皇室ホームページを騒がせた、≪皇太子殿下の婚約者誹謗中傷事件≫の解決から三週間が過ぎた
バレンタインデーを目前に控えたある週末、ガンヒョンがシン家を訪れた
『ガンヒョ~ン♪お休みの日にうちに帰ってくるなんて珍しいね。
最近はギョン皇子にすっかり捕まっちゃってるのにね。くすくす・・・』
『まあね、ふふふ・・・今日はちょっとアンタに相談があって来たのよ。
アンタの部屋に行こう。』
『いいよ~~♪』
ここすっかりギョン皇子の要求で、南宮殿に赴く事の多いガンヒョン・・・シン家はおろか
チェギョンの部屋に入るのも久し振りである
二人はソファーに隣り合わせに腰掛け、座ったと同時にチェギョンはガンヒョンに問いかけた
『それで?なあに?相談事って・・・』
『うん。まだ誰にも話していないんだけどね。』
『うん。』
神妙な面持ちでチェギョンはガンヒョンを見つめた
『遅れているのよ。もしかしたら皇后様の予言は当たっちゃったかも・・・』
『遅れて・・・る?皇后様の予言?
えっ・・・まさか・・・ガンヒョン!!』
『ひょっとしたらそうかも・・・・』
『確認・・・してみた?』
『いや・・・まだだけど・・・』
『どうしよう。ひとまずお母さんに相談してみる?』
『そうね。そうしてみようかな・・・』
二人は揃って階段を下り、キッチンに居る母スンレに声を掛けた
『お母さん、お邪魔してます。』
『いやだわガンヒョン・・・お邪魔してますだなんて。ふふふ・・・
ん??どうしたの?なにか悩み事でもある様な顔ね。とにかくお座りなさい。』
『『はい。』』
チェギョンとガンヒョンは並んで、スンレの前に腰掛けた
ガンヒョンは非常に言い難そうにしながら、口を開く・・・
『あのねお母さん・・・ものすごく言い難いんだけど、私妊娠したかもしれない。』
『えっ?がっ・・・ガンヒョンそれはどう言う事?』
困惑した表情のスンレに、チェギョンはガンヒョンの代弁をするように口を開く
『お母さん・・・この間の事件があって・・・私達各宮殿に泊まったでしょう?
つまりガンヒョンはその時に・・・』
『そっ・・・そう。だからギョン皇子とガンヒョンの婚姻を早めるって、皇后様は仰ってらしたのね?
それでガンヒョン・・・ご実家のお母様には?』
『お母さん、まだ遠慮があって、そんな事とても相談できないわ。』
『そっ・・・そうよね。お医者様には?』
『まだ行ってないわ。だって・・・今後メディアにも私の写真が公表されるでしょう?』
『そうよね。解ったわ。ちょっと二人で待っていてね。』
母スンレは上着も着ないで、慌てて外出して行った
キッチンに取り残された二人は、母スンレの行き先について考える
『お母さん・・・どこ行ったんだろう?』
『ん~恐らくアタシに妊娠検査薬を買いに行ってくれたんじゃないかしら?』
『妊娠検査薬?あ!そうか。もしそうならガンヒョンも今後の体調管理に気を付けなきゃならないもんね。』
『ええそれもあるけど、アタシにそんな物買いに行かせられないと思ったのかもしれないわ。
アタシ達まだ・・・高校生でしょ?』
『あ~~そうだね。お母さん…こう言う時に頼りになるな♪』
程なくして予想通り、スンレは薬局の包みを抱えて帰ると、それをガンヒョンに手渡した
『ガンヒョン・・・この中に入っている注書きをよく読んで試して来なさい。』
『ありがとう。お母さん・・・』
ガンヒョンは席を立つとトイレに向かって行った
そわそわしながらガンヒョンの戻ってくるのを待つスンレとチェギョン・・・程なくしてガンヒョンは
スティック状の妊娠検査薬を持って二人の前に現れた
