チェギョンやガンヒョンはイ家やチャン家と家族ぐるみのお付き合いをするようになり、
平日はアルバイトに精を出す傍ら、週末になると其々の彼氏の家に呼ばれることが多くなった
パーティーにも同伴を求められることが多くなり、そのうちには財界の大物の中にもイ家やチャン家と同じように
家柄に拘わらずまずはお相手の人柄重視の風潮が強くなった
そのことによりあまり品行の良くなかったミン・ヒョリンをはじめとする元シンとギョンの取り巻きたちは
焦りを募らせた
財界の中でも有数の名家に嫁ぐことを目標として入ったこの大学も、今では悪いイメージだけがつき纏い
名家の子息はおろか・・・一般の男子学生でさえも、彼女らに興味を示さなくなっていった
元取り巻きたちは悪いイメージを払拭するべく、其々に他の大学への編入を決めた
ミン・ヒョリンと同じく舞踏科に通っていた者は、ダンスやバレエに打ち込むために専門の大学に
編入していった
このことで・・・韓国芸術大学には、財界の大物の子息の恋人であるチェギョンとガンヒョンに
おかしな横槍を入れる者は現れなくなった
そして世間一般にもこの二組が付き合っていると認識されていたため、横恋慕する輩も現れず
シンとギョンは安心して事業を覚えることに集中できた
こうしてチェギョンとガンヒョンの大学生活は非凡でありながら穏やかに過ぎて行った
其々が大学三年生になった秋・・・アルバイト中のチェギョンとガンヒョンの元にイ会長が顔を出した
イ会長・・・すなわちシンの父親は、責任者の女性に告げた
『コ君・・・二人のアルバイト女性を少し借りてもいいかね?』
『あ・・・はい、今は忙しい時間じゃありませんのでお話でしたら奥のお席をお使いください。』
『すまないね。』
イ会長の後に続くチェギョンとガンヒョン・・・
カフェの奥にあるVIPルームに三人は入っていき、席に腰かけた
『仕事中にすまないね。』
『いえとんでもない。会長・・・どうかなさったのですか?もしかして人手が足りているから・・・他の部署に・・・』
チェギョンは心配になって思わず先読みした発言をする
『ははは・・・そうではないよ。話したいのは君達の就職の事なんだ。』
『就職?』
『ああそうだ。チェギョンさんもガンヒョンさんも、大学を卒業したらこのビルの中で働いてみないかね?』
『えっ?それは願ってもない事です。』
だがガンヒョンは少し残念そうに答えた
『イ会長・・・とてもありがたいお話なのですが、申し訳ありません。
すでにチャン社長からチャン航空に入るようにと打診を受けておりまして・・・』
『ははは・・・そうだったか。さすがチャン社長は抜け目がないな。
チェギョンさんはもちろんだがガンヒョンさんも、この店に来た社員に
実に良いアイディアやアドバイスをくれるものだから、企画開発部から是非にと言われていたのだが・・・
そうか。チャン社長のところへ・・・まぁそれが一番いいかもしれないな。』
『申し訳ありませんイ会長。』
『いやいや構わないよ。チェギョンさんはどうかね?チェギョンさんはこのビルで働く意思はあるかね?』
『もちろんです。実は密かに応募するつもりでおりました。
でも会長・・・縁故採用だと言われたくないんです。実力で入りたいので採用試験を受けさせてください!』
『そうか。チェギョンさんは頼もしいな。さすが・・・ミンが見込んだだけの事はある。』
『いやいや・・・縁故で入社しちゃったら、その噂がずっとついて回りますから。あはは・・・』
『ああ。わかったよ。そうしよう。じゃあそのつもりでいてくれるね?』
『はい。どうぞよろしくお願いいたします。』
このカフェでアルバイトをするようになって、チェギョンとガンヒョンが履き潰したハイヒールはもう何足にもなる
その間に打ち合わせに来た社員から、斬新な意見を求められることも多かったチェギョンとガンヒョン
ガンヒョンはすでに先手を打ったギョンの父親の会社の入社試験を受けるそうだ
