玄関先に駆け付けたチェギョンの母スンレ…そして父のナムギルは、娘と一緒に並んでいるシンを見て
大変驚いたようだ
『チェギョン・・・そちらの方は・・・』
『イ・シンさんよ。あなた・・・今説明をした・・・』
今まさに見合いの報告をしていた時に帰宅した娘とその見合い相手を見つめ、父ナムギルは
相当困惑した表情をする
『とにかくどうぞおあがりください。』
『はい。失礼いたします。』
服装はTシャツにジーンズといった若者らしい格好に着替えているが、やはり財閥後継者のオーラは隠せない
『シン君・・・こっちだよ。』
チェギョンに促され入っていったシン家のリビングは、まるで自宅の勝手口に続く小部屋と同じくらいの広さだった
『狭い家で驚かれましたか?』
父ナムギルはソファーに座りながらシンに問い掛けた
『いいえそんなことはありません。』
『どうぞお掛けください。』
『はい。失礼いたします。』
『今・・・家内から見合いの報告を受けていたところです。イ家と我が家は昔・・・関わりがあったことを
奥様からお聞きになりましたか?』
『いえ。聞いておりません。』
父のその言葉にチェギョンは食い入るような眼で問い掛けた
『そう!お見合いの時にお母さんがそんなことを言っていたような気がするんだけど・・・一体何の話?』
ナムギルは娘にではなくシンに向かって答えた
『私の父が生前イ家の執事をしていたんです。』
『えっ❓執事をですか?』
『はいそうです。』
『イ・ヒョン様はお元気でいらっしゃいますか?』
『私の父をご存知なのですか?』
『ええ。幼い頃・・・父に連れられてお屋敷にお邪魔したことがあります。イ・ヒョン様もお父上によく似てらして
使用人の子だからといって蔑んだりせず、一緒に遊んでくださいました。』
『そうでしたか。両家にそんな経緯があったとは知りませんでした。
『私も縁あって同じ大学でチェギョンと出逢い、なにかと交流しておりましたが・・・この機会にチェギョンに
お付き合いを申し込みそれを受けて貰いました。どうかお付き合いすることをお許しください。』
今まで遠い目をしていたナムギルの表情が変わる
『そのことなのですが・・・イ家から望まれるのは大変名誉なことです。
ですが我が家とイ家では主従の関係でしか成り立ちません。
万が一・・・この先交際を続けてもイ家に嫁ぐことなどできないでしょう。
そうなった折にはチェギョンが傷つきます。なので娘が傷つかないように…
この話はなかったことにしてください。お願いいたします。』
『お父さん!!』
落胆するシンの顔を目の当たりにし、チェギョンは抗議の声を上げた
『お父さん・・・私、もちろんお見合いなんか断るつもりで行った。相手が誰かなんて知らなかったから・・・
でも行ってみたらその相手はシン君だった。シン君とは大学で知り合って最初は金持ちを花に掛けた
すごく嫌な男の子だと思った。でも・・・親しくなるうちに違うことに気が付いたんだ。
それでも・・・告白なんかできないでしょう?家柄が違い過ぎるから・・・
だからそんな気持ちは胸に秘めていた。
でも・・・彼のお母様が背中を押してくれたの。私のことを認めてくれたの。
すごくいい子だって可愛がってくれているの。それでも・・・ダメなの?
まだ結婚すると決まったわけじゃないでしょ?
胸に秘めておいた気持ちを解き放っちゃったんだもん。もう止まれないよ!』
必死に訴えるチェギョンを見て、感情を抑えることができなくなったシンはナムギルに訴えかけた
『チェギョンのお父さん・・・私も同じ気持ちです。チェギョンと一緒にいたくて同じ店でアルバイトをしたり
帰宅が心配で送迎したり…そんなことで少しでも一緒にいる時間が欲しかったんです。
今後私は・・・決してチェギョンを蔑むような態度を取らないとお約束します。
母が・・・私達の背中を押してくれた以上、私の気持ちももう止まれません。
どうかお願いです。大切にしますから交際を認めてください!』
二人に真剣な瞳で訴えられ、ナムギルは頭を抱えた
『う~む・・・だけど父に何と言ったらいいんだ?』
苦悩するナムギルに、見合いの席でイ家の奥様に散々娘を褒めちぎられたスンレは二人に助け舟を出した
『お義父様には・・・こういうことになりました・・・でいいんじゃないの?