『お母さん・・・チェギョン・・・』
そしてそれを二人の目の前に示した
『なんか線があるよ。これって・・・・』
『ガンヒョン!妊娠ね。妊娠したのよ。』
『やっぱり…お母さんどうしよう。』
『あなたは何も心配しなくていいわ。私から皇后様に話してあげる。
ご実家には私からより皇后様に話して頂いた方がいいわね。
とにかく・・・宮の侍医の診察を受けなくっちゃね。』
『解った。お母さん・・・ごめんなさい。大変な事お願いしちゃって・・・』
『いいのよ。そう言う事はなかなか女性から言えないものよ。あなたは宮から連絡があるのを待っていたらいいわ。ギョン皇子には・・・自分の口から言いなさい。』
『そうするわお母さん。ありがとうお母さん。』
ガンヒョンが帰った後、チェギョンは自室に籠り・・・スンレはキッチンの椅子に腰掛け小さく溜息を吐いた
例え血は繋がっていなくとも、心血を注いで分け隔てなく育てた五人の娘たちである
一人はもうすぐ留学してしまい、もう二人は近々嫁に行く。。。この分ではあとの二人の嫁入りも
時間の問題であろう
もちろんそれは自分に課せられた使命なのであるが、やはり一抹の寂しさを感じずにはいられないスンレであった
翌日からガンヒョンは体育の授業を休むようになった。。。これはもちろん、お腹の中に宿った
小さな命を慈しむためである
皇室から学校長には既に連絡が入っており、ガンヒョンは安心して残りの高校生活を送れそうである
それと同時に皇室広報部は、第五皇子のギョンとイ・ガンヒョン嬢の婚約を発表し
昼休みになるとギョン皇子がガンヒョンを迎えに来ると言う熱愛ぶりである
そんなおめでたいムードのある日、昼休みにシンの皇子ルームを訪ねたチェギョンは、
シンに向かって問い掛けた
『シン君・・・甘いもの嫌いって言ってたよね?今までバレンタインに貰ったチョコレートはどうしていたの?』
『あぁ?俺の手元にはそんな物は届いていない。』
『えっ?うそだ~~!!』
『俺宛てに届けられ物はあったかもしれないが、それを俺が口にすると思うか?
俺の元に届くまでに・・・恐らく何も無くなってしまうだろうな。毒見役を経過して・・・くくっ・・・』
『じゃあ・・・シン君はバレンタインに、チョコレートを直接貰った事がないの?』
『あぁ。今年は期待している。』
『えっ?・・・期待?期待はしなくっていいよ。でも私があげたら食べてくれる?』
『あぁ。謹んでいただこうかな。くくっ・・・』
今年のバレンタイン・・・チェギョンは初めての手作りチョコケーキに挑戦するつもりでいた
それと同時に、出逢いから今までの二人の軌跡を漫画にしてシンにプレゼントするつもりでいる
それは事細やかに再現された漫画であり、初めての冗談の様なキスまで載せているのである
(シン君・・・きっと驚くな~くすくす・・・)
ホームページには一般公開用のラブロマンスを描き始めている
婚礼を一カ月後に控え、初めてのバレンタインをどうロマンチックに演出するか必死に考えるチェギョンである
そしてそれは他の元姉妹達も同様であった
ガンヒョンは得意の油絵でギョン皇子の横顔を描いている
ヒスンは水墨画でユル皇子の全身像を描いている・・・これはなかなか難しいらしい
スニョンは水彩画で中宮殿のソファーに腰掛けたファン皇子を描いている
そして・・・ヒョリンに至っては・・・なんと・・・イン皇子に贈る求愛ダンスの創作に忙しい
其々がパートナーに向けて贈るバレンタインの愛のメッセージは、果たして上手に出来上がるのだろうか
ではこの調子でバレンタインのお話に突入させていただきます❤