負けず嫌いのガンヒョンは、チェギョンと同様に縁故採用のレッテルを貼られるのは許せない
正々堂々と一般採用に応募するようだ
その週末・・・チェギョンは恒例のイ家を訪れていた
『チェギョンちゃんいらっしゃい~♪』
『おば様~こんにちは♪今日はおじ様もいらっしゃいますね?』
『ええ・・・今日は接待ゴルフもないみたいよ~♪』
『あ~おば様・・・今日は料理長さんにお願いしたので、チゲ鍋にしましょうか~♪』
『あ~~寒くなってきたららそれがいいわ~♪あ・・・そうだわチェギョンちゃん。いいものがあるのよ~♪』
『えっ?いいものですか?』
ミンはダイニングの棚の扉の中から、何やら瓶を取り出すと両手に持ってチェギョンに見せた
『おぉ~これは・・・幻の最高級マッコリ❤』
『飲みたいでしょ?ねっねっ♪』
『お母様!また二人で酒盛りするおつもりですか。シン家のご両親が心配するじゃないですか!』
『もぉ~シンは本当につまらない男ね。いいじゃないの~酔った≪また≫泊まって行っちゃえば~♪
この間おろしたパジャマも洗ってあるし~♪そうしたらシンやお父様だって
安心して一緒に飲めるでしょう?』
『ははは・・・そういうつもりなら、君からシン家に電話を入れておいた方がいいな。』
『チェギョンちゃん、構わないでしょ?』
『えっ?いいんですか?おば様・・・』
『いいわよ~♪一緒に朝ご飯も食べましょう~♪』
ミンはいそいそとシン家に電話を掛けに行ってしまった
シンとチェギョンも付き合い始めてもう二年が経つ
その間には一泊の旅行にも何度か出掛けた
真剣に将来を考えている二人の交際を、イ家もシン家も心から応援してくれることをありがたく思う
ミンがシン家に電話をかけ終えてリビングに戻ってくる
するとチェギョンはキッチンの中に入っていき、料理長と今夜の海鮮チゲ鍋の準備に取り掛かった
今やチェギョンは料理長の片腕のような存在になり、週末になると一緒に奮闘している
料理長もとても素直なチェギョンを、娘のように可愛がっている
『料理長さん・・・この海老、殻を剥いちゃってもいいですか?
食べる時に面倒ですぅ・・・』
『チェギョンさん・・・ダメです。この殻に海老の美味しさが閉じ込められるんですから。』
『あ~そうでしたか。面倒でも殻付きの方が美味しいのは・・・そういうわけか~。』
『その通りです。ははは・・・』
温かい料理が次々とダイニングテーブルの上に運ばれていく
『チェギョンさんはもういいですから、席に掛けてください。』
『あとこれだけ運んだらにします~♪あぁ・・・いい匂い♪』
ダイニングテーブルではチェギョンが席に着くのを待って、週末の楽しい夕食が始まった
この家には居酒屋で飲んだようなマッコリの器はない
陶器の茶碗にミンが自ら酌をして歩く
『おば様~そんなことは私がしますから~♪』
『いいのよチェギョンちゃん・・・さてお酒がいきわたったわね。では乾杯しましょう♪』
『なんに乾杯するのですか?』
『シン・・・チェギョンさんがイ財閥の採用試験を受けることになったお祝いだ。』
『えっ?チェギョン本当か?』
『うん。前からずっと考えていたんだ。だけど縁故採用は嫌だから採用試験を受けて
堂々と入社するの♪』
『それは・・・楽しみだな。』
『楽しみよね~~シン♪オフィスラブですもの~おほほほほ♪』
『お母様!』
『ははは・・・まぁとにかく料理が冷めないうちに乾杯しよう。』
『『乾杯~♪』』
イ家はチェギョンを交えこんな賑やかな週末を過ごしている
まだ就職もしていないうちから、プロポーズはできないと考えているシンは・・・就職して父親の片腕となり
自身が手にした給料で指輪を買えた時・・・チェギョンにプロポーズをしようと心に決めていた
さて~今週はイレギュラーな更新状況になってしまいますが
どうぞお許しを❤
なおこのお話は40話で完結させていただきます。
最後までどうぞお付き合いくださいね❤