皇帝陛下から申し渡された≪チェギョンの描く漫画の件≫がすべて解決し、シンとチェギョンは漸く婚姻に向けて
準備を始めようとしていた
もうあと二カ月もすれば、チェギョンは入宮する
シンはその日を心待ちにしていた
ところが・・・すべて解決したと思われた漫画の件が、また再燃しようとしている
その日・・・下校した皇子達そして姉妹達は、皇帝陛下から招集を掛けられ陛下の元を訪れた
『陛下…全員を集めるなんて、一体何があったのですか?』
第一皇子であるファンがそう問い掛けると、陛下は苦虫を噛み潰したような顔をしその場に居る十人に
数日前から皇室広報部に起こっている大変な事態を告げる
『実は・・・シンの婚礼を控えている今、広報部に大変な事態が起きている。
シン・チェギョンさん・・・君の以前出した漫画の本について、執拗ないやがらせが後を絶たないのだ。
広報部と皇室警察で、今・・・そのいやがらせをしている人物を特定しているところだが
相手は一人ではなく数名いるようだ。しかも…国内からの書きこみではない。
これはシンとチェギョンさんだけの問題では済まないので、みんなの知恵を借りようと集まって貰った。』
顔面蒼白になるチェギョンをシンは支えながら問い掛ける
『陛下・・・一体どんな書き込みがされているのですか?』
『これを見てくれ・・・』
机の上に置かれたノート型パソコン・・・そこには皇室のホームページに広報部の投書箱が設けられており
悪意のない投書の間に、似通った文面でチェギョンを誹謗中傷する言葉が連なっていた
十人はその周りに集まり、その悪意ある第三者の書きこみを読んでいる
【シン・チェギョンは皇太子妃にふさわしくない!公然と自作の漫画を売っていたんだから!!】
【いかがわしい漫画を売っていたシン・チェギョンを王族から追放しろ!!】
【こんなことが公になったら民衆は黙っていない!!】
【シン皇子とシン・チェギョンの結婚反対!!】
皆一様に押し黙ったままその画面を食い入るように見つめる・・・
だが、ガンヒョンが何か気が付いたように口を開いた
『ねえ・・・これってチェギョンに対する怨恨の線が強くない?
アンタ・・・誰かに恨まれる様な事したの?』
『えっ・・・・していないよ。予約をいただいていた人達にだって、ちゃんと謝罪して返金したから円満解決の筈。』
『じゃあ・・・アンタのファンだった人ではないわね。じゃあ・・・ひょっとしてシン皇子!!泣かせた女が居ない?』
ガンヒョンからいきなり問い詰められ、シンは驚きが隠せない
『まさか!!そんな女は居ない。俺は無実だ。』
『じゃあ…一体どんな理由があってチェギョンを攻撃するのよ!!』
声を荒げるガンヒョン・・・シンはその場で名前は出せなかったが、先日のホン・ユリからの告白が頭を過る
(まさか・・・な。海外からだと言っているからあいつじゃないよな・・・)
そうしているうちにギョンは広報部の責任者をその場所に呼びつけた
『ねえ・・・どこから書かれている書きこみなの?』
『ギョン皇子・・・先程判明したところによりますとイギリスとアメリカ・・・中国からの書きこみもありますが。』
黙って聞いていたイン皇子が口を開く
『例え海外サーバーであっても使用者の特定は可能か?』
『はい。大使館を通してその人物を探らせれば可能かと。』
『大使館・・・すぐに連絡先を調べてくれ!私達自ら連絡しよう。』
『はい。かしこまりました。』
広報部責任者が大使館の連絡先を調べている間、十人はその画面を見ながら各々怒りを露わにする
怒りと言ってもそれはチェギョンに向けたものではない。その悪質な書きこみを操作している誰かにである
『恐らく・・・誰か一人の指示で動いているんだろう。』
シンがそう呟くと堪りかねてチェギョンはその場にしゃがみ込み、掌で顔を覆った
『チェギョン・・・?』
『・・うぅっ・・・』
兄弟姉妹と一緒だった事もあり、チェギョンも気が緩んだのか・・・とうとう泣きだしてしまったようだ
シンはチェギョンの横に身を寄せるとチェギョンの肩を抱き、窘める様に言ってみる
『大丈夫だから心配するな。』
『でも・・・シン君、私が皇太子の婚約者にならなきゃ、こんな嫌がらせは受けなかったのに・・・』
シンはふぅっと溜息を吐くと、チェギョンの耳元に囁いた
『それは本末転倒だろう?お前が皇太子妃になる事は最初から決まっていたことだ。
お前によって俺が皇太子になると決まったんだから。』
『でも・・・皇室に迷惑が・・・』