二人は好き合っているし、何よりもイ家がチェギョンを認めてくれている。こちら側に文句など言えない筈よ。
あなた・・・認めてあげましょう。何もすぐに嫁に出すわけじゃないのよ。』
チェギョンの両親の様子を固唾をのんで見守っているシンとチェギョン
ナムギルは苦悩しながらもスンレの言葉に仕方がなさそうに頷いた
『そうだな。もう二人が交際の約束をしてしまったのなら・・・ここで引き離したら駆け落ちされそうな勢いだ。
イ・シンさん・・・わかりました。交際を認めます。ですが・・・チェギョンを泣かせるようなことは
絶対にしないでくださいね。』
『もちろんです。お約束いたします。』
チェギョンの両親から交際の許しをもらったシンは、安堵の表情を浮かべながらシン家から出ていく
チェギョンは家の門まで送りながらシンに言った
『はぁ~・・・一時はどうなることかと思った。』
『あぁ。ほっとして肩の力が抜けたよ。』
『シン君…駐車場まで送っていくよ。』
『っつ・・・馬鹿だな。そんなことをされたらまた送ってこないとならない。
いつまで経っても帰れないだろ?』
『あはは・・・そうだった。じゃあ…また明日。』
『あぁ。表通りで待っている。』
『うん♪』
名残惜しそうに繋いだ両手を解き、チェギョンはシンに手を振った
シンは口角を上げるとチェギョンの左頬をそっと撫で、シン家を後にした
イ家に帰宅したシンはリビングで寛いでいた両親の元に向かった
『ただいま戻りました。』
『もぉ~シン!遅かったじゃないの?初日からあまり遅くまでチェギョンちゃんを連れまわすと、
あちらのお父様に叱られるわよ~♪』
『あ・・・こんなに遅くなるつもりはなかったのですが、チェギョンを送り届けて彼女のお父さんに
ご挨拶をしてきたものですから。』
『まぁ~そうだったのね?それで・・・どんな反応をなさったのかしら?』
『反対されてしまいました。』
『えっ?・・・・』
『ははは・・・さすがシン家の跡取りだ。まぁ一応反対はするだろう。』
『お父様には予想がついて居たのですか?』
『ああ。やはり先代が執事をしていた手前、恐れ多くて安易に認めては貰えないだろうな。
それで・・・そのまま帰ってきたのか?』
『いいえ。チェギョンとお母さんが加勢してくれて、何とか認めて貰えました。』
『それは良かった。』
『はぁ~もう!心臓が飛び跳ねそうだったわ。よかったわ~~♪
それで?次のお休みにはチェギョンちゃんを連れてきてくれるんでしょう?』
『あ・・・すみません。来週のお休みにはギョンの家に行かないとならないんです。』
『え~~~っ!夜までギョン君の家にいるつもり?』
『いえ・・・夜には家に連れてきます。』
『やったわ~♪漸く一緒に食事ができるわね。チェギョンちゃんの為に~イチゴラテのドリンクバーも
発注しちゃったんだから~おほほほほ~~♪』
『くくっ・・・お母様、気が早いですね。』
『ではその時・・・夕食を一緒に食べよう。』
『はいお父様。』
折角の休みにチェギョンが夜にならないと来られないと聞いたミンは、更に食い下がってみる
『でもぉ~折角のお休みになぜギョン君の家に行くのかしら?』
『あ・・・それは・・・私とチェギョンのことを聞いて、ギョンも交際を認めさせたい子がいるので
チャン家に行くんで。。』
『えっ?あっ!わかったわ~あの眼鏡の子でしょう?スレンダーな・・・』
『その通りです。』
『いいんじゃないの?とても理知的で綺麗なお嬢さんだし、働きっぷりもテキパキしていて
チェギョンちゃんに引けを取らないいい子だわ。』
『お母様・・・働きっぷりって?』
『あ~~んファミレスで観察しちゃったのよ。チェギョンちゃんがホールにいない時には彼女をね。
そう・・・それはとってもいい考えだわ。必ず認めさせてくるのよ。』
『はい。その日の夕食が美味しくいただけるように、チェギョンと二人で頑張ってきます。』
こうして次週の木曜日はハードスケジュールとなったシンとチェギョン
しかしハードスケジュールになったのは、その二人だけではなかった
世話焼きの性格を発揮してか、翌日ミンは誰かに電話を掛けている
『奥様~ご無沙汰しております。お元気でしたか~?
イ家のミンですわ。いつも息子がお世話になっておりますぅ~♪
あのですね・・・突然なんですが今週の日曜日の三時頃、もしお時間ございましたら~
一緒にお茶でもどうかと思いましてね♪
えっ?構わない?まぁ~嬉しいですわ~~♪
では二時半にお宅様までお迎えに上がります。
いえいえ~いいんですのよ。私からお願いしたことなんですから~♪
ではその時にお逢いしましょう~♪』
ミンは電話を切った後にやりと口角を上げた
また~お節介なミン様は
何かやらかしてくれちゃいそう~~♪
地震の被害に遭われたお友達と
連絡が取れてとても嬉しい管理人です。
まだまだ復旧には時間がかかりそうですが
一日も早く普通の日常が戻りますように・・・