解った。明日さ…雪が降るんだってね。』
チェギョンのその声に突然シンは息をのむと顔を赤らめた
『あぁ、雪が降るらしいな。』
『あれっ?シン君…顔が真っ赤だよ!!どうしたの?熱でもあるんじゃないの?』
心配しシンの額に伸びてきたチェギョンの手・・・シンはそれを額の寸前で捉えると強く握り締めた
『熱なんかないっ!!気にするなっ!!』
すぐにその手を離さなければと思いながら、その掴んだ指先がどうしても離せない
悩み多きお年頃のシンが、なにを想って顔を赤らめていたのかチェギョンは知らない・・・
さて~~水曜日は四つのカップルのバレンタインの様子を
バレンタインにはシンチェのバレンタインを書かせていただきますね♪
大雪・・・皆さんのお住まいの地域も大変だったでしょう。
バレンタインは本当に雪の予報で
なんだかワクワクします❤