『掛からない!お前はすべてを解決しただろう?何も疾しいところは無い。堂々としていればいいんだ。』
そう言いながらシンの胸の中には再び疑問が湧き上がる
(王族からチェギョンを追放しろって書いてなかったか?それに・・・明らかにチェギョンを狙った風な書きこみ・・・)
シンはチェギョンの肩を抱きその場に立たせると、陛下に問い掛けた
『陛下・・・先日のチェギョンの一件を陛下に告げ口して来たのは誰ですか?』
『ホン家だ。』
『という事は・・・ホン・ユリの父親ですか?』
『ああそうだ。シン・・・ホン家のユリと何かトラブルでもあったのではあるまいな?』
『あ…いえ、トラブルなどありません。ただ・・・』
シンは兄弟姉妹・・・また両陛下も居る前で先日の一件を話すのは気が咎めたが
もうこうなっては黙っていられない。下手をしたらチェギョンに要らぬ誤解を受けてしまう
婚礼前の大事な時期にそんなしこりは残したくない
シンは意を決してその時の全貌を話し始めた
『実は少し前の事になりますが、私の乗る公用車の前にホン・ユリが飛びだし怪我をしたことがあったんです。
本人に東宮で治療して欲しいと言われ、彼女を連れ帰り侍医に治療して貰いました。
その時、ホン家のユリに≪なぜ私では皇太子妃になれないのか≫と聞かれました。
もちろん明快な答えを彼女に話しましたが、彼女はどうやら私の事を男性として好意を持っていたようです。
誤解のないようちゃんと話をしたつもりだったのですが。』
『ではそのあとだな?ホン家が私の元を訪れたのは。』
『そうだと思います。恐らくユリが父親に泣きついたのでしょう。』
『あの時私ははっきりと、この一件を口外してはならぬと言ったのだ。だから万が一にもホン家の娘の仕業だと
考えたくはないが・・・』
もしもこの悪質なチェギョンに対する攻撃がその娘の物だったとしたら、ホン家の進退にも影響するのである
陛下の部屋は重苦しい空気に包まれていった
その重苦しい空気を打ち破る様に、広報部責任者が現れる
『失礼いたします。各大使館の連絡先を調べて参りました。』
ファン・イン・ユル皇子は其々にその番号を受け取り、打ち合わせをして電話をかけ始めた
『イギリス大使ですか?私は大韓民国第三皇子のイ・ユルです。
少しばかりお願いしたい事があってお電話差し上げました。
実は今・・・皇室広報部にイギリスのサーバーを用いての悪質な書き込みがありまして。。。
ええ。そうです。その人物を特定して、そちらの大使館で身柄を確保していただきたいのです。
ええ。そうですか?容易い事ですか?ふふふ…ありがとうございます。
ではIPアドレスをメールにてすぐお送りいたします。
はい。お手数ですがよろしくお願いいたします。』
ファン皇子もイン皇子も同じ様にアメリカと中国大使館に連絡をつけた
もちろん皇室警察立ち会いの元、テレビ電話で身柄を確保された人物は取り調べを受けるのである
それには皇子達が直接取り調べる旨を意思表示したのである
ひとまずは各国の大使にその犯人捜しを委ね、ひとまず食事を摂ることにした十人・・・
だがシンとチェギョンだけはやはりこの騒動の行方が心配で仕方がなく、食も進まないようだった・・・
『チェギョン・・・食べなよ。。』
『うん。でも・・・喉を通らないの・・・』
ヒスンが心配そうに声を掛ける
『ほら~~これも食べなって!!』
スニョンが心配そうに自分の料理をチェギョンに分け与える
『うん・・・・』
チェギョンの生き甲斐が漫画を描くことだと知っていて、いつも協力して来た姉妹達
ヒョリンは食事に手もつけようとしないチェギョンに、声を掛けた
『チェギョン・・・大丈夫よ。きっと犯人は割れる。指示した人間もすぐに発覚する。
悪い奴はきっと暴かれるわ。チェギョンは自分の好きな事をしてきただけ。
悪い事なんか何もしていないんだから。堂々と胸を張りなさいよ!!』
『うん!!そうだよね。悪い事なんか何もしていない。そうでしょ?シン君・・・』
『あぁ。ひょっとしてすべての原因が俺にあったらと思うと、お前にどうやって謝ったらいいのか解らない。』
その日・・・各大使館からの連絡が入るのではないかと気が気ではなく
姉妹達は各宮殿に初めて宿泊したのであった
姉妹達・・・初めてのお泊まり❤
まぁこの場合危険なのはガンヒョンだけの様な気がします。
(≧▽≦)ノ”ギャハハハ!
土日はお話の更新はお休みです。
ふぅめる・多肉通信をお送りいたします。
次回のお話の更新は、祝日の月曜にね~~♪