小さいがとても洒落た内装の店の中に入ると、デザイン部の部長はシンを名指しで指名した
『代表!どうぞこちらにお掛けください。』
そこはテーブルの一番中心に当たる席だった
『あ・・・いや私は隅で・・・』
『何を仰ってるんですか!今夜は仕事がひとつ片付いた祝いでもありますが
代表とチェギョンさんの歓迎会も兼ねているんですよ。さぁ~チェギョンさんもその向かいの席に座って。』
観覧車の見積もりを承諾された部長は、とてもご機嫌な様子で飲み会を取り仕切る
部長の指示とあっては断るわけにいかない
チェギョンはシンの向かい側の席に腰掛けた
そこは・・・シンの顔を一番よく見られる場所だが、テーブルに阻まれているためシンと話などできない
そのうちには部長の指示でデザイン部の綺麗どころがシンの両脇に陣取りその横に部長が座った
参加者が全員座ったところで、乾杯のビールが其々の席の前に置かれた
『ではまずは・・・代表!就任おめでとうございます。チェギョンさん入社おめでとう!カンパ~イ!』
『『カンパ~~~イ!!』』
乾杯が終わった後は其々が会話を楽しむ
チェギョンは両隣の男性社員と、ワールド遊園地のイメージキャラクターについて熱く語り合っている
『ファン先輩。この間お見せたデザインじゃダメですか?』
『あ~悪くはないんだけど、どちらかというと男の子受けしないんじゃないのか?』
もう一方の先輩社員もチェギョンに言う
『それにあのデザインを起用したんじゃあ・・・大人は乗りたがらないぞ。子供受けするのも大事だけど
大人にも受けないとな。』
『え~~~っ・・・』
『もうちょっと練って見ろよ。』
『そうだ、頑張れシン・チェギョン。』
『はぁ~~い・・・』
『それよりチェギョン・・・グラスが減ってないぞ。』
『あ~先輩私、あんまり好きな方じゃないんですよぉ・・・』
本当は決して嫌いではない。お酒も飲む席も・・・
ただ今日は向かいにシンが座っているのだ
万が一、また誰かとトラブルが起こった時・・・対処できるのは自分だけだと責任を感じてしまっていた
シンの隣に座った女性社員は、自分たちもお酒を飲みながらシンのグラスにも酒を注いだ
『代表は・・・お付き合いしている方がいらっしゃるんでしょう?』
そんな質問にシンは一瞬チェギョンに視線を投げかけ、それから答えた
『いいえ。今は仕事を覚えるのに必死で、恋愛どころではありません。』
クールな微笑みを浮かべてそう答えたシンに、チェギョンは心の中で呟いた
(その返事の時になぜ私を見る~~!視線に気が付いた人がいたら、妙な誤解をされちゃうのに・・・
しかし、シン君随分飲んでるなぁ。顔色ひとつ変えないし、口調もしっかりしているから
相当お酒・・・強いんだろうな。)
部長ともすっかり打ち解けて楽しそうにしているシンを見るのが、チェギョンは堪らなく嬉しかった
楽しい時間があっという間に過ぎ・・・部長が会費を集めようとした時・・・シンはお徐に立ち上がった
(あ・・・シン君、まさか自分が支払う気?ダメだよ~~そんな出過ぎたことをしたら・・・
また反感買っちゃうよ。)
チェギョンがそんな心配をしていると、シンは案の定封筒を部長に手渡した
『私が支払いますと・・・カッコつけたいのは山々ですが、いくら役員でも私は新入社員でして
そんな甲斐性はありません。ですが会長からこれを部長に渡してほしいと、預かってきました。』
『会長が?』
『はい。会長の心づけだそうです。』
部長は封筒の中身を確認し満面の笑みを浮かべるとみんなに告げた
『みんな!今日は我が社の会長がご馳走してくださったぞ~~!
みんな感謝するように。』
『『わ~会長万歳~~♪』』
みんなのお財布も痛むことなくご機嫌な様子で店から出て行ったシンとデザイン部の社員たち
店の外で解散した時、一人の女性社員がシンに話しかけていた
『代表。私を送ってくださいますか?』
『まさか私に交通違反をしろと?』
『いいえ~~違います。タクシーで送ってくださいと言っているんです。』
『生憎ですが私は運転代行を呼んで帰りますので、どうぞ気を付けてお帰り下さい。』
そう笑顔で言うとイ・グループビルの方向に向かって歩いていくシン
だが・・・その足取りはなんとなく頼りない
(シン君ひょっとして相当酔っぱらってるんじゃ?)
先輩たちに別れを告げたチェギョンは、こっそりシンの後を追った
そして駐車場に入る前に声を掛けた
『代表!!』
その声に驚いて振り向いたシンは、そこに立っているのがチェギョンだとわかり安堵の笑みを浮かべた
『なんだチェギョンか・・・』
『なんだじゃないよ。シン君…随分飲んでいるでしょう?』
『あぁ。なんとなく断れなくてな・・・。代行呼ぶから君の家に先に寄ろうか?』
『あのさ・・・花金のこの時間帯に代行が捕まると思う?車は明日取りに来ることにして送るから帰ろう。』
『あぁ?俺は大丈夫だ。』
『大丈夫じゃない~~!みんながいなくなったら、急に千鳥足になっちゃって。さぁ~行くよ。』
半ば強引にシンをタクシーに乗せたチェギョンは、シンの自宅を運転手に告げた
走るタクシーの中・・・シンは相当つらそうな声でチェギョンに問い掛けた
『チェギョン・・・少し凭れてもいいか?』
『いいよ。』
ぶっきらぼうにそう答えたチェギョンだったが、自分の右肩にシンの頭が載った時・・・
今までにないほど胸が高鳴った
そんな自分の状況を悟られない様じっとしていた時・・・耳元にシンの声が響いた
『チェギョン・・・ありがとうな。デザイン部となんとかうまくやっていけるのは、すべてチェギョンのおかげだ。
ありがとう・・・』
そう言った直後・・・シンは眠ってしまったらしく、肩に感じるシンの頭が重くなった
身動きひとつせずそのままの姿勢でいたチェギョンは、運転手から目的地に到着したことを知らされた
チェギョンはすぐさまミンに電話を掛けた
ここでタクシーを降りるわけにはいかない
『あら・・・チェギョンちゃん♪』
『おば様・・・遅い時間にごめんなさい。あの・・・シン君を送ってきました。門を開けていただけますか?
玄関先までタクシーで向かいますので・・・』
『えっ?わかったわ・今すぐに開けるわ。』
チェギョンはタクシーの運転手に家まで行ってくyれるようお願いした
漸く屋敷が見えてきて、ミンが玄関前に立っているのを見た時・・・チェギョンは安堵の笑みを浮かべ
運転手に告げた
『あの・・・すみません。一人ここで降りますのでちょっと待っていてください。』
『わかりました。』
タクシーの後部座席のドアが開き、チェギョンはシンを支え家の中に入っていく
そしてミンは・・・チェギョンにシンを任せ運転手にお金を支払った
『あ・・・奥様。先程のお嬢さんがまだ乗って行かれると・・・』
『あ~~よろしいのよ。ここで結構です。』
『ではお返しを・・・』
『あ…それも結構よ。チップだと思って取っておいて~~おほほほほ~♪』
走り去っていくタクシーを見送り満面の笑みを浮かべるミンだった
あらやだ!ミン様ったら
やることが大胆ね(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
しかしホント寒暖差が激しいのは
一体いつまで続くやら・・・
困ってしまいますね・・・